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業績連動型賞与とは? 計算方法や指標の選び方、導入企業、ほかの賞与との違いも解説
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業績連動型賞与とは、業績と連動させて支給額を算出する賞与のことです。ビジネス環境の変化が激しい昨今、固定額を支払う賞与制度ではなく、業績にあわせて賞与を支払う業績連動型賞与に注目が高まっています。
しかし「自社にとって業績連動型賞与の導入は適切なのか」「計算方法や指標の選び方がわからない」といったお悩みを抱える方も多いでしょう。
そこで当記事では、業績連動型賞与の概要から計算方法、基準となる指標の選び方、メリット・デメリットなどを解説します。経営者や人事担当者は参考にしてみてください。
※当記事の内容は作成日または更新日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。
目次(タップして開閉)
業績連動型賞与とは
業績連動型賞与とは、企業業績と個人業績を連動して支給額を算出する賞与のことです。
いつ支給する?
業績連動型賞与の支給タイミングは各企業の規定によりますが、夏季と冬季の年2回であることが一般的です。
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業績連動型賞与の計算方法
業績連動型賞与は、一般的に以下の順で賞与額を決めます。
1.賞与原資を決める 2.個人への支給額を決める |
主な計算方法としては、半期で見ると
半期の粗利益×労働分配率(企業の付加価値に占める人件費の比率)-既払いの人件費 |
で求められます。
業績連動型賞与を導入する際は、まず「どのくらいの資金を賞与に回せるのか」を考え、次に「従業員個人にはどのくらい分配するのか」仕組みを検討してみましょう。
業績連動型賞与とほかの賞与の違い
業績連動型賞与は、ほかの賞与と何が違うのでしょうか。例として「基本給連動型賞与」「決算賞与」「業績連動型報酬」の3つと比較し、業績連動型賞与との違いを解説します。
そもそも賞与とは
そもそも「賞与」とは、毎月の給与とは別に支給する「臨時の給与」のことです。一般的に、6月(夏季)と12月(冬季)の年2回支給する企業が多いです。
賞与は法律上、企業が従業員に支給する義務はありません。そのため、賞与の有無や時期、支給額については、企業によって対応が異なります。
関連記事 賞与の種類や概要をくわしく解説! |
基本給連動型賞与とは
基本給連動型賞与とは、基本給に支給月数を掛けて計算し、支給額を決定する賞与のことです。
たとえば「基本給×2か月分」のように賞与額を決めるため、基本給が高いベテラン社員に多く支給される傾向があります。そのため、成果を出している若手社員が不満を抱えやすいという懸念点が挙げられるでしょう。
決算賞与とは
決算賞与とは、企業の決算後に業績に応じて支給する賞与のことです。
その年の業績が好調であれば支給され、不調であれば不支給となるように、業績によって支給の有無が決まります。「特別賞与」「臨時賞与」など、企業によって呼び方はさまざまです。
業績連動型報酬とは
業績連動型報酬とは、企業の業績に連動して額が変わる報酬のことです。
近年では「ストックオプション」と呼ばれる、自社株を決められた額で購入できる株式報酬が注目されており、これも業績連動型報酬に区分されます。
業績連動型賞与の導入は増えている?
日本経済団体連合会が発表した『夏季・冬季 賞与・一時金調査結果(2021年)』によると、調査対象となった2,064社のうち、業績連動型賞与を導入している企業は55.2%と報告されています。
業績連動型賞与を導入している企業の割合は、2016年から連続で50%を超えていることから「業績連動型賞与の導入は増加傾向にある」といえるでしょう。
参考:『2021年「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」の概要』日本経済団体連合会
業績連動型賞与の導入が増えている理由とは
業績連動型賞与の導入が増えている理由は、ビジネス環境の変化にあります。
従来とは異なり、近年は将来の行き先が不透明で予測困難な状態である「VUCAの時代」と称されるほど、ビジネス環境の変化が激しくなっています。
そのような環境下でも従業員に安定した人件費を支払うために、業績と賞与を連動させた業績連動型賞与を導入する企業が増えたのです。
業績連動型賞与の導入効果やメリット
業績連動型賞与の導入効果やメリットは、大きく分けて3つあります。業績連動型賞与を導入すると、どのような効果があるのか解説します。
・人件費による経営圧迫を防ぐ ・従業員のモチベーションが向上する ・賞与決定に関する労使交渉の手間がなくなる |
人件費による経営圧迫を防ぐ
業績連動型賞与の導入により、経営の安定につながるといったメリットがあります。業績連動型賞与は、業績と連動させて賞与額を決定するものです。
つまり、企業は業績に見合った賞与額を負担すればよいため、賞与支給による経営の圧迫を防ぐことができます。
従業員のモチベーションが向上する
業績連動型賞与は、企業業績と個人評価により賞与額が決まるため「基本給が高いベテラン社員の方が、能力が高く成果を残した若手社員よりも賞与額が高くなる」ということがありません。
よって、能力が高い従業員の賞与に対する不公平感を軽減でき、モチベーションの低下防止にもつながるでしょう。
また、業績連動型賞与は企業の業績にあわせて賞与額が変動するため、従業員自身の賞与増額のためにも、企業の業績向上に向けてモチベーション高め、業務に取り組めるようになると考えられます。
賞与決定に関する労使交渉の手間がなくなる
賞与は、春季生活闘争(春闘)の労使交渉の場で支給額が決定されることが多いとされています。春闘とは、労働組合が月給や賞与などについて経営側に要求を提出し、交渉を行うことです。
業績連動型賞与は事前に業績指標を決めて運用するため、労使交渉の手間が省略できるというメリットがあります。
業績連動型賞与の導入リスクやデメリット
次に、業績連動型賞与を導入することによるリスクやデメリットについて解説します。
・資金不足のリスクがある ・賞与がゼロになる可能性もある |
資金不足のリスクがある
業績連動型賞与は、業績が好調である場合と不調である場合で賞与額の変動が大きくなります。
もし、賞与の支給タイミングと、業績が低下するタイミングが重なってしまった場合、資金不足となるリスクも考えられるので注意が必要です。
賞与がゼロになる可能性もある
業績連動型賞与は、企業の業績に応じて賞与が決定されます。そのため、事業がうまくいっていないと賞与額がゼロになる可能性も考えられます。
賞与が支給されないとなると従業員の私生活にも影響を及ぼすため、モチベーションの低下や組織に対する不満につながりやすいです。
業績連動型賞与導入の検討にあたって、メリットとデメリットの両方を理解しておきましょう。
業績連動型賞与を設計する手順
業績連動型賞与の設計には「目的を明らかにする」「業績指標を選ぶ」「原資の算定基準を決める」「業績指標や査定方法を周知する」以下4つの手順が必要です。
1.目的を明らかにする 2.業績指標を選ぶ 3.原資の算定基準を決める 4.業績指標や査定方法を周知する |
業績連動型賞与を設計する手順について、詳しく解説します。
1.目的を明らかにする
まず、業績連動型賞与を自社で導入する目的を明確にします。
現在導入している給与制度にどのような課題を抱えているのか、業績連動型賞与を導入することでその課題が解決できそうか、という現状分析や導入目的を整理しましょう。
2.業績指標を選ぶ
次に「どの業績に連動させるのか」という賞与決定の基準となる「業績指標」を選定します。主な業績指標として、次の5つの基準をご紹介します。
・売上高基準 ・株主価値基準 ・利益基準 ・キャッシュフロー基準 ・付加価値基準 |
売上高基準
売上高基準とは、売上高や生産高を指標とする基準です。売上高基準は「従業員にとって身近でわかりやすい指標である」というメリットがあります。
株主価値基準
株主価値基準とは、ROA(総資産利益率)や、ROE(自己資本利益率)、ROI(投資利益率)などの指標を用いることを指します。
株主価値基準を用いると、株主の視点や財務表からの視点で客観的かつ多角的な視点を賞与に連動できますが、従業員にとって「複雑でわかりづらい」などの懸念が考えられるでしょう。
利益基準
利益基準とは、営業利益や経常利益、当期利益など、さまざまな利益を指標とした基準です。
経団連が発表した『2021年 夏季・冬季 賞与・一時金調査結果』によると、業績連動型賞与を導入している企業のうち、基準とする指標には「営業利益」が60.2%ともっとも多く採用されています。
営業利益を基準とした場合、従業員にとってわかりやすく、納得しやすいという特徴があるためでしょう。
キャッシュフロー基準
キャッシュフロー基準とは「会社の資金の流れ」を指標とする基準です。キャッシュフロー計算書を見れば、従業員も流れを把握しやすいという特徴があります。
「支出よりも収入が多い場合はプラス」となり「収入よりも支出が多い場合はマイナス」というように、わかりやすい指標だといえるでしょう。
付加価値基準
付加価値とは、売上高から原材料などを差し引いた粗利益のことを指します。
付加価値基準を業績連動型賞与の指標に採用する企業は少なく、経団連が発表した『2021年 夏季・冬季 賞与・一時金調査結果』によると、5%にとどまっています。
参考:『2021年「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」の概要』日本経済団体連合会
3.原資の算定基準を決める
続いて、選んだ指標のどれくらいを賞与原資とするか、算定基準を決めます。具体的には、下記2つの観点から検証するとよいでしょう。
経営計画に基づくシミュレーション
経営計画が計画通りになった場合、計画よりも上回った場合と、下回った場合の3つのパターンを想定し、原資の算定を行います。
過去実績分析による算定
過去5年以上の賞与実績と指標を分析し、傾向を把握しながら原資を算定します。
4.業績指標や査定方法を周知する
これまで賞与を固定的に支払っていた場合、業績連動型に変更するにあたって不満や混乱を招く可能性があります。そのため、業績指標や査定方法については従業員に公開することが重要です。
また、賞与額を100%業績に応じて配分するのではなく「固定給+業績と連動した賞与を支給」「業績と連動した賞与+個人の人事評価の結果に基づいて加算」などの工夫をする企業が一般的です。
業績が赤字の場合や想定以上の業績となった場合には、協議を設けるなどあらかじめ対策を決めておくとよいでしょう。
業績連動型賞与における業績指標を選ぶときの注意点
業績連動型賞与の導入にあたって、どのような視点で業績指標を選ぶべきか、注意点について解説します。
・経営目標に沿った指標にする ・従業員が理解しやすい指標にする ・比較的変動が少ない指標にする ・業績向上につながる指標にする |
経営目標に沿った指標にする
まず、経営目標に沿った指標を選ぶことがポイントです。業績連動型賞与を導入することで業績の向上につながるように、戦略を踏まえて指標を選択するようにしましょう。
従業員が理解しやすい指標にする
納得感のある賞与制度にするためには、従業員が理解しやすく、わかりやすい指標を用いることが大切です。経営戦略として重視されているものの、従業員になじみがない指標を採用する場合は、理解できるように説明の機会を設けるなどの配慮が必要です。
比較的変動が少ない指標にする
変動が激しい項目を指標として選定すると、賞与支給が不安定になり、経営に支障をもたらす恐れがあります。比較的変動が少ない指標を選び、安定性を確保できるように考慮しましょう。
業績向上につながる指標にする
従業員の納得感や経営の安定性だけを考えると、結果として業績向上につながらないという状況に陥る可能性もあります。
選んだ指標が、業績連動型賞与を導入する目的である「業績向上」につながるかどうか、確認するようにしましょう。
業績連動型賞与を取り入れている企業事例
実際に業績連動型賞与を取り入れている企業事例について紹介します。
関西電力株式会社
関西電力株式会社では、従業員の業績向上へのモチベーションアップを狙って2020年度以降の賞与から業績連動型を採用しています。
大手電力会社の中では、業績連動型賞与を取り入れた初めての企業となりました。
参考:『プレスリリース(2020年5月18日)』関西電力株式会社
東京エレクトロン株式会社
半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置などの開発・製造を行う東京エレクトロン株式会社は、2017年度以降から業績連動型賞与を導入しました。
景気に左右されやすい業界での経営を安定させるためにも、業績連動型賞与の導入は有効だと考えられたのかもしれません。
参考:『福利厚生・制度・研修 | キャリア採用 』 東京エレクトロン株式会社
まとめ
業績連動型賞与とは、企業業績と個人業績を連動して支給額を算出する賞与のことです。近年では、業績連動型賞与を導入する企業が増えています。
業績連動型賞与を導入することで得られるメリットには、
・人件費による経営圧迫を防ぐ ・従業員のモチベーションが向上する ・労使交渉の手間がなくなる |
などが挙げられるでしょう。
その一方で、資金不足のリスクや、賞与額がゼロになる可能性があるというデメリットもあります。業績連動型賞与のメリット・デメリットの双方を理解し、自社に適切な賞与制度の運用を目指しましょう。
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