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知的資産経営とは? 意義とメリット、企業の取り組み事例をまとめ

知的資産経営とは? 意義とメリット、企業の取り組み事例をまとめ

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事業の発展には、さまざまな資産が欠かせません。目に見えにくい「知的資産」も、会社の大事な資産の一つです。知的資産を有効活用することによって、他社と差別化をはかり事業の成長に貢献するといわれています。

当記事では、知的資産経営の意義、歴史、メリット、導入ステップ、企業の取り組み事例について徹底的に解説します。

目次(タップして開閉)

    知的資産経営の意義

    まず、知的資産経営にまつわる基礎知識をご説明いたします。

    知的資産とは

    知的資産とは、明確な数値であらわせないせない資産を指します。具体的には、人材、技術力、顧客や関連会社とのネットワークなどです。

    資本金や従業員数に比べると、目では確認しにくいものですが、会社経営には欠かせない重要な要素です。会社の成長を陰ながら支え、企業の競争力を高める役割があります。

    なお、似ている言葉に「知的財産」がありますが、これは特許や企業秘密などの「目には見えにくいが、法律で保護できる資産」のことです。知的財産は、知的資産の一種です。その知的財産を扱う権利を「知的財産権」と呼び、特許権や著作権がそれにあたります。

    知的資産は、可視化できない経営資源を指す「無形資産」の一部として扱われます。知的資産以外の無形資産の一例は、ソフトウェアや借地権などです。

    知的資産経営の説明

    知的資産経営とは

    知的資産経営とは、知的資産の存在を認識・活用し、業績アップに結びつける経営方法です。

    注目度が増した近年は、日本政府が積極的に推奨しています。経済産業省は、『知的資産経営ポータル』というWebサイトも運営しています。安定した企業経営を進める考え方として、これからさらに注目度が増すことでしょう。

    参照:『知的資産経営ポータル』経済産業省

    知的資産経営報告書とは

    知的資産経営報告書とは、企業が保有する知的資産についてとりまとめた報告書です。具体的な内容を把握し、これから企業としてどんな活用方法を実施するかが述べられています。

    企業力の高さを社外にアピールする機会でもあり、複数の企業が知的資産経営報告書を開示しています。

    『知的資産経営ポータル』では、知的資産経営報告書の作成・開示方法について詳しく解説しています。

    知的資産の分類

    知的資産は、3つに分類できます。

    人的資産

    人的資産とは、役員や従業員が持つスキルや知識を、会社の資産として捉えることを指します。ただし明確な定義はまだ存在していません。

    提唱された当時は後天的なスキルを重視していましたが、今現在は先天的な素質なども人的資産に含まれるようになってきました。人材を会社が管理するものではなく、「会社に利益を与えてくれる重要な資産」と考えることは、人事担当者や経営者にとって重要な視点です。

    これらは、人的資源から人的資本へと考え方が変わってきた系譜とも一致します。

    組織資産(構造資産)

    組織資産(構造資産)とは、能力を持つ役員や従業員が会社を退職したあとも、企業に残り続ける資産のことです。

    ある従業員の人的資産を継承するために、教育システムを整えた場合は、このシステムが組織資産(構造資産)です。100年以上続く大企業が安定した経営を続けられる理由の一つは、盤石な組織資産(構造資産)が存在するからでしょう。

    関係資産

    関係資産とは、取引先のネットワークや金融機関との関係性など社外のつながりを指す資産です。BtoBだけではなく、顧客満足度や地域との親密性なども、関係資産に含まれます。

    企業の信頼性や社会的価値を示し、基盤の強さを表す指標の一つです。一朝一夕で得られるものではないため、丁寧な業務の積み重ねが求められます。

    知的資産経営の歴史

    知的資産経営とは、どのように生まれた考え方なのでしょうか。知的資産経営が誕生した歴史と、日本で広まった流れを解説します。

    始まりはスウェーデン

    知的資産経営は、1990年代の初頭にスウェーデンで生まれたといわれています。

    金融サービス会社であるスカンディア社が、「見えざる資産」を重要視しはじめたことがきっかけです。やがて1998年〜2001年の間に、知的資産を人的資産・組織資産(構造資産)・関係資産の3種類に分類することが検討されました。

    参照:『知的資産経営とは何か』大阪府中小企業診断協会 知的資産経営研究会

    日本での普及した流れ

    知的資産経営が日本にも導入された理由は、スカンディア社の手法が日本的であることに、当時の経済産業省の知的財産政策室長が気づいたからとされています。

    考え方が広まった現在は、知的資産を分類するなど、日本独自の取り組み方も始まっています。

    知的資産経営が求められる理由

    知的資産経営は、昨今特に社会から強く求められている考え方です。なぜここまで注目度が高まっているのか、大きな理由を3つご紹介します。

    新型コロナウイルスの影響

    新型コロナウイルスによって経営が不安定になった企業が、知的資産を見出すことで、企業力を高められる可能性があるからです。

    たとえば、インバウンド向けの旅行業を営むある企業は、休業状態だったコロナ禍に「自社の強みは、社長の人柄や従業員の接客スキルをはじめとした知的資産である」と気づきました。その結果、新しい事業に取り組むようになったといいます。

    知的資産経営は、企業がチャンスをつかむための、新しいアプローチ方法といえるでしょう。

    新しいビジネスモデルの構築

    伸び悩んでいる企業が新しいビジネスモデルを見つけられることも、知的資産経営が重要視されている理由の一つです。

    自社が知的資産を保有していることを知り、顧客利便価値を高められると、これまでと異なる方法で業績アップを狙えます。新しい顧客層に向けたアピールもできるでしょう。

    事業の閉塞感を解決する

    業績が悪化し、事業が閉塞している企業にとって、知的資産経営は風穴を開けるきっかけになります。新鮮な価値観や斬新なアイデアが社内で生み出され、事業に新しい風を吹き込むことができるでしょう。

    目に見えにくい知的資産の存在に経営者自身が気づくことで、心の余裕が生まれ、前向きな対策方法を考えられるようにもなります。

    知的資産経営のメリット

    知的資産経営を導入すると、企業には一体どんなメリットがあるのでしょうか。代表的なものを3つ取り上げ、解説します。

    企業価値の大幅なアップ

    今まで可視化されなかった知的資産を認識することで、企業価値が上昇します。社外から適切な評価を得られるようになるので、市場での扱いも向上するでしょう。買収されるリスクも低くなる可能性があります。

    また、企業の信頼度が増すため、スムーズな資金調達も可能でしょう。将来性を認められ、新しい事業をスタートしやすくなるでしょう。

    従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上

    将来的な企業価値が高まり、従業員のモチベーションやエンゲージメントもアップするでしょう。能力や知識が適切に評価されることにもつながり、全体的に労働環境が改善されれば、離職率の改善にも役立つかもしれません。

    透明性の高い企業は求職者から高い人気を得られるため、優秀な人材の確保にも期待が高まります。少子高齢化が進む現代において、労働力の確保は重要なので、非常に大きなメリットです。

    独自性を高め、他社と差別化できる

    知的資産経営は、自社にしかない独自性のあるアプローチができるので、他社と差別化がはかれます。

    さらに企業の独自性に対して顧客がファンになってくれると、その信頼関係はやがて関係資産へと成長します。

    また、他社との差別化は新規顧客の開拓にもつながります。そのため将来的な企業価値を高める手立てにもなるのです。

    知的資産経営の導入ステップ

    知的資産経営は、ウイルスの感染拡大に相まって昨今の事業の閉塞感を打破し、総合的に企業価値を高めることがわかりました。

    ここからは、知的資産経営を導入するまでの手順を4ステップに分けてご紹介します。

    自社の強みを知る

    知的資産経営導入の第一ステップは、他社にはない自社の強みをピックアップすることです。具体的には、「●●分野に秀でた人材が多いこと」「顧客満足度が高いこと」「大手金融機関からの信頼が厚いこと」などが例に挙げられます。

    このとき重要なのは、役員など上層部のみで話を進めないことです。従業員にも意見を出してもらい、会社全体で知的資産経営に取り組みましょう。経営者が気づかないような、新鮮な意見が出てくるかもしれません。

    自社の強みを使うストーリーを作成する

    知的資産経営導入の第二ステップは、見つかった自社の強みをどのように活かすか、方法を決めましょう。

    たとえば「有能な人材が多いこと」を強みに挙げた場合は、「各人材のスキルを最大限まで活用した人材配置を行い、業務効率化に結びつける」というストーリーを作成します。

    目に見えない資産を結果につなげて可視化させること」をゴールに見据え、ストーリーをシミュレーションしてみましょう。この際も、全従業員で内容を考えると、風通しのよい職場が構築される可能性が高まります。

    経営方針の見える化/管理指標の特定

    知的資産経営導入の第三ステップは、経営方針や管理指標といった「目に見えるもの」に反映させることです。業績アップを実現させるためには、具体的な仕組みを作成・実施しなければいけないからです。

    現実的に実施できる内容に整えましょう。

    報告書にまとめる/実践

    作成した内容を知的資産経営報告書にまとめ、実際に実践します。将来的なビジョンを社外にアピールする機会でもあるので、報告書はしっかりまとめましょう。

    特に中小企業やベンチャー企業は、経営者や企業のポテンシャルを社外から見定められやすいため、企業の優位性をここでアピールするといいかもしれません。

    知的資産経営の取り組み事例

    知的資産経営に取り組んでいる企業の取り組み事例を、3社取り上げます。自社に取り入れる際は、ぜひご活用ください。

    株式会社くらしケア

    訪問介護業を営む株式会社くらしケアは、「デジタル機器活用力」や「地域の住民・事業者からの理解と共感」などを知的資産に挙げています。

    マニュアルの開発やフランチャイズ展開を通して、「地域社会での暮らしが成り立つ支援サービスを東海地区から全国に広げること」を目指しているそうです。

    参照:『くらしを看る』株式会社くらしケア 知的資産経営報告書(2022年1月)

    有限会社渋谷木工所

    有限会社渋谷木工所の知的資産経営報告書には、実際の業務内容が写真で掲載され、わかりやすく知的資産経営について述べられています。

    「データベース化を活用した施工管理を実施していること」などを工程価値に挙げ、未来の方策が説明されています。

    参照:『有限会社渋谷木工所 知的資産経営報告書』(2022年2月)

    株式会社ヒロヤコンフェクション

    洋菓子販売を行う株式会社ヒロヤコンフェクションは、「新商品の開発力」「ブランド力・認知度の高さ、「優れた技能を持った洋菓子職人の多さ」などを知的資産として紹介しています。

    「接客スキルの向上」「体に優しいスイーツなどの開発」「新規顧客開拓」などを事業展開として進め、経営戦略の達成を目指すと述べられています。

    参照:『本物のスイーツを求め続けるパティスリーヒロヤのこれまでとこれから』(2022年3月版)

    知的資産経営で、組織の活性化へ

    知的資産経営は、これからも世界的に重要度が増すことが予想される経営方法です。人材を価値ある「資産」と捉え、従業員のスキルを伸ばしていく考え方は、組織の活性化を促します。知的資産経営の導入がきっかけで、現在抱えている課題の解決の糸口が見つけられるかもしれません

    タレントマネジメントシステム『スマカン』は、知的資産の中でも人的資産の価値を最大限高めることを支援するクラウドシステムです。

    従業員のスキルを的確に把握して、適材適所の人材の配置などにお役立ていただけます。効果的な人材育成にも役立つので、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める人材活用につながります。人材という価値ある資産を見直すきっかけにしていただけるかもしれません。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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