• 2022.10.07
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職務給とは? 職能給との違いやメリット・デメリット、制度移行のポイントを解説

職務給とは? 職能給との違いやメリット・デメリット、賃金制度の移行について解説

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職務給とは、従業員の能力や役職ではなく、業務内容にあわせて給与を決める仕組みのこと。もともとは欧米を中心に普及していましたが、現在は日本でも取り入れられつつあります。2022年10月、政府が総合経済対策の一環として、移行を促す方針を打ち出したことでも話題となりました。

当記事では、職務給の概要、似た言葉である職能給との違い、職務給が注目されている背景、導入の手順とポイントなどを解説します。「ジョブ型雇用の移行を考えている」「給与制度の設計に悩んでいる」企業のご担当者は、ぜひ参考にしてください。

目次(タップして開閉)

職務給とは

職務給とは、業務の内容に応じて給与が決まる制度のことです。年次や役職は関係ないため、成果主義に近い仕組みともいえます。採用した従業員の能力にあわせて仕事を決めるのではなく、仕事に見合った能力を持った従業員を採用する「ジョブ型雇用」とも関係の深い制度です。

また、最近の日本で注目されている「同一労働同一賃金」、非正規労働者と正規労働者でも同じ仕事をしているなら同じ給与を払うべきという考え方も、職務給と重なる部分があります。

職務給の例

職務給について、例を挙げて見ていきましょう。とある店でのキッチンスタッフは時給1500円だったとします。

職務給の場合、他店での調理経験がある人も、長年その店で働き続けている人も、新人と同じ仕事内容をしているのであれば給与は変わりません。これが業務に対して給与が決められるということです。ただし、経験が認められて調理を担当するメニューが増えた、バイトリーダーになってシフト管理もやるようになった、などの場合は業務内容が変わっていますので給与もアップする可能性があります。

職務給制度の評価基準

職務給制度では、具体的にどのような点を見て給与を決めているのでしょうか。世の中の企業が評価基準としているのは、以下のような項目です。

  1. 職種
  2. 業務の難易度
  3. 業務の複雑さ
  4. 専門性の高さ
  5. 対応する範囲
  6. 責任の大きさ

まず職種によって業務内容は大きく変わりますから、職種ごとにベースの給与水準を決めます。そのうえで、より難しく複雑な業務に従事するほど給与を高くします。業務を遂行するために専門知識や技術が必要かも重要です。業務の範囲が広がったり、責任の重大な仕事に就いたりする場合も給与を上げます。

職務給においてもリーダーやマネージャーなど役職者の給与が高くなりやすいのは、こうした理由からです。

職務給と職能給の違い

よく職務給と比較される言葉に「職能給」というものがあります。職能給とは、従業員の能力に応じて給与を決める制度です。職務給は年功給とほとんど同じ意味で使われることがあります。

職務給では業務の難易度や専門性が評価基準として重視される一方、職能給は従業員の経歴やスキルを重視します。ジョブ型雇用や成果主義に近い職務給に対して、職能給は新卒一括採用・終身雇用・年功序列の仕組みと相性がよく、日本企業では長らく職能給が採用されてきました。しかし、職能給の課題が徐々に明らかになり、近年では職務給のメリットが注目されてきています。

職務給制度のメリット

職務給制度のメリットは、評価の公平感を保ちやすいことです。職能給では同じような仕事をしていても役職者や年長者のほうが給与が高くなることがあり、従業員が不公平に感じやすい傾向にあります。

業務内容に応じて給与が決まる職務給で、そのようなことは基本的に起こりません。より難しい仕事に挑戦できるようになれば、年齢や役職に関係なく給与が上がるため、スキルアップするモチベーションが高まりやすいのも職務給のメリットです。

職務給制度のデメリット

職務給の場合、成果を出している従業員が昇給していく一方で、成果が出ずに同じ業務を続けている従業員は長く働こうとも給与が変わりません。そのような従業員の企業に対する愛着(エンゲージメント)やモチベーションが下がりやすいのは、職務給のデメリットといえるでしょう。

職務給は仕組み上、新卒採用やジョブローテーションとの相性が悪いため、組織の硬直化を招く可能性もあります。勤続年数や役職などで給与を決めるよりも、細かく業務の難易度や成果を精査する必要があることから、企業側の負担が大きくなりやすいのもデメリットのひとつです。

職務給を含む基本給の分類

企業における基本給の体系は、「仕事給」と「属人給」に大きく分けられます。

仕事給とは、業務の内容や業務の遂行能力に応じて給与を決定する仕組みです。職務給と職能給は、この仕事給の中に含まれています。

もう一方の属人給とは、従業員の年齢や勤続年数に応じて給与を決定する仕組みのことです。属人給の場合、たとえば30歳で入社8年目など同じプロフィールの従業員なら、職種や業務内容が違っても給与水準は変わりません。

ただし多くの企業では、仕事給・属人給のどちらか1つ、もしくはその中の職務給・職能給のどれか1つだけで決めているわけではなく、これらを併存させて総合的に決定しているのが現実です。

職務給制度が注目される背景

日本において職務給が注目されてきている背景には、「同一労働同一賃金」というルールの存在があります。同一労働同一賃金とは、同じ仕事をしている従業員には同じ給与を払うべきという考え方です。正規雇用者(正社員)と非正規雇用者(パート・アルバイト)での不当な待遇格差をなくすことを主な目的に、2020年の4月から法改正によって導入されました。

同一労働同一賃金を守っていないからといって法律上の罰則はありません。しかし、企業が待遇の差について従業員から説明を求められた際に、同一労働同一賃金の考え方に基づいて合理的な説明ができる状態が望ましいです。そうでないと、労働基準監督署からの指導もしくは従業員からの損害賠償請求をされる可能性があるからです。だからこそ、多くの企業が雇用形態や役職ではなく、業務内容に応じて給与を決める職務給制度への移行が注目されているのです。

職務給は日本で広まる?

かつての日本企業の多くは、職能給をベースにした給与制度が一般的でした。経済成長を前提に、多くの企業が新卒一括採用からの終身雇用と年功序列を採用していたからです。そのような企業は、空いたポジションを中途採用ではなく従業員の配置転換で補うため、異動して業務が変わると給与評価がリセットされてしまう職務給制度は適さなかったのです。

一方で、欧米では職務給をベースにした給与制度が普及しています。男女での賃金格差をなくすのが主な目的です。

そして日本でもバブル崩壊をきっかけに終身雇用を継続することが難しくなり、人件費の抑制を目的として職務給の考え方が注目され始めます。さらに労働力人口の減少や価値観の変化によって起こっている、採用難易度の上昇と転職活動の活発化も見逃せません

このような現状を踏まえると、終身雇用・年功序列にもとづいた職能給による給与制度ではなく、成果主義に基づいた職務給による給与制度へのシフトは今後も加速していくと考えられるでしょう。

ただし、職務給と職能給はそれぞれにメリット・デメリットがあります。どちらが優れているかというものではありません。重要なのは両方の考え方を自社にあわせて組み合わせ、従業員が納得できるバランスを見つけ出すことです。

職務給制度へ移行する手順

自社でも職務給を導入したい場合に、どのようにして給与制度を変更するのか、その手順を解説します。

給与水準を調査する

職務給を含めた給与制度を変更する前に、世の中の一般的な給与水準や同業他社の給与水準を調べましょう。厚生労働省は毎年ホームページに『賃金構造基本統計調査』の結果を掲載しているので、まずはこれを確認することをおすすめいたします。そのほかにも民間の研究機関やリサーチ会社が発表している調査結果も参考になります。また人事系のコンサルティング会社から情報提供を受けるのも一つの手です。

給与制度を見直す

職務給の以降では、給与水準の調査結果や他社での事例を参考にして、自社にあわせた新しい給与制度を考えていきます。この際には、現状の給与制度における課題と見直しの目的を明確にしておくことが重要です。そして新しい制度をつくったら、必ず運用開始する前にシミュレーションを行いましょう。シミュレーションで問題が見つかったら、また改めて内容を見直します。

従業員に説明する

職務給など新しい給与制度が構築できたら、従業員に説明して実際に運用を始めます。給与制度は従業員の生活や業務のモチベーションに深くかかわる非常に重要な仕組みです。制度を変更する背景や目的、変更点と今後の運用方法などを丁寧に説明しなければいけません。説明不足だと、従業員の不満が集まり、運用が失敗しやすくなってしまいます。

賃金規定を変更して届出する

給与制度を職務給などに変更する際には、内容について従業員から意見を集めるとともに、変更に対する合意を得る必要があります。従業員からの合意が得られたら、「賃金規程変更届」と「就業規則変更届」を作成し、代表者が押印した上で、労働基準監督署に届け出ましょう。

職務給の導入ポイント

最後に、職務給を導入する際に注意しておきたいポイントを3点ご紹介します。

新入社員でも給与を低くする必要はない

職務給の場合、新入社員であってもほかの従業員に比べて給与を低くする必要はありません。業務の難易度が高ければ、相応の給与を設定します。ただし新入社員が研修期間などで難易度の低い業務をこなさなければならず、職務給の基準だと給与水準が低くなりすぎる場合は、条件的に職能給を適用して調整してもよいかもしれません。

業務内容が変われば減給の可能性もある

職能給において評価の基準となる「職務遂行能力」は、基本的に低下しないものだとされています。そのため従業員の役職や業務が変わったとしても、企業側の判断だけで減給することはできません。一方で、職務給において評価の基準になるのは「業務内容」であるため、それが変われば減給もあり得ます。ただし、その旨を就業規則の賃金規定に記載して従業員に認識させた上で、合理的な判断のもと決定を下す必要があるので注意しましょう。

一般的には基本給に含めて考える

職務給は基本給に含めて支給されることが多いです。その場合の職務給は、最低賃金、残業代、退職金、賞与、欠勤控除などの対象になります。ただし基本給は勤続年数をもとにした属人給で決定し、職務給は手当として支給することも可能です。手当とした場合でも、残業代の計算には含める必要があるので注意しましょう。

まとめ

職務給とは、業務の内容に応じて給与が決まる制度のことです。評価の公平感を保ちやすく、従業員がスキルアップするモチベーションを高めやすいというメリットがあります。職能給は欧米で普及していて、日本では従業員の能力に応じて給与を決める職能給が一般的でした。しかし、政府の総合経済対策や労働人口の減少、転職活動の活発化、同一労働同一賃金のルール化などの影響によって、日本でも職能給が注目されています。

企業が職務給を導入して給与制度を変更するなら、従業員の情報を分析して給与における課題と変更の目的を明らかにするといいでしょう。

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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