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賞与(ボーナス)査定の手法とは|基準項目や期間、法律上の注意点を解説

賞与(ボーナス)査定の手法とは|基準項目や期間、法律上の注意点を解説

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従業員に支払う賞与(ボーナス)は、設定した基準に沿って適切な評価を行い、公正かつ透明性のある査定を行わなければなりません。賞与査定を誤ると、思わぬトラブルに発展することも考えられます。

そのため、賞与査定を任されたものの、どのような手順で進めれば、労使ともに納得感のある賞与額を決定できるのか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

当記事では、賞与査定の基準項目や期間、さらに法律上の注意点について解説します。トラブルに発展するリスクを回避するためにも、適切な賞与査定の手法を学んでおきましょう。

※当記事の内容は作成日または更新日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

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目次(タップして開閉)

    賞与(ボーナス)査定とは

    賞与(ボーナス)査定とは、企業が従業員に支給する年末賞与や夏季賞与などのボーナス額を決定するための査定プロセスのことを指します。

    賞与の査定基準や項目は企業によって異なりますが「業績評価」「能力評価」「行動評価」の3つのポイントに基づいて、賞与の支給額を決定することが多いです。

    なぜ重要?

    賞与は企業の利益を従業員に還元するものです。賞与査定の目的は、従業員がどのくらい企業の業績に貢献したかを評価し、その評価結果に基づいた金額を従業員に支給することにあります。

    そのため、賞与査定では公平かつ公正な評価基準を明確に設定したうえで、従業員の実績を正しく適正に評価することが重要です。

    また、賞与額は従業員間で比較されることもあるため、適切な査定を行わなければ、不満の原因につながる恐れがあります。賞与が一律で支給される場合も、実際にはほかの人より成果を挙げている従業員のモチベーション低下を招いてしまうかもしれません。

    賞与は従業員エンゲージメントを高める重要な要素の一つであり、賞与査定では適切な評価と公正な取り組みが求められるため重要といえるのです。

    賞与の査定期間とは

    賞与の査定期間とは、企業が賞与支給額を決定するために、従業員の実績や勤務態度を評価する期間を指します。

    一般的な賞与の査定期間は約6か月間です。たとえば、7月と12月に賞与が支給される場合、7月支給分の査定期間は前年10月〜3月、12月支給分の査定期間は4月〜9月とする企業が多いでしょう。

    企業は賞与査定の終了月から支給月までの3か月間で、従業員の評価結果を取りまとめ、賞与支給額の最終的な決定を行います。大企業は従業員が多く、評価や支給額の計算に時間がかかってしまうため、さらに長く確保している場合もあるようです。

    つまり賞与の査定期間中に実績を残していなければ、支給月の直前に大きな実績を残したとしても、今回分には影響せず、次回の査定期間に反映されることが多いようです。また賞与査定は、試用期間や休職・退職にともなって出勤していない期間は、含めないことがあります。

    いずれの場合も、賞与の査定対象外となる際の条件を、自社の就業規則に明記する必要があります。「使用期間中や休職者、退職者は査定対象外」という記述がなく、支給しない場合は不利益取扱いと見なされるため注意しましょう。

    中途採用者の対応については、就業規則に特別な定めがない場合、基本的に勤務開始日から査定期間の対象となります。

    賞与査定の基本的な基準

    賞与査定の基本となる基準は、各企業や組織によって異なる場合がありますが、一般的には以下の要素が含まれます。

    基本給

    各従業員の基本給を基準に賞与を算出します。

    基本給に、実績や勤務態度、出勤状況などの加点要素や減点要素、会社の業績などを数値化したものを掛け合わせる方法が一般的です。

    基本給は年齢や勤務年数、これまでの実績が加味されていることが多いため、基本給をベースにした賞与額だと従業員からの納得感も得やすいでしょう。

    出勤率

    基本給に出勤率をかけて評価します。

    たとえば、欠勤のない従業員の場合は基本給×100%、8割出勤している従業員なら基本給×80%で出勤率を割り出します。

    出勤率も基準が明確なため、従業員の納得感を得られやすいでしょう。ただし、有給休暇は欠勤扱いとはなりません。

    会社の業績

    ベースとなる基本給などに、会社の業績を反映して加点する企業もあります。

    賞与の金額は会社の業績によって変動するため、業績の達成度に応じたパーセンテージを設定し、全体の基準として計算に組み込みます。

    全従業員の賞与が一律の基準で計算されるため、公平性を保ちやすいといえるでしょう。

    査定シミュレーション

    実際に上記3つの賞与査定基準を用いて「基本給×出勤率×会社業績」で、ある従業員の12月の賞与を算出してみましょう。

    ・基本給20万円
    ・査定期間は4〜9月
    ・出勤率は100%
    ・業績達成率は110%

     基本給×出勤率×会社業績
    =200,000×1.0×1.1
    =220,000

    となるため、12月の賞与は22万円と計算できました。

    賞与査定の基準となる項目

    賞与査定では、加点要素や減点要素の判断指標として「業績評価」「能力評価」「行動評価」という人事考課を基準とする方法があります。

    賞与査定に使用する基準は以下の項目が一般的です。

    業績評価

    業績評価は賞与査定期間中、どの程度目標を達成できたか評価する指標です。

    売上達成率や目標販売数など、定量的な評価は数値化して評価ができるため、評価項目として組み込みやすいでしょう。

    業績評価の項目例
    ・個人またはチームとしての売上目標の達成度
    ・コスト削減や利益率向上への貢献度
    ・顧客からの評価やクレームの有無
    ・プロジェクトの完了度合いや成果
    ・新規顧客獲得や市場拡大への貢献度

    能力評価

    能力評価は個々の業務遂行能力やスキルに基づいて評価します。

    賞与査定期間中に業務に必要な資格を取得したり、顧客からの高評価数が多かったりなど、従業員が努力した点を評価する方法です。

    能力評価の項目例
    ・業務に必要な専門知識の習得度や活用能力
    ・問題解決やイノベーションへの貢献度
    ・貢献に対するクライアントからの高評価数
    ・チームの指導や統率能力
    ・スキルや能力向上に対する意欲や努力度

    行動評価

    行動評価は、業績を出すために起こした具体的なアクションを評価します。

    たとえば、他者への協調姿勢や自己管理能力なども該当するでしょう。遅刻欠勤の有無や勤務態度のほか、ミーティングでの積極的かつ前向きな発言など、日頃の行動についてが評価対象にされることが多いです。

    行動評価の項目例
    ・チームメンバーへの協力度合いやサポート度合い
    ・業務に対する責任感や継続的な取り組み
    ・他者への敬意やプロフェッショナリズム
    ・問題への対応や冷静な判断力
    ・労働時間の適切な管理や自己ケアの取り組み

    人事考課の基準は客観的に判断しやすいものが望ましいですが、実際には従業員の定性的な部分も加味される場合が多いでしょう。

    ・目標達成への意欲
    ・仕事に取り組む姿勢
    ・チームを率いるポジションをみずから引き受ける積極性
    ・外部のセミナーに自発的に参加する成長意欲

    賞与査定の手法・やり方

    賞与額は基本給をベースにし「基本給×◯か月×評価係数」という計算式で算出するのが一般的です。評価係数の決定方法に決まりはないため、企業が自由に設定することができます。

    具体的な評価項目やポイントの設定、ランクの割り当て方法、賞与額の算出基準は企業や組織によって異なりますが、当記事では一般的な賞与査定の手法・やり方の例を手順に沿って解説します。

    1.従業員の業績・能力・行動を5段階で評価する
    2.総合評価からランクを割り当てる
    3.賞与額を算出する

    1.業績・能力・行動を5段階で評価する

    まず、査定の基準となる「業績評価」「能力評価」「行動評価」のポイントを押さえ、チェック項目を設定します。

    それぞれの項目について、従業員を5段階で評価します。たとえば、業績評価では目標達成度や成果の大きさを5段階で評価します。

    5期待をはるかに超えて貢献を果たした
    4期待に大いに応えて貢献を果たした
    3期待に見合った貢献をした
    2期待に対して成果が不足した
    1期待に大きく及ばなかった

    2.総合評価とランクを割り当てる

    各評価項目の評価結果を総合し、合計ポイントを算出します。これによって総合評価ポイントが得られます。

    次に、総合評価ポイントに基づいて、あらかじめ評価係数が設定されたランクを割り当てます。たとえば、SABCのようにランクを設定するのがわかりやすいでしょう。そして、ランクに紐づいた評価係数を設定します。

    総合評価ポイントランク評価係数
    15ポイント~S1.5
    11~14ポイントA1.3
    7~10ポイントB1.1
    4~6ポイントC0.9
    ~3ポイントD0.7

    3.賞与額を算出する

    最後に、上記で導き出した評価係数を使い「基本給×◯か月×評価係数」の計算式に当てはめて賞与額を決定します。ランクが高い従業員ほど高い賞与額が支給されます。

    以下の条件で、実際に賞与を計算してみましょう。

    ・賞与は基本給3か月分
    ・基本給20万円
    ・Aランク(評価係数1.3)

     基本給×◯か月×評価係数
    =200,000×3×1.3
    =780,000

    賞与は78万円と計算できました。

    賞与の査定表とは

    企業は、賞与査定を行うにあたり、従業員の実績を客観的かつ公平・公正に評価しなければなりません。そこで、多くの企業では賞与査定表が使われています。

    賞与査定表には、査定基準や評価項目、ポイント割り当てなどが記載されており、それをもとに従業員の業績や能力、行動などを評価します。

    賞与査定表は公平かつ客観的に査定するためのツールとして活用され、各項目に対してポイントが設定されています。従業員それぞれの評価結果を表でまとめ、査定ポイントの合計から賞与額を算出する際に使用されます。

    インターネットで検索すると、賞与査定表のテンプレートが公開されていますので、賞与査定表を自社で活用する際は参考にしてみてください。

    賞与査定で注意すべきこと

    法律上、企業は賞与を支払う義務はありません。しかし、賞与査定において注意しなければ法律に抵触する可能性があります。

    法的に賞与の支払い義務がないからといって、企業の身勝手な判断で賞与査定を行うと、労働基準法違反や人権問題などに発展してしまう恐れもあるでしょう。

    賞与査定時の注意点を法律についても触れながら解説します。

    査定基準の透明性と公正性を確保する

    賞与査定の基準があいまいで従業員に非公開だと、従業員の不満が高まりやすくなります。明確な評価基準を設定し、誰でも理解しやすいようにチェックシートなどを用意するとよいでしょう。

    賞与査定は企業独自のルールや項目に基づいて行うことから、しっかりと規定を設ける必要があります。また、従業員と企業の間で認識に相違がないよう、賞与の支払い時期や回数、金額などについて理解しやすいように明記しましょう。

    なお査定の際には、人種や性別、年齢、障害などの差別的な要素を含まないように注意が必要です。これらが考慮された賞与査定を行うと、人権問題などに発展する恐れがあります。

    また、自己評価と査定結果の差が大きい場合は、労働紛争のリスクも考えられます。

    評価方法や査定基準についての説明は面談で定期的に行い、従業員の目につきやすい場所に掲示しましょう。

    賞与に関する合意とフィードバックを徹底する

    賞与の査定結果は、面談やフィードバックを通じて本人に説明するようにしましょう。

    従業員が評価や査定結果に対して納得ができない場合には、従業員に意見を述べる機会を提供しましょう。賞与査定について、従業員の納得や合意を得ることがトラブルを回避するカギとなります。

    なお、従業員が業務目標を達成できておらず、賞与査定に影響を与えている場合は適切なフォローアップも必要です。目標未達成の理由がスキル不足であれば、補完策を考えることができるでしょう。

    一方で、職場環境の変化や社内の問題が力を発揮できない原因である場合は、企業側が査定方法の見直しなどを検討しなければなりません。従業員の意見を聞きながら適切な対応を取りましょう。

    労働契約や就業規則を遵守する

    法的には企業が賞与を支給する義務はありませんが、労働契約や就業規則に「賞与を支給する」と明記されている場合は、その規則を遵守しなければなりません。

    たとえば企業によっては、業績不振によって賞与を支給しないとする場合もあるでしょう。本来、このような場合は企業が賞与を支払うか支払わないかを決めることができます。

    しかし、労働契約や就業規則に、業績不振時の不支給について明記がなければ支給義務が発生する可能性があります。自社の就業規則を見直し、支払わない事態の発生が考えられる場合には、その条件などを記載するようにしましょう。

    退職予定者や休職予定者の賞与査定に注意する

    就業規則や労働契約、企業規則などで退職予定者や休職予定者の賞与査定について明記されていないと、差別的な扱いと見なされる可能性もあります。

    退職や休職を予定している従業員のことを「将来の期待値が低い」と考える企業もあるかもしれません。

    しかし、休職や退職時の賞与について社内で規定がないにもかかわらず、そのほかの従業員と大きく差をつけた賞与額に設定するのは、労働基準法に違反する恐れがあります。

    退職予定者や休職予定者について、特殊な賞与査定を行う場合は、その理由や基準などをあらかじめ就業規則に記載しておきましょう。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    賞与査定でのトラブル事例

    透明性や公正性に欠けたり、差別的な賞与査定を行った場合、労使間でのトラブルに発展することがあります。賞与査定で起こりうるトラブルの例をご紹介します。

    退職時期の賞与査定をめぐるトラブルの例

    労使間の問題解決の手助けをする「あっせん」を行う労働相談情報センターの資料によれば、退職時期の賞与査定におけるトラブルの例が紹介されています。

    退職予定のAさん(入社4年目、正社員)は、同じ時期の賞与査定で大幅な減額を通知されました。

    Aさんは同僚と同じくらいの業績を上げており、減額査定に納得できなかったため、会社と交渉します。しかし企業側は、退職による貢献の減少を理由に、この減額を当然であると主張したのです。

    相談を受けた労働相談情報センターが問い合わせしたところ「賞与査定は賞与支給規程に基づいている」との回答を受けました。そのあとAさんが過去の退職者に尋ねると、同様に退職時期の賞与は評価に関係なく、大幅な減額査定が行われていた事実が判明します。

    センターは会社に対し、過去の裁判例や公正評価義務、人事権の濫用などを説明し、再考を促しました。その結果、該当の企業は賞与査定について再考し、当初の査定結果に比べて減額分を1/4に縮小することを表明し、最終的に解決に至りました。

    参照:『労働相談及びあっせんの概要(令和3年度)』東京都産業労働局

    まとめ

    賞与は従業員の意欲向上にも寄与する大切な制度です。しかし賞与査定をおざなりにすると、従業員のモチベーションを下げるどころか、トラブルへと発展し、法的措置の対象となる可能性も高まります。

    賞与査定の期間や基準を明確にするとともに、評価指標を設定したり、査定表を準備したりして、公平な評価が行えるよう制度を整えるようにしましょう。

    また、自社の賞与査定の方法を社内共有することや、査定結果をフィードバックすること、退職予定者・休職予定者などの特殊な賞与査定、不支給となるケースについてを就業規則に明記することも、トラブル回避につながります。

    賞与が従業員エンゲージメントを高める制度となるように、公平性や透明性に留意した賞与査定を行いましょう。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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