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コアコンピタンスとは【意味を簡単に】ケイパビリティとの違いや企業例、経営のポイントを解説

コアコンピタンスとは【意味を簡単に】ケイパビリティとの違いや企業例、経営のポイントを解説

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コアコンピタンスは、企業の中核となる力のこと。日々変化し続ける社会において、事業を維持・成功させるカギとなるため注目されています。しかし、実際のところ、意味をよく理解していない方もいるのではないでしょうか。

当記事では、コアコンピタンスの基礎知識を解説しています。対比されるケイパビリティとの違いや、すでにコアコンピタンスを確立している企業の例、自社で取り入れる場合の手順や注意点などもご紹介しています。自社のコアコンピタンスを確立するヒントにしてみてください。

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目次(タップして開閉)

    コアコンピタンスとは|意味を解説

    コアコンピタンス(Core competence)とは「コア(core)=核となる」と「コンピタンス(competence)=能力、力量、適性、権限」から成り立つ英語です。ビジネスや組織において、本質的かつ重要な能力・技術、知識、リソースなど「企業の中核となる能力」を指す言葉として用いられます。

    定義

    コアコンピタンスは、1990年にアメリカの戦略思想家C.K.プラハラード氏と、ロンドン・ビジネススクール客員教授ゲイリー・ハメル氏が寄稿した論文で提唱された概念です。2人の共著である『コア・コンピタンス経営』は、日本でも1995年に日本経済新聞社より出版されています。

    著書の中でコアコンピタンスは、組織が競争優位を維持し、新たなビジネスチャンスを見出すために不可欠な「他社にまねできない核となる能力」と定義されています。組織のブランド、プロダクト、サービスを特徴づけるものともいえます。

    国内におけるコアコンピタンスの例は、

    ・トヨタの製造技術・生産システム
    ・ソニーの小型化技術
    ・シャープの液晶技術
    ・ホンダのエンジン技術

    などが挙げられます。いずれも日本を代表する高い技術やノウハウであり、世界を見渡してもどの企業もまねが難しい能力といえるでしょう。

    例に挙げた各企業は、自社が持つコアコンピタンスを活かし、グローバル競争に勝ち抜くために尽力しているといえます。

    重視されている背景

    コアコンピタンスが重視されている背景には、企業間競争の激化や顧客ニーズの多様化が挙げられます。

    グローバル市場が拡大する現代では、これまでのように過去のデータや現在の業績に注目するだけの経営戦略では、企業は競争に勝ち抜けない可能性があります。技術革新がますます進む中、製品開発や生産プロセスを改善していかないと、競争力を維持・向上できないでしょう。

    また、顧客ニーズも多様化しているため、企業はみずからの価値を明確にし、それに基づいたプロダクトやサービスを提供しなければならないでしょう。

    このような背景から、コアコンピタンスがビジネスにおいて重視されるようになりました。

    コアコンピタンスの3要件

    コアコンピタンスとして認められるには、次の3つの要件を満たしている必要があるとされています。

    顧客にとって重要な価値を提供できる自社能力

    顧客にとって重要な価値を提供できなければ、コアコンピタンスとして成立しません。顧客ニーズに合致していなければ、自社の利益を生み出すのが難しいからです。

    他社に容易に模倣されない自社能力

    コアコンピタンスは、他社にはない独自の強みを持ち、競合他社が簡単にはまねできない独自性が求められます。他社が追随できないような優れた能力でないと、いずれ競争に負けてしまう恐れもあるからです。

    複数の製品・市場にアプローチできる自社能力

    コアコンピタンスは、複数の商品や市場で通用することも要件です。ビジネス環境の変化に対応するには、応用力が求められるからです。

    3要件を満たすコアコンピタンスは、企業の競争優位性を支え、持続的な成長につながるとされています。

    コアコンピタンスとケイパビリティの違い

    コアコンピタンスと似ている言葉に「ケイパビリティ」があります。一般的にケイパビリティ(capability)は能力や才能と略され、経営戦略においては組織的能力や強みをあらわします。

    コアコンピタンスもケイパビリティも企業の競争優位性をあらわす「強み」に関する概念ですが、厳密には異なる部分があります。コアコンピタンスは技術力などの特定の能力に、ケイパビリティは組織全体が持つ強みに焦点が当てられています。

    コアコンピタンスは、企業が持つ技術やノウハウ、知識、経験などを指します。特定の分野で他社と差別化をはかる要素であり、競争優位性を高めるうえで重要な役割を果たします。

    一方ケイパビリティは、組織全体が持つ一定の能力や資源、組織内の構造やプロセスなどを指します。ケイパビリティを上手に活用すると、戦略的な目標を達成できるとされています。

    コアコンピタンスを見極める5つの視点

    C.K.プラハラード氏とゲイリー・ハメル氏の共著『コア・コンピタンス経営』では、真のコアコンピタンスを見極めるために、次の5つの視点が必要とされています。

    模倣可能性(Imitability)

    競合他社が簡単に自社のコアコンピタンスを模倣できるかどうかを評価する視点です。

    たとえば、特許や著作権によって保護されている技術やブランドの価値は模倣の可能性が低く、コアコンピタンスといえるでしょう。

    移動可能性(Transferability)

    異なる事業領域や業界で、コアコンピタンスを活用できるかどうかを評価する視点です。

    たとえば、ソニー株式会社が持つ音響技術や映像技術は、さまざまな製品に応用できるため、コアコンピタンスされています。

    代替可能性(Substitutability)

    ほかのコアコンピタンスや技術で代替できるかを評価する視点です。

    たとえば、カメラメーカーが持つ高画質技術は、スマートフォンのカメラに代替される可能性があるため、コアコンピタンスとして評価されない場合があります。反対に、ほかには代えられないオリジナルの技術を保有していると、その企業は特定の分野において独占的なシェアを占める可能性があります。

    希少性(Scarcity)

    コアコンピタンスがめずらしいかを評価する視点です。一般的に代替可能性や模倣可能性を満たしていると、希少性があると判断されます。

    たとえば、トヨタ自動車が持つ生産方式や品質管理システムは、希少性が高くコアコンピタンスとして評価されています。

    耐久性(Durability)

    コアコンピタンスが長期的に持続可能かどうかを評価する視点です。

    たとえば、飲料メーカーが持つブランド価値や、アパレルメーカーが持つファッションセンスは、流行によって変化するため耐久性が低いといえます。その場合、コアコンピタンスとしては評価されにくいかもしれません。

    強固なブランド力があることでブランド自体の耐久性は維持できたとしても、商品・サービスの価値に関する耐久性は、維持しにくいといわれています。

    コアコンピタンスの決め方|見極めるステップを紹介

    自社のコアコンピタンスを見極めるには、3つのステップを踏む必要があります。ここでは、自社のコアコンピタンスを決める際の手順をご紹介します。

    自社の強みを洗い出す

    まずは、自社が持つ強みを洗い出すことから始めます。保有する資源や能力など、自社の強みといえそうな要素を多角度から集めましょう。

    たとえば、以下の要素について自社の強みを洗い出してみてください。

    ・技術
    ・能力
    ・特性
    ・製品
    ・サービス
    ・人材
    ・企業文化
    ・ノウハウ

    強みといえるかわからない事柄も、第三者から見れば競合優位性を持っているかもしれません。このステップでは、思いつく限り多くの強みを挙げてみましょう。

    強みを評価する

    ステップ1で洗い出した自社の強みを、コアコンピタンスを見極める5つの視点で評価します。

    コアコンピタンスを見極める5つの視点
    ・模倣可能性(Imitability)
    ・移動可能性(Transferability)
    ・代替可能性(Substitutability)
    ・希少性(Scarcity)
    ・耐久性(Durability)

    上記に加えてコアコンピタンスの3要件も満たしているか確認します。

    コアコンピタンスを成立させる3要件
    ・顧客に価値を提供できるか
    ・競合他社にまねされにくいか
    ・複数の商品・市場で応用できるか

    この第2ステップでは、評価を1回で終わらせてはいけません。市場の状況に合わせて再考したり、競合他社と自社の能力差をスコアであらわして比較したり、相対的に評価するといいでしょう。

    絞り込みを実施する

    第2ステップまでで整理した自社の強みから、自社のコアコンピタンスを絞り込みましょう。

    今後の経営方針・ビジネス戦略にも影響するため、この第3ステップは重要です。経営層で話し合いましょう。

    基本的に、一度決定したコアコンピタンスは変更しないものとされています。

    ・決めたコアコンピタンスで市場に参入できるか
    ・他社に模倣されるリスクはないか
    ・将来にわたって進化させていきたいか

    以上を考慮しながら絞り込みましょう。

    コアコンピタンスを取り入れた企業事例

    多くの日本企業がコアコンピタンスを発見し、経営に取り入れています。ここでは、コアコンピタンスの企業事例をいくつか紹介します。

    トヨタ自動車株式会社
    トヨタ自動車は、自動車の製造技術に加えて「トヨタ生産方式」と呼ばれる独自の生産システムであるコアコンピタンスを持っており、世界的な自動車メーカーとして高い地位を確立しています。これにより、生産ライン全体を最適化し、品質・生産性の向上、コスト削減を実現しているようです。

    ソニー株式会社
    ソニーはエレクトロニクス分野において独自のコアコンピタンスを取り入れています。テープレコーダーの小型化の追求により、ウォークマンを開発したことは当時としては画期的でした。小型化技術は、同社のコアコンピタンスといえるでしょう。現在ではカメラやテレビなど、ほかの電子機器にも同技術を展開しています。

    本田技研工業株式会社
    本田技研工業は、エンジン技術において独自のコアコンピタンスを持っているといえるでしょう。小型で高性能なエンジンのほか、低公害技術を搭載した新型エンジンも開発しています。現在では芝刈り機や除雪機など、ほかの製品にも同様のエンジン技術が使われており、世界中で高い評価を得ています。

    シャープ株式会社
    シャープは液晶技術を独自のコアコンピタンスとして取り入れています。液晶電卓をはじめとして、現在ではテレビやデジタルカメラ、スマートフォンなど多様な製品に応用しているようです。

    パナソニック ホールディングス株式会社
    パナソニックは、電子技術分野において独自のコアコンピタンスを取り入れています。特に、省エネルギーなど環境へ配慮した技術開発に注力し、家電製品や産業機器、蓄電池などで高い評価を得ています。

    伊藤忠商事株式会社
    伊藤忠商事は、国際的な貿易や投資に関するノウハウをコアコンピタンスとしています。同社ではノウハウを活かし、グローバルなビジネス展開において優位性を発揮しているといえるでしょう。

    ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)
    ユニクロは独自の製品開発システムで生産体制を確立し、顧客ニーズに合わせた製品を素早く開発しており、世界中から高い評価を得ています。

    任天堂株式会社
    任天堂は、ゲームソフトウェアおよびハードウェアの開発・販売において、独自の技術・アイデアをコアコンピタンスとして、創造的なゲーム体験を提供しています。独自のキャラクターや使いやすさなどにも注力し、世界中のユーザーから支持されているといえるでしょう。

    コアコンピタンス経営の実現ポイント

    コアコンピタンスを自社の経営戦略に取り入れるには、ポイントや注意点を押さえましょう。最後に6つのポイントをご紹介します。

    ビジョンを明確にする

    コアコンピタンスを確立するうえで、企業として何を目指していくか、ビジョンを明確にすることが大切です。組織全体が同じ方向を向いて進化していくためにも、まずは自社のビジョンを明らかにし、実現のためにコアコンピタンスを取り入れましょう。

    組織文化を確立する

    コアコンピタンス経営を円滑に進めるには、組織全体で取り組むことが大切です。組織文化を確立し、全従業員からコアコンピタンスへの共感を得て、主体的に取り組める環境を整える必要があるでしょう。ただし、組織の考え方を従業員に浸透させるには時間がかかります。コアコンピタンスの確立には、長期的な取り組みが求められることを理解しておきましょう。

    技術・人材への投資を惜しまない

    自社でコアコンピタンスを維持するためには、常に最新技術や知識を取り入れ続けることが大切です。市場や技術の変化に柔軟かつ迅速に対応できるように、技術研究や人材開発への投資は惜しまず行うといいかもしれません。

    パートナーシップを構築する

    自社のコアコンピタンスをより強化するためには、他社や外部の専門家とのパートナーシップを構築し、効率的に補完することも大切です。自社が得意でない分野については、他社の専門知識や技術を活用すると、コアコンピタンスをさらに強力に進化させられるでしょう。

    働きやすい環境を整える

    従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整えることも、コアコンピタンス経営には重要な要素です。従業員のパフォーマンスをより高めるために、育成制度を充実させたり、DXの強化で業務効率化をはかったり、コアコンピタンスを確立できる組織づくりが求められるでしょう。

    コアコンピタンスだけに依存しない

    コアコンピタンスを確立しているからといって、事業の成功が確約されるわけではありません。他社も世間から評価を得るためにも、開発・製造、マーケティング、広報などさまざまな能力を強化しているといえます。コアコンピタンスは、事業を成功させるための要素の一つに過ぎないと認識しておくといいでしょう。

    まとめ

    グローバル化が進む現代で、事業を維持・拡大していくためには、独自の強みを確固たるものにする必要があるでしょう。コアコンピタンスを取り入れた経営戦略によって、他社と差別化をはかり、市場で優位な位置に立つ可能性が高まります。

    当記事で紹介したステップを参考に、自社の事業の中心となる強みを見つけてみてはいかがでしょうか。多くの従業員が自社のコアコンピタンスを理解し、経営戦略に対する共感を得られると、将来的な企業の成長につながるでしょう。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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