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社会保険の加入義務|対象となる会社や役員、適用拡大についても解説

社会保険の加入義務|対象となる会社や役員、適用拡大についても解説

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社会保険は、経営層や人事担当者であれば、必ずおさえておきたい内容の一つです。法律で決められた仕組みであり、加入を怠ると罰則もあるので注意が必要です。

「社会保険に加入させる従業員」や「従業員を加入させる義務がある組織」は、条件によって決められています。また、法改正によって対象者や内容が変化するため、最新の情報を知ることが大切です。

そこで当記事では、企業担当者が押さえておきたい「社会保険の加入義務」について、ポイントを解説します。法改正についても触れるため、経営者やマネージャー層、人事担当者はぜひお役立てください。

※当記事記事の内容は作成日または更新日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

目次(タップして開閉)

    社会保険の加入義務、基礎を解説

    社会保険の加入義務とは、会社が従業員を「社会保険に加入させる義務」です。条件にあてはまる従業員は、必ず加入させる必要があります。

    加入義務は法律により規定されている

    社会保険への加入義務は、法律により定められています。そのため、故意・過失を問わず加入義務を怠ると、会社は罰則が科される可能性が高いです。

    社会保険の加入義務を果たすべき会社と、加入させる対象者については、後述します。

    そもそも社会保険の目的とは?

    社会保険の目的とは、人々の生活を安定させることです。

    突然のケガや病気、死亡、出産、失業などによって、仕事ができない状況に陥ることもあるでしょう。こうしたときに、社会保険に加入していると、一定の給付をもらえるため生活の安定につながります。

    会社が社会保険への加入義務を怠ると、ケガや病気、死亡、出産、失業になった際に、従業員は給付を受ける機会を失ってしまうでしょう。

    狭義と広義の社会保険

    社会保険には、狭義と広義があります。業務上「社会保険」という言葉が出た際に、狭義と広義のどちらを指すのかを考え、対応する必要があるでしょう。

    広義の社会保険は、ケガや病気、死亡など非常時に支払われる保険給付です。そして広義の社会保険は、企業が扱う「被用者保険」と自営業者などを対象とした「一般国民保険」に分かれます。

    社会保険の加入義務

    当記事で取り上げているのは「被用者保険」であり、以下の5種類です。

    厚生年金保険(年金保険)老後の生活を支える(国民年金に上乗せされる年金)
    健康保険(医療保険)ケガや病気の際に医療費の一部を負担
    介護保険介護が必要になった際に一部の費用を負担
    雇用保険労働者が失業した際などに、生活を支える
    労災保険(労働者災害補償保険)仕事中(通勤時も含む)のケガや病気の費用を負担

    狭義の社会保険は、上記被用者保険の中でも、厚生年金保険、健康保険、介護保険の3つを指します。

    社会保険の加入義務がある会社

    社会保険の加入義務がある会社は、強制適用と任意適用に分かれます。

    強制適用事業所

    強制適用事業所とは、従業員を社会保険に必ず加入させなくてはいけない事業所です。法人は、事業主や従業員の意思、企業規模や業種に関係なく、加入の必要があります。

    株式会社や合同会社は、強制適用事業所に該当します。従業員の人数は問われません。そのため自分が社長兼従業員であり、ほかに従業員がいない会社であっても、社会保険への加入手続きが必須です。

    ただし、個人事業所であっても、法律で定められた16業種においては、常時5人以上の従業員がいた場合に強制適用となります。16業種とは、飲食業や理美容業、農林水産業などが該当します。

    任意適用事業所

    任意適用事業所とは、強制適用事業所に該当せず、任意で加入判断ができる事業所です。

    多くは、法律で定められた16業種で、常時5名未満の従業員を雇用する事業所を指します。

    任意適用事業所が社会保険に加入する場合は、従業員の半数以上が適用事業所になることに同意してから個人事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。

    任意適用事業所では、健康保険と厚生年金保険、どちらか一方のみの加入も可能です。

    個人事業主の社会保険の加入義務について

    個人事業主と会社勤めのビジネスパーソンとでは、社会保険の加入義務の規定が異なります。

    個人事業主は会社法人を設立せず、個人で事業を行っている人です。フリーランスが税務署に開業届を提出すると、個人事業主になります。

    個人事業主は、被用者保険には基本的には加入できず、一般国民保険の対象者となります。したがって国民健康保険や国民年金保険の加入義務があります。例外として、被用者保険の中でも介護保険だけは、加入義務があります。いずれも費用は全額自己負担です。

    ただし、一定の条件を満たす人は、配偶者の会社で社会保険に加入したり、前職の健康保険を任意で継続できる場合もあります。

    雇用保険と労災保険は、被用者保険に該当するので、個人事業主は加入できません。

    社会保険の加入義務がある労働者とは

    ここまで社会保険への加入義務がある会社(適用事業所)について解説しました。これらの会社が「社会保険に加入させる義務がある人」は、どのような従業員なのでしょうか。

    社会保険の加入義務対象者は、次の6つに大別できます。

    正社員

    社会保険の強制適用事業所に所属し、常時雇用されている正社員には、社会保険への加入義務が発生します。たとえ試用期間中の社員であっても、加入対象者に該当します。国籍や年金の受給の有無も影響しません。

    社員の配偶者

    社員の配偶者が一定の条件を満たせば、社会保険への加入義務対象者になります。一定の条件とは、年収130万未満(扶養の範囲内)で働いている人や、無職の人などです。

    役員

    役員とは、会社法で定められた取締役、会計参与、監査役のことです。管理職や一般社員は会社と雇用契約にあるものの、役員は雇用契約を結んでいません。

    そのため、役員には給与ではなく「役員報酬」を支払います。役員報酬が支払われている役員にも、社会保険への加入義務が生じます。ただし役員報酬が0円の場合、社会保険料が算出できないので、社会保険への加入義務はありません。

    事業所の代表者

    事業所の代表者は、会社役員に含まれますので、社会保険への加入義務が発生します。自分だけが従業員である場合も、加入の対象です。

    ただし、先述した任意適用事業所に当てはまる場合は、必ずしも加入義務はありません。具体的には、事業所が法人化していない個人事業主で、従業員5名未満の飲食業・農林水産業など法定16種に該当する事業の代表者です。

    外国人従業員

    外国人従業員も、日本人の従業員と同様の条件で、社会保険への加入義務が発生します。加入条件は、日本人と変わりありません。あとにご紹介するパート・アルバイトであっても、同様です。個人事業主でも強制適用事業所に勤めていれば、加入させなければいけません。

    パート・アルバイト

    パートやアルバイトは、総労働時間や支払われている給与額によって、社会保険の加入義務が異なります。2022年に対象が広がったので、以下で詳しく見ていきましょう。

    パート・アルバイトの社会保険加入義務拡大について

    パートやアルバイトも条件を満たすと社会保険の加入義務が生じます。従来パート・アルバイトなど短時間労働者の社会保険の加入条件は、週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であることでした。

    しかし昨今、法改正による適用拡大が始まっています。新たに加わった加入条件や適用開始時期を交えながら、パート・アルバイトの加入義務について整理します。

    パート・アルバイトの社会保険の加入条件

    2016年から新たに広がったパート・アルバイトの加入条件は以下の通りです。

    1. ・週の所定労働時間が20時間を超える
    2. ・月額賃金が8万8千円以上(年収106万円以上)
    3. ・見込み雇用期間が2か月以上(適用拡大が始まる以前は1年以上でした。)
    4. ・学生ではない(定時制や夜間学校では、加入できることもあります)

    パート・アルバイトの加入条件の適用拡大は、従業員規模に応じて段階的に変更が始まっています。詳しくは以下でご紹介します。

    2016年・2022年・2024年に適用範囲が拡大

    2016年10月に従業員数500名以上、2022年10月に100名以上の企業でパート・アルバイトの適用範囲拡大が始まっています。さらに今後、2024年10月には50名以上の企業でも上記加入条件が適用開始予定です。

    参照:『社会保険適用拡大特設サイト』厚生労働省

    社会保険の加入義務がない人

    ここまで社会保険の加入義務の対象となる社員を整理してきました。それでは逆に、社会保険への加入義務がない人は、どのような人なのでしょうか。

    以下の条件に当てはまる労働者は、本人から希望があっても、社会保険には加入できないことになっています。

    1. ・日々雇われている人(例:日雇い労働者)
    2. ・所在地が一定しない事業所で働く人(例:演劇で全国をまわる)
    3. ・雇用期間が2か月以内と決められている人
    4. ・4か月以内の季節的業務で働く人(例:年賀状の仕分け)
    5. ・6か月以内の臨時的事業で働く人(例:博覧会での勤務)

    社会保険の加入義務が喪失するケース

    社会保険の加入義務は、一定の条件を満たした場合、喪失することがあります。

    1. ・被保険者にあたる従業員が退職や死亡した
    2. ・契約変更などで、基準を満たせなくなった
    3. ・資格を喪失する年齢に達した

    また、被保険者の配偶者も社会保険に加入していた場合には、被保険者の加入義務の喪失と同時に配偶者の加入資格も喪失します。

    社会保険の加入義務に違反したらどうなる?

    社会保険への加入義務に違反すると、最大で過去2年分の未納保険料が徴収される恐れがあります。

    また、故意に違反するなど「悪質」と判断されると、追徴金に加えて罰則規定があります。具体的には「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」を科されるとされています。

    ほかにも雇用保険に未加入だった場合、助成金が受給できず、ハローワークに求人も出せないという弊害があるので注意しましょう。

    たとえば従業員が「加入義務違反が原因で、本来もらえる年金額より少ない」という事実に気づくと、会社として損害賠償請求を受ける可能性もあるのです。

    社会保険の加入手続きについて

    企業が社会保険の加入手続きを行う際は、日本年金機構や加入する健康保険組合のホームページから必要書類を入手して提出しなければいけません。ただし、会社が社会保険労務士と顧問契約を結んでいる場合には、一連の手続きを委託できます。

    提出には、労働者名簿や登記簿謄本の原本などの添付書類が必要な場合もあるため、困った際は各団体に確認してください。

    提出方法は、電子申請、窓口持参、郵送のいずれかです。また、提出期限は加入義務が発生したときから5日以内です。

    社会保険の加入義務に関する注意点

    社会保険の加入義務に関して以下の2点には注意しましょう。

    労働時間や従業員数の変化への対応

    1つめの注意点は、労働時間や従業員数によって社会保険の加入義務に変化が生じることです。

    たとえばパートの従業員が、今までは「週の労働時間が20時間以内」だったとしましょう。しかし「週の労働時間が20時間を超える」と、加入義務が生じる可能性もあります。

    また任意適用事業所の従業員が4名だったものの、5名に増えた場合には、社会保険への加入義務がある会社に変化します。

    そのため、従業員の労働時間や事業所の従業員数の変化があった際に、忘れずに対応しましょう。

    法改正への対応

    2つめの注意点は、社会保険の加入義務には随時法改正の可能性があることです。直近でも2022年10月にパート・アルバイトの適用範囲拡大がありました。今後も2024年にも予定されています。

    今後も、新たな法改正がいつあるかわかりません。法改正と適用開始のタイミングはズレていることが多く、適用開始のタイミングで対応できるよう、日頃から従業員情報の把握に努めておくといいでしょう。

    法改正を知らなかったからといって、罰則が免除されることはないでしょう。担当者は常にアンテナを張る必要があるといえます。

    まとめ

    企業には雇用する従業員を社会保険に加入させる義務があります。罰則を回避することはもちろん、従業員にとって安心して働ける環境を提供することは、企業の課題といえます。

    法律や社内の人員体制は常に変化します。時代の変化に対応できるよう、社内の人事情報は常に最新のものを管理できるよう、社内体制を整えましょう。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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