• 2022.08.10  最終更新日2022.10.25
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【人事向け】パーパス経営とは? 企業事例、注目理由、成功ポイント、人事に求められる役割

【人事向け】パーパス経営とは? 企業事例、注目理由、成功ポイント、人事に求められる役割

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次世代型の経営モデルとして注目されるパーパス経営。昨今における社会情勢の変化によって、パーパス経営を重視する企業は増えています。とはいえ、詳しいことがわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで当記事では、人事担当者が押さえておきたいパーパス経営の概要をはじめ、取り入れる際のポイントや人事に求められる役割まで解説します。パーパス経営について理解を深めたい場合には、ぜひお役立てください。

目次(タップして開閉)

パーパス経営について

まずはパーパス経営について、概要や成立条件などを解説します。

そもそもパーパスとは

パーパス(Purpose)とは何かが存在するための理由(=存在意義)のことです。また単なる存在価値ではなく、なんらかの価値を生み出すために存在するといった深い意味合いを持ちます。ビジネスの場面では「自社が存在する社会的な意味」として捉えられます。

パーパス経営とは

パーパス経営とは、自社の存在意義を掲げ、社会に価値を与える経営手法です。パーパスを軸にして、企業活動を行い社会貢献を目指します。従来の企業活動では、利益の創出を第一に活動するケースが一般的でした。しかし利益を第一に考えた結果、浮き彫りになった課題もあります。そのため、企業と社会のあり方を見直す風潮になり、パーパス経営へ注目が高まるようになりました。

パーパス経営の条件

パーパス経営には満たすべき条件があります。主なものは以下の通りです。

1.社会課題を解決できること

パーパスは、さまざまな社会課題を解決するものであるとよいです。企業活動を通して身近な課題を解決していくということは、従業員の職務へのモチベーションにもつながります。企業のあらゆる利害関係者・ステークホルダーから共感も得られやすくなります。

パーパス経営で解決を目指す社会課題とは、以下のようなものがあります。

・地球温暖化
・所得格差
・放射能汚染
・少子高齢化

2.利益を生み出せる

社会貢献を目指すパーパス経営であっても、自社の利益を生み出さないといけません。すぐに利益を出すのは難しいかもしれませんが、中長期的に継続してパーパスを主軸とした企業活動を行うことで自社ブランドを認知してもらい、利益を生み出す必要があります。それによって従業員も安定的に働けて、ステークホルダーも安心することができます。

3.自社のビジネスに直結する

パーパス経営での企業活動は、もともとの自社ビジネスと関係があるものがよいです。社会課題を解決し一時的に利益を創出できても、自社のビジネスと無関係なものでは、市場で認められませんし、長期的に利益を出すのは難しいでしょう

4.実現可能な内容である

壮大なパーパスを掲げても、実現が不可能な内容であれば、成功とはいえません。パーパス経営は、実現が見込めるものに取り組みましょう。

5.従業員が共感できる

掲げるパーパスが、共感できる内容だと従業員は意欲的に職務に取り組みます。

パーパス経営の企業事例

続いて、パーパス経営の企業事例をご紹介します。

事例1:パーパス経営で最高益を上げたソニーグループ

ソニーグループのパーパスは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。

同社は従来より多様なビジネスを手掛けてきました。そのため、全従業員が同じ方向を向いて業務に取り組めるよう、指標の位置づけとして「パーパス」の策定を決めます。また、代表が率先してパーパス経営を実践し、全従業員に「自社の良さとは?」や「みなさんの意見をください」と呼びかけた点も特徴です。

具体的な取り組みは、以下の通りです。

・パーパスの浸透を目指す専門の部署(P&V事務局)を立ちあげ
・代表の「パーパスへの思い」をつづった署名入りレターの配信
・マネジメント層に対し「事業戦略とパーパスの関連づけ」を依頼
・パーパスをビジュアルで理解するためのビデオ作成

その結果、社内にパーパス経営が浸透し、今では各自が「自分の目標」と「パーパス」を結びつける流れが当たり前になっています。また社内に団結力が芽生え、困難に立ち向かえる強固な組織ができあがりました。

参考:『ソニーグループについて』ソニー株式会社

事例2:パーパス経営に膨大な時間をかけ、一致団結に成功した味の素

味の素のパーパスは、「食と健康の問題解決」です。

以前の同社は企業が掲げる目標に手が届かず、試行錯誤していました。このようなときにパーパス経営の存在を知り、方向転換することで社内の統一をはかろうと考えます。

具体的な取り組みは以下の通りです。

・組織と個人の目標を設定したうえで、個人目標発表会を実施
・「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)アワード」で優秀者を表彰
・エンゲージメントサーベイで、一連のサイクルを検証

今後もパーパス経営を続け、適切なコストダウンを目指し、投資家からさらなる支持を得ることを目標としています。

参考:『味の素グループの目指す姿』味の素株式会社

事例3:パーパス経営で、人々の生活を豊かにするネスレ

ネスレのパーパスは、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていくこと」です。

同社は、食が生活を豊かにすると考え、自社が人々の生活を高めることが使命だとしています。また、パーパスの実現に向けて3つの領域を軸とし、以下のような取り組みをしています。

個人と家族のために
・オフィスで使えるコーヒーマシーンで、社内コミュニケーションを活性化
・自宅でスーパーフードが摂取できるスムージーで、自然派素材を手軽に飲める機会を提供
コミュニティのために
・沖縄で大規模な国産コーヒー豆の栽培を目指すプロジェクトを実施
・車両を改造したバス内で、保護猫の譲渡会を実施
地球のために
・2025年までに包装材料を「完全リサイクル」または「リユース可能」にする
・主力商品のパッケージを紙化

参考:『ネスレの存在意義』ネスレ日本株式会社

パーパス経営への注目が高まる理由

なぜパーパス経営への注目が高まっているのでしょうか。

MVVからPDBへ移行

MVVとはミッション・ビジョン・バリューの頭文字です。つまり、企業の使命・理念・行動指針です。PDBとはパーパス・ドリーム・ビリーフです。つまり、存在意義・展望・価値の頭文字です。

企業が重視するものとしてMVVからPDBに移行していることが、パーパス経営に注目が高まっている理由の1つ目です。

MVVは外発的な概念で、必ずしも社会貢献を目指すものではありません。それに対してPDBは、自社で内発的にわき上がるものとされています。そして、社会貢献を目指し、社会的な価値を含む内容であることが求められます。

SDGsへの注目が高まっている

パーパス経営への注目が高まる理由の2つ目は、SDGsへの注目が高まっている時代背景です。

個人はもちろん企業全体で取り組む課題も含まれるので、SDGsに注目し「サステナビリティ経営」を実施している企業は多いです。

サステナビリティ経営の実現には、自社の「社会的な存在意義」を明確にする必要があるため、パーパス経営が注目されているのです。

ミレニアル世代の活躍

パーパス経営への注目が高まる3つ目の理由は、ミレニアル世代の活躍です。

ミレニアル世代とは1980年代から1990年代半ばの生まれであり、バブル崩壊後の経済低迷期に育った世代を指します。今後の企業活動で軸となる世代であり、現在も活躍しています。またミレニアル世代は経済が不安定な中で育ったことから、社会貢献への意識が高い傾向にあります。そのため社会貢献への意識が高い企業を自分の勤務先に選ぶ傾向にあります。

企業も優秀なミレニアル世代の人材を確保するため、パーパス経営へと移行する動きが加速しているのでしょう。

パーパス経営のメリット

パーパス経営のメリットは、主に以下の3点です。

ステークホルダーから支持を獲得できる

パーパス経営における1つ目のメリットは、企業のあらゆる利害関係者・ステークホルダーから支持を獲得できることです。

企業の社会的意義に注目が集まる昨今、パーパス経営に取り組む企業は、ステークホルダーから支持されやすくなります。ステークホルダーから支持されるほど、売上げ増やブランディングの成功が期待できるため、企業活動も円滑に進むでしょう。

変化しながら成長できる

パーパス経営における2つ目のメリットは、変化しながら成長できることです。

変化の激しい時代において、現状維持のままでは企業活動を続けるのは難しいかもしれません。パーパス経営を実施している企業は、会社の存在意義を念頭に置いて、従業員一人ひとりが実現に向けて一丸となって取り組む傾向にあります。そうするとチームに一体感が生まれ、さまざまなアイデアを出し合ったり、他者の意見も尊重するなど柔軟性が生まれやすくなるでしょう。柔軟な組織は変化に強く、時代に対応しながら、よりよい状況を選んで成長を続けられます。

従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まる

パーパス経営における3つ目のメリットは、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まることです。

パーパス経営で掲げる「パーパス」は、従業員の「会社で働く意味」になることもあります。企業がパーパス経営に全力で取り組んでいると、従業員自身も「自社で働くことで社会貢献ができる」と前向きな気持ちになりやすいでしょう。結果的に、モチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。

パーパス経営における課題

パーパス経営にはメリットがあるものの、課題もあります。

パーパスウォッシュを回避する

パーパス経営における課題の1つ目は、パーパスウォッシュを回避することです。

パーパスウォッシュとは、パーパス経営を掲げているものの、実質が伴わない状況を指します。パーパスウォッシュに陥ると、「パーパスとは名ばかりで、実際には何もしていない」という印象を与えるため、ステークホルダーからの支持を失ってしまうかもしれません

そのためパーパス経営を行う際には、「自社が実現できるパーパスか」や「実質が伴っているか」を適宜確認し、パーパスウォッシュを回避する必要があります。

ESG対応などにコストがかかりがち

パーパス経営における課題の2つ目は、ESG対応などにコストがかかりがちなことです。

ESGとは、企業の持続発展に欠かせない要素です。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとった言葉です。

ESGに取り組むと、大きなコストがかかる可能性があります。しかしESGの視点が欠けたパーパス経営は、投資家からの支持を得にくく、利益面で大きなマイナスになる恐れもあります。そのためパーパス経営を行う場合には、ESGに費やすコストと、企業の状況についてバランスを見ながら調整することが欠かせません。

従業員に浸透させるのが難しい

パーパス経営における課題の3つ目は、従業員に浸透させるのが難しいことです。

「パーパス経営が十分に浸透しない」と悩む事例は多いようです。その理由は、従業員の理解を得られていないことにあるでしょう。

たとえば「自社の掲げるパーパスは、ただのきれいごとだ」と思われれば、共感は得られません。共感が得られなければ、従業員はパーパスの実現に向けて、積極的には動いてくれないでしょう。そのため、従業員の心が動くような内容を意識し、パーパス経営を従業員に浸透させる必要があります。

パーパス経営を取り入れるには

パーパス経営を取り入れるには、以下の流れで進めます。

STEP1:パーパスの明確化
STEP2:パーパスステートメントの作成
STEP3:パーパスステートメントの実行

STEP1:パーパスの明確化

まずは自社のパーパスを明確にします。ポイントは以下の通りです。

1.社会問題を解決できる
2.利益を生み出せる
3.自社のビジネスに直結する
4.実現可能な内容である
5.従業員が共感できる

STEP2:パーパスステートメントの作成

続いて、パーパスステートメントを作成します。パーパスステートメントとは、パーパスを詳細に示したものです。「何を行うか」ではなく「何を目指すか」に比重を置いて作成します。誰が読んでも伝わるシンプルな内容を心掛けましょう。

STEP3:パーパスステートメントの実行

パーパスステートメントが完成したら、実行に移します。実行前に、必要なシステムの整備、人材の確保、資金調達は済ませておきましょう。またパーパスステートメントの実行では、企業の経営層が率先して実行していく必要があります。

パーパス経営を成功させるためのポイント

パーパス経営を成功させている企業は、実現できるパーパスを掲げ、具体的な施策に落とし込んでいます。そして、従業員に正しく浸透させています。

パーパス経営を成功させるには、明確なパーパスの設定はもちろんのこと、自社の業務内容とパーパスを適切に結びつける必要があるでしょう。また、経営者が率先してパーパスを具体化した取り組みを行うことが重要です。

社内へのパーパスの浸透と同時に、現在どれだけ浸透しているかといった効果測定も適宜行い、修正していきましょう。

パーパス経営における人事の役割とは

当記事はパーパス経営の概要、企業事例、メリット、課題などについて解説しました。社会情勢や価値観の変化によって、注目が高まるようになったパーパス経営。従業員の働きがいにもつながるので、人事担当者においても重要な概念といえます。

パーパス経営における人事の役割は、組織と個人の志をすり合わせ、納得感を得ることです。パーパスは内からわき出るものであり、無理に強要するものではありませんが、1on1ミーティングなどを通して個人の志を引き出し、企業が実現を目指すパーパスに理解を得ることが重要です。

パーパス経営の課題の一つである「従業員への浸透」に、人事の果たす役割は大きいといえるでしょう。

タレントマネジメントシステム『スマカン』は、従業員一人ひとりの価値、志向などを顔写真つきで管理し、人材マネジメントの効率化をサポートいたします。1on1のアジェンダ設定や継続的な面談内容の記録管理などにお役立ていただけます。

パーパス経営の実現に向けた社内整備を進めるにあたって、ご検討してみてはいかがでしょうか。

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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