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労働分配率とは? 計算方法や目安を徹底解説!
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労働分配率とは、企業の付加価値の中でどれくらい人件費に分配したかをあらわすものであり、高すぎても低すぎてもよくありません。
しかし計算式に当てはめてみても、目安がわからず対処ができていないというケースも少なくないでしょう。
多くの企業が無駄なコストを省きたいと考えているはずですが、実はこの労働分配率も人件費に影響するため、正しく理解しておきたいところです。
当記事では労働分配率について解説しながら、計算方法や目安についてもご紹介します。企業の経営層や人事担当者はぜひ参考にしてみてください。
目次(タップして開閉)
労働分配率とは
労働分配率とは、企業活動で得た付加価値に占める人件費の割合です。適切な人件費かどうかを把握できる指標の一つといえます。
労働分配率を計算すると人件費がどれくらいなのかを把握できるため、企業のコストや生産性を考えるうえで、経営層にとっても重要といえるでしょう。
たとえば労働分配率が高すぎる場合は、付加価値の多くを人件費に分配していることを意味します。反対に労働分配率が低すぎる場合は、付加価値を適切に人件費に回せていないということを示唆します。
労働分配率は、高すぎても低すぎてもメリットデメリットがあり、必ずしもどちらか一方に偏っている状態がよいとは言い切れません。
そのため、労働分配率や目安を理解したうえで、適切に人件費を管理したいところです。
日本と世界の労働分配率
内閣官房によると、先進国の労働分配率は将来的に低下傾向にあるとしています。
実際に、内閣官房が公表している『賃金・人的資本に関するデータ集』では、OECD Statのデータから、先進国における労働分配率の推移を比較しています。
2019年において労働分配率が最も高いのがアメリカの52.8%、次いでドイツの52.3%、イギリスの50.5%、フランスの50.2%、日本が50.1%となっています。
労働分配率が低い原因は人件費が増えにくいためであり、昨今の物価高なども相まってさらに低下する可能性も否定できません。十分な人件費が分配できていない場合は、今後の適切な分配が課題の一つともいえるでしょう。
労働分配率の計算方法
労働分配率は、以下の計算式に当てはめて求められます。
労働分配率=人件費÷付加価値×100(%) |
労働分配率の人件費とは
労働分配率の計算式で使用する人件費とは、役員報酬や従業員の給与や賞与、雑給(アルバイトの給与など)、間接的な人件費である法定福利費なども含みます。
人件費に含まれるものの例 |
---|
・役員報酬 ・給与 ・賞与 ・賞与引当金繰入額 ・退職金 ・退職金年金掛け金 ・雑給 ・研修費 ・福利厚生費 ・法定福利厚生費 |
労働分配率の付加価値とは
労働分配率の計算式における付加価値とは、企業が新たに生み出した価値のことを指しています。
企業活動のなかでは、商品を販売する際に、仕入れた材料を加工したり新たな価値を付与したりします。その結果、仕入れた額よりも高い額で販売して儲け(利益)を出しているのです。
この仕入れた額と販売した額の差額が「付加価値」とされています。
付加価値の計算方法には2種類あり、中小企業庁方式の控除法と日銀方式の加算法が挙げられます。
計算方法 | 計算式 |
---|---|
控除法 | 付加価値=売上高ー外部購入価格 |
加算法 | 付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+経常利益 |
控除法は、売上高から外部購入費(仕入れ高や運送費、材料費、加工費の合計)を差し引いて算出します。比較的簡単な計算式であることが特徴で、中小企業向けの方法です。
加算法は、製造過程で付加価値が高くなるため、合算して計算します。控除法に比べてさまざまな要素を加算して複雑な計算式であることが特徴で、大企業向けの方法といえます。
労働分配率と労働生産性の関係
企業の人件費を考える際、労働分配率だけでなく労働生産性との関係性についても理解しておくとよいでしょう。
労働生産性とは
労働生産性は、投入した労働量に対してどれくらいの付加価値を生み出しているかをあらわす指標であり、1人当たりが稼ぐ力(効率性)を示します。
労働者1人当たりにつき、どれくらいの生産ができ、効率性がどれくらい高いかなどを判断するものです。
労働生産性は、数値が大きいほど生産性が高いといえますが、業務効率化や労働者のスキル向上などにより高められます。
労働生産性=付加価値÷従業員数 |
労働生産性を捉えることは、どれだけ労働力を効率的に活用できているかを把握することにつながるでしょう。
労働分配率と労働生産性、両方をバランスのよい状態にすることで、従業員の給与アップにつながるだけでなく、企業全体がより生産性の高い状態となります。従業員のモチベーションが上がり、人材確保がしやすくなるメリットもあるでしょう。
労働生産性の目安
労働生産性の数値を判断するには、基準として自社における過去の数値や、同業他社の数値と比較してみましょう。
自社における過去の数値を確認することで、数年間のなかで労働生産性が上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのかを判断できます。
また、同業他社の労働生産性と比較すると、自社の労働生産性が高いのか低いのかを判断する目安になるでしょう。
労働分配率の目安
労働分配率を計算できるようになっても、自社の労働分配率が適正な状態なのかがわからなければ対処しようがありません。
そこで労働分配率の目安について大切な点を解説します。
労働分配率は業種を参考にする
労働分配率は、業種によっても大きく異なります。全業種に適用できる基準といえるような明確な数値はありません。
目安として参考にできるのが、同業種の労働分配率の平均値です。
経済産業省が行う『企業活動基本調査』では、主要産業の労働分配率として製造業が46.2%、卸売業が46.5%、小売業が49.6%という結果を公表しています。
同業種の平均値と自社の労働分配率を比較してみることで、高すぎたり低すぎたりしていないか確認できるでしょう。
また、内閣官房が公表している『賃金・人的資本に関するデータ集』では、財務省の統計データから労働分配率の産業間比較を公表しています。
このデータからは、2021年において最も労働分配率が高い産業が運輸・郵便業で84.4%、最も低い産業が情報通信業で58.0%となっています。
参照:『2022年企業活動基本調査速報-2021年度実績-』e-Stat政府統計の総合窓口
『賃金・人的資本に関するデータ集』内閣官房(2021)
労働分配率は企業規模も踏まえる
労働分配率は、企業規模別の数値も参考にしましょう。小規模企業と大規模企業では、労働分配率も異なるはずです。
企業規模別の労働分配率について、中央企業庁が公表する『2022年版 中小企業白書』では、2020年度の数値として大企業が57.6%、中規模企業が80.0%、小規模企業86.5%という結果を公表しています。
このように大規模企業と比べると、中小企業では労働分配率が高いことがわかります。
業種別労働分配率の平均値に加えて、企業規模の平均値から大幅なズレがないかどうかを確認することで、労働分配率の目安として参考にできるでしょう。
労働分配率が高い場合
労働分配率が高いなら、無駄な人件費がかかってしまっている場合と給与が高い場合の2通りの理由が考えられます。
前者の場合は、無駄な人件費がないか、本来コストを注ぐべきものがないかどうか確認しましょう。
企業活動を進めるうえで、人件費の割合が高すぎるとほかのコストを捻出できていない可能性があります。生産性が下がる原因にもなるため、注意したいところです。
後者のように、しかるべき給与として人件費の割合が大きくなっている場合、従業員の安心感や満足度が向上します。よい循環が起こり、将来的にさらによい影響が出る可能性があるでしょう。
労働分配率が高すぎる企業は、人件費を下げるか、付加価値を増やしてほかの部分に配分する方法を取りましょう。
労働分配率が低い場合
労働分配率が低いなら、人件費に十分な配分がされていないか、少ない人件費で多くの付加価値を生み出しているかの2通りです。
前者の場合、従業員のモチベーションが下がったり離職の原因にもなってしまいます。コストの配分を見直して労働分配率を上げ、適切に人件費へ分配しましょう。
後者の場合も、生産性や収益性が高い状態として問題ありませんが、多くの利益を生み出している状態であれば、人件費の配分を上げられるとさらに付加価値を生み出せるかもしれません。
労働分配率を上げるためには、人件費を上げる必要があります。賞与や給与のベースアップを行うなど、人件費の分配を増やすことで改善できるでしょう。
労働分配率を適正にするために
労働分配率を適正な状態で維持するためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。意識しておきたいポイントをご紹介します。
・人件費を適切に管理する ・業績連動型の賞与を適切に組み込む ・労働生産性も高めるのが理想 |
人件費を適切に管理する
労働分配率が低い場合、従業員が納得できるような十分な給与にはなっていない可能性があります。人件費が十分に配分されていないと、従業員の離職原因にもなり、生産性が下がってしまうのです。
また労働分配率が高すぎると、コストを抑えるために人件費を削除してしまうことも、従業員の不満を抱く原因になってしまいます。
労働分配率は人件費と向き合わなければなりませんが、むやみやたらに実行するのではなく、慎重に解決策を検討しましょう。
業績連動型の賞与を適切に組み込む
労働分配率を適正にするためには、人件費のなかでも賞与のルールを明確にするのがおすすめです。
決算賞与や業績連動賞与など、企業の業績に応じた賞与のルールを設けると、従業員の納得感も高まりやすく、業績に見合った労働分配率を維持しやすくなるでしょう。
労働生産性も高めるのが理想
労働分配率を適正に保つために人件費の調整は対処法の一つですが、もっとも望ましいのは労働分配率も労働生産性も高い状態です。
人件費の配分が多いため従業員の給与も高く、1人当たりの稼ぐ力も大きいということになり、生産性が高いといえるでしょう。
労働分配率も労働生産性も高ければ、結果的に従業員の満足度も高く、企業として利益を上げられていることを意味します。
労働生産性の向上にタレントマネジメントシステム活用も
労働分配率とともに労働生産性を高められると、給与に対する従業員の満足度や利益も高められる可能性があります。
労働生産性を高める方法はさまざまありますが、タレントマネジメントシステムを活用するのも一案です。
タレントマネジメントシステムは従業員データを一元管理し、データを活用して人材配置や人材育成など、戦略的人事を実行し、最終的には経営目標の実現にも役立つシステムです。
特に適切な人材配置は、効率的に仕事を進め、生産性を高めるために重要です。労働生産性に大きくかかわるため、どの業種においても役立つでしょう。
『スマカン』で労働生産性の向上もサポート
『スマカン』は、人材データの一元管理や可視化、適正な人材配置、優秀な人材の育成、納得感のある人事評価など、戦略的人事の実行をサポートするタレントマネジメントシステムです。
人材配置や人材育成などにおいて、労働生産性を向上するためにご活用いただけます。アンケート機能を活用して、給与や賞与への満足度を測ってみるのもよいでしょう。
多くの官公庁や大学法人、さまざまな規模の民間企業への導入実績を誇ります。業種や業態を問わず幅広い企業や公的機関で、人事業務の効率化や人材情報の一元管理、データ分析から組織の強化につなげられるでしょう。
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まとめ
労働分配率の計算は、企業の人件費が適切かどうかを確認するために重要です。企業の業種や規模によって状況は異なるため、労働分配率に明確な基準はありません。
同業種や同規模の企業における労働分配率の平均を目安として、高すぎたり低すぎたりしていないか、自社の計算結果と比較するとよいでしょう。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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