- 2022.05.24
- タレントマネジメント
公務員の人事評価とは? 意味がないと言われる理由や制度化するメリットを解説

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公務員は民間企業の社員と異なり、利益を追求することはあまり求められません。そのため、職員の業績を待遇・処遇に反映させる人事評価制度は公務員に必要ないとされてきました。
しかし、近年は法改正が行われて、公務員にも人事評価制度が導入されています。当記事では、最近の動向も踏まえながら公務員の人事評価制度について解説します。
目次(タップして開閉)
公務員の人事評価とは?
内閣人事局は人事評価を「職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力および挙げた業績を把握したうえで行われる勤務成績の評価」と定義します。そのうえで、人事評価における以下の役割を重視しています。
公務員の人事評価の役割 |
---|
・任用、給与、分限などの人事管理の基礎となる ・人材育成の意義を有する ・組織内の意識の共有化や業務改善などに寄与する ・活力ある公務組織の実現や効率的な行政運営に資する |
公務員の人事評価の変遷
公務員のあり方や育て方を変革するため、近年さまざまな法改正が行われています。
国家公務員
2009年4月には、国家公務員法等の一部を改正する法律が施行されました。この中では人事評価制度の定義と位置づけが明示され、「人事管理は、職員の採用試験の種類や年次にとらわれず、人事評価に基づいて適切に行う」こととされました。
2008年6月に公布、施行された国家公務員制度改革基本法でも「能力および実績に基づく適正な人事評価を行うこと」と規定されています。
国家公務員の評価が細分化
そして2021年10月以降、国家公務員の人事評価制度はSABCDの5段階評価から、Bを「優良・良好」に分けた6段階評価に変更されました。評価がAとBに偏っていたので、その是正が求められたためです。

地方自治体
地方自治体においても、人事評価の導入を義務づけた改正地方公務員法が2016年4月に施行されました。
参考:内閣官房ホームページ 内閣人事局|国家公務員制度|人事局
公務員の人事評価制度の目的・背景とは?
さまざまな社会背景により、公務員にも人事評価制度が導入されることになりました。その背景と目的をご紹介します。
公務員の人事評価制度導入の背景
近年、国民の行政に対するニーズが複雑高度化・多様化して、その変化のスピードも速くなっています。こうした状況を踏まえ、公務員には国民の期待に応え、良質で効率的な行政サービスを提供し続けることが強く求められています。
地方自治体も、地方分権の進展、住民ニーズの高度化・多様化、職員数の減少などに対応しなければなりません。また、人事評価に基づかない昇給などが違法であるとして住民訴訟を提起されるリスクもあるため、これを回避することも必要です。
公務員の人事評価制度導入の目的
上述のような背景があり、年功序列の廃止、適材適所の人材配置、人材育成などを目的とした人事評価制度が公務員にも導入されることになりました。内閣人事局・人事院が公開している『人事評価マニュアル』には、国家公務員の人事評価について次の2点が記載されています。
人事管理を行う基礎
公務員に人事評価が行われる1つ目の目的は「任用、給与、分限等あらゆる側面で活用する能力・実績主義の人事管理を行う基礎」です。
人事評価は各職員の能力や実績などを的確に把握し、適材適所の人材配置やメリハリのある給与処遇を実現するためにあります。
人材育成・組織パフォーマンスの向上
公務員に人事評価が行われる2つ目の目的は「人材育成・組織パフォーマンスの向上」です。
人事評価によって各職員の強みや弱みを把握することで、能力開発を促すきっかけになります。また、評価の過程におけるコミュニケーションを通して、組織内の意識の共有化や組織パフォーマンスの向上も期待されます。
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公務員の人事評価「意味がない」と言われる理由
公務員の人事評価において、なかには「意味がない」という批判もあります。その理由として以下の3点が挙げられます。
給与やボーナスの評価差額が小さい
公務員の評価による給与差額は、民間に比べて小さい傾向にあります。以下で具体的にご紹介します。
国家公務員に適用される号俸とは
国家公務員の給与は俸給表によって決定されます。俸給表の横軸は係長や主任などの役職を序列化した「級」で、上位の等級に上がるのが昇格です。一方、縦軸は勤続年数や年齢など序列化した「号俸」で、号俸が上がるのが昇給です。
評価で分かれる給与の差
人事評価における各評価には2号俸の昇給差があります。おおよそ1号俸あたりの差は月1,500円程度なので、評価がAとBでは月3,000円程度の昇給差が生じます。
ボーナスもAとBで年間10万円程度の差があります。これらを合算すると、評価AとBで年間15万円程度の評価差額です。人事評価が給与やボーナスに民間ほど大きく反映されているわけではありません。
目標を設定するのが難しい
公務員は特定の者に奉仕するのではなく、国民や住民全体の奉仕者として公共の利益の増進に尽くすことが求められます。民間企業のように利益を追求することはありません。そのため、売上目標や営業成績のような数値目標を設定しにくく、結果も見えにくいため、漠然とした目標になりがちです。
また、目標管理にこだわりすぎると、目標となっている仕事にのみ注力して、それ以外の仕事で手を抜く職員が出てくる可能性もあります。結果として行政サービスの質が低下すれば、国民全体の奉仕者としての役割を果たせないことになります。
関連記事 目標設定と人事評価の関係性とは |
評価基準が統一されていない
公務員の評価基準は統一が難しいため、評価に偏りが生じやすいという問題もあります。評価者が上司1人だったり、普段は面識のない職員が評価を行ったりするからです。私情を挟まない公平な評価が行われているかどうかが疑問視されます。
部局間で業務の種類や難易度に差があったり、各自治体の組織風土が異なっていたりすることも、評価基準の統一を難しくしている要因です。絶対評価にするか相対評価にするか、甘辛調整を実施するかどうかなど、組織ごとの課題も検討されてきました。
公務員の人事評価を制度化、運用するメリット
公務員の人事評価を制度化して運用するメリットは次の通りです。
公務員の人事評価を制度化するメリット |
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・職員のモチベーションが向上する ・目標と経験・スキルを連動させる ・適材適所の人事配置の根拠となる ・評価者と被評価者のコミュニケーションが活性化する ・組織と職員間でビジョンや目標を共有できる ・若手職員の声を聞くチャンスが得られる ・職員のエンゲージメントを可視化できる |
公務員に適切な人事評価の方法とは?
公務員は民間企業のように数値目標を設定しにくく、評価基準の統一も難しいといわれます。このような状況で適切な人事評価を行う方法について具体的に紹介します。
公務員の目標設定
公務員の目標設定については、総務省がサンプルを公開しています。この中で企画部、総務部などの目標管理シートが20例紹介されています。
公務員の目標の具体的な項目
たとえば、企画部企画調整課長の目標管理シートでは、「総合計画の推進」「市民との協働によるまちづくりの推進」などの施策・組織目標を踏まえ、「行政評価制度の導入」「総合計画の管理」といった5項目があります。
各項目には「どの水準まで」「どのような方法で」「いつまでに」という具体的な達成水準、アクションプラン、期限を記載しなければなりません。また、各項目に対して「s・a・b」と難易度も記載します。
関連記事 アクションプランとは? |
公務員の目標設定の方法
公務員の目標は、評価者である上司と被評価者である部下による面談などを通して決定されることが多いようです。職員は業務における自分の役割を理解し、上司のアドバイスを踏まえて目標を立案します。上司と部下ですり合わせを行い、以下の点に注意しながら妥当な目標を最終的に設定します。
・施策・組織目標と各職員の目標が連動しているか? ・役職に関連している内容か? ・達成度を評価する明確な基準はあるか? ・目標が不明瞭になっていないか? |
数値目標を設定しにくい総務部などの目標設定では、結果だけでなく過程にも目を向ける必要があります。総務省が公開するサンプルでは、総務部人事課長の目標を「メンタルヘルスによる心のケアの充実」「被服貸与制度の見直し」としています。
関連記事 目標設定の具体例を紹介 |
公務員の人事評価は自治体ごとに異なる
地方公務員の人事評価は自治体ごとに異なります。評価が異なれば給与への反映の仕組みも異なります。一方、多くの自治体では能力評価と業績評価を実施しています。
能力評価 | 職員の職務上の行動を通じて明らかとなったもの。 項目例は、企画立案、専門知識、協調性、判断力など。 |
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業績評価 | 職員が果たすべき職務をどの程度達成したか。 期首に目標を設定し、期末にその達成度を確認する。 |
評価結果を何に活用するかも自治体ごとに違いがあります。多くの自治体で人材育成と配置転換への活用が行われている一方で、降任・免職に活用する自治体も見られます。職員の残業時間を減らすうえでも結果をチェックすることは大切です。
公務員の人事評価はどう管理する?
公務員に人事評価制度が導入されて以来、多くの自治体が紙やExcelなどを用いてデータ管理をしてきました。しかし、紙などで作られた目標管理シートを配布・回収したり、データを集計・分析したりする作業は煩雑で、人事担当者の負担が大きくなりがちでした。この問題を解決するため、システムツールへの移行が進んでいます。
システムツールの導入
政府が『デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針』を決定したことを背景に、地方自治体でもDX化が推進されています。具体的な柱は次の2点です。
1.デジタル技術やデータ活用で、住民の利便性を向上させる 2.デジタル技術やAIの活用で業務を効率化し、行政サービスを向上させる |
とくに業務効率化の観点から、人事評価制度にシステムツールを導入する自治体も増えています。システムツールを用いれば、評価結果などの情報を一元管理することができます。
また、評価結果を一覧表示して給与計算に反映させたり、人材育成や配置転換に活用したりするのも容易になります。
公務員の人事評価を制度化し適切に運用する方法
公務員の人事評価制度を適切に運用するのにも役立つのが、公的機関に特化したタレントマネジメントシステムの『スマカン Public-人事評価』です。
国家公務員と地方公務員の人事評価制度に準拠した、人事評価記録簿や目標管理シート、自己採点シート、評定結果本人開示書など、各種書類の既存のフォーマットをひとつのシステムで再現できます。また評価における無駄を削減して公務能率を上げるとともに、評価の公平性と透明性を担保して、職員が納得できる制度の運用が実現できます。

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