• 2022.11.10
  • タレントマネジメント
  • 人事戦略

人的資本の情報開示とは? 義務化の動向や政府指針、向き合い方などを解説

人的資本の情報開示とは? 義務化の動向や政府指針、向き合い方などを解説

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近年、企業価値を判断するうえで「人的資本」に注目が集まっています。2022年8月には日本政府から人的資本の情報開示における指針が公表されており、企業に対して人的資本の情報開示が求められるようになってきました。

当記事では、人的資本の概要をはじめとした、人的資本の情報開示の動向や政府指針、開示例、向き合い方について解説します。

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目次(タップして開閉)

人的資本とは

人的資本とは、従業員が持つ能力やスキルなどを「資本」とみなすことをいいます。従業員の教育や採用に「投資」をすることで価値を生み出し、結果として中長期的な企業価値向上につながるという考え方です。

従来、企業では従業員を「人的資源」とみなす考え方が主流で、教育費は投資ではなく「コスト」として捉えられていました。しかし近年、人材マネジメントの考え方は、従業員に投資することで価値を生み出す「人的資本」へと移行してきています。

人的資本の情報開示とは

人的資本の情報開示とは、「従業員の成長のためにどのような取り組みを行っているか」というような人的資本に関する情報を、財務情報と同じように社内外に向けて公表することです。

2018年には『ISO30414』という人的資本情報開示のための国際的なガイドラインがISO(国際標準化機構)により発表されました。

ISO30414には「人的資本の情報をどのように報告すべきか」という指針が示されており、欧米企業を中心に世界中でISO30414にのっとった情報開示が進んでいます。

人的資本の情報開示が求められる背景

企業に対して「人的資本の情報開示」が求められるようになった昨今、その背景には主に2つの理由があります。

投資家から人的資本情報開示が求められている

1つめは、投資家を含むステークホルダーから人的資本への関心が高まっているためです。

従来、投資家は企業の財務情報に基づき投資先の選定を行うことが主流でしたが、近年は人的資本のような無形資産を評価する傾向が高まっています。

リーマンショックを機に、「財務情報のみでは中長期的に見たときの企業価値を評価しづらい」という理由から、人的資本が重要視され情報開示が求められるようになりました。

ESG投資への関心の高まり

2つめの理由は、ESG投資への関心の高まりが挙げられます。

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3視点から投資先企業を選定する方法です。

人的資本は、3つの観点のうち特に企業価値に結びつきやすい「社会(Social)」に該当します。

このように、人的資本を含む「無形資産」への投資に関心が高まっていることが、人的資本の情報開示が求められる背景にはあります。

人的資本の情報開示における動向

欧米を中心とした世界中で人的資本の情報開示が進んでいますが、近年は日本でも取り組みが推進されています。

日本における人的資本情報開示の動向について紹介します。

『人材版伊藤レポート』の公開による人的資本情報開示の推進

日本で人的資本が注目されるようになったきっかけに、2020年に経済産業省が発表した『人材版伊藤レポート』があります。

『人材版伊藤レポート』とは、「持続的に企業価値を高めるために人的資本が重要であること」を提示した報告書です。

参照:『人材版伊藤レポート』(経済産業省/2020年9月30日)

2022年5月には、その内容を深掘りした『人材版伊藤レポート2.0』が発表されました。年功序列や終身雇用が当たり前ではなくなった今、企業と従業員が双方にとってメリットがある経営を行うためにも、人的資本の重要性を再認識させるような内容に更新されています。

参照:『人材版伊藤レポート2.0』(経済産業省/2022年5月)

『人的資本可視化指針』の公表

2022年6月、内閣官房により『人的資本可視化指針案』が公開されました。日本企業に向けた開示項目の具体例やガイドラインの活用方法など、人的資本の情報開示に関する指針の草案です。

この指針案へのパブリックコメントを経て、2022年8月30日には『人的資本可視化指針』が公表されました。これにより、日本政府としての人的資本情報開示の指針が示されたことになります。

2023年度から有価証券報告書に、人的資本情報の記載義務づけ予定

米国では、2020年にSEC(証券取引委員会)がアメリカの上場企業に対して人的資本の開示を義務化しました。日本の金融庁でも、2023年度から上場企業を中心に有価証券報告書への人的資本情報記載の義務づけを予定しています。

義務化される開示項目は、男女間賃金格差、育児休業取得率、女性管理職の比率などが含まれるとされています。

人的資本可視化指針の発表や有価証券報告書への記載義務づけにより、日本企業においても人的資本の情報開示はますます進むことでしょう。

人的資本の情報開示方法とは

では具体的に、どのように人的資本の情報開示をすればよいのでしょうか。

内閣官房より2022年8月に公表された『人的資本可視化指針』によると、人的資本の情報開示方法について以下のように示されています。

可視化において企業・経営者に期待されることの理解
人的資本への投資と競争力のつながりの明確化
4つの要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った開示
開示事項の2類型(独自性のあるもの・比較可能なもの)に応じた個別事項の具体的内容の検討

人的資本の情報開示における「4つの要素」

人的資本の情報開示を進めるにあたって、自社の経営戦略と人的資本への投資、人材戦略の関係性といった「統合的なストーリー」を検討したうえで、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの要素に沿って情報開示をすることが効果的だとされています。

この4要素は、企業の気候変動による影響や取り組みに関する情報開示の枠組み、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言をもとにしています。この4つの要素に基づく説明は、資本市場から広く受け入れられつつあり、投資家にとって馴染みやすい開示構造となっているためです。

参照:『人的資本可視化指針』(内閣官房/2022年8月30日)

人的資本の情報開示事項である「19の項目例」を紹介

『人的資本可視化指針』には、7分野19項目の開示項目例が記されています。これらはあくまでも例であり、企業は必ずしも全て開示する義務はありません。

ただし前述の通り、金融庁は23年度に有価証券報告書への人的資本情報の記載を義務づける方針を発表しており、19項目のうち一部は情報開示が必須となる予定です。

19の開示項目例は以下の通りです。

開示事項の例
育成 リーダーシップ
育成
スキル・経験
エンゲージメント
流動性 採用
維持
サクセッション
ダイバーシティ ダイバーシティ
非差別
10 育児休業
11 健康・安全 精神的健康
12 身体的健康
13 安全
14 労働慣行 労働慣行
15 児童労働・強制労働
16 賃金の公平性
17 福利厚生
18 組合との関係
19 コンプライアンス・倫理

参照:『人的資本可視化指針』(内閣官房/2022年8月30日)

人的資本の情報開示に向けた検討事項

『人的資本可視化指針』には、具体的な人的資本の開示事項を検討するうえで、2つの留意点が挙げられています。

ただ人的資本の情報開示を行うのではなく、どのような点に注意して開示項目を決めるべきか、以下の検討事項を参考にてみてください。

「独自性」と「比較可能性」のバランス

1つめは、自社ならではの経営戦略や人材戦略のような「独自性のある事項」と、投資家が企業間の比較分析の際に必要とする「比較可能性が重視される事項」を、バランスよく組み合わせることです。

独自性のある事項を、従業員エンゲージメントのような比較可能性が重視される情報と関連づけて説明することで、開示情報に説得力を持たせることができます。

まずは、自社にとって独自性を示すべき事項と、比較可能性を重視すべき事項を選定してみましょう。

「価値向上」と「リスクマネジメント」の観点

2つめは、「価値向上」と「リスクマネジメント」の観点から開示事項を整理することです。

開示事項の中には、企業の価値向上に向けた取り組みにより投資家からの評価獲得を企図する「価値向上」に関する事項と、ネガティブな評価を回避しステークホルダーからの信頼を得るため必要とされる「リスクマネジメント」に関する事項が含まれています。

 ステークホルダーのニーズを把握したうえで、どの事項を選択し、開示するのかを明確にしながら進めることが望ましいとされています。

参照:『人的資本可視化指針』(内閣官房/2022年8月30日)

人的資本の情報開示への向き合い方

人的資本の情報開示に向けて、企業は第一に「社内のデータを収集・分析する」といった準備が必要です。

自社の人的資本に関する取り組みや成果などを可視化することで、自社の現状を的確に把握することができます。現状の把握ができることで、目標とのギャップや改善すべき点が見えてくるでしょう。

人事戦略においては、今すぐに課題を解決するのではなく、「中長期的な成長を見据えた施策を行っているかどうか」という点が重要視されます。収集したデータをただ公開するのではなく、自社の企業理念やミッション・ビジョンと紐づけながら、ストーリー性を持たせた説明ができるように意識するとよいでしょう。

まずは自社にとって競争優位となるものは何かを考え、必要なデータを収集することから始めてみてはいかがでしょうか。

人的資本の情報開示に向けた取り組み方

人的資本の情報開示を行う手順について紹介します。

1. データの収集・分析

先述のように、人的資本の情報開示のためには、はじめに社内のデータの収集・分析を行い、現状を把握することが必要です。

データの収集や分析を行う際は、データを簡単に数値化・可視化し、社内で一元管理できるタレントマネジメントシステムのようなツールの活用もおすすめです。

過去のデータと比較し、施策を行った結果どの程度の成果が出たのかを分析・改善するといったPDCAサイクルを定着させることを目指すといいでしょう。

2. 戦略的なKPI・目標を設定する

次に、自社の経営戦略や人事戦略につながるKPI・目標設定を行います。

自社が目指す具体的な姿を目標に設定し、「どのような施策を行うことで、どのような結果につながるのか」といった、一貫したストーリー性を持たせることを意識してみましょう。

3. ステークホルダーからの意見を反映して改善を繰り返す

情報開示が先行している企業は、投資家を含むステークホルダーからの意見を施策に反映することを意識してみましょう。

自社の目標とそれに対する施策を情報開示し、ステークホルダーからのフィードバックを受け入れ、改善を繰り返すことが大切です。

人的資本の情報開示例

最後に、人的資本の情報開示を行っている国内企業の例を紹介します。

株式会社リンクアンドモチベーション

株式会社リンクアンドモチベーションは、日本で初めてISO30414の認証を取得した企業です。

ISO30414にのっとった情報開示のみをするのではなく、自社の組織戦略や経営の考え方をまとめた『Human Capital Report 2021』を刊行しています。

『Human Capital Report 2021』では、自社の戦略に加えて、「採用」「育成」「制度」「風土」の4領域についてのマネジメントについて公表しています。

参照:『Human Capital Report 2021』(株式会社リンクアンドモチベーション/2022年)

旭化成株式会社

旭化成株式会社では、雇用形態別従業員数や教育・研修など基本的な情報に加えて、サステナビリティへの取り組みを強調した情報開示を行っています。

サステナビリティへの取り組みとして「持続可能な社会への貢献」を追求することで、「持続的な企業価値向上」をもたらすといった方針を示しながら、それに対する施策を紹介しています。

参照:『ESGデータ』(旭化成株式会社)

人的資本の情報開示準備に、タレントマネジメントシステム

2022年8月に内閣官房が『人的資本可視化指針』を発表したことにより、日本でも人的資本の情報開示を進める企業が増えています。

2023年には有価証券報告書への人的資本情報記載の義務づけも予定されているように、国内でも情報開示の要請はますます高まると考えられます。義務化される前に、今のうちから準備を進めている企業も一定数いるのではないでしょうか。

情報開示の準備に必要な社内の人的資本のデータ収集・分析には、タレントマネジメントシステムの活用が便利です。

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人的資本の情報開示を進めるためにも、まずは社内の人的資本の情報整理から始めてみてはいかがでしょうか。

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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