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労務管理とは?目的や仕事内容、人事管理との違いを簡単に解説
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労務管理とは、企業として従業員が気持ちよく働くために重要な業務です。
しかし、人事との違いがわかりにくいと感じていたり、多岐にわたる労務管理の業務を効率化したいと感じている担当者も少なくありません。
そこで当記事は、労務管理について目的や仕事内容を解説しながら、労務管理の課題点や効率化する方法をご紹介していきます。
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目次(タップして開閉)
労務管理とは
労務管理とは、雇用や労働に関する書類作成や手続き、勤怠管理など「従業員の労働」に関する管理を行うものです。
そのほかに、福利厚生や従業員の健康管理、職場におけるハラスメントなど、従業員が安心して働くことができるようにするための労働環境を整える役割も担っているといえるでしょう。
労務管理の目的や意義
労務管理の目的や意義は大きく分けて2つあります。
1つめが「労務管理による生産性向上」です。労働に関する適切な管理ができていれば、従業員が安心して業務に取り組めるでしょう。
2つめは、「リスク回避」が挙げられます。労働に関する法令を遵守したり、諸手続きを問題なく完了させなくてはなりません。
労務管理を適切に行うことは、企業として法令違反のリスクを抑え、信頼性の確保にもつながるでしょう。
労務管理と勤怠管理、人事管理の違い
労務管理と特に混同しがちな言葉として、「勤怠管理」と「人事管理」が挙げられます。
労働管理とこれらには、管理する対象に違いがあります。
労務管理 | 労働を対象として、労働契約や勤怠、環境などの管理と整備 |
---|---|
勤怠管理 | 勤怠を管理対象として、労働時間や休憩、休日を管理 |
人事管理 | 人材を管理対象として、採用や配置などを管理 |
それぞれ管理する対象が違うため目的や業務内容も異なりますが、勤怠管理に関しては労務管理における管理項目の一つでもあり、労務管理担当が勤怠管理を行う場合もあります。
労務管理で重要な法定三帳簿
法定三帳簿とは、労働者名簿と出勤簿賃金台帳、出勤簿の三種類の書類を指しています。
法定三帳簿は、労働基準法によって従業員を雇用する際に、書類作成や管理、保管をすることが義務づけられているため、担当領域である労務管理の重要な業務の一つといえるでしょう。
なお、三帳簿の保管期間は2020年の法改正により5年間とされており、退職や解雇、死亡日を起算日とします。
労働者名簿とは
労働者名簿とは、労働基準法107条において作成が義務づけられています。
労働者ごとに事業場単位で作成し、変更点があった場合は訂正しなくてはならない書類です。
・氏名 ・生年月日 ・履歴(異動や昇進など) ・性別 ・住所 ・従事する業務の種類 ・雇い入れの年月日 ・退職の年月日及びその事由(解雇の場合にあってはその理由含む) ・死亡の年月日及びその原因 |
上記の記載事項のほかにも、労働者の管理で必要な点を任意記載事項に記入します。
賃金台帳とは
賃金台帳とは、労働基準法108条により作成が義務づけられています。
賃金台帳も、事業場単位で作成し、賃金計算の基礎となる事項や賃金額などを、賃金支払いのたびに記入するものです。
従業員一人ひとりにおける賃金の支払い状況を記載するものとイメージするとよいでしょう。
・氏名 ・性別 ・賃金計算期間 ・労働日数 ・労働時間数 ・時間外労働時間数 ・休日労働時間数 ・深夜労働時間数 ・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額 ・賃金控除した場合にはその項目と控除額 |
賃金台帳の対象は、雇用形態にかかわらず雇用者全員ですが、日雇い労働者については賃金計算期間の記載は不要とされています。
出勤簿とは
出勤簿とは、従業員の出勤状況を記録したものであり、正確な労働時間を把握するため、時間外労働や休日出勤などもわかるように記載します。
適切な労務管理を行うために重要な書類として作成が義務づけられていますが、法律による明文化された規定はありません。
・出勤日及び労働日数 ・始終業の時刻及び休憩時間 ・日別の労働時間数 ・時間外労働を行った日付、時刻、時間数 ・休日労働を行った日付、時刻、時間数 ・深夜労働を行った日付、時刻、時間数 |
Excelなどのツールを使用して作成を行いますが、客観的な方法(タイムカードや打刻システム等)で労働時間を把握するのが難しい場合には、自己申告による手書き等も認められています。
ただし、人為的ミスや労働時間の改ざんを防止するためにも、基本的には客観的な方法での把握が重要とされています。
労務管理の仕事内容
労務管理とは、労働に関するさまざまな管理を行うため、具体的なイメージがつきにくい場合もあるでしょう。
そこで労務管理における仕事内容を解説していきます。
法定三帳簿の作成
労務管理の仕事である法定三帳簿の作成は、重要な業務の一つです。
三帳簿を正しく作成したうえで、変更点が生じた際の対応や管理、保管もしなくてはなりません。
雇用契約書(労働条件通知書)の作成
労務管理では雇用契約書も作成します。雇用契約書自体は、法律で作成が義務づけられているわけではありません。
しかし、労働者との認識相違やトラブルを回避するために作成するのが望ましいでしょう。
また、雇用契約書と似たもので労働基準法で発行が義務付けられている「労働条件通知書」と兼用して発行する場合もあります。
発行が義務づけられている労働条件通知書では以下の項目を必須として絶対的明示事項としています。
・労働契約期間 ・就業場所 ・業務内容 ・就業時間 ・休憩時間 ・時間外労働の有無 ・休日・休暇 ・交替勤務の有無・ルール ・賃金に関する事項 ・退職や解雇に関する事項 |
さらに、アルバイトやパートタイム等の労働者は絶対的明示事項に加えて特定事項(昇給、賞与、退職金の有無、相談窓口)の記載をしなくてはなりません。
就業規則の作成
就業規則の作成は、『労働基準法』において常時10名以上の従業員を雇用する場合は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長へ提出することが義務づけられています。また、就業規則を変更する場合も同様です。
就業規則の項目としては、必須項目である「絶対的明示事項」とルールを定めている場合には記載する必要のある「相対的事項」、使用者における任意の記載事項があります。
勤怠管理
労務管理では、従業員の勤怠状況を記録するために勤怠管理も行います。
また、従業員への給与支払いや長時間労働や法定労働時間などのコンプライアンスを守るうえでも重要な業務の一つといえるでしょう。
給与計算
給与計算では、従業員に支払う「給与額」を計算します。
従業員の雇用契約・勤怠状況・手当などを反映したうえで、社会保険といった控除額も差し引き、最終的な手取り金額を割り出します。
また給与計算は、従業員の手取り金額を算出する以外にも、住民税などの徴収や納付まで行うため、重要な業務だといえます。
専門的な知識を多く要するため、「労務管理士」や「社会保険労務士」といった資格保持者が担当すると安心でしょう。
社内に資格保持者がいない場合には、外部の専門家に相談しながら、一緒に給与計算を行うこともあります。
従業員の健康管理
労務管理の仕事の一つとして、従業員の健康管理も挙げられるでしょう。
企業は従業員の健康を守るため、『労働契約法』において安全配慮義務を負っています。
従業員の命や身体の安全を確保したうえで働くことができるよう、配慮が必要とされています。
職場環境改善の取り組み
労務管理では、事務的な手続きや管理だけでなく、労働環境の改善への取り組みも行います。
セクハラやパワハラなどのハラスメント対策や過重労働防止など、従業員がより安心して働く環境の整備や改善の取り組みも重要な業務の一つといえるでしょう。
福利厚生の手続きや管理
労務管理の仕事として、福利厚生の手続きや管理も重要な業務といえるでしょう。
福利厚生の種類には、法律で定められた法定福利(各種保険手続き等)と社内独自で定める法定外福利(住宅、健康、レクリエーション、育児、介護等)の2種類があります。
法定福利については、各種保険や年金について提出書類を用意したうえで、それぞれ所轄の年金事務所やハローワーク等で手続きしなくてはなりません。
法定外福利の内容は企業によって異なりますが、離職率の低下を抑えたり、企業のPRにもなるため、従業員が働きやすさを感じられるような内容や魅力的な内容で設定します。
退職や異動等の手続き
労務管理では、退職や休職、社内異動に関する手続きも重要な業務の一つです。
退職では各種保険の資格喪失手続き、労働者名簿の更新等、休職ではケースに応じて保険給付や疾病手当金の手続き等を行わなくてはなりません。
転居を伴う異動の場合には、社会保険(健康保険や厚生年金保険、雇用保険)の手続きや労働者名簿の変更等をしなくてはなりません。
労務管理に必要なスキルや資格
労務管理では、「求められるスキル」や「保持すると役立つ資格」があります。
労務管理に求められるスキル
労務管理では、従業員の働きやすい環境をつくるため、さまざまなスキルが必要です。特に、以下のスキルは必要といえるでしょう。
労働法規に関する知識 | 労働基準法や労働安全衛生法 ※労働法規に反すると、罰せられることがあるため要注意 |
---|---|
システムの操作スキル | 人事システムや給与管理ソフトなどのシステムを操作するスキル |
コミュニケーション能力 | 社内外問わず、さまざまな人と連携して業務を進めるため |
労務担当者は、以上のようなスキルや経験、知識を持った方が望ましいでしょう。
労務管理で役立つ資格
労務管理担当者は、資格が必須ではないものの、保持していると役立つ資格が3つ挙げられます。
社会保険労務士
社会保険労務士は国家資格であり、社会保険に関する書類の作成や、事業に対するコンサルティングができます。
社会保険に関する知識が習得できることはもちろん、専門家の視点で労務のアドバイスができるため、人事総務部署では重宝されるでしょう。
労務管理士
労務管理士は民間資格で、多岐にわたる労務知識の保持を証明できます。
社会保険労務士よりも、資格の取得に対するハードルは低いですが、持っていて損はないでしょう。
衛生管理者
衛生管理者は、労働安全衛生法で定められている国家資格です。健康障害や労災を防ぐために必要な知識を証明でき、職場の安全確保に役立ちます。
衛生管理者は、従業員が常時50人以上存在する職場では、必ず専任する必要があります。
そのため、衛生管理者が存在しない職場で、従業員が常時50人を超えそうな場合には、誰かが資格を取得しなければなりません。
労務管理で意識すべき点
労務管理がより適切に行われるために、意識しておきたいポイントをご紹介します。
法令の理解
労務管理では、従業員の労働環境を守るために、基本的な法令を理解しておくのが重要なポイントです。
労働基準法や労働契約法、労働組合法など、労務管理の業務と密接に関わる分野の法令は特に理解を深めておきたいところです。
また、法改正などがあった場合にもスムーズに対応できるよう、日々アンテナを張っておかなくてはなりません。
情報管理の徹底
労務管理では、労働者の個人情報や社内規定を扱うため、情報管理の徹底も意識しなくてはなりません。
特にデータ紛失や個人情報の漏洩には注意する必要があるため、書類の管理や保管、使用するシステムのセキュリティを強化しましょう。
改善意識
労務管理では、労働関係の事務手続きだけでなく、従業員が安心して働ける労働環境の改善も常に意識しておきたいポイントです。
企業として生産性を高めるためにも、従業員が安全かつ安心して働ける、時代に合った労働環境の整備に取り組みましょう。
労務管理の注意すべき課題
労務管理の課題にはどのような点があるのでしょうか。労務管理において企業が抱えやすく、注意しておくべき課題点についてご紹介します。
コンプライアンス(法令順守)の徹底
労務管理では労働に関するさまざまな法令を遵守しなくてはなりません。
時代や社会情勢の変化によって、法令が改正されることもあるでしょう。現時点の法令を遵守するだけでなく、法改正の状況や流れを常に意識しておくことが大切です。
運営体制の整備
労務管理は、以下のような基盤が確立されてこそ、適切に実施できます。
・就業規則の見直し ・最新の労務管理 ・マネジメント体制 |
つまり運営体制が整備されることで、労務管理がしっかりと機能します。そのため、労務管理の基盤とも言える「運営体制の整備」を常に心がけることが大切です。
時代に合った労働環境の整備
「働き方改革」をはじめとして、育児との両立支援、コロナウイルスにおける在宅勤務、賃金引き上げなど、時代にあった雇用や労働環境の整備をおこなうことが推奨されています。
また、より従業員が安心して働くことのできる魅力的な福利厚生の整備も必要です。
こうした取り組みは、在籍する従業員の満足度を高めるだけでなく、優秀な従業員を集めることや企業としての価値にもつながるでしょう。
より働きやすい、時代に合った労働環境の整備も、労務管理として課題の一つとして取り組んでいきたいところです。
労務管理の効率化
労務管理で扱う業務は多岐にわたり、さまざまな事務作業や手続きも行わなくてはなりません。
企業として生産性を高めるためにも、労務管理で扱う業務を効率化することも重要なポイントの一つといえるでしょう。
ツールやシステム、代行サービスの導入など、労務管理の業務を効率化する方法を見定めたうえで実行していくことが大切です。
労務管理を効率化する方法
労務管理を効率化するにはどのような方法があるのでしょうか。労務管理における効率化の方法をご紹介します。
代行サービスの利用や専門家との連携
労務管理の業務を効率化するために、代行サービス(アウトソーシング)の利用や専門家との連携も有効です。
アウトソーシングにはさまざまな種類があり、給与計算や年末調整、勤怠管理など、部分的な業務を依頼することも可能です。
専門業者に依頼することで、効率化だけでなくミスのない業務も期待することができるでしょう。
また、労務管理の業務は法令にも密接に関わる内容を扱うため、専門家との連携をしておくことでより理解が深まり、効率化やコンプライアンス順守にもつながるでしょう。
ツールの活用
労務管理の様々な事務作業においては、ツールを活用することで効率化することができるでしょう。
たとえばエクセルを使用することで計算業務を簡略化できるなど、給与管理や勤怠管理にも活用することができます。
エクセルのように日々の業務で使い慣れたツールを活用することで、操作の理解もスムーズに進むはずです。
システムの導入
労務管理が扱う業務は、システムを導入することで大幅な効率化が見込めます。
勤怠管理システムや給与計算システムなど、部分的なシステムもおすすめですが、労務管理システムなら総合的に労務管理の業務を効率化することができるでしょう。
労務管理システムの一般的な機能としては入退社手続き、雇用契約書の作成、年末調整、給与明細発行、マイナンバー管理などが挙げられます。
システムによっては、給与計算や勤怠管理までカバーできるものもあるため、チェックしてみましょう。
まとめ
労務管理の業務は、雇用や労働に関する書類作成や手続き、勤怠管理など「従業員の労働」に関する管理を行うものです。
また、従業員がより安心して働くための労働環境の整備を行うための業務も担います。
しかし業務内容が多岐にわたるため、効率化することが重要なポイントともいえるでしょう。
労務管理を効率化する方法として、代行サービスやツールの利用、システム導入などが挙げられます。
自社の労務管理の効率化において必要な点を踏まえ、効率化を進めることで、より適切な労務管理ができるでしょう。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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