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人的資源管理(HRM)とは【なぜ重要か】5つの理論モデルと課題も解説
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人的資源管理とは、4大経営資源の一つである「ヒト」について、経営目標の達成のために管理・活用することです。ヒトを管理・活用するとは、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
当記事は人的資源管理の概念や目的、問題点、モチベーションとの関連について、押さえておきたい基礎を詳しく解説します。
目次(タップして開閉)
人的資源管理(HRM)とは何か
まず始めに、人的資源管理(HRM)の概要を解説いたします。
人的資源管理とは
人的資源管理とは、「ヒト」を資源と捉えたうえで、経営目標の達成のために人材を活用することをいいます。英語でHuman Resource Management(ヒューマン・リリース・マネジメント)と表記し、HRMと略されます。
企業における人材採用や人事評価、人材配置など「ヒト」に関するマネジメントすべてを指している場合が多いです。
経営資源とは| 4つか6つか?
人的資源管理で管理する「ヒト」は、経営資源の一つです。「ヒト」は、ほかの経営資源に比べて特に重要とされています。
そもそも4大経営資源とは、次の通りです。
ヒト | ・企業で働く従業員 ・4つの経営資源の中で、最も重要だとされる |
---|---|
モノ | ・企業で所有する物理的なモノ (例:パソコン、ソフト、事務所、土地、社用車) ・商品やサービスに付加価値をつけ、利益を生む |
カネ | ・お金 (例:現金、株式、有価証券、売掛金) |
情報 | ・企業で保有する無形財産 (例:データ、特許、ノウハウ、スキル、地域とのつながり) ・情報を貸与・売却し、「カネ」にすることも可 |
上記の4つの経営資源に「時間」と「知的財産」を加えて6つとする考え方もあります。それぞれの資源を有効活用してこそ、経営において利益を生み出せると考えられています。
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人的資源管理(HRM)のアプローチ法
人的資源管理では、一般的に以下の2つのアプローチを行います。
1 | 人事制度の構築 | 採用活動から人材配置、人事評価、退職に至るまで、人事制度を整備すること |
2 | 社員のモチベーションのアップ | 上司による適切なリーダーシップによって部下(=人的資源)のモチベーションを高め、企業に貢献できるよう促すこと |
人的資源はなぜ重要?
人的資源とは経営資源の1要素であり、「ヒト」を指します。
人的資源はなぜ、経営資源の中でもっとも重要とされているのでしょうか。それは「ヒト」がいてこそ初めて「モノ・カネ・情報」を活かすせると考えられているためです。
人的資源の重要性について、詳しく解説します。
人的資源の活用は経営者の責任
人的資源管理に関する経営者の責任は重大です。経営者が人的資源に対して「適切な動機づけができるか」で経営が左右されるといっても過言ではありません。
オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカー氏は、「人的資源こそ、企業に託されたもっとも生産的かつ変化しやすい資源」だと定義しています。企業が然るべき行動をしてこそ、人的資源を有効活用できるのです。
人的資源がほかの経営資源と異なる特徴
人的資源がほかの経営資源(モノ・カネ・情報)と異なる特徴は、喜怒哀楽といった感情や意志を持っている点です。企業からの一方的な押しつけや拘束では、適切な管理はできません。
人的資源管理は容易ではないものの、潜在能力や才能の開花など、さまざまな可能性を秘めている点において、面白みがあるものといえます。
人的資源管理に正解はない
人的資源管理に、絶対的な方法はありません。故に正解もありません。「ヒト」には、それぞれの感情や意志があるため、戦略や期待通りにいかないこともあるためです。正解がないことは、人的資源管理の方法や取り組み方には、無限の可能性があるという意味でもあります。
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人的資源管理の歴史と背景
人的資源管理はどのように広まっていったのでしょうか。歴史と背景を解説いたします。
人的資源管理の広がり
人的資源管理は、戦後のアメリカから始まったといわれています。その後、イギリスに普及し、日本にも広がりました。
戦後のアメリカでは、開発途上国に対する経済支援が行き詰まり、その反省から「ヒト」に着目するようになりました。ヒトが経験などで得た知識・技能をさらに活かすために投資がなされ、企業経営への戦略的な観点も加わった結果、人的資源管理の原型ができたそうです。
日本において人的資源管理が注目されたのは、1990年代以降です。そして終身雇用が崩壊しつつある2000年代では、グローバル化や働き方の多様化を背景に、ヒトの知識や技能を活用する考え方が強まってきました。そのため、人的資源管理という概念への注目度が高まっているのでしょう。
人的資源と人的資本の違い
さらに昨今は、ヒトを資源ではなく、資本と捉える「人的資本」という考え方も重要視されています。
資本とは、経済活動の元手となる生産3要素「資本・土地・労働」の中の一つです。人的資本のほかにも、物的資本や財務資本などさまざまな種類があります。
資源とは、人間の生産活動において利用できるものすべてです。経営においては「ヒト・モノ・金・情報・時間・知的財産」です。
人的資本は、投資によって価値を高められるとされています。一方、人的資源は消費するものであり、費用・コストと考えられています。
人的資源管理の目的と役割
人的資源管理には大きく分けて4つの目的と役割があるといわれています。具体的には以下の通りです。
1 | 経営的な短期目標 | ヒトの成果による経営戦略の達成および企業への貢献 |
2 | 経営的な長期目標 | より高い成果・目標の達成、経営戦略の構築に向けた、ヒトの能力の向上 |
3 | 個人的な短期目標 | 現在のヒトの成果に対する公平かつ適切な評価、処遇の提供 |
4 | 個人的な長期目標 | ヒトの成長をサポート、キャリアパスの構築 |
人的資源管理では、経営と個人、短期と長期を踏まえた視点で考えることが必要といえそうです。
人的資源管理の5つのモデル理論
人的資源管理を進めるにあたって、参考となる5つのモデル概念があります。以下に詳細を解説します。
ミシガンモデル
ミシガンモデルは、1980年代にアメリカ・ミシガンの大学で実施された研究データがベースの人的資源管理のモデル概念です。
基礎となる考え方は「人的資源管理は、経営戦略との整合性を見ながら実施すべき」というものです。
具体的には、以下4つの機能を戦略レベルまで落とし込んだうえで、個人と組織の双方におけるパフォーマンスを高めていきます。
1.採用と選抜 2.人材の評価 3.人材の開発 4.報酬 |
ミシガンモデルの特徴は、人的資源に着目する点はもちろん、経営戦略や組織構造などの経営面との互換性を重視しているところです。
ハーバードモデル
ハーバードモデルは、1980年代にアメリカ・ハーバード大学で実施された研究データをベースとした人的資源管理のモデル概念です。
基本となる考え方は「人的資源管理は、従業員の能力や帰属意識を重視しつつ行うべき」というものです。背景には、人的資源管理は「社員の特性や市場の要因」や「仕事関係者の影響」を受けるという側面があります。
またハーバードモデルは、以下の4要素で構築されています。
1.従業員への影響 2.人的資源のフロー 3.報酬システム 4.職務システム |
ハーバードモデルの特徴は、上記の4つの側面を加味しながら「社員のスキル・コミットメントの高まり」と「組織・個人双方における目標の合致」を意識しつつ、人的資源管理を実行するところです。
高業績HRM(AMO理論)
高業績HRMとは、「Human Resource Management」の略です。高業績HRMにはさまざまな人的資源管理の理論があり、なかでもAMO理論は代表的なモデルです。
AMO理論のAMOとは、以下の頭文字からとられています。
・Ability(能力) ・Motivation(モチベーション) ・Opportunity(機会) |
高業績HRM(AMO理論)の特徴は、「能力・モチベーション・機会の3要素を向上させることで、組織の持続的競争において優位に立てる」という考えに基づいていることです。
個人のスキルや経験よりも、企業への帰属意識やモチベーションを高めるのに効果があることがわかっています。
高業績HRM(PIRK理論)
高業績HRM(PIRK理論)は、AMO理論とは異なる高業績HRM人的資源管理のモデルの一種です。
PIRK理論のPIRKとは、以下の頭文字からとられています。
・Power(権限)の委譲 ・Information(情報)の共有 ・Reward(報酬)の公平化 ・Knowledge(知識)が従業員に帰属される |
高業績HRM(PIRK理論)の特徴は、公平感覚とコミットメントによって、企業への帰属意識やモチベーションの高まりが期待できるところです。従業員の帰属意識(エンゲージメント)やモチベーションが高まると、離職率の低下も期待できます。
帰属意識やモチベーションの高まりに効果がある特徴はAMO理論と共通しています。ただしAMO理論とPIRK理論では重視しているものが異なります。AMO理論は「能力・モチベーション・機会」、PIRK理論は「公平感覚とコミットメント」に重点が置かれてモデルが設計されています。
タレントマネジメント
タレントマネジメントとは、タレント(=人的資源)の能力や資質を、経営目標の実現に向けて最大限活用するマネジメント手法です。
タレントマネジメントでは人材採用、人材配置、人事評価、人材育成すべての人事施策において、戦略的に人的資源の活用を目指します。
人的資源管理の課題や問題点
人事資源管理には、課題や問題点もあるといわれています。具体的には以下の通りです。
業績への要因を突き止めにくい
人的資源管理の課題1つめは、業績への影響を突き止めにくい点です。
人的資源管理では、従業員は資源と捉られ、経営のために活用されます。あくまでも従業員は「1つのリソース」であり、組織と人材の因果関係を追求されることはありません。業績が上がった(もしくは下がった)場合、その要因を突き止める際、人材に対して行った管理施策などの影響は考慮されないでしょう。
特に人的資源管理の「ミシガンモデル」では、企業の経営目標の達成が最重要事項であり、業績がアップすればするほど「業績に影響した要因」を突き止めにくくなります。
業績に影響した人材要因がわからないと、個人に適したスキル開発や要望の反映が難しくなってしまうのは課題といえるでしょう。
企業の立場が上位になりがち
人的資源管理の課題2つめは、企業と従業員が対等な立場の関係性を保つのが難しい点です。
人的資源管理は企業戦略が最優先であり、戦略の達成に向けて人が管理されるためです。最初から「企業」が上位という構図ができているため、組織と人で対等な関係は築きにくいでしょう。
企業の立場が上位であると、従業員が不満を抱えていても声を上げにくく、企業に従うしかないと考える従業員もあらわれるかもしれません。
企業優位の傾向が顕著になると、従業員の人間性が軽視され、労働者の権利を守る「労働組合」の存在も軽視される恐れがあります。
管理しすぎると主体性がなくなる
人的資源管理では、管理の対象が「感情・意志を持つ人間」であるため、マネジメントが容易でないところが課題の3つめです。
ときに企業と従業員の間に、価値観の相違が生まれることもあるでしょう。相違が生じた状態で管理を強めると、従業員は「嫌だけれど従うしかない」という心理になりかねません。そのうち「自分の意志は聞いてもらえないから、会社から言われた通りに動こう」という考えが生まれ、個人の主体性がなくなる恐れもあります。
主体的に動けない状況でモチベーションが下がり、生産性の低下や離職につながる可能性もあるでしょう。このような事態までいくと、本来は経営のために行われる「人的資源管理」が、意味のないものになってしまいます。
相手が人であるため、思い通りに動かないこともある
人的資源管理の課題4つめは、思い通りにならないことです。
人的資源管理の対象は、さまざまな個性を持った「人」です。「〇〇をしなさい」と具体的に指示を出しても、実行しないこともあるでしょう。
人的資源管理を行う際は、相手が「感情・意志を持つ人間」だという点を踏まえ、各自に合わせた柔軟なやり方を考える必要があります。また、管理しすぎて融通が利かなくなると、組織としての柔軟性も欠けてしまうでしょう。
人的資源管理で社員のモチベーションは高められる?
人的資源管理には、人事制度構築とモチベーションアップという2つの主なアプローチ法があります。ここの段落では、モチベーションのアップについて解説いたします。
人的資源管理によって社員のモチベーションを高めるには、高業績HRMにおけるハイコミットメントシステムを活用するのがいいとされています。
ハイコミットメントシステムとは、組織と従業員の相互作用を促進し、組織のパフォーマンス向上を行う人的資源管理で、採用、選抜、教育、報酬、職務分析、業績評価などの要素に分けられます。従業員の内発的動機づけを促すよう、それらの施策を整えることによって、従業員は組織に対するコミットメントを強めます。
ハイコミットメントシステムは、各段階によって適切なアプローチをすることによって、社員のモチベーションを高められると考えられています。
人的資源管理に取り組むには
人的資源管理は、ヒトを最大限活用し、経営目標を達成することによって、組織と組織のヒトの成長へ導く人材マネジメントです。さまざまな背景をもって重要性が認識され、5つのモデルを参考に取り組む組織もあるといいます。ただし管理対象が、一筋縄ではいかない「ヒト」であるという点において、課題も残されています。
人的資源管理には、従業員データの一元管理や適切な人事評価制度の運用が不可欠でしょう。人材情報の一元管理や可視化には、タレントマネジメントシステムの導入も一つの方法です。
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記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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