- 2022.04.05
2022.10.25
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- 人事労務
ハラスメントとは? 10種類の定義を解説|対策や調査方法も

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近年、職場内で発生する嫌がらせやいじめであるハラスメントの問題が深刻化しています。ハラスメントは労働者に不利益をもたらすだけでなく、組織や企業にも深刻な弊害があり、人事管理の上で深刻な問題と捉えられています。そこで本記事では、ハラスメントの定義や種類、対策・予防策について具体的に紹介します。
目次(タップして開閉)
ハラスメントとは
「ハラスメント(harassment)」は「嫌がらせ」「迷惑行為」を意味する言葉です。相手を不快にさせたり、人権を侵害したりする言動や行為がハラスメントに該当します。企業におけるハラスメントは主に職場内で行われたものを指します。
行為者が意図していなくても、相手が不快感を抱いた時点でハラスメントが成立します。そのため、表面的には良好に見える人間関係にハラスメントが潜んでいる可能性もあります。
ハラスメント被害者が誰にも相談せずに我慢していることも少なくありません。
ハラスメントの現状
近年、企業におけるハラスメントの報告件数が増加傾向にあります。パワハラやセクハラに関するニュースも日々報じられています。一方で、ハラスメントに関する法制度が整備されてきました。
パワハラについては、2020年6月1日に労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が施行されました。これによって、職場におけるパワーハラスメントの防止措置が企業に義務付けられました。セクハラについては男女雇用機会均等法、マタハラについては男女雇用機会均等法や育児介護休業法がそれぞれ適用されます。
ハラスメントを排除する社会的な風潮が強まる中、企業はハラスメント防止に力を入れています。従業員が働きやすい環境を整えることは企業イメージの向上にもつながるからです。
ハラスメントの種類
パワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)は以前から問題視されていました。一方、近年は新たなハラスメントも認知されるようになってきました。代表的な10種類のハラスメントを紹介します。
パワーハラスメント(パワハラ)
事業主と労働者、上司と部下、正社員と非正規社員など異なる関係性の中で生じるのがパワーハラスメント(パワハラ)です。優越的な地位をふりかざし、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、相手に肉体的・精神的な苦痛を与える行為や言動を指します。管理職が「指導」を名目に他の従業員に暴力を振るったり、執拗に叱責したりするとパワハラに該当します。
厚生労働省「あかるい職場応援団」はパワハラの代表的な6つの類型をウェブ上で公開しています。優越的な関係を背景として行われる以下の言動には要注意です。
1.身体的な攻撃…殴打、足蹴り、物の投げつけなど。 2.精神的な攻撃…人格否定、長時間の厳しい叱責、威圧的な叱責など。 3.人間関係からの切り離し…別室への隔離、集団での無視など。 4.過大な要求…到達不可能な業績目標、私的な雑用の強制など。 5.過小な要求…誰でもできる業務の強制、仕事を与えないなど。 6.個の侵害…職場外での監視、私物の写真撮影など。 |
セクシャルハラスメント(セクハラ)
職場内での性的な嫌がらせはセクシャルハラスメント(セクシュアルハラスメント、セクハラ)です。
行為者がコミュニケーションをはかることや緊張をほぐすこと等を目的としていても、性的な言動を相手が不快に感じたのならセクハラに該当します。男性から女性のケースが目立ちますが、女性から男性、もしくは同性間でもセクハラが成り立ちます。
厚生労働省「あかるい職場応援団」は、次の2つをセクハラの具体例として紹介しています。
1.対価型セクシャルハラスメント…経営者からの性的な関係を拒否したら解雇された。 2.環境型セクシャルハラスメント…上司が頻繁に身体を触ってくる。 |
マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠や出産をした女性従業員に対する嫌がらせがマタニティハラスメント(マタハラ)です。妊娠等を理由とした異動、減給、降格、退職の強要といった不当な扱いもマタハラに該当します。
厚生労働省「あかるい職場応援団」は、次の2つをマタハラの具体例として紹介しています。
1.制度等の利用への嫌がらせ型…出産・育児・介護に関連する制度利用を阻害する。 2.状態への嫌がらせ型…出産・育児による就労環境を害する。 |
モラルハラスメント(モラハラ)
言葉や態度によって相手を傷つけることがモラルハラスメント(モラハラ)です。舌打ちや嘲笑等も繰り返されればモラハラです。パワハラと混同されがちですが、パワハラとは異なり優越的な関係を背景としているとは限りません。同僚同士や部下から上司へのモラハラも成り立ちます。
昨今話題の「マウントを取る」こともモラルハラスメントに該当します。
例えば上下関係のない同僚、同業種同士で「自分の方が知識が上」「私の方があなたよりも有能だ」といった態度やアピールをしたり、自分の方が正しい、知識があるといった前提で相手を揶揄したり、不適切な命令をしたりする事も大きな問題となりかねません。
上司に自分の成果だけをアピールし、結果的に同僚の評判を落とす行為なども該当します。
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
男性・女性という性別に基づいて能力や性格などを非難する嫌がらせがジェンダーハラスメント(ジェンハラ)です。「男なのに力仕事ができない」「女なのに掃除が下手だ」などの性差別的な言葉はジェンハラに該当します。現在はLGBTも広く認識されています。
「男らしさ」「女らしさ」をふりかざすとハラスメントになり得るので注意が必要です。
ジェンダーハラスメントの弊害として、女性社員は男性社員の前で女性らしく振る舞い、自分の意見を言わず、上司に気に入られることで評価を上げようとするなど、業務外での評価を求めてしまう女性が多い事も現実としてあると言えます。
男性社員には、必要以上の根性論や叱責が加えられる文化が残る企業も未だ多く、そういった企業はブラック企業として認定される事も少なくありません。
レイシャルハラスメント(レイハラ)
人種、民族、国籍などに対する偏見から生じる嫌がらせがレイシャルハラスメント(レイハラ)です。近年は日本でもグローバル化が進み、外国人労働者が増加しました。
日本人とは異なる文化や習慣を目の当たりにしても、それを侮辱する言動は避けなければなりません。冗談のつもりでも「日本語を理解できる?」「外国人は日本人と違うよね」などの言葉はレイハラになりかねません。
昨今では、優秀な外国人技術者などの労働力を必要としている企業も多く、日本が今後も国際化社会として秩序を保ち成長していくためにも、レイシャルハラスメントについて理解を深めておく必要があるでしょう。
エンジョイハラスメント(エンハラ)
楽しさを押し付けて相手に不快感を抱かせるのがエンジョイハラスメント(エンハラ)です。上司が部下に対してしつこく「仕事は楽しいよな?」と言うのもエンハラになり得ます。
従業員のモチベーションやエンゲージメントを向上させるために仕事の魅力を語るのは上司の役割ですが、過度の押し付けはハラスメントと捉えられることもあります。
リモートハラスメント(リモハラ)
コロナ禍で急速に普及したリモートワーク中に行われるパワハラやセクハラ等がリモートハラスメント(リモハラ)です。テレワークハラスメント(テレハラ)と呼ばれることもあります。
パワハラ型のリモハラの例としては、上司が在宅勤務中の部下をオンライン会議システムやオンラインチャットツール等で監視し続けることが挙げられます。
上司が部下に「今日は化粧をしていないね」と言ったり、カメラで部屋の中を映すよう強要したりすればセクハラ型に該当します。
アルコールハラスメント(アルハラ)
会社の飲み会での迷惑行為や飲酒の強要等がアルコールハラスメント(アルハラ)です。急性アルコール中毒や飲酒運転による事故等のリスクもあり、生命に関わるハラスメントとして近年は特に注目されています。伝統的に行われてきた一気飲みや罰ゲームといった慣習を禁止した企業も少なくありません。
コロナ禍においてコミュニケーションの場が減少したことで、久しぶりの会社の飲み会でトラブルが起こらないよう、経営層や管理職は注意を払わなければなりません。
リストラハラスメント(リスハラ)
リストラ対象者に嫌がらせや不当な扱いをして自主退職に追い込むことがリストラハラスメント(リスハラ)です。仕事を取り上げたり、極端に難しい仕事を与えたりして、従業員が会社に居づらくなるように仕向ける行為も含まれます。
パワハラの一種とされますが、管理職階級の従業員に対して行われることが多いという特徴があります。
ハラスメントによる組織、企業における深刻な弊害
ハラスメントは従業員個人に不利益をもたらすだけなく、職場環境を悪化させて生産性の低下を招き、組織や企業としてのパフォーマンスに悪影響を及ぼします。また、企業がイメージ低下やコンプライアンス違反等のリスクを抱えることにもなります。これらの弊害について詳しく紹介します。
従業員の休職や退職に伴う欠員補充
ハラスメントを受けた従業員はモチベーションやエンゲージメントが低下して、場合によってはメンタルヘルスに重大な悪影響が及びます。うつ病等を発症して休職や退職に追い込まれることもあるでしょう。
従業員が休職や退職をすれば戦力ダウンにつながります。空いたポストを埋めるために人事異動を繰り返す玉突き人事が発生するかもしれません。採用活動によって欠員補充を行う場合、新入社員の採用や育成に無駄なコストがかかりがちです。
コンプライアンス違反や訴訟のリスク増大
ハラスメントが横行する職場ではしばしばコンプライアンス違反も発生しています。たとえば、サービス残業が常態化していたり、有資格者が担当すべき業務を無資格者が担当したりするのは違法です。
退職した従業員が企業を相手取って訴訟を提起するケースも珍しくなくなりました。元従業員の通報に基づいて、労働基準監督署の立ち入り調査と是正勧告が行われることもあります。
企業イメージの低下による損失発生
ハラスメントがメディアで取り上げられてニュースとして報じられることが増えてきました。元従業員がSNS等でハラスメントを告発して炎上することもあります。
これらがきっかけで企業イメージが低下すると、採用活動で優秀な人材を確保しにくくなりtたり、また取引先から契約を打ち切られたり、一般消費者による不買運動が起こったりすることもあります。
長い年月をかけて築き上げたブランドイメージが失墜すれば、回復するのに再び長い年月が必要となるでしょう。
ハラスメント調査の方法
社内でハラスメントの訴えがあった場合、企業はハラスメント調査を実施する義務を負います。事実関係を把握し、迅速かつ適切な対応をするため、以下で紹介する流れで調査を進めます。
調査委員会の設置
ハラスメント調査を行う場合、多くの企業では社内に調査委員会が設置されます。メンバーは人事担当者や法務担当者、必要に応じて弁護士等の専門家で構成します。被害者と加害者の今後の処遇を決定するのが目的です。この決定は人事評価や人員配置、場合によっては懲戒処分に反映されます。
ヒアリングの実施と証拠収集
被害者、加害者、関係者のそれぞれからヒアリングを行い、ハラスメントの事実を裏付ける証拠を収集します。ヒアリングの順番は被害者→(被害者の承諾を得た上で)加害者→目撃者・関係者です。
被害者と加害者の証言が食い違うことも少なくありません。この場合はメールやチャットの記録等から客観的にハラスメントの有無を判断する必要があります。
調査報告書の作成
ハラスメント調査の結果は調査報告書の形でまとめる必要があります。メディアで報じられたり、訴訟に発展したりした場合、調査報告書は外部に向けて説明する上での資料となります。
一方、調査報告書の記載内容を編集してハラスメント防止マニュアル等を作成すれば、再発防止の効果も期待できます。被害者や加害者から調査報告書の開示を求められたら、開示に応じなければなりません。
ハラスメント対策・予防策とは
ハラスメントが問題として表面化する前に、ハラスメントを起こさない職場環境作りが大切です。具体的な対策・予防策としては以下の4つが代表的です。
ハラスメント防止マニュアルの作成と共有
ハラスメント防止マニュアルを作成し、従業員と共有します。マニュアルは、どのような行為や言動がハラスメントに該当するのかを明示した事例や、ハラスメント発生時の対応や措置等について具体的にまとめたものです。懲戒処分が必要となった際の根拠としても機能します。
ハラスメント防止研修の実施
従業員がハラスメントに関する正しく知識を学ぶ機会としてハラスメント防止研修を実施するとよいでしょう。ハラスメント防止を意識するあまり、職場内の人間関係のトラブルを何でもかんでも「ハラスメント」としてしまうのは、マネジメントの低下を招きかねません。
ハラスメントとそうではない行為や言動を明確に区別する上でも研修は不可欠です。社内にハラスメントに詳しい従業員がいなければ、外部の専門機関に研修を依頼することも考えましょう。
ハラスメント相談窓口の設置
ハラスメントを受けた従業員は誰にも相談できずに悩みを抱えがちです。その結果、ストレスが積み重なって、うつ病等を発症したり、突然退職したりすることもあります。
こうした事態を防ぐため、社内にハラスメント相談窓口を設置し、従業員が気軽に相談できる制度を整えておきたいところです。相談窓口は人事部門や法務部門、産業医・産業カウンセラーとも連携することも求められます。
社内アンケートや360度評価の実施
社内アンケートや360度評価を定期的に実施することでハラスメントの早期発見を期待できます。匿名の社内アンケートでは上司の行為や言動等に対する従業員の本音を引き出せます。
360度評価で特定の従業員に低評価が集中している場合、その従業員が嫌がらせやいじめを受けている可能性があると判断できます。これらのデータを基に配置転換を行う等してハラスメントを予防することが可能です。
組織内ハラスメントの予防、早期発見と解決に必要なこととは
組織内でのハラスメントを予防し、万一発生した場合にも迅速に対処、解決に努めることが求められます。こうした施策の中心となるのが人事部門です。
いっぽうで、人事部門は膨大なデータの管理や具体的な施策の実施で多忙になり、他の人事業務に支障をきたす可能性があります。
そこで役立つのがタレントマネジメントシステム「スマカン」です。スマカンでは従業員に関するあらゆる情報を一元管理し、これを人員配置や人事評価など、煩雑になりがちな人事業務やマネジメントに活用できます。また、社内アンケートや1on1ミーティングの管理など、社員の声を見える化することでより良い組織づくりをサポートします。

記事監修

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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