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HRBPとは? 必要スキルとCHROとの違い、戦略人事を推進する役割
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HRBPとは、人事面から事業の成長をサポートするアドバイザーのような存在です。単なる人事労務担当者とは異なり、戦略人事を進めるうえで欠かせない存在といえるため、注目が高まっています。
そこで今回の記事では、HRBPの本当の役割や具体的な仕事内容、必要なスキル、導入企業の事例までご紹介します。また、類似のポジションであるCHRO(CHO)や従来の人事との違い、持っているといいとされる資格、導入のメリットと注意点なども解説しています。企業の人事部の担当者、経営企画室の担当者、経営者に該当する人はぜひ参考にしてください。
目次(タップして開閉)
HRBP(HRビジネスパートナー)とは
HRBPとは、経営者や事業責任者のパートナーという位置づけで、人事的な側面からサポートやアドバイスをする役職を指します。現場の人材課題を解決に導くことで、事業の成長を後押しし、戦略人事を支える存在です。
HRBPは「Human Resouses Business Partner」の略であり、「HRビジネスパートナー」と表記して、単にそのような役割を果たす機能を指す場合もあります。
HRBPに求められる役割や仕事内容は多岐にわたり、会社によっても異なるため、統一的な定義が難しい概念ともいえます。例として、ある課題に対して求人募集の出し方や研修制度をブラッシュアップしたり、あるいは個別面談を行い適性に応じて配置を再考したりします。決められた固定業務があるわけでなく、課題に対してさまざまな面からアプローチし働きかけていくのです。
定義・意味
HRBPの定義や意味は、提唱者のデイビッド・ウルリッチ教授によると
経営面のパートナーでありながら、企業戦略をもとに人事面の問題を解決する役割
とされています。
HRBPは、ただ人事にまつわる事務処理を行うのではなく、課題解決を通じて企業経営に貢献する責任を持つ戦略人事のエキスパートといえるでしょう。
HRBPの役割と仕事内容
HRBPが担う役割や具体的な仕事内容について3つご紹介します。
人事戦略の考案
HRBPの役割は、経営目標の達成に貢献できるような人事戦略策定の中心になることです。戦略人事を推し進めるには、事業の戦略と人材のマネジメントを連動させなければなりません。より効果的な採用活動、人事異動、社員教育などを実施するために、最適な方法を考え、提案する仕事内容です。
人事制度の仕組み改善
現在の人事制度の仕組みが課題となって組織に問題が生じているのであれば、改善するのもHRBPの役割です。人事制度とはたとえば、人事評価制度や給与体系、研修内容などが挙げられるでしょう。より効率よく運用し、生産性を高めることはもちろん、従業員の負担を減らし、納得感があるものに制度を改訂する必要もあるかもしれません。
経営者と社員の橋渡し
HRBPが経営者と社員の橋渡しとなることで、両者をつなぐ活躍をすることも、HRBPの大きな役割です。事業部門から持ち上がった相談や質問を吸い上げて経営者に伝えること、反対に経営目線の戦略を部門に落とし込むことが求められます。また、社員側がなかなか声に出しにくい意見を代わりに経営者へ伝え、課題を解決していきます。
HRBPに必要なスキルと資格
HRBPになるには、どのようなスキルや資格が必要でしょうか。代表的なスキル3つと資格をご紹介します。
スキル1.コミュニケーションスキル
HRBPには、高いコミュニケーションスキルが必要です。現場で働く社員の本音を引き出したり、経営者とスムーズに意見を交わしたりするには、相手の気持ちを理解しながら会話を進め、信頼関係を構築する力が求められるためです。
スキル2.経営のセンス
HRBPと従来の人事労務担当者との違いは「経営的な視点を持っているかどうか」です。HRBPは、人事責任者として組織の仕組みを整えるだけでなく、より業績を上げるための経営戦略を考えなければなりません。
スキル3.リーダーシップ
HRBPに必要なスキルとして、社員を巻き込みながら課題を解決できるような、リーダーシップの高さも重要です。従来のシステムを積極的に変化させるには、自分が先頭に立って社員を導かなくてはいけません。
HRBPに必要な資格
HRBPに就く人が必ず持っていなければならない資格はありません。しかし、取得しておくと役立つ資格は存在します。たとえば、社員を精神的に支える知識やバックオフィスのスキルが身につく資格です。メンタルヘルス・マネジメント検定やビジネス・キャリア検定などは、気軽に目指せる難易度なので人気を集めています。
HRBPとCHROや従来の人事との違い
HRBPとよく似たポジションに、CHR(CHO)があります。CHR(CHO)や従来の人事労務担当と、HRBPは何が違うのでしょうか。
CHRO/CHOとの違い
CHRO/CHO(Chief Human Resource Officer)とは、最高人事責任者のこと。経営者と近い立場にありながら人事面をサポートする役割という意味ではHRBPと変わりません。
しかし、CHRO/CHOは「経営者の一員」として人事領域の指揮をとるのに対して、HRBPは「人事の専門家」として、ときに人事業務を統括し、課題を解決する役割があります。
従来の人事労務担当との違い
HRBPと従来の人事労務担当者は大きく異なります。その違いは「経営的な視点を持っているかどうか」です。
HRBPは、人事責任者として組織の仕組みを整えるだけでなく、より業績を上げるための経営戦略を策定しなければなりません。
HRBPが必要とされるビジネス背景
HRBPの必要性が高まっているのは、2つのビジネス背景が関係しています。それぞれ解説します。
VUCA時代への対応力が求められているため
最近のビジネス環境は先の読めないVUCA時代といわれています。そのためHRBPが必要とされている背景として、そのようなDX化の波や事業の多角化など変化に対応しなければならないことが挙げられます。組織や個人が迅速な対応ができるかどうかは、各チームのメンバーの柔軟な働きによって変わるでしょう。組織開発の一環として、HRBPのような専門的な存在の重要性が増しているのです。
人材獲得に力を入れなければならないため
HRBPが必要とされるもう1つの背景は、人材獲得のための競争が激化していることが挙げられます。現在は優秀な人材の確保が難しくなっている状況です。少子高齢化・労働力人口の減少が進むなかでも、ハイパフォーマーに定着してもらいたいという思いがある企業もいるでしょう。成果を出す人材の存在は事業の成長や継承・継続を助けます。人材不足に悩まされている企業の将来は危ういものとなってしまうかもしれません。
HRBPとして人事のプロフェッショナルを自社に置いて、人材採用と人材育成や人材開発を強化し、組織開発に注力する必要があるのでしょう。
HRBP導入のメリット
HRBPを導入すると、いくつかのメリットを感じられます。それらのメリットを実感するためには、注意すべきこともあります。それぞれについてご紹介します。
攻めた戦略人事を実行できる
経営戦略に基づく、戦略人事を実行できることがHRBPの大きなメリットです。変化が激しい現代において、採用や労務管理などオペレーション中心の人事だけでは、企業力が衰退してしまうかもしれません。事業のビジネスパートナーとして攻めた人事を行うことで、組織全体を強化できるでしょう。
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タレントマネジメントを推進できる
HRBPの導入メリットとして、従業員と組織のパフォーマンスを最大化し、業績アップにつなげられることも挙げられます。
HRBPは、経営戦略をもとに採用すべき人物像を定義し、確保に向けた採用や育成、評価制度の構築にもかかわります。従業員の能力やスキルを最大限活用できるような人事施策を行い、企業目標の達成を目指すタレントマネジメントとも相性がよいでしょう。
HRBP導入に向いている企業
HRBPの導入に適している企業の特徴の例は、以下の通りです。
・社員人数が数百人規模 ・業種が多角化している ・海外進出を目指している |
社員人数が多すぎるとHRBP1人に対する負担が増大してしまいます。反対に少なすぎると、運用コストがかかりすぎてしまうでしょう。また、複数の業種を取り扱うグローバルな企業では、海外では主流なHRBPを導入することで、国際的な風土がつくれるため、向いているといえます。
HRBPの導入企業の事例
HRBPを実際に導入している企業の事例を2社ご紹介します。
カゴメ株式会社
人的資本経営を推進するために、2017年度よりHRBPを導入したのがカゴメ株式会社です。従業員と組織、2つの側面から成長を支えることが大きな目的でした。
現場の課題をヒアリングをもとに明確にしたうえで、経営層や本部と密に連携しながら課題を解決し、人材の自律的な成長を促しています。今後もHRBPの機能をさらに拡大させ、より経営が主導する人事へと変化することを目指しています。
株式会社ディー・エヌ・エー
2014年より各事業部ごとにHRBPを設置してるのが、エンタメ事業を取り扱う株式会社ディー・エヌ・エーです。同社のHRBPは、事業のパートナーとして、人事の側面から経営戦略や事業戦略を推進しています。
たとえば、「社員の採用活動が進まない」「クリエイターの退職が多い」という課題に対しては
・採用活動の強化と見直し
・給与を含めた労働環境の整備
・マネージャー層の人数の増加
という施策を実施して解決に導きました。全社的な経営の視点を持ちながら、現場の課題解決を進め、事業を1つにまとめる役割を果たしているといえるでしょう。
HRBP導入のステップ
HRBPを導入する進め方として、手順やステップは以下の通りです。
- 1. 今後2~3年の人事戦略を考える
- 2. その戦略を実現するための体制を検討する
- 3. HRBPのトライアルを行う
- 4. HRBP担当者本人のスキルを高めていく
HRBP導入ポイントや注意点
HRBPを導入する際は、どのようなポイントに気をつければいいのでしょうか。
役割分担を明確にする
あらかじめHRBPの役割や、仕事内容を明確に決めておきましょう。導入後に、別部署との情報共有を効率よく行えるようにするためです。そうしないと無駄な業務が発生してしまう恐れがあります。
HRBPは経営と現場をつなぐ役割ですが、あくまでも本社の人事と対等な立場をとりましょう。
トライアル期間を設ける
HRBPを本格導入前に、トライアル期間を設けて徐々に制度を導入しましょう。HRBPの存在に社内が慣れるためには、一定の時間が必要であるためです。トライアル期間中は、比較的小さな課題から取り組んでもらうようにして成功事例をつくり、社内にHRBPの存在を周知させていきましょう。
別部署と連携する
人事部門だけで独立するのではなく、別部署と信頼関係を築いて連携することが求められます。HRBPは、経営者と社員をつなぐ存在でもあるので、別部署とも深くコミュニケーションをとらなくてはいけません。HRBPの取り組み内容を共有する機会を積極的につくり、連携体制を構築しましょう。
また、CoE(Center of Excellence)との連携も重要です。CoEとは、組織内に散らばる専門知識を集約した研究チームを指し、制度設計の中心的な役割を担います。
CoEを設置している日本企業は少ないですが、HRビジネスパートナーの提唱者であるウルリッチ氏が提唱した人事の役割の一つでもあり、課題解決を目指すHRBPとの連携は欠かせません。
業務効率化ツールを使う
タレントマネジメントシステムをはじめとした、業務効率化ツールの活用も一案です。業務効率化を進めて、HRBPの負担を大幅に削減することで、業務の精度が増す可能性があるためです。HRBPの本来の役割である、人事の領域からの検討や指示に専念できるような環境整備が重要といえます。
HRBPは採用か?育成か?
HRBPを実際に導入する際、担当者は新しく採用するべきなのでしょうか。それとも、在籍している社員を育成した方がよいのでしょうか。
そもそも日本でHRBPが深く浸透していない理由として、人事部門の業務に対する認識が保守的であることが考えられます。従来の日本では、人事の仕事は社内ルールの管理や事務処理という考え方が主流だったといえるでしょう。
しかし、人的資本経営や戦略人事などの概念が重要視される近年は、人事であっても経営戦略に基づいて組織開発に注力し、能動的に動くことが必要です。
海外で普及して日本にも大企業を中心に広まってきた新しいHRBPの機能は、戦略的に人材を採用・育成・配置するために求められるようになってきたのです。
HRBP採用ポイント
HRBPを新しく採用する場合、コミュニケーションスキルの高さを重視して選考するといいかもしれません。アイスブレイクが上手で、すべての社員と柔軟にかかわっていける人材を採用することをおすすめします。
HRBPを社内で育成するポイント
HRBPを社内で育成する場合は、他者と対話する機会が多い部署の経験者を抜てきしましょう。バックオフィスで長年働き続けてきた社員よりも、従来の価値観を打ち破る期待が寄せられるはずです。その際は、1人に注力して育てるのではなく、複数人の候補者を同時に育てながら適性を見た方が効率的です。
HRBPは戦略人事に欠かせない存在
当記事はHRBPの役割や仕事内容、必要なスキル、導入企業の事例を中心にご紹介してきました。
HRBPは、事業の責任者や経営者と同じ目線で戦略的な人材戦略の実践を支援する役割を担っています。そして結果として企業の組織力を底上げする必要があり、業績の向上や事業の成長を目指すうえで欠かせないポジションです。変化が激しく、人材マネジメントが困難になっている時代に求められるようになりました。
HRBPの導入は、焦らずじっくりと時間をかけて行い、人事側から体制を整備し、社内全体の環境改善につなげることが重要です。
HRBPを新しく採用したり社内で育成したりする場合はもちろん、戦略人事の実践には、タレントマネジメントシステムが活用できます。タレントマネジメントシステムとは、人材のデータを一元管理し、経営と連動した戦略的な施策をサポートするツールです。HRBPの機能を最大化するためにも役立ちます。
『スマカン』は従業員のスキルや経歴を一元管理し、一人ひとりに適した育成や自社で活躍しやすい人材の採用、公平な評価制度の運用を助けるタレントマネジメントシステムです。データ分析をもとに自社の成長戦略に合った人事施策を進めたい企業におすすめです。従来からある人事業務で発生する事務処理の効率化やオペレーション業務の自動化にも役立つ機能が多く搭載されています。
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記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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