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給与明細を電子化するメリット・デメリット|同意書の取り方や導入手順、無料版まで解説
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給与明細を電子化すると、コスト削減や多様な働き方への対応など、さまざまなメリットがあります。しかし、給与明細の電子化について、方法や進め方がわからない方もいるかもしれません。
そこで当記事では、給与明細を「電子化する手順」や「同意書の取り方」について解説します。また、メリットとデメリットについてもご紹介します。
給与明細の電子化を検討しているものの、方法や進め方がわからないというご担当者は、ぜひお役立てください。
※当記事記事の内容は作成日または更新日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。
目次(タップして開閉)
給与明細の電子化とは
給与明細の電子化とは、社員に渡す給与明細を「電子化した状態」で配布することです。昔は、給与明細を紙で印刷し、手渡しする企業も多くありました。
しかし最近は、給与明細を電子化するメリットも大きく、ペーパーレス化が推進される背景もあることから、多くの企業で進められているようです。
給与明細の電子化はいつから始まった?根拠となる法律
給与明細の電子化は、2006年に税法が改正され、2007年の1月1月以降に交付する給与明細から「電子交付」が可能になりました。
そもそも企業は、所得税法によって、従業員に給与明細を交付するよう義務づけられています。
また、給与明細を電子化データで提供するには、従業員に事前に説明し、承諾が必要とされています。ただし、従業員が紙による給与明細書を求めた場合は、それに応じなくてはいけません。
参照:『基本的な事項』国税庁
給与明細の電子化普及率|割合は?
給与明細の電子化はどれくらい普及しているのでしょうか。2021年のある調査では、8割を超える企業が給与明細を電子化していると回答しています。
参照:『進む給与関連の電子化! デジタル払い賛成派は何割? 最新調査を発表』
給与明細を電子化する方法・やり方は?
給与明細を電子化する方法は、以下の3通りです。いずれの方法も、電子化データにパスワードを設定し、交付する必要があります。
電子メールでデータ交付
給与明細を電子化する方法1つめは、電子メール経由でデータを交付するやり方です。一定の日時に送信できるよう、事前に配信設定を行うケースもあります。
インターネット上で閲覧
給与明細を電子化する方法2つめは、インターネット上で閲覧してもらうやり方です。クラウドサーバー内にデータを保存し、そのデータを従業員にアクセスして見てもらいます。
磁気媒体で交付
給与明細を電子化する方法3つめは、磁気媒体での交付です。磁気媒体とはCD-ROM、フロッピーディスクなどを指します。
給与明細を電子化するメリット
給与明細を電子化するメリットは、以下4つが挙げられます。
コスト削減ができる
給与明細を電子化する1つめのメリットは、コスト削減につながることです。
給与明細を電子化すると、ペーパーレス化ができるため、紙やインク代を削減できます。在宅勤務や支店で働く社員など、手渡しで給与明細を渡せない人に郵送していた切手代や封筒代の削減にもつながるでしょう。再発行を依頼された場合の、紙やインク代も同様です。
給与明細の電子化で担当者の作業範囲も減る可能性があり、人件費の削減につながる企業もあるかもしれません。
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業務効率化につながる
給与明細を電子化する2つめのメリットは、業務効率化です。給与明細を紙で発行する場合、印刷や封入、手渡しまたは郵送という業務が発生します。
特に給与明細は、渡す相手を間違うとトラブルになり、ほかの業務より確認作業に時間を取られる場合もあります。給与明細を電子化すると、一連の作業が軽減でき、業務効率化につながります。
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ミスを減らせる
給与明細を電子化すると、ミスを減らせる可能性があることもメリットです。給与明細を紙で交付する作業には、配布や郵送事故、封筒と中身の宛名の入れ違いというミスが考えられます。
人が作業するので致し方ないとはいえ、給与明細の間違いはトラブルも起こり得るので、注意が必要です。給与明細を電子化できると、郵送や手渡し作業がなくなり、ミスの発生を減らせる可能性があるでしょう。
多様な働き方に対応できる
給与明細の電子化は、多様な働き方を促進することにもつながります。昨今は、リモートワークやハイブリッドワーク、時短勤務など多様な働き方が増えています。
給与明細を紙で交付する場合、フルリモートワークの方には郵送、ハイブリッドワーカーや時短勤務者には、出社時間やタイミングをうかがいながら手渡す必要があります。
給与明細を電子化して、メール送付やクラウド上での閲覧という方法をとれば、データの送付やアップロードで作業が完了します。
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給与明細を電子化するデメリット
給与明細の電子化には、メリットがある一方、デメリットもあります。主なデメリットを3つご紹介します。
情報漏えいへの対策が必要
給与明細の電子化するデメリットの1つめは、情報漏えい対策に気を遣う必要があることです。
まず第一に、どのような交付方法でも、パスワードの設定が必須です。加えてメール送信の場合は宛先確認の徹底、インターネット上の閲覧の場合はサーバーのウイルス対策と閲覧権限の設定が必要です。磁気媒体においては、紛失しないようにすること、万一紛失した場合を想定して複雑なロックをかけることも求められるでしょう。
情報漏えいがあれば、従業員からの信頼を失うことになるため、対策は欠かせません。
コスト(費用・時間)がかかる
給与明細の電子化は、コスト(費用・時間)がかかる点もデメリットといえます。これから給与明細を電子化する場合、従来のやり方を変更することになり、ルール決めやセキュリティ対策が求められます。
このような新たなフローを構築するには、当然手間と時間がかかるでしょう。給与明細の電子化には、専用システムを活用すると便利ですが、初期費用やランニングコストなどを考慮しなければいけません。
データ改ざんの可能性がある
給与明細を電子化すると、第三者にデータが改ざんされる可能性が生まれます。改ざんを防ぐためには、アクセスログをこまめに確認したり、電子署名を付与するという対策が必要です。
給与明細を電子化する手順・ポイント
これから給与明細を電子化する場合の手順やポイントを、5つのステップに分けてご紹介します。
1.給与明細電子化の範囲を決定
給与明細を電子化する際は、まず第一に、どこまでの範囲を電子化するか決めます。単なる月の給与明細に限らず、源泉徴収票や社内預金明細の通知なども含めるのか検討します。
2.給与明細電子化について従業員に同意を得る
給与明細の電子化について社員に十分説明し「給与明細電子化の同意書」を締結します。先述の通り、給与明細を電子化に移行する場合、従業員の同意を得なければいけません。所得税法231条2項に「給与等の支払いを受ける者の承諾を得て電磁的方法により提供することができる」と規定されているからです。
同意書は紙でも電子でも問題はありません。ただし給与明細を電子化するシステムを導入するのであれば、システム上で同意をとってもいいでしょう。
日本の人事部では、無料でダウンロードできる同意書のテンプレートを公開しています。
3.給与明細電子化ツールの決定
同意書を締結後は、給与明細電子化ツールを選定します。先に挙げた①メール②ネット閲覧③次期媒体、どの方法をとるのか決めましょう。
②ネット閲覧を選択するほとんどの場合、システムの導入を検討することになります。システムによってできることには違いがあり、給与計算と紐づいたものから従業員の同意を得られるものまでさまざまです。自社で実現したいことや予算、雇用形態を踏まえて、総合的な判断がおすすめです。
4.セキュリティ対策を講じる
給与明細の電子化では、セキュリティ対策が欠かせません。
電子メールで交付する場合には、盗み見や誤送信への対策が必要です。ツールやシステムを導入してWeb上で閲覧する場合には、ウイルス攻撃や不正アクセス対策が求められます。社外からも確認できるシステムであれば、従業員への注意喚起も必要でしょう。磁気媒体での交付は、盗難や紛失のリスクに備えて対策を打ちます。
どの方法を選択しても、必ずバックアップをとっておきましょう。
5.給与明細の作成、交付
最後に実際にツールを使って、給与明細の電子化データを交付します。クラウド型の給与明細発行システムを導入すると、交付にかかる工数を削減できる可能性が高まります。
給与明細電子化の同意書が得られない・反対される場合
給与明細電子化について、同意しない従業員もなかにはいるかもしれません。給与明細電子化の同意書が締結できない場合、担当者はどのように対応すればいいでしょうか。
説明を尽くす
まず第一に、十分に説明を尽くすことが重要です。紛失リスクや再発行、管理コストの削減、在宅勤務に適していることなど従業員側のメリットを伝えましょう。同時に反対の理由もヒアリングします。懸念点や不安点を解消できれば、同意を得られる可能性もあります。
個別に印刷する
給与明細の電子化について十分に説明しても同意されない場合は、個別に給与明細を紙で発行する対応をとりましょう。電子データで用意した明細を紙で印刷し手渡しします。電子化対応前より、紙での交付人数が減れば、それだけでも担当者の工数削減にはつながるはずです。
給与明細の電子化は無料でできる?
給与明細の電子化を進めるにあたって、できるだけコストを抑えたい方も多いでしょう。ここでは、できるだけコストがかからない給与明細電子化ツール導入方法をご紹介します。
無料アプリ(システム)を使う
給与明細は電子化だけでよければ、無料アプリ(システム)で対応できます。一番手軽なのが、エクセルやワードで作成した明細をPDFで保存し、メールで交付する方法です。システムも無料で導入できますが、一定の条件があります。サポート機能や給与明細項目のカスタマイズなど、できることを増やすと有料プランになる場合がほとんどです。
無料トライアルを試す
給与明細電子化システムの導入を検討しているものの、何が本当に必要かわからないという場合、まずは無料トライアルを試すのがおすすめです。使い心地や電子化以外の機能もここで確かめることができます。無料トライアルで気に入った場合は、初期費用やランニングコストを支払い、有料プランに移行することも可能です。
無料システムの注意点
先述の通り、給与明細を電子化するだけなら無料で始められる場合もあります。しかし、給与管理全体のシステム化を検討しているなら、無料システムだけでは物足りないかもしれず、注意が必要です。無料システムでは、メール配信に対応していなかったり、給与計算は引き続きアナログで管理しなければいけなかったりすることもあるでしょう。サポート対象外であることも、あとあと不便に感じるかもしれません。
給与明細の電子化システムの料金相場
それでは有料の給与明細電子化システムは、どれほどコストがかかるのでしょうか。料金相場をご紹介します。給与明細の電子化に対応するシステムは、大きく分けて2つに分けられます。給与明細に特化した専門型と給与計算や労務管理システムの中の1機能として、電子明細が発行できるものです。
給与明細の電子化対応に特化した専門型 | 目安:従業員1人当たり30円〜 |
---|---|
給与計算・労務管理と連動した一体型 | 目安:従業員1人当たり100円〜(他機能が含まれるため) ※別途初期費用(数万円〜10万円)が必要 |
リーズナブルといえるのは専門型ですが、セキュリティ面に不安が残ります。多機能な一体型は、十分なセキュリティ対策がされていることが多く、明細発行にとどまらない機能が魅力です。料金だけでなく、自社に必要な機能を見極めて検討することが大切でしょう。
給与明細の電子化を進めて業務効率化
給与明細の電子化は、ペーパーレス化を実現するとともに担当者の手間を省き、業務効率化につながります。セキュリティ面にも注意を払いつつ、専用システムを導入するなどより効率的に進めるのがおすすめです。
給与明細の電子化は従業員の同意を得ることが重要です。従業員にとってもメリットが大きいといえるので、丁寧に説明を尽くすようにするといいでしょう。
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記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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