• 2022.07.22  最終更新日2022.11.09
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人的資源管理(HRM)とは? 概念や目的、課題を解説

【人的資源管理の基礎】概念、目的、問題点、モチベーションの高め方について

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人的資源管理とは、経営資源の1つである「ヒト」について、経営目標の達成のために管理・活用することです。ヒトを管理・活用するとは、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。

当記事は人的資源管理の概念や目的、問題点、モチベーションとの関連について、押さえておきたい基礎を詳しく解説します。

目次(タップして開閉)

人的資源管理(HRM)とは何か

まず始めに、人的資源管理(HRM)の概要を解説いたします。

人的資源管理とは

人的資源管理とは、Human Resource Management(ヒューマン・リリース・マネジメント)のことであり、HRMと略されます。4つの経営資源の中でも「ヒト」を資源と捉えたうえで、経営目標の達成のために人材を活用することをいいます。

具体的には人材採用・人事評価・人材配置など、ヒトに関するマネジメントすべてを指します。

4つの経営資源とは

人的資源管理で管理する「ヒト」は、経営資源の1つです。「ヒト」は、ほかの3つの経営資源に比べて特に重要とされています。

そもそも4つの経営資源とは、以下の通りです。

ヒト・企業で働く従業員
・4つの経営資源の中で、最も重要だとされる
モノ・企業で所有する物理的なモノ
(例:パソコン、ソフト、事務所、土地、社用車)
・商品やサービスに付加価値をつけ、利益を生む
カネ・お金
(例:現金、株式、有価証券、売掛金)
情報・企業で保有する無形財産
(例:データ、特許、ノウハウ、スキル、地域とのつながり)
・情報を貸与・売却し、「カネ」にすることも可

それぞれの資源を有効活用してこそ、経営において利益を生み出すことができます。

人的資源管理(HRM)のアプローチ法

人的資源管理では、一般的に以下の2つのアプローチ法があります。

人事制度の構築 採用活動から人材配置、人事評価、退職に至るいたるまで、人事制度を整備すること
モチベーションのアップ 上司による適切なリーダーシップによって部下(=人的資源)のモチベーションを高め、企業に貢献できるよう促すこと

人的資源はなぜ重要?

前述のように人的資源とは4つの経営資源の1要素であり、「ヒト」を指します。

人的資源はなぜ、経営資源の中で最も重要とされているのでしょうか。それは「ヒト」がいて初めて、「モノ・カネ・情報」を活かすことができるからです。

人的資源の重要性について、詳しく解説します。

人的資源の活用は経営者の責任

人的資源管理に関する経営者の責任は重大です。経営者が人的資源に対し、「適切な動機づけをできるか」で経営が左右されるといっても過言ではありません。

オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカー氏は、「人的資源こそ、企業に託された最も生産的かつ変化しやすい資源」だと定義しています。つまり、企業が然るべき行動をしてこそ、人的資源を有効活用できるのです。

人的資源がほかの経営資源と異なる点

人的資源がほかの経営資源(モノ・カネ・情報)と異なる点は、喜怒哀楽といった感情や意志を持っている点です。そのため、企業からの一方的な押しつけや拘束では、適切な管理はできません。

人的資源管理は容易ではないものの、潜在能力や才能の開花など、さまざまな可能性を秘めている点において、面白みがあるものだといえます。

人的資源管理に正解はない

人的資源管理に、絶対的な方法はありません。故に正解もありません。「ヒト」には、それぞれの感情や意志があるため、戦略や期待通りにいかないこともあるからです。

正解がないことは、人的資源管理には無限の可能性があるという意味でもあるのです。

人的資源管理の歴史と背景

人的資源管理はどのように広まっていったのでしょうか。歴史と背景を解説いたします。

人的資源管理の広がり

人的資源管理は、戦後のアメリカから始まったといわれています。その後、イギリスに普及し、日本にも広がりました。

戦後のアメリカでは、開発途上国に対する経済支援が行き詰まり、その反省から「ヒト」に着目するようになりました。ヒトが経験などで得た知識・技能をさらに活かすために投資がなされ、企業経営への戦略的な観点も加わった結果、人的資源管理の原型ができたそうです。

日本において人的資源管理が注目されたのは、1990年代以降です。そして終身雇用が崩壊しつつある2000年代では、グローバル化や働き方の多様化を背景に、ヒトの知識や技能を活用する考え方が強まってきました。そのため、人的資源管理という概念への注目度が高まっているのでしょう。

人的資源と人的資本の違い

さらに昨今は、ヒトを資源ではなく、資本と捉える「人的資本」という考え方にも注目が高まってきました。

資本とは、経済活動の元手となる生産3要素「資本・土地・労働」の中の1つです。人的資本のほかにも、物的資本や財務資本などさまざまな種類があります。

資源とは、人間の生産活動において利用できるものすべてです。前述のように経営においては「ヒト・モノ・金・情報」です。

人的資本は、投資によって価値を高めるものです。一方、人的資源は消費するものでありコストと考えられています。

人的資源管理の目的と役割

人的資源管理には大きく4つの目的・役割があるといわれています。具体的には以下の通りです。

経営的な短期目標ヒトの成果による経営戦略の達成および企業への貢献
経営的な長期目標より高い成果・目標の達成、経営戦略の構築に向けた、ヒトの能力の向上
個人的な短期目標現在のヒトの成果に対する公平かつ適切な評価、処遇の提供
個人的な長期目標ヒトの成長をサポート、キャリアパスの構築

人的資源管理では、経営と個人、短期と長期を踏まえた視点で考えることが必要です。

人的資源管理の5つのモデル

人的資源管理を進めるにあたって、参考となる5つのモデル概念があります。以下に詳細を解説します。

ミシガンモデル

ミシガンモデルは、1980年代にアメリカのミシガン大学で実施された研究データがベースの人的資源管理のモデル概念です。

基礎となる考え方は「人的資源管理は、経営戦略との整合性を見ながら実施すべき」というものです。

具体的には、以下4つの機能を戦略レベルまで落とし込んだうえで、個人と組織の双方におけるパフォーマンスを高めていきます。

1.採用と選抜
2.人材の評価
3.人材の開発
4.報酬

ミシガンモデルの特徴は、人的資源に着目する点はもちろん、経営戦略や組織構造などの経営面との互換性を重視している点です。

ハーバードモデル

ハーバードモデルは、1980年代にアメリカのハーバード大学で実施された研究データをベースとした人的資源管理のモデル概念です。

基本となる考え方は「人的資源管理は、従業員の能力や帰属意識を重視しつつ行うべき」というものです。背景には、人的資源管理は「社員の特性や市場の要因」や「仕事関係者の影響」を受けるという考え方があります。

またハーバードモデルは、以下の4要素で構築されています。

1.従業員への影響
2.人的資源のフロー
3.報酬システム
4.職務システム

ハーバードモデルの特徴は、上記の4要素を加味しながら「社員のスキル・コミットメントの高まり」と「組織・個人双方における目標の合致」を意識しつつ、人的資源管理を実行する点です。

高業績HRM(AMO理論)

高業績HRMとは、「Human Resource Management」の略です。高業績HRMにはさまざまな人的資源管理の理論があり、なかでもAMO理論は代表的なものです。

AMO理論のAMOとは、以下の頭文字からとられています。

・Ability(能力)
・Motivation(モチベーション)
・Opportunity(機会)

高業績HRM(AMO理論)の特徴は、能力・モチベーション・機会の3要素を向上させることで、組織の持続的競争において優位に立てるという考え方です。

個人のスキルや経験よりも、企業への帰属意識やモチベーションを高めのに効果があることがわかっています。

高業績HRM(PIRK理論)

高業績HRM(PIRK理論)は、前述のAMO理論とは異なる人的資源管理のモデルです。

PIRK理論のPIRKとは、以下の頭文字からとられています。

・Power(権限)の委譲
・Information(情報)の共有
・Reward(報酬)の公平化
・Knowledge(知識)が従業員に帰属される

高業績HRM(PIRK理論)の特徴は、公平感覚とコミットメントによって、企業への帰属意識やモチベーションの高まりが期待できる点です。そのため、離職率の低下に役立ちます。

帰属意識やモチベーションの高まりに効果がある点は前述のAMO理論と同じですが、AMO理論では「能力・モチベーション・機会」を重視し、PIRK理論では「公平感覚とコミットメント」を重視しています。

タレントマネジメント

タレントマネジメントとは、タレント(=人的資源)の能力や資質を、経営目標の実現に向けて最大限活用するマネジメント手法です。

タレントマネジメントでは人材採用、人材配置、人事評価、人材育成すべての人事施策において、戦略的に人的資源の活用を目指します。

人的資源管理の課題や問題点

人事資源管理には課題や問題点もあります。具体的には以下の通りです。

業績の要因を突き止めにくい

人的資源管理では、従業員を人的資源と捉えたうえで、経営のために活用します。

つまり、あくまで従業員は「一つのリソース」として捉え、組織と人材の因果関係までは考えません。そのため、業績が上がった(もしくは下がった)要因について、人材レベルまで追求しません。

特に人的資源管理の「ミシガンモデル」では、企業の経営目標の達成が最重要事項であり、業績がアップすればするほど「業績の要因」を突き止めにくくなります。

また、業績の要因が突き止めにくくなるにつれて、個人に適したスキル開発や要望の反映が難しくなります。

企業の立場が上位になりがち

人的資源管理では、組織と従業員の「対等な立場関係」を保つのが難しい点も課題です。なぜなら企業戦略が最優先になり、戦略の達成に向けて人的資源管理がされるからです。最初から、「企業」が上位という構図ができているため、対等な関係は築きにくいといえます。

企業の立場が上位であると、従業員が不満を抱えていても声を上げにくく、企業に従うしかないと考える人も出てくるでしょう。

さらにその傾向が顕著になると、人間性の軽視が進むのはもちろん、労働者の権利を守る「労働組合」の存在も軽視されてしまいます。

管理しすぎると主体性がなくなる

人的資源管理は、管理の対象が「感情・意志を持つ人間」であることから、管理が容易ではありません

ときには企業と従業員の間に、価値観の相違が生まれることもあるでしょう。相違が生じた状態で管理を強めると、従業員は「嫌だけれど従うしかない」という状態になりかねません。

そのうち「自分の意志は聞いてもらえないから、会社から言われた通りに動こう」という考えになり、主体性がなくなる恐れもあります。また、主体的に動けない状況でモチベーションが下がり、生産性の低下や離職につながる可能性もあるでしょう。

生産性の低下や離職という事態になれば、経営のためである「人的資源管理」自体が、意味のないものになってしまいます。

相手が人であるため、思い通りに動かないこともある

人的資源管理の管理対象は、さまざまな個性を持った「人」です。そのため、思い通りにならないことも課題の一つです。

「〇〇をしなさい」と具体的に指示を出しても、実行しないことさえあるのです。

人的資源管理を行う際は、相手が「感情・意志を持つ人間」だという点を踏まえ、各自に合わせた柔軟なやり方を考える必要があります。

また、管理しすぎて融通が利かなくなると、組織としての柔軟性も欠けてしまうでしょう。

人的資源管理によって社員のモチベーションは高められる?

人的資源管理には、人事制度構築とモチベーションアップという2つの主なアプローチ法があります。ここでは、モチベーションのアップについて解説いたします。

人的資源管理によって社員のモチベーションを高めるには、高業績HRMにおけるハイコミットメントシステムを活用するのがいいとされています。

ハイコミットメントシステムとは、組織と従業員の相互作用を促進し、組織のパフォーマンス向上を行う人的資源管理で、採用、選抜、教育、報酬、職務分析、業績評価などの要素に分けられます。従業員の内発的動機づけを促すよう、それらの施策を整えることによって、従業員は組織に対するコミットメントを強めます

ハイコミットメントシステムは、各段階によって適切なアプローチをすることによって、社員のモチベーションを高められると考えられています。

人的資源管理に取り組むには

当記事は、人的資源管理の基礎について概要を解説しました。人的資源管理は、ヒトを最大限活用し、経営目標を達成することによって、組織と組織のヒトの成長へ導く人材マネジメントです。

人的資源管理には、従業員データの管理や適切な人事評価制度の運用が欠かせません。そのためには、タレントマネジメントシステムの活用も一案です。

タレントマネジメントシステム『スマカン』は、人的資源の可視化や公平で適切な人事評価制度の運用にご活用いただけます。さらに従業員のスキル管理による能力向上や効果的な育成計画の立案によって、人的資源管理の「経営・個人」「短期・長期」目標の達成に向けてサポートいたします。

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記事監修

監修者

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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