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KKDとは|経験・勘・度胸は時代遅れ? 意味やデメリット、KKD経営、反対語
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日本の企業では製造業を中心にKKD(経験・勘・度胸)が重視されてきました。一方で、「KKDは時代遅れ」といわれることもあります。これまでKKDで乗り切ってきた人事業務を見直し始めている企業もあるかもしれません。
当記事では、KKDに関連する用語の意味をわかりやすく解説し、KKDを補完する方法についてご紹介します。
目次(タップして開閉)
KKDとは
KKDは「経験」(KEIKEN)、「勘」(KAN)、「度胸」(DOKYOU)の頭文字の組み合わせです。
KKDの意味
KKDは「経験」「勘」「度胸」の頭文字です。KKDは「過去の経験から判断すると、これが妥当だろう」と考えて、科学的根拠に基づかずに勢いで決めることをいいます。
KKDは日本の製造業で重視されてきた
KKDは日本の製造業で重視されてきました。「ものづくり大国」の日本は、KKDに頼る職人たちの技術に支えられてきたのです。近年はIT業界でも、過去の経験から判断してプロジェクトの工数などを見積もるKKD法が活用されています。
製造業の現場に限らず、日本企業の人事業務もKKDに頼ってきた面があります。人材採用、人材配置(異動、配置転換)、人事評価などが人事担当者の主観や印象によって決められることが多かったからです。
KKD経営とは
KKD経営とは「経験」「勘」「度胸」に頼った経営を意味します。
ビジネス環境や市場の変化が著しい昨今、企業の経営にはスピード感が求められます。そのため、経営陣は自らの経験や勘に頼って重要な決断をすることも少なくありません。しかし、KKD経営では、目先の結果にばかりとらわれて、長期的な視点や幅広い視点が失われがちです。
経営陣の経験や勘だけで多様な価値観を把握するのも困難です。組織戦略や商品開発をKKDで進めていくことには限界があります。
KKD法とは
KKD法は、過去の経験から判断してプロジェクトの工数などを見積もるフレームワークです。IT業界で活用されるKKD法ですが、人によって判断が異なるなどの問題が指摘されてきました。そのため、KKD法以外の見積もりフレームワークも注目されています。
KKD法以外の見積もりフレームワーク
KKD法以外の見積もりフレームワークではCOCOMO(ココモ)法、LOC法、ファンクションポイント法が有名です。これらのフレームワークは客観的な基準を用いてプロジェクトの工数や規模を見積もることを目標とします。
一方で、現場の実態に合わず、KKD法よりも見積もりの精度が落ちるという批判もあります。
COCOMO(ココモ)法とは
COCOMO(ココモ)は「constructive cost model」の頭文字の組み合わせです。
COCOMO法では、ソフトウェアのソースコード行数、プログラマの開発能力、再利用可能なソフトウェアの量などから工数や期間を見積もります。統計的なモデルを利用し、過去のデータを参考にする手法です。
COCOMO法は、1981年に米国の自動車部品メーカーTRW社のバリー・ベーム氏によって提唱されました。1995年にはCOCOMO法を改良したCOCOMOⅡ法が発表されました。
2000年に発表されたCOCOMO II.2000は、多数のプロジェクトから得られたデータをフィードバックして、見積もりの精度をさらに高めています。
LOC法とは
LOCは「lines of code」の略です。LOC法では、ソースコードの行数からソフトウェアの規模を見積もります。ソフトウェア開発の現場では古くから使われてきた手法です。
LOC法で規模は測定できますが、それがそのまま工数や品質に結びつくわけではありません。優れたプログラマーは少ないソースコードで多数の機能を実現させる一方で、未熟なプログラマーは冗長なソースコードで少数の機能しか実現できないことが多いからです。
また、同じ処理でもプログラミング言語によってソースコードの行数は大きく変動します。
これらの理由から、LOC法で見積もりを行う際には、コード規約を事前に決めておくなどの工夫が必要です。
ファンクションポイント法とは
ファンクションポイント法では、入出力や内部ファイルなどの数やそれぞれの処理内容の複雑さなどからファンクションポイントを算出し、開発の規模や工数を見積もります。
ファンクションポイント法は、開発する機能数をもとに見積もるため、プログラム言語によって評価が変動することはありません。また、必要な機能がある程度わかった時点で概算できるのもメリットです。
KKDのメリット・デメリット
KKDにはメリットもデメリットもあります。
KKDのメリット
KKDの3つのメリットを紹介します。
スピードが速くなる
膨大なデータをもとにした統計的な手法を利用する場合でも、最終的な判断を行うのは人間です。この判断で迷っていると、商談が流れてしまったり、競合他社に先を越されたりすることがあります。こうしたリスクを回避できるのがKKDです。KKDでは意思決定のスピードが速くなります。
未知領域の判断材料になる
新しい仕事では多くの場合、過去のデータを直接当てはめることができません。
そこで、これまでの仕事で培ってきた勘や経験を間接的に活用できる場合があります。未知の領域でチャレンジするときは、意識しているかどうかにかかわらず、KKDに基づいた意思決定が行われやすくなるでしょう。
付加価値を高める
マニュアル通りにできるルーチンワークにKKDは不要です。このような仕事の付加価値は高くありません。一方、クリエイティブな仕事ではマニュアルを導入するよりもKKDを大切にした方が、付加価値を高める効果が期待できるとされています。
KKDのデメリット
KKDの3つのデメリットを紹介します。
誰でもできるわけではない
誰でもKKDで仕事できるわけではありません。新入社員や未経験者に経験者と同じ経験や勘を求めるのは不可能です。勤務年数が同じ従業員の間でも、人によって判断基準が異なります。そのため、KKDではマニュアルのような一貫性を担保できません。
退職でノウハウが失われる
KKDで優れた成果を出してきた従業員が退職すると、そのノウハウが失われます。KKDは人材育成によって誰でも習得できるものではありません。そのため、特定の従業員の退職がきっかけで業務が滞ったり、サービスの質が落ちたりするといったトラブルも発生しがちです。
再現性がない
KKDには再現性がありません。同じ仕事をしているにもかかわらず成果が異なると、戦略を立てられなくなります。KKDに頼った行き当たりばったりのスタンスでは、ビジネスの継続や拡大は難しいでしょう。
KKDの反対はデータドリブン
KKDの反対はデータドリブンです。経営や人事戦略、さらには近年注目される戦略人事でも、データドリブンがKKDに替わる手法として導入されています。
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データドリブンとは
データドリブン(data driven)は、収集して蓄積したデータを分析し、その結果をもとに意思決定を行う手法です。経験や勘といった主観的な要素に頼っていたKKDとは異なり、データドリブンでは客観性が担保されやすくなります。
データドリブンが注目される背景
近年はデータドリブンが注目されています。その背景には、クラウドやストレージなどのIT技術が発達したため、ビッグデータの蓄積が容易になったことがあります。AIによるデータ分析への期待も高まっています。
ビッグデータとは、人間が全体を把握するのが難しいほど巨大なデータ群です。「大量(Volume)」「高速 (Velocity)」「多様性 (Variety)」の3Vを満たすデータ群がビッグデータです。例としては、購入履歴、医療情報、位置情報、気象データなどがあります。
データドリブン経営とは
データドリブン経営とは、データドリブンによって収集したデータを分析し、その結果に基づいて行う経営です。
データドリブン経営では意思決定までの時間を短縮できて、生産性向上の効果も期待できます。数値を伴う客観的なデータを根拠とするため説得性のある施策が実現可能です。
たとえば、顧客のニーズをデータとして把握して、これを踏まえて商品やサービスを改善したり、企画を立案したりできます。
データドリブン人事とは
データドリブン人事とは、従業員のスキルや経歴などのデータを活用しながら人材採用、人材配置、人事評価などを行う人事です。
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従来の人事では、勤務時間や給与のような、Excelなどで整理された「構造化データ」を扱ってきました。
一方、データドリブン人事では、構造化データだけでなく、整理されていない「非構造化データ」もビッグデータとして扱います。非構造化データには提案書や企画書、メール、デザインデータ、会議の録音、PCのログなどがあります。
近年は、企業が経営戦略を遂行する際に人事部が積極的に関与する戦略人事を導入する企業も増えてきました。戦略人事では、人材マネジメントに関する情報を分析し、客観的な根拠に基づいて施策を決定する必要があります。そのため、データドリブンが不可欠です。
データドリブンのデメリット
メリットの多いデータドリブンですが、コストがかかるというデメリットもあります。データを蓄積するためのIT機器やシステムの導入費用が必要です。さらに、データを適切に分析できる人材の育成でもコストが発生します。
KKDの上手な活用法
国がDX化を推進していることもあり、今後は多くの企業がデータドリブン経営に移行していくと考えられます。
しかし、データ分析をAIやアルゴリズムに頼り切っていると、意思決定のプロセスが不透明になりがちです。客観性は担保できても、その不透明さによって従業員の納得感を得にくくなる可能性があります。顧客からの問い合わせに対する回答も不明確になりかねません。
また、データドリブンで把握できるのは過去の事例だけです。新しい未知の仕事ではデータに頼れないという問題があります。問題を抽出してその原因を探ったり、新たな企画のアイデアを出したりするときも、データドリブンが活用できるとは限りません。
このような場合に意思決定の精度を高める役割を担うのがKKDです。データ化が難しい経験や勘を上手に活用すれば、新しい考えや発想の転換にもつながるでしょう。
KKDは時代遅れ?
近年はデータドリブンの考え方が普及し始め、「KKDは時代遅れ」という風潮が強まりました。一方で、KKDの重要性を見直す企業も増えています。
KKDはVUCAの時代に役立つことも
KKDが注目され始めたのは、人材開発に学術的な理論が導入された2000年代中盤からです。経験、勘、度胸に頼った手法は日本企業を支えてきましたが、その有効性が疑問視されました。
2010年代中盤から、KKDに替わる手法としてデータドリブンが注目され始めました。IT技術の進歩によってAIも実用化され、ビッグデータの有効活用も推進されるようになりました。
そして現代は将来の予測が困難なVUCAの時代です。過去の事例から収集されたデータから判断するのが難しい変化が頻繁に起こります。このような時代の意思決定では、データ分析に加えてKKDも重要な役割を担います。
令和に通用するKKDとは?
令和に通用するKKDとは、経営者やベテラン従業員の経験、勘、度胸を活用しつつ、データドリブンも組み合わせていくことです。こうしたハイブリッドな手法を運用していくには、データを蓄積して分析するためのツールが必要です。
タレントマネジメントシステム『スマカン』では、従業員のスキル、経歴、キャリア志向、1on1ミーティングの面談ログといったデータをクラウド上で一元管理できます。従業員満足度アンケートやコンディションチェックなどの情報をグラフにして可視化する機能もあります。
人事担当者のKKDに頼りがちだった人事業務を、スマカンを活用したデータドリブンで補完してみてはいかがでしょうか。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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