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非財務情報とは? 開示の重要性や人的資本との関係
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非財務情報とは、人的資本や知的財産情報など、財務情報には含まれない情報を指します。非財務情報の開示が一部義務化されたことで、より非財務情報の重要性が高まっています。
しかし「非財務情報について理解できていない」「具体的にどんなものが非財務情報に該当するのか知りたい」と感じている方も少なくないでしょう。
そこで当記事は、非財務情報についてできるだけわかりやすく解説します。非財務情報の開示や人的資本の重要性についてもご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次(タップして開閉)
非財務情報とは?
非財務情報とは、株主や投資家に開示する情報の中で、決算書などの財務情報には含まれない情報です。
具体的には、社内人材のスキルや知的財産情報などが該当します。わかりやすく表現すると、数値化しにくい資産のことであり、売り上げや人材育成を支える資産といえるでしょう。
財務情報との違い
財務情報は、企業の決算書であり、貸借対照表やキャッシュフロー計算書などの数値化できる情報を指し、株主や投資家たちに開示するものです。
金融商品取引法では、上場企業に対し財務諸表を開示しなければならないとされています。
非財務情報の開示も求められている
近年は非財務情報も開示が求められています。ただ財務情報だけでなく、非財務情報も開示することで、企業価値を示せるといえるでしょう。
非財務情報の開示が求められている背景
非財務情報の開示が求められるようになった背景にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な背景について確認してみましょう。
ESG投資市場の拡大
非財務情報の開示が求められている背景には、ESG投資やESG経営の広がりが挙げられます。
ESGとは「Environment=環境」「Social=社会」「Governance=企業統治」の頭文字を取った言葉です。環境問題や社会的規範、コーポレートガバナンスの観点を重視した考え方といえます。
ESG投資市場は急拡大しており、企業におけるESGを意識した取り組みが投資家たちの間でより注目されるようになりました。
サステナビリティへの意識が高まっている
非財務情報への注目は、SDGs(持続可能な開発目標)への関心も背景の一つでしょう。
SDGsは、環境問題や社会問題を解決するための国際目標として掲げられており、すべての国連加盟国によって全会一致で採択されました。取り組むべき具体的な目標が設定されており、サステナビリティへの意識が世界中で高まっています。
SDGsを実現するためには、環境に配慮した企業活動や協力が必要とされており、非財務情報の開示も特に関心が集まる理由の一つといえます。
人的資本の重要性
非財務情報が注目された背景には、多くの企業で人的資本の重要性が認識されていることも挙げられます。少子高齢化などによる労働力人口の減少で、企業は人材不足の課題に直面しています。
人材不足に陥ったまま放置すると、企業は今後、持続的な成長が難しくなるでしょう。
そのため、人材は数よりも質が重要視されているのです。従業員個人が持つ高いスキルや知識の習得・成長に投資することで、生産性を向上を目指せる人的資本経営に注力する企業が増えています。
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非財務情報の具体例
国際統合報告評議会(IIRC)によると、企業の資本は6つに分類され、そのうち5つが非財務情報とされています。具体的にどのようなものが該当するのか確認してみましょう。
製造資本
製造資本とは、製品やサービスを製造したり提供したりするために必要な設備や施設、インフラのことです。たとえば工場などの建築物や機械が挙げられるでしょう。
一般的に、製造資本は自社とは異なるほかの組織によってつくられます。さらに、製品設計に関する情報や生産に関するソフトウェアなども必要です。
企業の生産性を大きく左右する資本であるため、デジタル技術との相性なども注目されやすいという特徴があります。
知的資本
知的資本とは、企業の知的財産を生み出すための資産です。たとえば、特許や著作権、権利やライセンスなど組織的な知識が前提となった無形資産です。
目に見えず形として認識できない資産であるものの、知的資本は企業の競争力につながったり、企業価値を高めたりすることにも役立つでしょう。
人的資本
人的資本とは、企業に在籍する従業員が持つスキルやノウハウ、知識などを指します。企業が業績を向上させて生産性を高めるためには、高いスキルや意欲などを持った人材の力が必要ということです。
企業では、こうした人的資本を有するだけでなく、人的資本を最大限に活かせるような環境や施策にも取り組まなければなりません。「ダイバーシティ&インクルージョン」などの考え方もその一つでしょう。
社会関係資本
社会関係資本は、集団行動をスムーズにしたり、幸福感を高めたりするために情報を共有する能力のことを指します。社内規定や従業員同士の信頼関係、部署ごとの結束力、人脈などが該当します。
しかし、明確な定義がなく論理的に示すことが難しい資本でもあるため、開示する範囲や内容は注意しましょう。
自然資本
自然資本とは、個人や組織における成功をもたらすための天然資源のことです。再生可能(および不可能)な環境資源を指し、水や空気、動植物や鉱物、生物の多様性などが該当します。
自然資本や、人的資本や企業そのものにもかかわっており、たとえば農業や水産業などでは、さまざまな天然資源が売り上げに影響します。
近年では生物の多様性が注目されており、2023年3月には国の基本方針となる『生物多様性国家戦略2023-2030』が閣議決定されました。
非財務情報の開示義務がスタート
非財務情報のうち、人的資本と企業のサステナビリティに関して、2023年の有価証券報告書から開示義務が決定しました。
人的資本や多様性の分野では「人材育成方針」「社内環境整備方針」に関する内容について、サステナビリティ情報の「戦略」や「指標及び目標」の項目欄に、必須で記載を求めるとしています。
対象企業は非財務情報を正確に把握したうえで社外に開示することとなりました。
参照:『「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について』金融庁
非財務情報とESGの関係
非財務情報はESGスコアの存在も深く関係しています。
ESGスコアとは、企業のESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治を考慮した経営・事業活動)への取り組みを総合的に評価する指標です。
算出において統一された基準はないものの、非財務情報が必要とされており、世界中のさまざまな評価機関が独自のスコアを作成しています。
ESGは、企業における持続的成長を評価するための一基準として、投資家にも活用されています。企業価値を判断するためには、数値的な財務状況だけでなく、ESGの観点も必要な指標といえるでしょう。
企業がESGスコアを高めることは企業価値向上につながり、資金調達などによい影響が生じるとされています。
非財務情報と人的資本の関係
非財務情報の一つである人的資本は、人材個人が持つ能力を企業の資本として捉える考え方です。人的資本への投資は、長期的な視点において企業の成長や企業価値向上につながるとされています。
人的資本は、非財務情報の開示義務化の対象とされたことも影響して近年、重要性が増しています。企業が人的資本への投資を行うことで、ステークホルダーから得られる信頼が高まる可能性があります。
非財務情報開示のメリット
非財務情報を開示するメリットにはどのような点が挙げられるでしょうか。具体的なメリットについてご紹介します。
企業評価や価値向上が期待できる
非財務情報を開示することで、投資家や株主、地域社会などのステークホルダーからの評価と信頼が高まり、企業価値が向上します。
ステークホルダーからフィードバックをもらったうえで、改善に取り組めると、企業の成長やさらなる信頼性向上も期待できるでしょう。
企業価値が向上すると、資金調達や株価上昇にもよい影響が生じるはずです。
企業の強みやをアピールできる
非財務情報を開示することで、数値ではあらわせない自社の状況をアピールできます。
また、自社が展開する企業活動やビジョンなどを通して、自社の強みや特徴を伝えられる点もメリットの一つです。
非財務情報を開示する場合、戦略を立てたうえで、自社のアピールになるような内容を適切に判断し、開示しましょう。
投資家との関係が良好になる
非財務情報を企業みずからの意思で公開することで、企業活動における透明性がより高まります。
リスクを含めた情報も開示できると、進捗や状況がわかりやすくなるだけでなく、企業への信頼性も増すでしょう。
その結果、ステークホルダー(投資家や株主)と良好な関係性を築きやすくなるのです。
非財務情報開示のポイント
非財務情報を開示するうえで、押さえておきたいポイントについてご紹介します。
取り組みが不十分なものも開示する
非財務情報を開示する際は、たとえ取り組みが不十分なものであっても、開示する価値があります。開示する際は、課題を認識しておくことや今後の計画などを示しておくことが重要です。
本来取り組みが十分でないものを開示することはマイナスと思われがちですが、課題やリスクも開示する、企業活動の透明性が増し、信頼感のアップにつながるためです。
また、株主や投資家などのステークホルダーからフィードバックをもらえると、コミュニケーションの機会が増えたり、良好な関係を築くきっかけにもなるかもしれません。
経済産業省の価値協創ガイダンスを活用する
非財務情報を開示する際は、経済産業省が公表する『価値協創ガイダンス』を活用することも有効です。
価値協創ガイダンスは、以下6つの観点で構成されており、コーポレートガバナンス改革と企業と投資家の関係性向上のために活用できます。
- 1.価値観
- 2.ビジネスモデル
- 3.持続可能性・成⻑性
- 4.戦略
- 5.成果と重要な成果指標(KPI)
- 6.ガバナンス
投資家などの視点をもとに、企業が開示すべき情報などを体系的かつ統合的にわかりやすく掲載しています。
非財務情報開示における課題
非財務情報開示への注目が高まっていますが、いくつかの課題があるのも事実です。非財務情報開示に関する具体的な課題をご紹介します。企業が注意すべき点を理解して、情報開示に取り組みましょう。
情報開示の定義が曖昧(あいまい)
非財務情報開示は、一部義務化されたものの明確な定義はありません。しかし、情報開示を行う場合はステークホルダーに対して説明する必要があり、開示すべき情報の判断や整理が求められます。
開示する情報の管理が大変
非財務情報を開示する場合、非財務情報に関するそれぞれのデータを収集したり分析したりする社内の仕組みを構築しなければなりません。
しかし、情報がバラバラに管理されている場合も多く、情報を収集するだけでも手間や時間がかかります。非財務情報に関するデータ収集や分析が行えるよう、まずは企業の各部署が連携し、認識を統一しましょう。
目的を明確化することが難しい
非財務情報に関する取り組みやESG経営は、長期的な取り組みです。10年単位に及ぶこともあります。そのため、まずは自社の目的を整理して明確にすることが大切です。
情報開示によって得られるメリットを最大限活かすためにも、まずは自社の目的をできるだけ明確にするために、社内調整や計画策定を入念に行いましょう。
まとめ
非財務情報は人的資本や知的財産情報をはじめとした、財務情報には含まれない情報を指します。
非財務情報の開示が義務化されたことで、より一層注目が高まっています。企業としては、非財務情報に該当する各資本を大切にするだけでなく、非財務情報の開示を上手く活用しながら、投資家からの信頼を得ることが大切です。
将来的な企業の成長のためにも、あらためて非財務情報への意識を高め、取り組みを強化するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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