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多能工化とは|意味や言い換え、失敗しないポイント、進め方、事例

多能工化とは|意味や言い換え、失敗しないポイント、進め方、事例

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多能工化は、組織として限られた人員で最大パフォーマンスを発揮するために、重要な考え方です。生産性向上や働き方改革の推進という効果が期待でき、労働力人口が減り続ける日本において注目が高まっています。

当記事では、多能工化の意味や目的、推進ポイントなどを詳しく解説します。事例もご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

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目次(タップして開閉)

    多能工化の意味

    多能工化とは、1人の社員が複数の業務に対応できる状態。あるいは、複数の業務に対応できるスキルを持った社員を育成することです。単に「多能工」という場合は、複数の業務に対応できる社員を指します。

    多能工化によって、特定の人でなければ対応できない業務を減らし、属人化の解消が進むでしょう。労働力人口が減少し続け、働き方改革が推進される日本社会で、注目を集めています。

    多能工化が誕生した背景

    多能工化は、トヨタ自動車工業株式会社(現:トヨタ自動車株式会社)に所属していた大野耐一氏が編み出したといわれています。

    大野氏は、紡績業での生産方式を参考に、自動車工場でも1人の社員が複数の工程を担当できるように改善を行いました。これを機に多能工化の考え方が誕生し、今では流通やホテル・旅館、建設業界でも広がりを見せています。

    参照:『多能工(たのうこう)』ITmedia エンタープライズ

    多能工化の目的

    多能工化の最大の目的は、生産性の向上です。

    あるチームに人手が足りなくなった際、さまざまな状況下に対応できる技能・技術を持った社員が応援に向かえば、業務が滞るのを防げるでしょう。

    多能工化で一人ひとりのスキルを高めておくと、継続的な生産の確保や柔軟な人材配置にもつながるのです。

    多能工化の注目が高まる理由

    多能工化の注目が高まっているのは、労働力人口の減少や働き方改革の推進です。

    多くの企業では、現在から将来にかけて働き手の不足という問題を抱えています。

    そこで多能工化によって、既存の社員一人あたりの業務パフォーマンスを高め、生産性向上をはかることは非常に重要といえるでしょう。

    長時間労働の解消や有給休暇の取得を進めるうえでも同様で、業務を平準化して属人化を防ぐ多能工化は、対策の一つとなるはずです。

    多能工化の反対は単能工化

    多能工化の対義語は、単能工化です。

    単能工化とは、特定の社員が特定の業務のみを実施すること。そして、その単一業務に専門特化した社員を育成することを指します。

    単能工化は専門性を高められるかもしれませんが、特定の人物が休んだり退職した場合、業務が滞る恐れがあります。

    そこで単能工化を減らして、より効率的に進められる多能工化の方が重視されてきているようです。

    多能工化を言い換えると?

    多能工化は「マルチタスク化」や「マルチスキル化」と言い換えられます。

    多能工化が求められる企業

    多能工化が求められる企業にはどのようなものがあるでしょうか。業界・業種別、特徴ごとに整理してご紹介します。

    業界・業種

    【製造業】
    コストや人員に限りがある中で利益を出すために、機械稼働率を向上しなければならないから。

    【流通・サービス業】
    複数の業務を担当できる社員がいると、忙しい時間帯に別のチームから応援を頼めるから。
    例:品出しチーム、レジ打ちチーム

    【旅館・ホテル業】
    複数業務を1人の社員が担当できると、別の社員を雇う必要がないから。
    例:フロント業務、客室清掃、厨房の手伝いなど

    向いている企業の特徴

    ・人員が不足しており、特定の業務を担当できる社員が1人しか存在しない
    ・経営陣に明確なリーダーシップがある
    ・現場で働く社員と意思疎通ができている
    ・職場の現状を可視化できるツールを活用している

    多能工化のメリットを企業側と従業員側に分けて解説

    多能工化のメリットを、企業側と従業員側に分けて解説します。

    企業側のメリット

    ・生産性が高まり、社員の業務量を平準化できる
    ・チームワークの向上
    ・業務の偏りにより、欠勤や退職によって業務の進まないリスクを回避
    ・柔軟性のある考え方ができるようになる
    ・今いる人材を有効活用し、能力を均等化する
    ・働き方改革を進められる

    従業員側のメリット

    ・企業が理想とする社員像に近づける
    ・社員同士が助け合い、スキルアップができる
    ・給与アップの可能性が高まる
    ・キャリア形成がしやすくなる

    多能工化のデメリットを企業側と従業員側に分けて解説

    多能工化は昨今のビジネス環境に適しており、メリットが大きいといえますが、デメリットもあります。

    多能工化のデメリットも、企業側と従業員側に分けてご紹介します。

    企業側のデメリット

    ・体制の確立に多くの時間とコストが必要
    ・多能工となれる人材が必要
    ・人事評価制度を見直さなければならない
    ・一時的に業務上の無駄が発生する

    従業員側のデメリット

    ・(多能工化推進が失敗した場合)モチベーション低下
    ・ほかの社員に質問する機会が減るため、社内コミュニケーションの希薄化
    ・自分の特徴や専門性がアピールポイントにならなくなる

    多能工化が失敗しやすい理由

    ここまで多能工化のメリットとデメリットを紹介してきました。多能工化に失敗してしまうと、社員のモチベーション低下などデメリットにつながります。多能工化に失敗する理由には、どのようなものがあるでしょうか。主なものを4つご紹介します。

    社員の個性を理解せずに多能工化を進めている

    多能工化に失敗する理由の1つめは、社員一人ひとりの特性や個性への配慮が足りず、反感を買ってしまうからです。

    多能工化は、適性検査やスキルマップを活用し、もともと持っているスキルや志向を考慮して進めるといいでしょう。

    教育期間が短すぎる

    多能工化の実現を急ぎすぎてしまうと、習得スキルが中途半端になり、結果的に業務に師匠が出てしまいます。スキル習得に適した余裕のある育成計画を立てましょう。

    定期的に計画の修正を行っていない

    多能工化は、定期的に実施内容の振り返りと修正を行わなければなりません。

    「業務内容や量を均等化できているか」「適性に合った業務を割り振っているか」などを確認し、その都度修正を行いましょう。社員のモチベーションが低下していないかもチェックする必要があります。

    社員側の理解が追いついていない

    単能工化から多能工化に切り替える目的が理解されていないと、社員側から反発を生む可能性があります。

    多能工化は、対象社員にとって負担が増えるように思われるかもしれません。しかし、全体として業務の平準化をはかれるとともに、従業員のキャリア形成の役に立つメリットがあります。

    多能工化の目的や効果、周囲のフォローのうえで進められるものであることを丁寧に説明し、適切な評価制度を整えましょう。

    多能工化の導入事例

    多能工化を進めてる代表的な企業は、印刷機器を取り扱うリコーインダストリー株式会社が挙げられます。

    同社は、専門職以外に多能工を育成し、ほかの現場をサポートしながら業務が進められる労働環境の実現を目指しました。これにより、生産量の変動がある場合も柔軟に対応できているそうです。

    参照:『リコーインダストリーインタビュー』一般社団法人日本能率協会

    多能工化の手順・進め方

    それでは実際に多能工化はどのような手順で進めればいいのでしょうか。4つのステップに分けて解説します。

    現在の業務や必要なスキルを洗い出す

    まずは社内に存在する業務やその業務に必要なスキルをすべて洗い出します。その後、各業務やスキルの優先度を順位づけしていきましょう。人手が足りていない業務や属人的になっている業務をなるべく優先させるとよいとされています。

    業務・スキルの可視化

    次に、優先度が高い業務内容の詳細を可視化します。具体的な作業工程やポイントについて、フローやマニュアルでまとめてください。

    図や表を活用しながら、誰が見ても内容を把握できる状態に仕上げましょう。また、社員が持つ現時点でのスキルもスキルマップなどにあらわしておくと、育成計画の作成に役に立ちます。

    人事評価制度の見直しもこの段階で行います。

    育成計画の作成・実施

    準備が整ったら、多能工の育成計画を作成します。ここで重要なポイントは「いつ、誰が、誰に、何を、どのように」という観点を取り入れること。現場の社員と対話を重ね、内容を詰めていきましょう。

    定期的な振り返りの実施

    多能工化の計画が開始されたら、定期的に振り返りや見直しを行いましょう。問題の有無や社員側のモチベーションなどを社員にヒアリングします。

    あらかじめ進捗状況を把握できる体制を構築しておくとより便利です。計画内容を随時ブラッシュアップし、より高い効果を目指しましょう。

    多能工化の成功ポイント

    多能工化を成功させるためには、次の3つのポイントに意識を向けてみてください。

    社員を適切に評価する

    多能工化では、明確な評価基準に沿って、多能工となる社員を適切に評価することが重要です。

    社員の多能工化が実現したとしても、スキルに見合った給与が与えられなかった場合、モチベーションが低下し、最悪の場合退職の恐れがあります。

    福利厚生の充実や、不公平感の少ない人事評価制度の構築など体制を整備する必要があります。

    トランザクティブメモリーの考え方を浸透させる

    トランザクティブメモリーとは、自社が抱えている業務を全社員が把握することを重視する考え方です。

    トランザクティブメモリーが浸透して、社員が自主的に複数の業務を担当するようになると、無理のない業務分担ができるはずです。不明点があった際も質問しやすくなるでしょう。

    スキルマップを作成する

    社員のスキルを可視化するスキルマップの作成も、多能工化には重要です。スキルマップとは、社員一人ひとりのスキル情報を数値化し、一覧表にまとめたもの。

    チームや部署ごとに作成し、不足しているスキルや特定の社員に偏っているスキルなどを直感的に把握して人材活用に役立てるのが一般的です。

    スキルマップ以外にも、進捗状況を見える化するツールの活用も、多能工化の推進には役立ちます。

    多能工化で解決につながる人事課題

    ここまで、多能工化の進め方や成功ポイントについてご紹介してきました。ここからは、多能工化によって解決可能性のある人事課題に絞って4点ご紹介します。

    労働生産性

    先述の通り多能工化の最大の目的は、生産性の向上です。

    多能工化によって、労働生産性の向上が期待できます。繁閑の差がある部署の忙しさを平等にすることで、効率よく業務が進められるようになるからです。

    働き方改革

    先述したように、多能工化に注目が集まる背景には、働き方改革が影響しています。

    多能工化によって、労働時間が均等化されて有給休暇が消化されやすくなるなど、働き方の改善が期待できます。これにより、第三者から見た企業イメージも向上するかもしれません。

    人手不足

    単能工が一般的だった時代は、1つの業務を完了させるために数人の社員が必要でした。しかし、多能工化が進むと、社員1人で複数の業務をまかなえます。したがって人手不足の解消も見込めるでしょう。

    働き手の市場価値向上

    スキルアップして多能工となった社員は、働き手として市場価値が向上する可能性があります。

    まとめ

    多能工化を推進すると、企業にも従業員にもさまざまなメリットがあります。成功ポイントに気をつけて正しい手順を踏めば、業務の属人化を解消し、生産性向上が見込めるでしょう。

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    多能工化を成功させるためには、社員のスキルを可視化するスキルマップの作成がポイントとなります。

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