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ワーキングプアの解決策【企業にできること】原因や問題点も解説

ワーキングプアの解決策【企業にできること】原因や問題点も解説

ワーキングプアとは、フルタイムで働いているにもかかわらず、貧困状態にある人を指す言葉です。近年、ワーキングプアの増加により、注目度が高まっています。そのような現代の情勢から「企業側が行えるワーキングプア対策について知りたい」という人もいるのではないでしょうか。

そこで当記事では、ワーキングプアになりやすい職業や原因、企業が取り組める解決策について解説します。自社の現状と照らし合わせつつ、従業員をワーキングプアに陥らせないためのヒントとしてお役立てください。

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目次(タップして開閉)

ワーキングプアとは

ワーキングプアとは、フルタイムで勤務しているにもかかわらず、収入が生活保護の水準に届かずに貧困状態にある人のことを指します。

貧困状態の基準は国や機関によって異なるため、ワーキングプアについて明確な基準は設けられていません。日本においては、生活保護の年間受給額である収入200万円以下を一つの基準として貧困状態と見なし、ワーキングプアを定義することが多いようです。

ワーキングプアの種類

ワーキングプアには、さまざまな種類が存在します。主な種類を3つ取り上げて解説します。

・高学歴ワーキングプア
・中高年ワーキングプア
・官製ワーキングプア

高学歴ワーキングプア

高学歴ワーキングプアとは、難関大学や大学院を卒業していても、学歴の高さを活かせるような職業に就けない人のことです。

高学歴にもかかわらず、ワーキングプアに陥ってしまう原因には、

・まだ就職したくないという理由で大学院に進学してしまう
・博士号や修士号を持っているにもかかわらず、将来やりたいことが見つけられない
・業務に直接役立つスキルを持っていない
・就職面接などで自己PRを上手にできず、採用に結びつかない

などが考えられます。

高学歴ワーキングプアは、若いうちから低所得者として生活していることで、貧困状態から脱出しづらいことが問題視されています。

中高年ワーキングプア

中高年ワーキングプアとは、正社員採用を希望しているものの、非正規雇用(アルバイトやパート)でしか働けない中高年を指しています。

中高年になってからのスキルアップは、なかなか難しいことも多く、一般的に若い世代に比べると正社員になることは困難といえます。

また中高年ワーキングプアは、貧困状態に陥ったまま高齢期を迎えてしまう恐れがあり、社会的な問題といえるでしょう。

官製ワーキングプア

国や地方自治体などが生み出しているといえるのが、官製ワーキングプアです。主な例として、非正規雇用の公務員や事業の民間委託先における労働者が挙げられます。

官製ワーキングプアの問題点は、正規雇用の職員と同じ業務内容や業務時間にもかかわらず、賃金や待遇に差があることといえます。

また民間企業と異なり、公的機関で働く一部の職種には労働契約法や労働基準法などが適用されないため、問題の温床となっている可能性もあるでしょう。

 ワーキングプアが増加する原因

次に、ワーキングプアが増加する原因について確認してみましょう。代表的な理由を4つ取り上げて、それぞれについて詳しく解説します。

・非正規雇用の増加
・介護や子育て負担の増加
・賃金水準の停滞
・働き方の多様化

非正規雇用の増加

ワーキングプアの原因の1つめは、非正規雇用が増加しているためです。

総務省統計局が2023年に公開した『労働力調査』のデータによると、非正規雇用は2021年に一度は減少傾向が見られたものの、再び増加しています。一方の正規雇用は年々少しずつ増加していることがわかります。

正規の職員・従業員数(男女計)
2020年3,556万人
2021年3,587万人
2022年3,588万人
非正規の職員・従業員数(男女計)
2020年2,100万人
2021年2,075万人
2022年2,101万人

参照:『労働力調査 (詳細集計)2022年(令和4年)平均』総務省統計局(2023年)

企業からすると、非正規社員は人員調整がしやすいため採用メリットが大きく、全体として非正規雇用の減少につながっていないと考えられるでしょう。

介護や子育て負担の増加

ワーキングプアの原因2つめは、介護と子育てを同時期に行わなければならない「ダブルケア」状態が増えているためです。

出産年齢の高年齢化や少子高齢化、核家族化、ひとり親家庭の増加などがダブルケアを生み出していると考えられています。

ダブルケア状態にある人は、正社員としてフルタイムでの勤務で働くことが難しいでしょう。非正規雇用に切り替えたとしても収入が少ないため、支出とのバランスが取れず、ワーキングプアに陥ってしまうのです。

なお、ダブルケアによるワーキングプアは、男性よりも女性が陥りやすいといわれています。

賃金水準の停滞

ワーキングプアの原因3つめは、賃金水準が停滞しているためです。

厚生労働省が発表した『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、2022年における男女をあわせた月額賃金の平均は311,800円です。

この金額は、リーマンショックの翌2019年以降に比べると少し回復してきました。

しかし、OECD加盟国の2021年平均年間賃⾦のランキングでは、日本は34か国中24位という順位を記録しており、決して世界的に高いとはいえません。

約30年間賃金上昇率の各国比較で見ても、急激に上昇している韓国に対し、日本はほぼ横ばいで推移している状態です。

参照:『令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況』厚生労働省
参照:『連合・賃金レポート2022』日本労働組合総連合会(2022年)

働き方の多様化

ワーキングプアの原因4つめは、働き方が多様化しているためです。

非正規雇用やアルバイトは、正社員と比べて自分の都合に合わせて働けるため、ワークライフバランスを重視する人や仕事よりも趣味などに時間や労力を割きたい人が、あえて非正規雇用を選び、ワーキングプアに陥っているケースもあるのです。

ワーキングプアの現状

続いて、現代におけるワーキングプアの現状について、より詳しく解説します。厚生労働省は、一般的に貧困状態であるといわれる「年収200万円以下」の割合を正規・非正規別、男女別に報告しています。

正規雇用非正規雇用
年収200万円以下の男性約4.4%約54.1%
年収200万円以下の女性約13.3%約77.8%

※2022年

同調査によると、非正規雇用者の半数以上が年収200万円以下であり、ワーキングプアに該当するといってよいでしょう。

また、男女別では、男性よりも女性の方が年収が低く、ワーキングプアに該当する人が多い傾向にあります。ただし女性は、パートタイムや扶養内で働き方を調整している人も多いため、一概にこれらすべての人が貧困とはいえません。

参照:『令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況』厚生労働省

ワーキングプアに女性が多い理由

調査からもわかる通り、一般的に男性より女性の方がワーキングプアに陥りやすいといわれています。

ワーキングプアが女性に多い理由は、主に結婚や妊娠、出産というライフスタイルの変化と考えられるでしょう。

新卒で正社員として就職しても、家庭との両立などによってキャリアを中断せざるを得ない人が多いためです。

ワーキングプアを放置する問題点

ワーキングプアを放置すると、企業や社会にとってどのような問題が発生するのでしょうか。ワーキングプアを放置するリスクや問題点についてご紹介します。

少子化が加速する

貧困層には子どもを養育する金銭的な余裕がないため、ワーキングプアが増えると少子化が加速するという問題が発生します。

少子高齢化が進んで労働力が減少すると、労働者によって支払われる年金保険料の総額も低下し、将来的に社会保障制度の存続も難しくなるかもしれません。

親から子へ受け継がれやすい

ワーキングプアが親から子へ受け継がれ、負の連鎖を繰り返す恐れがあるという問題も深刻です。

貧困家庭で生まれた子どもは恵まれた教育を受けられず、低学歴になり、満足のいく就職先に就けない傾向があるためです。また、家庭環境によって勉強する時間が取れなかったり、学習意欲を失ってしまったりすることも原因として考えられるでしょう。

世代間連鎖が続くと、富裕層と貧困層の二極化がさらに進み、経済格差が広がってしまう社会的リスクが懸念されています。

本人が精神的に追い込まれる

ワーキングプアに陥ってしまった人が、お金を工面するために金融機関などでお金を借りても返すことができず、精神的に追い込まれるケースも少なくありません。

収入増加のために無理なダブルワークを続け、体調を壊して働けなくなってしまう可能性もあります。

経済が低迷する

ワーキングプアの増加は、社会経済的に悪影響を及ぼすことも考えられます。少子化や高度なスキルを持った労働力が減少し、生産性の停滞につながるためです。

人口が少ない地方では、企業の倒産や事業の撤退も免れないかもしれません。結果的に、日本全体における生活の豊かさも失われていくリスクがあるのです。

企業にできるワーキングプアの解決策

ワーキングプアの増加が、国全体の大きな問題であることをご紹介してきました。ワーキングプアは社会的な課題といえますが、CSR(企業の社会的責任)として、企業としても、できることには取り組みたいところです。

従業員のために実施できるワーキングプア解決策はあるのでしょうか。企業ができる代表的な3つの解決策をご紹介します。

 賃金の引き上げ

ワーキングプアの解決策1つめは、賃金の引き上げです。賃金が増加すると、当然のことながら今よりも余裕を持った生活を送れるでしょう。

社員の経済状況を直接的に救える方法のためので、ワーキングプア対策には欠かせない一手といえるでしょう。

賃金を引き上げるには、社員一人ひとりの働きに見合った金額を算出する必要があり、スキルや実力を適正に評価しなければなりません。たとえばタレントマネジメントシステムを導入し、個々のスキルを可視化したうえで、透明性の高い評価制度を運用していくのも一案です。

正規雇用への転換

ワーキングプアの解決策2つめは、非正規雇用者を正規雇用に変更することです。

一定の条件を満たすと無期労働契約を結べる無期転換ルールや紹介予定派遣などを利用し、社員のキャリア支援にも取り組みましょう。

ワークライフバランスの実現

ワーキングプアの解決策3つめは、従業員のワークライフバランスを実現させることです。具体的には、以下のような施策が挙げられます。

・育児休暇、介護休暇
・ワークシェアリング
・テレワーク
・ノー残業デー
・時短勤務
・フレックスタイム制度
・福利厚生の充実

非正規を正規雇用に変更することで賃金の問題は解決するかもしれませんが、家庭との両立などに悩む従業員の問題を解決することは難しいでしょう。

労働とプライベートを両立しやすい環境をつくることで、社員の心に余裕が生まれやすくなります。結果的に、自由な働き方と安定した収入の双方が保証され、作業効率や生産性の向上も期待できるでしょう。

ワーキングプアに陥りやすい職業7選

ワーキングプアに陥りやすいのは、いったいどのような職業の人なのでしょうか。最後に、代表的な7つの職種をご紹介します。自社の事業内容も照らし合わせながら確認してみましょう。

保育従事者

保育士をはじめとした保育従事者は、官製ワーキングプアの代表格といわれています。最低賃金に近い金額で働いている人も少なくないかもしれません。

現在日本では、少子高齢化を解決するために、保育園の拡大が重要視されています。それにともない、保育園で働く従業員の労働条件などは、今後さらに注目されていくでしょう。

飲食従事者

飲食従事者は、キッチン・ホールともにアルバイトやパートなどの非正規雇用や、正規雇用であっても低賃金で働いている人が多いといわれています。

人手不足などの問題が深刻な職場だと、賃金に見合わない長時間労働を強いられることもあるでしょう。

販売従事者

スーパーなどで働く販売従事者は専門スキルを必要としないため、ほかの職業に比べてアルバイトやパートで働く人が多く、非正規雇用が多い傾向にあります。

警備従事者

警備員や交通誘導員も、ワーキングプアに陥りやすいといわれています。

警備従事者は学歴や経験、スキルに関係なく誰でも応募しやすい職種であり、全体的に時給が低めに設定されていることが原因といえるでしょう。

清掃従事者

清掃従事者も、賃金が上がりづらい職業の一つです。学歴や経歴に左右されず、特別な技術がなくても働ける職業であることが主な理由と考えられます。

事務従事者

事務は、派遣社員や契約社員として採用されるケースが多い職種です。

電話応対やデータ入力、書類整理などは単純作業とみなされ、人件費を抑えるために非正規として採用し、結果的にその人たちがワーキングプアに陥っている可能性があります。

福祉従事者

福祉従事者も、ワーキングプアになりやすい職業です。たとえ正社員採用でも、低賃金で働いている人が目立ちます。

福祉従事者の賃金が低い理由には、介護職の専門性が広く認知されていないことや、賃金を上げなくても、資格はないがすぐに働きたい人からの応募が多いことなどが考えられるでしょう。

まとめ

ワーキングプアとは、フルタイムで働いているにもかかわらず、収入が生活保護の水準に届かない人のことを指します。

ワーキングプアが増加し続けると、少子化の加速や富裕層と貧困層のさらなる格差、経済の低迷など、日本全体の経済に悪影響を及ぼすかもしれません

自社の社員からワーキングプアを生み出さないためには、賃金の引き上げや正規雇用への転換、ワークライフバランスの実現など、企業が取り組める解決策を実施することが必要です。

当記事を参考に、自社でワーキングプアに該当する従業員がいないか、自社で取り組めることはないか、賃金や雇用制度などを見直してみてはいかがでしょうか。

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賃金の引き上げは、社員のスキルを正確に評価したうえで実施されるべきでしょう。社員のスキル管理や公平な人事評価の運用には、タレントマネジメントシステムの導入がおすすめです。

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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