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賞与計算とは|控除額の算出方法、ボーナス支給の流れを解説

賞与計算とは|控除額の算出方法、ボーナス支給の流れを解説

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賞与計算は正確性が求められる重要な業務の一つです。賞与計算を任されたものの、賞与計算の方法や控除額の算出方法がわからないという人事労務担当者もいるのではないでしょうか。

そこで、当記事では賞与計算の基本的な手順や控除額の算出方法、さらにはボーナス支給の流れについて詳しく解説します。

適切な知識と手順を身につけ、スムーズに処理できるよう、ぜひ参考にしてください。

目次(タップして開閉)

【種類別】賞与計算の方法

賞与の計算方法は、企業によって異なります。

当記事では「基本給連動型賞与」と「業績連動型賞与」の一般的な計算方法を解説します。具体的な数字を当てはめた計算例もご紹介しますので、参考にしてみてください。

基本給連動型賞与

「基本給連動型賞与」の計算方法は、以下の計算式で求められます。

基本給×平均支給月数

ただし、企業によっては「基本給 + 各種手当」を「基準額」とし、個別に変動する賞与支給制度を設けていることもあります。

基準額×平均支給月数×評価係数

評価係数とは、従業員の業績や能力を数値化したもので、報酬の増減割合を決める指標となります。

あくまでも一例として以下のように、人事評価結果ランクを数値であらわし、評価係数として用いるのです。

評価ランク 評価係数
S 2
A 1.5
B 1.1
C 0.9
D 0.5

業績連動型賞与

業績連動型賞与の計算方法は、一般的に以下の計算式で求められます。

一定期間の粗利益×労働分配率−既払いの人件費

労働分配率とは、企業の経済活動における従業員への報酬の割合をあらわす指標です。

具体的には、企業の総付加価値(生産活動によって生み出される付加価値)に対して、人件費(賃金や福利厚生費など)がどれだけ占めるかを示しています。

労働分配率は「人件費÷総付加価値×100」で計算できます。労働分配率が高いほど従業員への報酬額が多いといえます。

賞与計算の一例

賞与計算の一例として、実際に具体的な数字を用いて計算してみましょう。

基本給連動型賞与:基本給20万円の場合

まずは通常の基本給連動型の賞与計算の例をご紹介します。

基本給20万円、平均支給月数1.5か月分の従業員とすると

 基本給×平均支給月数
=200,000×1.5
=300,000(円)

賞与額は30万円と計算できました。

次に個人の成績を反映して評価係数を用いる場合の、賞与計算の例をご紹介します。

基本給20万円、交通費など各種手当の合計が10万円、平均支給月数1.5か月分の従業員の評価係数が1.5だとします。

 基準額×平均支給月数×評価係数
=(200,000+100,000)×1.5×1.5
=675,000(円)

賞与額は67万5,000円と計算できました。

賞与計算の流れをおさらい

賞与とは、従業員に対して与えられる臨時の賃金です。支給方法や基準に決まりはなく、企業や組織によって異なります。

賞与計算をする際に困らないように、手順や流れをおさらいしておきましょう。

1.賞与支給額を決める

まずは、賞与支給額を決定します。

就業規則の給与規程に基づき、基本給や企業・個人の業績などに応じた査定を実施しましょう。

このとき、従業員からフィードバックをもらうなどして納得感が得られる評価制度を整備しておくことが大切です。

2.額面賞与額を計算する

額面賞与額は、支給される賞与の基本となる金額です。

額面賞与額を算出する際は、企業ごとに設定した計算方法を用いて計算します。額面の金額は社会保険料などが差し引かれる前の賞与額で、支給額(振り込み賞与額)ではないので注意しましょう。

3.振り込み賞与額を計算する

振り込み賞与額は、実際に支給される賞与の金額です。

額面賞与額から、所得税や社会保険料などを控除した金額が振り込み賞与額です。税金や保険料の計算は、国や地域の税法や社会保険制度に基づくため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

4.賞与明細を発行し、振り込む

賞与明細は、個人の賞与額や控除額、支給時期などを詳細に記載した書類です。

企業は、賞与明細を従業員に発行し、支給時期に合わせて賞与を振り込みます。トラブルを防ぐためにも賞与明細には、支給額の内訳や計算方法、控除額の詳細などを明記しましょう。

なぜ賞与計算で保険料と税金を差し引くのか?

賞与計算では、社会保険料や税金を差し引きます。差し引かれる社会保険料には、健康保険や介護保険、厚生年金保険、雇用保険などが含まれ、税金は所得税を指します。

額面賞与額から社会保険料や税金を控除する理由は、公平な社会保障制度を維持するためです。

かつては月々の給与額をもとに、賞与から一律1%が特別保険料として徴収されていました。しかし従業員の毎月の給与を抑え、その分を賞与で還元することで、自社が負担する社会保険料を少なくするという企業が増えてしまったのです。

このような動きは企業間の保険料負担に公平さが欠けることから、2003年度以降は賞与を含む給与全体から社会保険料を控除する決まりとなりました。

参照:『総報酬制の導入等に伴う通知の一部改正について〔厚生年金保険法〕』厚生労働省

賞与から控除される社会保険料の計算方法

賞与から控除される社会保険料は、どのように計算すればいいのでしょうか。

雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の出し方をそれぞれ説明します。

雇用保険料の出し方

雇用保険料は賞与の金額に応じて計算します。雇用保険料率は、事業主、労働者ともに事業の種類により異なるため注意しましょう。

令和5年度の雇用保険料率は以下の通りです。

 
労働者負担

事業主負担
①+②
雇用保険料率
一般の事業 6/1,000 9.5/1,000 15.5/1,000
農林水産・
清酒製造の事業
7/1,000 10.5/1,000 17.5/1,000
建設の事業 7/1,000 11.5/1,000 18.5/1,000

参照:『令和5年度の雇用保険料率』厚生労働省

たとえば、一般企業で賞与10万円の従業員の雇用保険料を算出してみましょう。

従業員が負担する雇用保険料は、

 100,000×(6/1,000)
=600(円)

600円と計算できます。

事業主が負担する雇用保険料は

 100,000×(9.5/1,000)
=950(円)

950円と計算できます。

健康保険料の出し方

健康保険料の計算方法は、賞与額から1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に健康保険料率を掛けて算出します。

算出された健康保険料は、事業主と被保険者が折半で負担すると決められています。

ただし、健康保険料率は加入している健康保険組合や事業所の所在地によって異なります。

東京都にある企業に勤め、保険料率10%の健康保険組合に加入しているAさん(49歳、扶養家族1人)に賞与30万円を支払う場合を例として、賞与にかかる健康保険料を計算してみましょう。

 標準賞与額×健康保険料率÷2
=300,000×0.1÷2
=15,000(円)

Aさんの賞与にかかる健康保険料は、1万5,000円と算出できます。

なお、標準賞与額には上限が定められており、健康保険料の計算においては、4月から3月末までの累計額が573万円です。

厚生年金保険料の出し方

厚生年金保険料の計算方法は健康保険料と同じく、賞与額から1,000円未満を切り捨てた額に厚生年金保険料率を掛けて算出します。

算出された厚生年金保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。厚生年金保険料率は、2023年現在18.3%です。

東京都にある企業に勤めるAさん(49歳、扶養家族1人)に賞与30万円を支払う場合を例に、Aさんの賞与にかかる厚生年金保険料を計算してみましょう。

 標準賞与額×厚生年金保険料率÷2
=300,000×0.183÷2
=27,450(円)

Aさんの賞与にかかる厚生年金保険料は、27,450円と算出できます。

厚生年金保険料の計算における、標準賞与額の上限は、150万円(月)です。

介護保険料の出し方

40歳から64歳までが加入している介護保険料も、健康保険料や厚生年金保険料と同じように、賞与額から賞与額から1,000円未満を切り捨てた額に介護保険料率を掛けて算出します。

算出された介護保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。

介護保険料率も加入している健康保険組合や事業所の所在地によって異なります。

東京都にある企業に勤め、介護保険料率が1.82%の健康保険組合に加入しているAさん(49歳、扶養家族1人)に賞与300,000円を支払う場合、Aさん賞与にかかる介護保険料を計算してみましょう。

 標準賞与額×介護保険料率÷2
=300,000×0.182÷2
=2,730(円)

Aさんの賞与にかかる介護保険料は2,730円と算出できます。

介護保険料の計算における標準賞与額の上限は、健康保険料と同じく年間累計573万円です。

賞与から控除される源泉所得税の計算方法

所得税も賞与からの差し引き対象となります。

賞与から控除される源泉所得税の金額は、賞与額から社会保険料を差し引いた金額に、所得税率を掛けて算出します。

賞与から控除される源泉所得税=(標準賞与額-社会保険料の合計額)×所得税率

賞与に適用される源泉所得税の税率は、前月の給与や扶養親族の数によって異なります。

まず、賞与支給月の前月の給与から、社会保険料を差し引いた金額を計算します。この金額が所得税の基準額となります。

所得税の基準額=前月給与額-前月社会保険料

次に、国税庁の『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表』を用いて、扶養人数に応じた税率を確認し、所得税の基準額に掛け算して求めます。

参照:『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)』国税庁

賞与計算のポイント

賞与計算を行う際は、次の6つのポイントを意識しておくとよいでしょう。

・賞与に法的な定めはない
・雇用保険料率は事業によって異なる
・保険料の算出方法に気をつける
・賞与支払届や賞与支払届総括表を提出する
・保険料や税金の納付は期日を厳守する
・賞与計算における端数に注意する

賞与に法的な定めはない

毎月の給与と違い、賞与は従業員に対して「必ず支払わなければならない」という決まりはありません。賞与の額についても各企業ごとに算出方法が異なり、業績の影響や従業員の評価などでも金額が変わります。

たとえば極端に業績が悪化したなら、賞与を支給しないという決定もできます。

ただし、就業規則の給与規程に賞与を支払う時期や金額について明記している場合、支払い義務が生じるため注意しましょう。

雇用保険料率は事業によって異なる

賞与から雇用保険料を差し引くとき、事業の種類によって保険料率が異なることに注意しましょう。雇用保険料率は、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業の3つに分かれています。

また、健康保険や介護保険、厚生年金が労使折半なのに対し、雇用保険料は事業の種類ごとに双方の負担割合が異なります。

自社の事業がどの種類に分類されるのかをあらかじめ確認し、間違いのないように雇用保険料を算出、控除するようにしましょう。

保険料の算出方法に気をつける

賞与の計算において、特に保険料の算出方法には注意が必要です。

健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料は、支給される税引前の賞与総支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に、それぞれの保険料率を乗じて算出します。

しかし、雇用保険料だけは、標準賞与額ではなく賞与総支給額に保険料率を掛けて計算します。これを間違えてしまうと、正確な保険料を算出することができなくなるため気をつけましょう。

賞与支払届を提出する

賞与を従業員に支払ったら「賞与支払届」を所轄の労働局に提出する必要があります。賞与支払届は企業の情報のほか、従業員の情報や実際に支払った賞与の金額、標準賞与額などを記入します。

以前は「賞与支払届総括表」という支払い合計人数や合計金額を記入する書類も提出する必要がありましたが、2021年より廃止されています。

業績などの影響ですべての従業員に賞与を支払わなかった場合は「賞与不支給報告書」も提出しましょう。

保険料や税金の納付は期日を厳守する

支払った賞与に基づく社会保険料は、賞与を支払った月の翌月末日までに年金事務所へ、源泉所得税は、賞与を支払った月の翌月10日までに税務署へ納付する必要があります。

納付期限を守り、遅延しないように注意しましょう。

賞与計算における端数に注意する

賞与計算する際には、端数に注意しましょう。所得税は賞与額から社会保険料などを差し引いた金額に所得税率を乗じて算出します。計算結果によっては、小数点以下の端数が生じます。

その際には、1円未満の端数は切り捨てなければなりません。

また、雇用保険料について、被保険者の負担額に1円未満の端数が発生したら、源泉控除の場合は法律で定められている「50銭以下の端数は切り捨て、50銭1厘以上の端数は切り上げ」が適用されます。

参照:『保険料の計算方法について』日本年金機構

特殊な賞与計算の例

賞与計算において、特殊な例も確認しておきましょう。

・退職する従業員に賞与を支払う場合
・年4回以上賞与を支払う場合

退職する従業員に賞与を支払う場合

通常、企業は賞与支給時に社会保険料を差し引きます。

しかし退職を予定している従業員や、すでに退職した従業員に対しては、退職日や支給日によって社会保険料控除されないことがあります。

厚生年金保険料と健康保険料

企業が賞与から厚生年金保険料と健康保険料を徴収しなければならない期間は、従業員の資格喪失日(退職日の翌日)が属する月の前月までです。

退職が月末であれば、資格喪失日は翌月の1日です。それ以前に支給される賞与からは厚生年金保険料と健康保険料を差し引きます。

一方、退職日が月末以外であれば、退職月に支給される賞与からの保険料控除は必要ありません。

雇用保険料

雇用保険料については、退職のタイミングは関係なく、漏れなく賞与から差し引かれます

厚生年金保険料や健康保険料の控除は不要な場合も、雇用保険料は控除する必要が発生することもあるので注意しましょう。

また、退職者に支払った賞与についても、賞与支払届を記入し、日本年金機構に提出するのを忘れないようにしましょう。

年4回以上賞与を支払う場合

賞与を年4回以上支払うと、賞与額は「標準報酬月額」として見なされます。通常、賞与は「標準報酬月額」の計算には含まれません。

標準報酬月額とは、その年の4〜6月の3か月間に支払われた報酬の平均額を標準報酬月額表に当てはめて導き出した額のことをいいます。

賞与を年間4回以上支給する場合、賞与額も含めて標準報酬月額を計算しなければなりません。

賞与を標準報酬月額に含めるとき、初めに7月1日以前に支給された4回分の賞与を合算します。その合計額に1/12を掛けて、1か月分の平均額を求めます。

次に、4〜6月の平均報酬月額にこれを加算して、最終的な標準報酬月額が求められます。

まとめ

賞与の計算方法は、自社がどのような種類の賞与を支給するかによって変わります

ただし、どのような方法で賞与を支給するときも、控除する社会保険料や税金の算出方法は同じです。通常の給与計算とは手順が異なるため、賞与計算の担当者は計算の手順を覚えておく必要があるでしょう。

保険料率や税率を誤ると、賞与の支給額が変わってしまい、トラブルに発展しかねません。さまざまなポイントに注意しながら慎重に計算することが大切です。

また、社会保険料を徴収しない特殊なケースなどにも留意し、円滑な賞与計算を心掛けましょう。

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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