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アサーションとは|人事に役立つコミュニケーション方法、意味、トレーニング、身につけるメリット
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アサ―ションとは、人と人のコミュニケーションにおける考え方のひとつです。価値観の多様化やテレワークの浸透によって従業員同士による対話の難易度が高まっている中で、円滑な人間関係を築く方法として注目を集めています。
当記事では、アサ―ションの意味、効果とメリット、トレーニング法、アサ―ションにおける3つのタイプ、企業における活用法などを解説します。職場でのコミュニケーションにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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目次(タップして開閉)
アサーションの意味
アサ―ション(Assertion)は、直訳すると「主張」という意味です。そこから転じて、相手の考えを尊重しながら自分の意見も主張するコミュニケーションのことを指します。
アサーションの語源と歴史
アサ―ションという言葉が現在に近い意味で使われ始めたのは、1950年代のアメリカだといわれています。
もともとアサ―ションは行動療法におけるカウンセリング手法の一つ。そこから1960年代にかけて広がった黒人差別に反対する公民権運動の中で、相手と対立せずに自分たちの主張を伝えるための考え方として使われるようになりました。
さらには女性差別への反対運動など人権問題に対する有効な手段として広がり始めます。そしてアサ―ションという考え方が教育やビジネスの現場でも認知されるようになったのです。
日本に広がったのは1980年代からです。アメリカで臨床心理学の研究を行っていた平木典子氏が、アサ―ションの理論を初めて日本へ持ち帰りました。そしてアメリカと同じように臨床心理の分野から民間へと広がっていき、現在に至ります。
職場におけるアサーションの意味
職場においてもアサ―ションが持つ意味は大きく変わりません。ただし公民権運動のように何かの社会課題に対して集団で大きな1つの主張をするためというよりは、従業員同士の日常的なコミュニケーションを円滑にするために活用されることが多いです。
また、臨床心理学ではコミュニケーションに悩みを抱える患者に対する治療の一環として用いられますが、職場では従業員の状態にかかわらず基礎的なスキルとして研修などで広く教えられています。
アサーションが注目が集まる背景・理由
アサ―ションが企業にも注目され始めたのには、3つの理由があります。人的資本経営、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)、テレワーク。1つずつ見ていきます。
人的資本経営
1つ目の理由としては、経営における人材に対する認識の変化が考えられます。
従来の企業では人材を「資源」として消費するものだと捉えており、人材への投資はコストとされていました。一方で、近年では人材を「資本」として捉える企業が増えてきています。
こうした人的資本の考え方をもとにした経営では、従業員一人ひとりを尊重して投資することで、結果的に組織の価値が高まると考えられているのです。そのため職場でのコミュニケーションも、上司から部下へ一方的に指示するのではなく、お互いが対等に主張できること(アサ―ション)が重視されます。
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ダイバーシティ&インクルージョン
2つ目の理由としては、ダイバーシティ&インクルージョンの推進があります。企業ではさまざまな価値観やバックグラウンドを持った従業員が同じ職場で働くようになりました。
人材の多様性(ダイバーシティ)は、現代の採用や人事において非常に重要な課題です。さらには多様な人材がいるだけでなく、お互いの個性を理解すること(インクルージョン)が求められるようになっています。このように組織の多様性を高め、それを活かしていくべきという流れも、アサ―ションへの注目につながっているといえるでしょう。
テレワークの浸透
3つ目の理由として考えられるのは、テレワークの浸透です。新型コロナウィルス感染拡大の影響でテレワークを導入する企業が増えtたことにより、実際に面と向かって話すよりもチャットやメールなどの文章で会話する機会が多くなってきました。
その結果、細かいニュアンスが伝わらずに意図とは違う受け取り方をされてしまったり、業務連絡以外の雑談が減って距離を縮めにくくなったりと、以前よりも職場でのコミュニケーションの難易度が上がっています。その解決策としても、アサ―ションは目をつけられているのです。
アサーションによる効果・メリット
アサ―ションを意識したコミュニケーションによって、職場にどのような効果やメリットが生まれるのでしょうか。
自分の考えを伝えやすくなる
アサ―ションは、相手の考えを尊重しつつ自分の意見を主張するコミュニケーション方法です。
自分の考えに自信がなくて上手に伝えられなかったり、ついつい相手の立場が上だと遠慮したりしてしまう人にとっては特に効果的だといえます。
従業員個人のコミュニケーションにおける課題が解消されるだけでなく、役割や立場に関係なく誰もが新しいアイデアや率直な意見を言いやすくなることで、事業や組織全体にとってもプラスの効果が働くことでしょう。
相手の考えを理解しやすくなる
自分の考えを上手に伝えるだけでなく、相手の主張を受け入れられるようにもなるのがアサ―ションの特徴です。全く異なる価値観を持った相手の主張を聞かされるのは、多くの人にとってストレスだと思います。
しかし、その主張にある背景や別の立場だからこそ見える事情について想像できるようになれば、相手の考えも理解しやすくなるはずです。もし相手が一方的に自分の主張をしてくるタイプの人だったとしても、自分がアサ―ションを意識することでポジティブに受け止めることができます。
気持ちの衝突を避けられる
一人ひとりが素直に自分の考えを表明できることは大事ですが、誰もが好き勝手に自分の意見を主張していると、どうしても衝突が生まれてしまいます。
職場において従業員同士の深刻な対立が起きると、部署のチームワークが乱れたり、最悪の場合は退職につながったりしてしまうことも考えられるでしょう。上司と部下など立場が異なる関係で意見のすれ違いが起こるとハラスメントにもなりかねません。
お互いの考えを尊重しあって丸く収めることができるアサ―ションは、職場におけるコミュニケーションのリスク回避にもなるのです。
アサーションにおける自己主張の3タイプ
アサ―ションにおいては、人によってコミュニケーションの取り方が3つのタイプに分かれるとされています。それぞれの特徴を知り、自分がどれに当てはまるか考えることでアサ―ションへの理解が深まるでしょう。
攻撃的な「アグレッシブ」タイプ
アグレッシブタイプとは、相手の考えを無視して自分の意見を一方的に主張してしまう人のことです。自分の主張は正しい、実現のためなら手段を選ばない、相手より優位に立ちたい、といった思いが強く、時には攻撃的な表現をして相手を傷つけたり、よく周囲の人間と衝突したりします。
意見が食い違うと相手の主張を聞き入れずに言い負かそうとするため、アグレッシブタイプばかりが会議に参加していると建設的な議論ができません。そのハッキリとした意見が重宝されることもありますが、会社組織においては問題視されることが多いです。上司がアグレッシブタイプだと、パワーハラスメントが起こりやすいというリスクもあります。
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受け身的な「ノン・アサーティブ」タイプ
ノン・アサーティブタイプとは、相手に遠慮してしまって自分の意見を主張できない人のことです。
先ほどのアグレッシブタイプとは真逆の存在ともいえます。本当は反対に思っている相手の意見にも嫌々ながら従ってしまうため、人間関係で隠れた悩みを抱えやすいです。自分の主張に対する自信のなさから、あいまいな表現や言い訳が多く、それを周囲の人は信用できないと感じてしまうこともあります。
ノン・アサーティブタイプばかりが会議に参加していると話が前に進みません。ノン・アサーティブタイプは一見すると物静かで温和な印象のため無害にも思えますが、本人がストレスを抱えやすく、周りからも本心が見えず扱いにくいと思われがちなため、健全な姿とは言いにくいでしょう。
中立的な「アサーティブ」タイプ
アサーティブタイプは、相手の考えを尊重しつつ自分の主張ができる人のことです。アグレッシブタイプとノン・アサーティブタイプの中間で、アサ―ショントレーニングにおいて目指すべき理想的な姿といえます。そ
の場の空気を的確に感じ取って、相手が不快にならない言葉を選ぶのが得意です。アグレッシブタイプとノン・アサーティブタイプの間に立って関係を取り持ったり、上手なコミュニケーションの取り方を周囲に教えてくれることもあります。全員がアサーティブタイプにはなれなくても、職場に数人いるだけで組織にとってはプラスの働きをしてくれることでしょう。
アサーションが役立つ人事業務
アサ―ションは人事業務の中でもさまざまな場面で活用できます。
教育研修
社内での教育研修にアサ―ショントレーニングを取り入れれば、従業員がお互いを尊重するコミュニケーションスキルを身につけることができます。職種や役職に関係なくアサ―ションの考え方を広げることで職場の人間関係が円滑になり、チームワークや生産性の向上、事業や組織作りに関する新しいアイデアの創出などにつながっていくでしょう。
人事評価
上司から部下への評価は一方的なコミュニケーションになりやすいため、アサ―ションが有効です。部下は上司に自分の意見を無視されると評価に納得できなくなりますし、上司も部下からのアピールがないと評価しにくいと感じてしまいます。アサ―ションの考え方を取り入れることによって、上下関係に捉われず対等に意見し合えるようになり、お互いに納得のいく評価を決められることでしょう。
採用面接
採用における面接の場も、非対称的なコミュニケーションが行われがちです。自分たちが応募者を選ぶ側だと考える企業も多いですが、人手不足で採用市場の競争が激しくなっている現在において、企業は応募者から選ばれる側でもあります。面接官が威圧的な態度を取っているようではうまくいきません。だからこそ、面接の場においても応募者の考えを尊重するアサ―ションの考え方が重要なのです。
アサーションのトレーニング方法
最後にアサ―ションを意識したコミュニケーションを実践するためのトレーニング方法を3点ご紹介します。
ロールプレイング
ロールプレイングは、役割を演じることでアサ―ションへの理解を深める手法です。
複数人でペアやグループを作り、店員とお客さん、上司と部下などの設定に沿って会話をします。お互い元々の性格とは別にアグレッシブやノン・アサーティブなど各タイプになりきることで、一方的な主張をしてしまう人の感情や、自分の意見が無視されたときの感覚が理解できます。アサーションについて学んだことを実践練習する場としても有効です。
DESC法
DESC法は、相手を不快にさせず自分の主張を伝えるための会話手法です。以下の順番に沿って会話を進めていくことで、相手に納得してもらいやすくします。
Describe(説明) | ありのままの客観的な事実や状況を伝える |
---|---|
Express(表現) | 事実や状況に対して自分が抱いている感情を伝える |
Suggest(提案) | 現在の状況を変えるための具体的な方法を伝える |
Choose(選択) | 提案の答えに対する別の選択肢や代替案を伝える |
アイメッセージ
アイメッセージは、私(I)を主語にして話すことで、主張が一方的にならないようにするテクニックです。
あなたは〜〜だ」「あなたは〜〜したほうがいい」など、あなた(You)を主語にすると、相手の気持ちを無視して決めつけるような話し方になってしまいます。一方で「私はこう思う」「〜〜してくれたら私は嬉しい」など、私を主語にして伝えれば相手の行動を決めつけずに自分の考えを伝えやすくなるのです。
アサーティブなコミュニケーションで、社内の活性化を
アサ―ションとは、相手の考えを尊重しながら自分の意見も主張するコミュニケーションのことです。もともとは臨床心理学の分野で使われていた言葉でしたが、人材に関する認識の変化や多様性の重視などの流れによって、ビジネスの場でも注目を集めるようになりました。
職場でのコミュニケーションにアサーションの考え方を取り入れることで、従業員同士の衝突が減り、人間関係が円滑になります。攻撃的な従業員や消極的な従業員の指導・育成に悩んでいる担当者は、ぜひアサーショントレーニングの導入を検討してみてください。
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記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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