• 2022.08.31  最終更新日2023.04.21
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D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の取り組み事例| 意味や推進方法、課題をまとめ

人事戦略としてのdiダイバーシティインクルージョンとは-本質的な意味と推進方法や取り組み事例課題をまとめ

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近年、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」という言葉を耳にすることが増えています。しかし日本ではまだまだ本質的な理解が進んでおらず、「企業として・人事としてどのような取り組みが必要かわからない」といった声も少なくありません。

そこで当記事では、人事担当者や経営者向けに「ダイバーシティ&インクルージョン」を人事戦略として進めるうえで必要な基礎知識、意味や推進方法、課題などを解説します。

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目次(タップして開閉)

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とは

D&Iと略されることも多いダイバーシティ&インクルージョンとは一体どのような意味を持っているのでしょうか。そもそも「ダイバーシティ」や「インクルージョン」それぞれにはどういった意味合いがあるのかも正確に把握できていないという人もいるかもしれません。ここでは、人事におけるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に焦点をあて、基礎知識を解説します。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の意味

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、「多様性」を意味する「ダイバーシティ」と「受容」を意味する「インクルージョン」を掛け合わせた言葉です。多様性を受け入れ尊重し、個々のスキルが発揮できる環境を整えたり、働きかけたりする考え方のことを指します。

人事におけるダイバーシティとは

人事におけるダイバーシティとは、主に性別や人種、年齢、学歴、職歴のほか、シニア、障がい者、LGBTQなどといった個々の違いを受け入れ、人材の多様性を理解することを指します。

ダイバーシティの2つの側面

日本における代表的なダイバーシティでは、女性の活躍推進があります。しかし先に述べたようにダイバーシティにはもっと多くの観点があります。それらは2つの側面を持っています。

1.表層的な個人の違い

たとえば、性別や人種、年齢、外見、国籍、障がいの有無などは表層的な側面を持っています。見た目ではなく、個人のスキルなどを重視する考え方で、企業では先に述べた「女性の活躍推進」「外国人労働者の雇用」「障がい者の雇用」などの取り組みがあります。

2.深層的な個人の違い

たとえば、宗教や価値観、育った環境、キャリア、収入、働き方などは目に見えない深層的な側面といえるでしょう。近年では「時短勤務・在宅勤務」や「育児や介護などと仕事を両立させやすい制度」などに取り組む企業が増えています。

人事におけるインクルージョンとは

前述の通りインクルージョンとは「受容」を意味します。人事領域においては、従業員の性別やライフスタイル、障害の有無などさまざまな違いを受容・尊重し、それぞれの違いを強みとして活用する場を提供することで個人と組織のパフォーマンスを最大化することを指します。

近年注目を集めているタレントマネジメントとも非常に近い考え方です。

ダイバーシティとインクルージョン 意味の違いをわかりやすく

近年、ダイバーシティとインクルージョンは合わせて使われることが多い言葉です。企業が多様な個性、背景などを持った人材を積極的に雇用することで、組織にさまざまな従業員が在籍している状態が「ダイバーシティ」です。そのような従業員がお互いに個々の違いを認め合い、受け入れ、一丸となって働くことが「インクルージョン」です。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)はなぜ重要?

昨今では、多くの企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性を感じています。その理由には主に次の3つが挙げられます。

労働力人口の減少による人材不足

近年の日本では少子高齢化が進み、労働力人口の減少による人材不足が顕著となっています。このような課題に直面した今、これまでのような男性中心型雇用慣行や終身雇用・定年制といった雇用方針では企業を存続させることは難しいとされています。

その結果、企業はダイバーシティ&インクルージョンにより門戸を広げ、多様な人材を積極的に受け入れることが重要となっています。

企業のグローバル化

日本の多くの企業ではさまざまな形でグローバル化を進めています。また、加速度的に進む情報通信技術に対応するためにも、グローバル化には迅速さも求められています。このような時代背景からも、企業がスピーディーな進化を続けるには、ダイバーシティ&インクルージョンによって、国籍や経歴などにかかわらず、多様な人材・多様な価値観を受け入れることが重要であるといえるのです。

価値観の多様化

これまでの日本では、多くの企業が新卒から定年まで1つの企業に勤続することが一般的でした。また、プライベートよりも仕事を優先することが当たり前だという考え方の人も少なくありませんでした。しかし、近年では転職市場は活性化し、かつプライベートも大切にしたいと考える人たちも増えています。多様化する価値観に対応するためには、企業もこれまでの文化を見直し、多様な人材・多様な働き方を受け入れることが重要となってきました。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の目的

ダイバーシティ&インクルージョンに積極的に取り組んでいる企業では、イノベーションや変化に期待している側面があります。

目まぐるしく変化する社会に企業が適応していくには、これまでの考え方を打ち破り、新たな発想で事業展開していく必要があります。イノベーションや変化を起こすには、ダイバーシティ&インクルージョンによって新しい価値観や発想を持った人材を積極的に雇用し、既存知と別の既存知を組み合わせていくことが大切です。

組織全体を多様化し、さまざまなイノベーションを起こしながら、あらゆる環境の変化に柔軟に対応できる企業へと進化していくことは、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の大きな目的の一つといえるでしょう。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の注目理由

日本で「ダイバーシティ」という概念が浸透し始めたのは、2000年以降と比較的最近です。今では多くの企業がダイバーシティ推進を進めており、女性の雇用を増やしたり、外国人労働者や障がい者を雇用したりと、さまざまな取り組みを行っています。

しかしそうした人材が自身の能力を最大限に発揮できていない状況であるならば、それは単なる「表面的なダイバーシティ」となってしまいます。

そこで取り入れられたのが「インクルージョン」という概念です。多様な人材を雇用するだけでなく、さらにそれぞれの能力を活かし、働きやすい環境を整えることまでを含めることで、ようやく企業としてのダイバーシティがうまくいっている状態といえます。

「ダイバーシティ&インクルージョン」が注目されている理由にはそのような背景があるのです。

日本では導入が遅れている?

ダイバーシティ&インクルージョンは、アメリカなどと比べて日本での導入は遅れているといわれています。
その理由の一つに、「メンバーシップ型雇用」を主流とする風潮が挙げられます。現在でも日本の多くの企業では、新卒を一括採用し自社の価値観に合わせて人材を育成し人事配置を行っています。そのため、働き方の多様性についてもを受け入れるダイバーシティ&インクルージョンの導入がなかなか進まない傾向にあります。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の具体的に何するの?

ダイバーシティ&インクルージョンを自社に取り入れたいと考えた場合、どのようなことを実行すればよいのでしょうか。具体例をいくつか紹介します。

女性の活躍推進

近年多くの企業で女性の活躍を推進する取り組みを行っています。これには、「女性活躍推進法」も大きく関わっているといえます。

2022年に改正されて以降、ますます多くの企業で、女性がより活躍できるような制度を定めたり、職場環境を整えたりといった動きが見られています。

具体的には、女性管理職を増やす、結婚や出産後にも仕事を続けられるように、休暇・時短勤務・在宅勤務などの制度を整えるなどが挙げられます。

シニア層の活用

これまで日本の企業では、60歳を定年とすることが一般的でした。しかし高齢化が進む現代において、60歳はまだまだ労働力となる年齢です。

2021年から施行された「改正高年齢者雇用安定法」の後押しもあり、60歳を過ぎた人も企業の戦力として雇用される機会が多くなっています。具体的な取り組みには70歳までの定年延長や、定年後の企業支援、定年後の再就職サポートなどが挙げられます。

外国人労働者の積極雇用

グローバル化を進める企業において、外国人労働者の雇用は有効です。外国人を雇用するにあたって、企業は受け入れるためのさまざまな取り組みを実施する必要があります。

たとえば、日本語が堪能な外国人管理職を配置したり、外国人従業員がスキルアップ・キャリアアップを意識しやすいように人事評価基準を明確化したり、安心して日本の企業で働ける環境を整えることが必要でしょう。

障がい者の雇用促進

障がい者の雇用を促進することも、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの一つに挙げられます。

具体的な取り組みには、障がい者が個々の能力を発揮できる職種を用意したり、スキルアップできる研修制度を設けたり、就労支援機会などを提供したりといった内容が挙げられます。

LGBTQへの理解

性的マイノリティを指すLGBTQの人を受け入れる場合、企業側では環境を整えておかなければなりません。

具体的には、LGBTQへの差別を禁止する項目を社内規定に盛り込んだり、一部のトイレをジェンダーフリー化したりといった取り組みが挙げられます。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)のメリット

企業がダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで、主に次のようなメリットが生まれます。

優秀な人材を確保できる

優秀な人材であるのにもかかわらず、これまでは自社の規定によって採用候補から外れてしまっていた人もダイバーシティ&インクルージョンでは雇用することが可能になります。その結果、その人が持つスキルや能力を自社の戦力として確保することができます。

イノベーションの創出が期待できる

ダイバーシティ&インクルージョンでは、女性ならではの視点や外国人による独創的なアイデア、シニア層の知見など、さまざまな発想を取り入れることができます。

そのような環境は、革新的なイノベーションが生まれやすく、企業の進歩に大きく貢献することが期待できます。

従業員エンゲージメントが向上する

多様な人材が、個々のスキルを発揮しながらのびのびと仕事が行える環境は、既存社員にとってもよい刺激となります。

お互いが切磋琢磨できる環境を整備できれば、従業員全体のエンゲージメントが向上します。従業員それぞれが働きがいを感じながら業務に取り組むことで、企業全体の生産性も向上していくでしょう。

離職率の低下が見込める

従業員エンゲージメントが高い企業は、離職率が低い傾向にあります。先に述べたように、従業員がそれぞれのスキルや個性を発揮できる環境にあれば、「この企業で長く働きたい」という意識が芽生え、離職する従業員は減っていくでしょう。

企業のイメージアップ

ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が浸透してきた現在、実際に取り組んでいる企業は世間から高い評価を得られるでしょう。多様性を受け入れて事業を推進する取り組みが公表できれば、企業全体のイメージアップやブランディングにつなげることもできます。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進方法

自社でダイバーシティ&インクルージョンを推進していく場合、どのような方法で進めていけばよいのでしょうか。

自社のダイバーシティを把握する

まずは自社の状況を確認するところから始めましょう。従業員の性別や年代をはじめ、管理職の男女比や新卒・中途採用の比率、介護や育児を両立している従業員数、離職率などさまざまな角度から状況を把握し数値化します。

自社のダイバーシティを確認することで、問題・課題点を洗い出せるため、どのような取り組みを推進していくかが見えてきます。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進を共有する

企業がダイバーシティ&インクルージョンを推進していくことを決定した場合、これまでの企業文化や働き方が変化していくことが考えられます。

ある日突然取り組みがスタートしてしまうと、既存社員は戸惑ってしまうでしょう。全社一丸となってダイバーシティ&インクルージョンを推進していくためには、事前にそのことを従業員に共有し、理解を得ることが大切です。なぜ取り組みが必要なのか、どのようなメリットがあるのか、どのような企業を目指すのかといったビジョンを説明しましょう。

従業員へのヒアリングを実施する

経営層の独断でダイバーシティ&インクルージョンを進めるのではなく、実際に働く従業員からの声にも耳を傾けることが重要です。

ビジョンを理解できているかなどを把握するとともに、従業員それぞれの不安や悩みなどもヒアリングします。たとえば、介護休暇を取得したいのに現状の社内規定では、なかなか休暇をとりづらいといった声が挙がるかもしれません。そのような意見をヒアリングすることで、企業は具体的な施策・制度を検討しやすくなります。

また従業員側も、自分たちの声が届いたと感じられれば従業員エンゲージメントの向上も期待できます。

具体的に施策を計画し実行する

従業員の声を集約し、自社に合った施策を計画しましょう。たとえば、先に述べたように介護休暇がとりづらいといった声が多数あるようなら、介護休暇をとりやすくするために、経営層・マネジメント層から積極的に休暇取得を促進するようにメッセージを出すのも一案です。

また、ダイバーシティ&インクルージョンを社内に浸透させていくために、定期的な啓発研修や部門を超えた交流会などを実施してもよいでしょう。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の企業事例

実際にダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいる企業ではどのような施策・制度を実行しているのでしょうか。ここでは企業事例を2つ紹介します。

朝型勤務制度(大手総合商社)

ある大手総合商社では、これまで全社一律のフレックスタイム制を導入していました。

しかしその結果、多くの従業員が朝9時以降に出社し、夜遅くまで働くようになってしまいました。そのような状況を受け、企業は顧客対応の徹底や多残業体質の改善、業務効率化を通じた生産性の向上を目的に、2013年に「朝型勤務制度」を導入しました。

この制度では、20時以降の勤務を「原則禁止」としています。もし業務が残ってしまった場合、翌朝8時までの早朝勤務を実施することで、夜遅くまで業務を続けるという状況を解消しています。

早朝勤務の場合、会社独自で深夜勤務と同じ割増賃金を支払っています。

育児休職者懇親会(大手サービス事業)

ホテルを運営するある企業では、育児休業中の従業員が職場復帰をする際に抱える不安や、休職中の孤独感を軽減する「育児休職者懇親会」を実施しています。

育児休職者を対象とした懇親会では、悩みを解消するような講演や、先輩ママ従業員や男性育児休職者のインタビュー、グループワークなどを行い、育児期のキャリア構築などを知る機会を提供しています。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の課題とその対処法

ダイバーシティ&インクルージョンを推進していくにあたって、解消しなければならない課題と対処法も知っておく必要があります。

制度の整備

多様な人材を受け入れる場合、評価制度や働き方などを整備しなければなりません。年功序列による評価制度を廃止し能力評価に切り替えたり、時短勤務やリモート勤務などの制度を導入したり、多様な働き方ができるように整備する必要があります。

職場環境の改善

物理的な面にも課題があります。たとえば、車椅子を利用する障がい者を雇用しても、社内に段差が多ければ該当従業員は非常に働きにくいでしょう。また外国人労働者を受け入れる場合は宗教に配慮したスペースを確保することも必要です。

子育て中の従業員が多い企業であれば、社内に託児所などを設けるなども検討したほうがよいでしょう。

コミュニケーション手段の工夫

ダイバーシティ&インクルージョンでは、さまざまな年齢層、国籍、価値観の人々が同じ職場で仕事をするため、円滑なコミュニケーション手段を確立させる必要があります。

外国人労働者を雇用する場合であれば、日本語ができる外国人管理者を部署に配置するのも一案です。障がい者を雇用する場合は、障がいの程度などに応じた業務や教え方の工夫も大切です。

ハラスメントの防止

多様な人材を受け入れる場合、ハラスメントの防止についても事前に周知しておく必要があります。

誤認識や無意識によるハラスメントが起こらないよう、全従業員に人材の多様性について理解してもらうことが大切です。今一度ダイバーシティについて正しく説明しておきましょう。

まとめ

企業をさらに発展させていくには、表面的なダイバーシティにとどまらないようにしなければなりません。多様な人材の受け入れによって、企業にイノベーションを起こすためにも、全従業員の理解と活躍の場の提供に注力していくことが大切です。

多様化した従業員がモチベーション高く仕事を行える評価・報酬制度、円滑なコミュニケーション手段、物理的な職場環境の改善、社内規定の改変などを検討しましょう。準備や社内での浸透には時間を要するかもしれませんが、ダイバーシティ&インクルージョンが上手に進めば、企業はさらなる進化を遂げ、大きな成長が期待できます。

人事戦略としてのD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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