- 2022.05.06
2023.04.10
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心理的安全性とは? 「ぬるま湯」組織との違いや効果、高め方を解説

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心理的安全性とは、職場で誰に何を言っても、人間関係が壊れることなく、罰を受ける心配もない状態のこと。Googleのアメリカ本社が研究結果を発表して以来、人事・HRやマネジメント領域でも注目を集めるようになりました。
当記事では心理的安全性の意味や効果、誤解されがちな「ぬるま湯組織」との違いを踏まえたうえで、高め方も解説いたします。
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目次(タップして開閉)
心理的安全性とは
心理的安全性とは、もともと心理学用語である「サイコロジカルセーフティ(psychological safety)」を和訳したもの。
ビジネスにおいては、職場で誰に何を言ったとしても、人間関係が壊れることなく、罰を受ける心配もない状況を指す言葉として用いられます。つまり、相手の視線や思惑などを気にせず、自分の意見が率直に言える状態です。
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心理的安全性の定義
心理的安全性を最初に提唱したのは、ハーバード大学で教壇に立つエイミー・C・エドモンドソン(Amy Claire Edmondson)教授です。エドモンドソン教授は自身の論文の中で「対人関係でリスクのある行動をとっても、チームが安全な場所であるという思いが、メンバーの中で共有された状態」と定義し、話題を呼びました。
心理的安全性が高い職場と「ぬるま湯」組織の違い
心理的安全性は「率直に何でも言い合える」「非難されない」状態。心理的安全性が高い職場は、ただの「ぬるま湯組織ではないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、心理的安全性の高い職場と「ぬるま湯」組織は大きく異なります。
「ぬるま湯」組織とは
「ぬるま湯」組織とは、ぬるま湯があらわす「刺激や緊張感のない」といった意味が転じて生まれたものと考えられます。それを居心地がいいと感じる方もいるかもしれません。しかし、ただ居心地がいいだけでは、心理的安全性が高いとはいえません。
心理的安全性の高い職場は、意見の対立がある
心理的安全性が高い組織では、職場のコミュニケーションが活発になり、メンバーの意欲が高まりやすいです。「ぬるま湯」組織では、ただ仲が良いだけで意識が低く、生産性が上がりにくい傾向にあります。
さらに、心理的安全性が高い職場では「率直に言い合える」からこそ意見が対立する場合もあります。いくら居心地がよくても、対立を避けて馴れ合いのようになってしまうと「ぬるま湯」組織になってしまうでしょう。
日本企業が「ぬるま湯」組織になりやすい理由
日本では、昔から空気を読む力が重視され、対立や衝突が避けられる傾向にあります。そのため、表面的には人間関係が良好であっても、意欲が低く生産性の向上が見込めない、「ぬるま湯」組織が生まれやすい傾向にありました。
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心理的安全性が注目される背景
心理的安全性が注目され始めたのは、Google社が実施したある調査プロジェクトがきっかけです。「プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)」と名を打ったこのプロジェクトは、高い業績を維持できるチームの条件を突き止める目的で2012年から始まりました。
プロジェクトアリストテレスが導き出したこと
効果的なチームの条件について検証が進められる中、メンバーの個々の特性とメンバー同士の関係性が、チームにどのような影響を与えるかが比較分析されました。営業やエンジニアなどの職種を含む180チームを対象に行われたこの調査では、意外な事実が判明します。
当初は、個々の能力が高い人材で構成されたチームが、生産性も高いと考えられていました。ところが、互いに協力し合ったうえで各々が最大限の力を発揮し、「チーム」として学びがあるかという点が重要であることがわかったのです。
効果的なチームの条件とは
調査結果をもとに、効果的なチームをつくる重要因子として導き出されたのは、以下の5つです。この5つの因子は、チームの効果性において重要な順番とされています。
1.心理的安全性 | 「ミスを理由に非難されることはない」と感じられること |
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2.相互信頼 | 「チームメンバーは引き受けた仕事は最後までやってくれる」と信じられること |
3.構造と明確さ | 「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と感じられること |
4.仕事の意味 | 「チームのために行っている仕事は、本人にとっても意義がある」と感じられること |
5.インパクト | 「チームの成果が、組織の目標達成にどのように貢献するのかを理解している」と感じられること |
調査結果をもとに心理的安全性は広く知れ渡り、チームや組織の成長に欠かせないものとして注目を集めるようになりました。
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心理的安全性の効果・メリット
心理的安全性が高い職場では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
チームやメンバーへのメリット
心理的安全性が保たれていると、個人が本来持っている能力を発揮しやすくなりチームとして好循環が生まれやすくなります。チームやそのメンバーにもたらすメリットを3点ご紹介します。
1.チーム内のコミュニケーションが活発になる
心理的安全性が高いと、たとえ上司と部下の関係でも意見を率直に表現しても非難される心配がないため、チームメンバー同士のコミュニケーション量が増え、相談や意見交換が活発となります。すると新しいアイデアも出しやすくなります。互いに協力し尊重し合う雰囲気も生まれ、ハラスメントなども起こりにくくなるでしょう。
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2.問題を早期に発見し、対処できる
心理的安全性が高い職場はミスの報告も早いです。ミスや失敗を報告したからといって、非難される不安が少ないからです。不測の事態にも迅速に対処できるため、ものごとが大きくなってからミスが発覚し、慌てて対処することも減るはずです。
3.個人のパフォーマンスが向上する
心理的安全性が高い職場では、互いに尊重し合う環境は安心して仕事に集中でき、個人が本来持っているポテンシャルも発揮しやすくなります。また、互いに切磋琢磨し、自発的にスキルアップに努めるようになるため、仕事に対するモチベーションも高まるでしょう。
組織へのメリット
心理的安全性は、個人やチーム内だけでなく、企業や組織全体にとっても重要視されています。組織全体にもたらすメリットも3点ご紹介します。
1.業務の生産性が向上する
心理的安全性が高まり、個人のパフォーマンスが最大化すると、当然ながら個々の業務効率が上がり、組織の生産性も向上します。
2.イノベーションが生まれやすくなる
心理的安全性が高く、メンバー一人ひとりの多様な意見が尊重される組織では、多彩な人材が集まります。多様な価値観の中で意見を交わし合うと、多くの発展的なアイデアの創出にもつながります。新しいことや困難なことにも挑戦しやすい環境になるため、イノベーションが促進されやすくなるのです。
3.離職率が低下し、定着率が高まる
心理的安全性が高い組織は、個人にとって居心地がよいと感じられるため、従業員エンゲージメントも向上する可能性があります。従業員エンゲージメントは離職率と深く関わっています。結果的に離職率を低下させ、優秀な人材の定着を後押しするでしょう。
心理的安全性が低いとどうなる?
心理的安全性が低いと、組織やチームにどのようなデメリットがあるのでしょうか。
心理的安全性が低い職場で生まれる4つの不安
心理的安全性の第一人者である提唱者であるエドモンドソン教授は、以下の4つの不安がメンバーの一人ひとりに生まれることを懸念しています。
1.無知への不安
心理的安全性が低いと、社員に無知だと思われる不安が生まれます。無知への不安とは、チームメンバーに知らないことを質問したとき、「こんな単純なことも知らないの?」と言われてしまわないか 思うことです。気軽に質問や相談ができない環境では、コミュニケーション量は減少していくでしょう。
2.無能への不安
無能と思われる不安も、心理的安全性が低い職場で社員が抱えがちな不安です。無能への不安とは、チームメンバーに「こんな簡単な業務もできないの?」と思われることです。そのような環境では、失敗を恐れ、新たな挑戦もしにくくなってしまいます。結果的にイノベーションが生まれにくい悪循環に陥ってしまうでしょう。無能への不安を抱えたままでは、本人がミスや失敗を隠したり報告を恐れてしまい、組織にとっても望ましくありません。
3.邪魔への不安
邪魔への不安とは「チームの邪魔になるかもしれない」と感じている状態です。「この場でこの話題を出すべきなのか」と、悪い意味で空気を読みすぎることが不安の要因になっています。
心理的安全性が低い職場は、本音で話す場が設けられず、助け合いやチームワークが生まれにくいというリスクもあるのです。
4.否定への不安
否定への不安とは、反対意見を述べることが「否定」だとネガティブに捉えられてしまうのではないかと思うことです。疑問や問題を感じても発言をためらってしまって、建設的な議論が生まれません。このような心理的安全性が低い職場では、チームとしての学びや成長に乏しくなってしまう可能性があるでしょう。

このように、従業員に多くの不安が生じてしまう心理的安全性が低い職場は、生産性にも支障が出てくるので大きなデメリットがあるといえます。
心理的安全性が高い職場 チェックリスト
ここまで心理的安全性について、企業やチームメンバーにとってのメリットとデメリットを挙げてきました。そこで自社の心理的安全性について気になる方も多いでしょう。測定方法として、エドモンソン教授は、以下の7つの質問を挙げています。
職場の心理的安全性を測る7つの質問 |
---|
Q1.チームの中でミスをすると、たいてい非難される |
Q2.チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える |
Q3.チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある |
Q4.チームに対してリスクのある行動をしても安全である |
Q5.チームのほかのメンバーに助けを求めることは難しい |
Q6.チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない |
Q7.チームメンバーと仕事をするとき、 自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる |
引用:「効果的なチームとは何か」を知る(Google re:Work ガイド)
チーム内においてポジティブな回答をするメンバーが多いほど、心理的安全性が高い組織だといえるでしょう。設問1、3、5はネガティブな内容、設問2、4、6、7はポジティブな内容です。
心理的安全性を高めるためのポイント
「ぬるま湯」組織とならずに、心理的安全性の高い職場にするためには何が必要でしょうか。心理的安全性に心理的安全性に影響する要因について解説します。
心理的安全性をつくる4つの因子
心理的安全性は、Google社のプロジェクトをきっかけに広く知れわたり、欧米の組織マネジメントや人事分野を中心に研究が進められてきました。日本でも調査研究をもとにした書籍が発行され始めています。
その中で、心理的安全性をつくる重要な因子として、以下の4点が挙げられています。
1.話しやすさ | 意見交換やミスを含めた報告がしやすい環境で、チームメンバーが心理的にリラックスできていること。 |
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2.助け合い | 課題に直面したりやトラブルの発生時にも、メンバー同士で互いにサポートしたり、協力し合える体制が整っていること。チームワークを築くうえで大きなポイント。 |
3.挑戦 | 挑戦的な意思決定や行動できる組織風土が整っていること。イノベーション創出の機会にも恵まれる。 |
4.新規歓迎 | お互いの違いや、個性、新しいことを認め合えること。個性や才能に応じて、適材適所の人材配置にもつながる。 |
参考:石井遼介著『心理的安全性のつくりかた』(2020)日本能率マネジメントセンターより作成
心理的安全性を高める人事施策
心理的安全性を高めることは、チームや個人および組織のパフォーマンス向上に役立つことを解説してきました。
心理的安全性を高め、生産性の高いチームづくりに役立つ、マネジメント手法にはどのようなものがあるでしょうか。実践しやすい施策をご紹介します。
OKR
OKRは有名な目標管理方法の一つです。最初に目標(Objectives)を定め、目標達成の指標となる成果指標(Key Result)を設定するという手法です。
成果指標を数値化して達成を目指すため、誰から見ても達成度がわかりやすくチーム内のコミュニケーションも活発化します。発言が活発になると協力体制が整うので、心理的安全性を高めることにもつながるでしょう。
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1on1ミーティング
1on1ミーティングは、チームメンバー同士で行われる定期的な1対1の面談です。業務のことからプライベートのことまで、ざっくばらんに会話をすることで、お互いに信頼関係を築き、メンバーの成長を支援する目的があります。
チームのメンバー間で信頼関係を構築するために、互いに関心を持ち、話を聞いたり聞いてもらったりする機会は重要です。1on1を通してまずは1対1で率直に意見を言い合える関係をつくっておくと、チーム全体の心理的安全性も保たれていくでしょう。
ピアボーナス
従業員同士で報酬を贈り合うのがピアボーナスです。職場の心理的安全性を高めるには、まず従業員が「認められた」と感じられることが大切です。感謝の気持ちをメンバー同士で示し合えるピアボーナスの導入も、心理的安全性を高めるには有効でしょう。
以上3つの施策以外にも、日頃から環境を整えておくといいでしょう。たとえば、以下のような点に意識して取り組むのがおすすめです。
・弱点も含めて本音を話せるような環境整備 ・チームメンバーの多様な価値観を認め合う ・新メンバーやミスをしたメンバーのサポート、フォロー体制の充実 |
心理的安全性を高め、組織のパフォーマンスを最大化
当記事は、心理的安全性の意味や効果、ぬるま湯組織との違いや高め方について解説してきました。心理的安全性が高まると、チームや個人のパフォーマンスが上がり、組織の生産性が向上します。自社で心理的安全性を高めようとする場合は、「ぬるま湯」組織とならないよう注意しましょう。
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記事監修

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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