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抜擢人事のメリット・デメリット|成功ポイントと失敗例、登用すべき人材の特徴も紹介

抜擢人事のメリット・デメリット|成功ポイントと失敗例、登用すべき人材の特徴も紹介

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年齢や学歴、勤続年数や性別を問わず、能力のある社員を登用、適材適所での起用を行う「抜擢人事」が注目されています。従来の年功序列型人事から、スキルや業績に重きを置く成果主義型へと変わりつつある今、抜擢人事の活用は当たり前になりつつあります。

当記事では抜擢人事のメリットとデメリットから抜擢すべき人材、さらに成功させるポイントまで詳しく解説します。

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目次(タップして開閉)

    抜擢人事とは

    抜擢人事とは、実力やスキルを重視し人材を登用し、重要なポジションに配置する人事制度をいいます。これまで日本では、年功序列の人事評価が優先されてきました。年功序列とはその名の通り、年齢や勤続年数などが長ければ長い社員ほど、役職や賃金などが上がっていくシステムです。

    一方、抜擢人事では、仕事のスキルや成果が評価され、昇給や昇進することになります。社歴や年齢、また男性女性を問わず実力のある人材が登用されます。つまり抜擢人事では、実力さえあれば、若い社員であっても重要なポジションに就く可能性があるのです。そのため、後輩社員が先輩社員の上司になるケースも出てきます。

    長らく人材の評価基準として大きな軸となってきた年功序列ですが、近年は成果や業績重視のシステムへと切り替わりつつあります。抜擢人事が注目されるのもある意味当然の流れといえるでしょう。

    抜擢人事が必要な理由

    抜擢人事が導入される背景には、年功序列の衰退や労働力人口の減少が挙げられます。

    高度経済成長期より導入された日本特有の年功序列型人事評価システムは、時代にそぐわなくなりつつあります。少子高齢化が進み、中高年齢層の社員が多くなった現代では、人件費だけが増大し、経営への大きな負担になるなどのデメリットが目立ち始めたからです。

    加えてDX化など事業サイクルの回転も速まり、勤続年数に関係なくスキルを持つ人材が必要とされるようになりました。

    今後、労働力人口の減少も予測され、年齢や社歴を問わず実力のある人材を評価する成果主義への移り変わりが求められます。時代に合う人材を評価するシステムの一つとして抜擢人事が必要とされるようになったのです。

    抜擢人事を行うことは若手や中途採用人材のモチベーションアップにつながる利点もあります。

    抜擢人事のメリット

    スキルや実力に重きを置いた抜擢人事は、時代に合った優秀な人材を発掘する目的で今後も導入が進んでいくと考えられます。企業が抜擢人事を導入で得られるメリットを6つご紹介します。

    適材適所の人材配置が可能

    抜擢人事によって柔軟なに人を異動させることで、適材適所の配置が実現します。長い間企業に属していると、人材配置において価値観が固まってしまうことがあります。抜擢人事は凝り固まった先入観を変える新たな風となり、社員の新たな適性を発見できる機会となるでしょう。

    ポテンシャルの高い若手の活用が期待できる

    抜擢人事ではスキルや実力はもちろんのこと、潜在能力も判断材料となります。若くて、ポテンシャルの高い人材が重要なポストに就くことで、若手人材の成長促進にもつながります。また競争が生まれることで、若手や中途人材の能力強化など相乗効果が期待できるでしょう。

    若手や中途人材のモチベーション・エンゲージメント向上

    抜擢人事では、社員の実力や能力などでポジションが決まります。若手でも先輩でも、中途入社にも平等にチャンスがあるのです。抜擢人事の存在が社員のモチベーションを高める効果をもたらします。


    年功序列型の人事では、スキルや実力に目配りされる機会は少ない傾向にあります。昇進や昇給などに実績が影響することが少なく、勤続年数や年齢でポジションが決まってしまいます。これでは社員の士気が上がりにくくなってしまいます。

    次世代のリーダーの発掘、育成

    抜擢人事で選ばれた若い人材は、適材適所で高い能力を発揮できるようになります。部下を束ねるうちに切磋琢磨してリーダーシップも身につけるでしょう。さらにその姿に刺激を受けた下の世代が刺激を受け、また次の新たなリーダーを目指します。次世代リーダーの発掘がさらなるリーダーの育成につながるというわけです。

    組織全体の活性化

    抜擢人事の導入により、組織全体のレベルアップが期待できます。社歴や年齢などスキル以外の部分が重視された年功序列型の人事制度では、個人の実績が正しく評価されない部分が大きなデメリットとなっていました。

    しかし抜擢人事により、個々人の実力が判断材料になることがわかり、社員全体のモチベーションアップがはかれます。より高いポジションを目指す人材も増えるでしょう。組織全体が活性化し、全体のレベルアップへとつながるのも利点の一つです。

    人事担当者の意識改革

    長らく年功序列型人事評価システムが活用された会社では、人事担当者も前例を意識した人材配置を行っていたでしょう。ところが抜擢人事では、年功序列型でははかれないスキルや能力が基準となります。人事担当者として適材適所の配置を行うために、社員の能力を見極める必要があります。結果的に新たな視点で人材を発掘できるなど、意識改革につながるでしょう。

    抜擢人事のデメリット

    抜擢人事の採用には、新たなリーダーの発掘や組織の活性化など数多くのメリットがあります。一方で、突然新しいシステムを導入することによって生じる弊害も少なくありません。抜擢人事の代表的なデメリットとして次の4つが挙げられます。

    抜擢されなかった社員の不満が発生する

    抜擢人事では、登用の根拠を明確にしないとほかの社員の反発を生む可能性があります。従来の年功序列型の人事では、年齢や勤続年数といった明確な判断材料が存在します。しかし抜擢人事の場合、スキルや実績などに関する選考過程を明らかにしなければ、ほかの社員から不満が高まる結果になりかねません。抜擢されなかった社員の不信感が高くなればなるほど、抜擢された社員が孤立してしまう恐れもあります。

    企業風土と合わない場合もある

    抜擢人事は、年齢や社歴に重きを置く業界にはマッチしません。そのような企業風土のもと、年下の後輩が抜擢されたことにより人間関係に問題が生じるリスクもあります。社内での理解を得られずに抜擢人事を進めた結果、組織全体の士気が低下することも考えられます。

    抜擢後に実力や人脈の乏しさが露呈する

    抜擢人事の特徴は、実力やスキルだけでなく、ポテンシャルに期待する部分も大きい点です。そのため抜擢人事の実施後、スキルが不足していたり、思ったほどの成果をあげられなかったりするケースもあるかもしれません。また若手や中途入社の場合、社内での人脈やコネに乏しい傾向にあります。部下や上司をまとめられないなどのデメリットが生じる可能性もあります。

    従来型人事を支持する勢力からの反発

    抜擢人事の導入は、自社で長らく定着していた人事制度と合わないことがあります。従来型の人事制度のもと働いてきた社員にとって、抜擢人事の導入は将来のポストを失うことにつながります。特に伝統のある業界や業種ではその傾向が大きくなります。また年齢層が高い社員が多い企業も同様で、変化を嫌い新しいシステムを受け入れられず、反発することが予想されます。

    抜擢人事の種類

    抜擢人事には、大きく分けて3つのパターンがあります。

    ポテンシャル登用

    抜擢人事の1つめは、未経験ながら高いポテンシャルの人材を登用するケースです。リーダーとしての経験はなくとも、職務に役立つスキルを有する人材の潜在能力を評価し、抜擢します。年齢や勤続年数を判断基準としないため、後輩が「リーダー」、先輩が「部下」となる場合もあります。

    実績・成果登用

    すでに何らかの成果を出している人材を登用するのが、抜擢人事の2番目のケースです。ポテンシャル登用と同様に、年齢や性別などを問わず若手を抜擢するパターンです。役職などのない一般のスタッフであっても、実績や成果次第では抜擢する可能性があります。

     社外登用

    3つめは社内でなく社外の人材から抜擢するケースです。たとえば新規事業に参入する場合、自社にはノウハウがないことも考えられます。社外に新規事業に関連するスキルや実績を持つ優秀な人材がいれば、リーダーとして高いポジションに就ける場合もあります。

    抜擢するべき人の特徴

    抜擢人事において、実際に抜擢するべき人とはどんな人材でしょうか。抜擢される人材は多くの場合、次の3つの要素を持っています。

    人望

    業務に関するスキルが高いことは大切ですが、それだけでは実績を上げるのは難しいでしょう。業務能力が同じであっても、人望がなければチームや組織をまとめるのは難しいからです。

    また、チームタスクをこなせる能力も不可欠です。もともと抜擢人事は登用への嫉妬など、抜擢された人材が孤立する要素をはらんでいます。アウェイにおいてチームをまとめる力を持つ人材が抜擢できる人であり、人望のある人材とも言い換えられるのです。

    成功、失敗どちらの経験も持っている

    成功だけでなく、たとえ失敗経験であっても経験値を持つ人材は活躍するケースが多いといわれます。経験は行動しなければ蓄積されないからです。失敗であっても、決断や行動をしなければチャンスをつかむことはできません。

    職場以外でも力を発揮できる

    実際の現場以外の場所でも周囲に気遣いができる、ルールを守って行動できる人材かどうかも判断基準となります。案外、オフの場こそ、誰かが見ているものです。業務を離れていても、光る部分を持つ人は抜擢すべき人材といえるでしょう。

    抜擢人事の成功ポイント

    勤続年数や年齢を判断基準にせず、若手や中途入社などの人材を高いポジションに登用する抜擢人事。成果や実力を正当に評価する面でメリットが多い抜擢人事を上手に実施するためには事前に準備したうえでの導入をおすすめします。以下に抜擢人事の運用を成功させるための3つのポイントをまとめました。

    公平な評価を心掛ける

    抜擢人事では、従来の年功序列型の人事のように登用基準が見えにくい点に注意が必要です。たとえば、年功序列システムだと順当に行けば高いポストが用意されている人材がいるとします。それが抜擢人事により昇格できないとなると、当然不満を感じるはずです。

    「登用側の好みで採用してるのではないか」「選考基準に偏りがあるのでは」と不信感を生むきっかけとなります。フェアな人事評価に配慮しなければなりません。また抜擢人事の導入理由やメリットをあらためて周知したあとの導入が大切です。

    評価基準、評価過程の明確化

    抜擢人事では、先述の通り、公平な評価にするために選考過程の不透明さをなくす必要があります。対策としては選考基準や過程を明示すると同時に、人材を抜擢した理由も明らかにしましょう。ほかの社員たちが、なぜその人材が登用されたのかを理解し、納得していることが「フェアな評価」の大前提となるからです。

    抜擢されなかった人材へのフォローも重要

    抜擢人事への不満が残りやすいのは、年功序列のままの人事評価であれば、重要なポジションにつけたはずと考える方たちです。業務へのモチベーションが下がったり、抜擢された人材への嫉妬から人間関係にヒビが入ったりする可能性もあります。

    不穏な雰囲気のままではチーム全体、ひいては組織全体の士気低下につながりかねません。抜擢されなかった人材の活用をあらためて考え、フォローやケアに努める必要が出てくるでしょう。

    抜擢人事の成功事例

    有能な人材を発掘するため、また組織の活性化を目的として多くの企業が抜擢人事を導入しています。抜擢人事の導入に成功した企業の事例をご紹介します。抜擢人事をお考えの際はご参考になさってください。

    <CASE1>ヤフー株式会社

    2019年に東京都の副知事に就任した宮坂学氏。実はもともと、ヤフー株式会社(ヤフー)の社長だった人物です。宮坂氏が社長に就任したのは2012年、44歳の頃の抜擢でした。当時のヤフーは15期連続で増収増益を実現し、好調の波に乗っていました。

    しかし時代はパソコンからスマートフォンへと変わりつつあり、新たな戦略の柱として宮坂氏が抜擢されたのです。宮坂氏により役員の平均年齢は10歳以上若くなり、事業のスマートフォンシフトも実現。その手腕が買われて副知事にも「抜擢」されたといえるでしょう。

    参照:『既存の組織、サービスを「爆速」で変えていく--ヤフー社長兼CEO 宮坂 学』

    <CASE2>松下電器産業(現・パナソニック)

    年功序列制度が日本のスタンダードだった時代に、大抜擢されたのが1977年に松下電器産業(現・パナソニック)の社長に就任した山下俊彦氏です。取締役26名中序列25番目だと目されていた山下氏の就任は、当時も世間を賑わせる抜擢人事でした。

    就任後は社内の古い慣習を変革し、時に創業者である松下幸之助氏とも意見が対立するケースがあったといわれています。一方で同社が家電専業メーカーから総合エレクトロニクスメーカーに転換し、現在の地位を築いたのはこの抜擢人事の影響も大きいと考えられています。

    参照:『松下電器の「山下跳び」の真相』

    <CASE3>株式会社サイバーエージェント

    抜擢人事を積極的に行う企業として知られるのが、「Ameba」を運営する株式会社サイバーエージェントです。若手を積極的に活用し、全社員が新規事業を提案できるコンテストを設け、内容やアイデア次第で経験が浅くても経営者候補として認められるシステムを用意しています。新卒入社数年でも実力があれば子会社の社長として登用。営業利益アップという結果も残しています。

    参照:『サイバーエージェントの人事トップが語る 若手を「抜擢しない」のはリスクである理由』

    抜擢人事のよくある失敗例

    抜擢人事で成果をあげている企業がいる一方、失敗してしまう事例もあります。抜擢人事では、潜在能力への期待から若手や中途採用の人材を抜擢する場合も少なくありません。しかし、実際の業務にあたって、能力や経験の不足が目立つ可能性もあります。役職やポジションに就いてチームをまとめるスキルが乏しいからです。

    抜擢された人材が孤立するリスクもあります。さらに突然の若手の抜擢に不満を抱える社員が多くいれば、人間関係においても問題が生じます。チームとして実績を上げるのは困難となってしまいます。

    まとめ

    抜擢人事は、さまざまな好影響が期待できる人事システムです。抜擢人事が刺激となり、組織の活性化をはかれます。しかし準備不足のまま早急に導入すると、抜擢された人材の孤立や人間関係の悪化など、かえってデメリットをもたらす結果になりかねません。

    『スマカン』は従業員のスキルや能力を可視化し、適材適所の人事配置をサポートするタレントマネジメントシステムです。日頃から従業員のスキルや適性を直感的に管理しておくと、失敗しない抜擢人事の選考にも役立つでしょう。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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