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昇給制度とは? 種類と目的、ベースアップとの違い、平均額、実施状況を紹介

昇給制度とは? 種類と役割やベースアップとの違い、平均額、実施状況を紹介

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昇給制度とは、企業が定めた昇給時の給与改定の仕組みのことをいいます。日本企業は年数を経るごとに給与が上がる「定期昇給制度」の導入が主流ですが、近年は定期昇給制度の見直しをする動きもあるようです。

そこで当記事では、定期昇給制度のメリット・デメリットや昇給の種類、目的、平均額、実施状況などをご紹介します。昇給制度の導入や見直しを検討されている方は、ぜひお役立てください。

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目次(タップして開閉)

    昇給(制度)とは

    昇給とは、業績評価や勤続年数などに応じて「基本給が増額すること」です。そして「昇給制度」とは、企業ごとに定められた昇給時の給与改定の仕組みのことをいいます。

    昇給と似た言葉に「昇格」「昇進」があります。それぞれの意味の違いや「昇給と賞与との違い」を解説します。

    昇格・昇進との違い

    昇給と昇格・昇進の違いは、簡単に説明すると下記のようになります。

    昇給給与が上がること
    昇格等級が上がること
    昇進職位が上がること

    昇格とは

    昇格とは、職能資格制度を導入している企業で「等級が上がること」です。

    昇格は「主任から係長になった」というように、必ずしも職位が変わるわけではありません。たとえば「主任1級から主任2級に昇格」のように、職務遂行能力に応じて等級が上がることを「昇格」といいます。

    昇進とは

    昇進とは「会社が定めた職位が上がること」です。

    たとえば「一般社員から主任に」「課長から部長に」など、役職が上がって肩書きが変わることを「昇進」といいます。

    賞与(ボーナス)との違い

    賞与(ボーナス)とは「月々の給与とは別に支払われる給与」のことをいいます。

    昇給は「月々の給与が上がる」ことを指すのに対し、賞与は月々の給与とは別に「企業の業績や個人の実績などの査定条件によって、年1〜2回支給される給与」という違いがあります。

    昇給制度の6つの種類

    昇給制度には、主に下記の6種類あります。

    ・定期昇給
    ・臨時昇給
    ・自動昇給
    ・考課昇給
    ・普通昇給
    ・特別昇給

    それぞれの意味について解説します。

    定期昇給

    定期昇給とは、企業ごとに定めた時期に定期的に行われる昇給を指します。

    昇給のタイミングは企業によりますが、一般的に年に1〜2回(4月・10月など)実施されることが多いようです。

    全従業員の給与を一律に上げる場合は、ベースアップに該当します。

    臨時昇給

    臨時昇給とは、定期昇給と反対に「時期を決めずに臨時に行われる昇給」を指します。企業の業績が好調である際に行われることが多いです。

    臨時昇給の中でも、特定の従業員の過重負担や実績に対して昇給する場合は特別昇給にあたります。

    自動昇給

    自動昇給とは、従業員個人の実績とは関係なく、勤続年数や年齢を基準として全従業員が定期的に昇給する制度です。

    定期的に昇給するため、自動昇給は定期昇給の一部であるといえるでしょう。

    考課昇給

    考課昇給とは、自動昇給とは異なり、従業員個人の実績や評価を基準に行われる昇給のことで「査定昇給」とも呼ばれます。

    普通昇給

    普通昇給とは、職務遂行能力や技能が向上したタイミングなど、一般的な昇給条件で行われる昇給のことです。

    特別昇給

    特別昇給とは、特殊な職務に従事していたり、格別な業績を上げたり、一般的に誰でも該当するとはいえないような理由に基づいて行われる昇給のことです。

    特別昇給は、普通昇給と区別されるために使われます。

    定期昇給制度とベースアップの違い

    「定期昇給制度」とは、年齢や勤続年数など個人の状況に応じて自動的に基本給が上がる制度です。

    一方で「ベースアップ」とは、企業の業績に応じて全社員の基本給が底上げされることをいいます。

    ベースアップは「ベア」と略されることもあり、ベースアップはパーセンテージで示されます。たとえば「ベースアップ2%」が採用された場合は「全社員の基本給が2%アップする」ということです。

    つまり、定期昇給は「個人ごとの基本給の増額」であるのに対し、ベースアップは「全社員の基本給を一律で引き上げる」ことを指す、という違いがあります。

    昇給制度の目的

    企業が昇給制度を導入する理由には、主に次の3つの目的があります。

    ・給与の公平性を保つための調整
    ・従業員のモチベーション向上・生活水準維持
    ・企業の成長・安定性の提示

    それぞれの目的について詳しく解説します。

    給与の公平性を保つための調整

    昇給制度には、勤続年数やスキル・業績に応じて各従業員に見合った給与になるように、調整するための目的があります。

    従業員のモチベーション・生活水準の向上

    昇給制度があることによって、従業員のモチベーション向上にもつながります。

    会社への貢献度やスキルアップが評価され給与に反映されることにより、従業員は労働意欲が向上し、刺激も感じられるでしょう。

    また給与が上がると、生活水準を維持できたり向上できたりする従業員も多いため、離職防止にもつながるでしょう。

    企業の成長・安定性の提示

    昇給制度には「給与を増額させることができる」という企業の安定性や、成長性を提示する目的もあります。

    定期昇給制度の概要

    定期昇給制度に対する「よくある疑問」について、まとめてご紹介します。

    実施のタイミングは?

    定期昇給の実施タイミングは各企業によりますが、一般的には年1回、年度初めの4月に実施されることが多いようです。

    実際のところ企業や業種によって大きく異なり、昇給を年2回(4月・10月)設定していたり、株主総会の実施後や会計年度の始まり月に行う場合もあります。

    給与への反映はいつ?

    一般的に定期昇給の給与への反映は、昇給が実施された翌月の給与から反映されることが多いです。

    たとえば、4月に昇給が実施された場合は、翌5月の給与で、4月分と5月分の2か月分の昇給額が支払われます。

    何歳まで昇給する?

    定期昇給制度は、年齢や勤続年数に応じて昇給する仕組みですが、ある一定の年齢になると昇給を停止する企業が多いです。

    公益財団法人日本生産性本部が行った調査では、昇給停止年齢の平均は「48.9歳」と報告されています。なかには定年まで定期昇給が続く企業もありますが、50歳前後で停止となる企業が多いようです。

    参照:『第14回 日本的雇用・人事の変容に関する調査』公益財団法人日本生産性本部(2014)

    定期昇給制度のメリット・デメリット

    定期昇給制度のメリット・デメリットについて解説します。

    メリット

    定期昇給制度があることにより、従業員側としては、将来的な収入の見通しを立てられるため「生活設計がしやすい」というメリットがあります。

    また、定期昇給制度は一定のタイミングで給与が上がるため、企業の人事労務担当者としても「管理や計算がしやすい」メリットも挙げられるでしょう。

    デメリット

    定期昇給制度のデメリットとして、個人の成果に関係なく安定して給与が上がるシステムであるため、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下が懸念されます。

    特に有能な若手社員は「勤続年数は長くても実績を出せていない社員の方が、自分よりもよい待遇を受けている」という点に不満を感じるかもしれません。

    また定期昇給制度により、給与として支払う額が年々増加するため、人件費の高騰という課題が表面化してくるでしょう。

    定期昇給制度なしは違法?

    就業規則や労働条件通知書などに「昇給なし」と記載がある場合は、企業が昇給を行わなくても違法にはなりません。

    また「年1回昇給あり」と就業規則に記載があったとしても「昇給の有無は業績による」のような条件が明記されている場合は、昇給が見送られたとしても違法ではありません。

    つまり昇給制度に法的な義務はないので、就業規則の記載通りであれば問題ないということです。

    ただし、産休・育休を理由に昇給を実施しなかった場合は『育児・介護休業法』において「不利益な取扱い」とみなされ、違法となることがあるため注意しましょう。

    参照:『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第10条』e-GOV法令検索

    定期昇給制度を廃止する動きもある

    日本では多くの企業が定期昇給制度を取り入れてきました。しかし、近年は定期昇給制度を廃止する企業もあらわれています。

    たとえば、トヨタ自動車は2021年1月より定期昇給制度を廃止し、個人の評価を重視して給与を決定する制度へと変更しました。

    一律で給与が上がる定期昇給制度から、成果主義に基づいた昇給制度へと、制度の見直しを行う企業が増えているのです。

    参照:『トヨタ、一律の定昇廃止を決定 労組が受け入れ』日本経済新聞(2020)

    日本企業における昇給制度の実態

    日本の企業における、昇給制度の実施状況や賞与の平均額など、実態について解説します。

    定期昇給の実施状況

    厚生労働省から発表された『令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況』によると、管理職も一般職も7割以上の人に対して、定期昇給制度が適用されています。

    定期昇給の有無

    定期昇給制度あり定期昇給制度なし
    管理職70.9%25.6%
    一般職78.0%18.9%

    定期昇給の実施状況

    制度があるからといって、実際に定期昇給が行われるとは限りません。同調査では、制度がある企業のうち、半数以上が昇給を行ったという結果をまとめています。

    行った・行う行わなかった・行わない
    管理職64.5%(前年63.1%)5.8%(前年9.3%)
    一般職74.1%(前年74.6%)3.3%(前年6.4%)

    また、昇給が延期された企業も0.6%ありました。

    参照:『令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況』厚生労働省(2022)

    昇給額の平均

    日本経済団体連合会が公表したデータによると、中小企業(従業員数500人未満・17業種・754社)と、大手企業(従業員500人以上・主要21業種・253社)では、昇給額に大きな差があることがわかります。

    中小企業大手企業
    昇給額の総平均5,036円7,562円
    製造業の昇給額平均5,312円7,451円
    非製造業の昇給額平均4,571円8,076円

    業界を問わず、中小企業より大手企業の方が昇給額が多くなっています

    中小企業の規模別で見る昇給額の平均

    中小企業の規模別で昇給額の平均を見ても、従業員数が多い企業の方が、昇給額が多い傾向にあります。

    100人未満4,497円
    100~300人未満5,059円
    300~500人未満5,135円

    参照:『2022年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)』日本経済団体連合会(2022)
    参照:『2022年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)』日本経済団体連合会(2022)

    昇給率の平均

    昇給率とは「昇給前と比べて給与が何%上がったのか」をあらわす割合です。

    中小企業と大手企業の昇給率の総平均は、2%前後と報告されています。

    昇給率の総平均
    中小企業1.92%
    大手企業2.27%

    参照:『2022年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)』日本経済団体連合会(2022)
    参照:『2022年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)』日本経済団体連合会(2022)

    2023年昇給を予定している企業の状況

    株式会社東京商工リサーチが実施した調査によると、有効回答4,465社のうち80.6%の企業が、2023年度に「賃上げの実施を予定している」と回答しています。

    昇給の種類としては定期昇給がもっとも多く、77.7%でした。規模別で見ると、大企業は83.8%、中小企業では76.8%という結果が報告されています。

    参照:『~2023年度「賃上げに関するアンケート」調査(第2回)~』株式会社東京商工リサーチ(2023)

    定期昇給制度を導入する際の注意点

    定期昇給制度は、年数を経れば自動的に昇給する制度であるため、人件費の負担が増加するという注意点があります。場合によっては、定期昇給制度による人件費の高騰が企業の成長の妨げになる可能性もあるでしょう。

    人件費の課題を回避するために、トヨタ自動車をはじめ、定期昇給制度の見直しを行う企業が増えています。

    具体的な対策としては「定期昇給を停止する年齢の引き下げ」や「成果昇給制度への変更」が挙げられます。

    定期昇給制度の導入を考えている場合は、自社にとって適切な昇給制度となるように内容を検討しましょう。

    まとめ

    昇給制度には主に6つの種類があり、多くの日本企業は一律型の「定期昇給制度」を取り入れてきました。

    しかし、定期昇給制度には「人件費の高騰」や「モチベーションの低下」というデメリットが挙げられるため、近年では従業員の成果に基づく昇給制度へと見直しを行う企業もあらわれています。

    成果に基づく昇給制度への見直しを考えているなら、従業員のスキルや実績を一元管理・可視化できる「タレントマネジメントシステム」の導入もおすすめです。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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