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リテンションマネジメントとは? 事例と成功ポイントや必要性も紹介
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企業の人材流出や人材確保に頭を悩ませている皆さん、「リテンションマネジメント」という言葉をご存知でしょうか?
会社が抱える問題を解決するために、リテンションマネジメントに注目が集まっています。当記事では、リテンションマネジメントの概要やメリットについて説明します。具体的な企業の事例もご紹介するので、企業の人事・マネジメント担当者はぜひ参考にしてください。
目次(タップして開閉)
リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントとは、「従業員が長く会社で働き続けられるように働きかける取り組み」のことです。リテンションは、英語で「維持、保持」という意味があり、大まかにいうと「人材の維持・確保」を指します。
働き方の多様化が重要視され、採用や人材の流出に課題を抱える企業が多い昨今、各企業が注力すべき課題として注目度が上がっている考え方です。人材のスキルを問わず、全従業員の離職を防止し、自分の能力を発揮して活躍できる職場の形成を目指します。
いま、リテンションマネジメントが必要とされる理由
どうして今、リテンションマネジメントがこんなに必要とされているのでしょうか?大きく2つの理由に分けてご説明します。
離職率が高い
現在の日本国内の企業では、慢性的な離職率の高さに悩まされています。働き方改革やフリーランスの増加、さらに新型コロナウィルス拡大等の影響もあり、この数年で、多様な働き方が可能であることが証明されました。それに伴い、優秀な人材ほど快適で自由な働き方を求める傾向が高まっています。
また終身雇用が当たり前だった時代とは違い、自分にとってよりより環境を求める人が増えており、被雇用者である働く人材にとって「この企業で長く働きたい」といった魅力がなければ、離職率が上がるのは当然の結果と言えます。
せっかくコストをかけて採用・育成した人材にミスマッチが生じすぐに離職してしまうと、社内ノウハウの継承がうまくいかず、ナレッジの構築に時間がかかるなど、想定よりも事業の成長スピードが上がらないといった企業が多いのも現状です。先を見据えて安定した経営を実現するには、人材の定着が不可欠といえます。
離職率を下げ、貴重な人材に長い期間働いてもらうためには、人材にとって有益となりうる環境整備などの専門的な対策が求められます。このような状況が、リテンションマネジメントの需要を高めているのです。
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慢性的な人材不足
中小企業の多くは、慢性的な人材不足に苦しめられています。日本は深刻な少子高齢化が進んでおり、労働人口が減少しているうえ、先にも言及したように、ここ数年は基本的に売り手市場が続いており、優秀な人材ほど「自分にとってより良い環境で働くこと」「自分が成長できる環境」を求める傾向にあります。
例えば、コロナ禍にもかかわらず出社を強制する、福利厚生が充実していない、上司がハラスメント気質など、柔軟性に乏しく昭和の空気を引きずっているような環境では、魅力のない企業、長く在籍する価値のない企業とみなされ、優秀な人材からは見向きもされないのです。
さらに中小企業などといった、大企業のようなネームバリューが少ない企業は、求人をかけてもなかなか募集が集まらず、慢性的に人手が足りていません。だからこそ、一度採用した人材を他社に流出させないためには、リテンションマネジメントが必要とされているのです。
リテンションマネジメントのメリット
リテンションマネジメントには、いったいどんなメリットがあるのでしょうか。6つのポイントをピックアップして解説します。
採用コストの削減
離職率が下がれば、自動的に新しい人材を募集するコストを削減できます。必要以上に人材を採用しなくても、十分仕事を回せる余裕があるからです。新入社員への研修費も減らせるので、採用の費用対効果を高められるでしょう。
新入社員1人あたり、数十万円以上も採用コストがかかることもあるので、人材の維持は企業の経営状況を改善するために効果的です。離職に伴う新たな人材の採用や、離職に付随する事務作業も削減できるため、採用担当者やすでに在籍している従業員の生産性も向上します。
社内ナレッジの蓄積
長年勤めている従業員が増えると、業務のノウハウや知識が社内に蓄積されていきます。やがてそのノウハウは社内ナレッジとなり、全社的に業務の効率化アップや新事業への足がかりに結びつくでしょう。
充分な予算をかけているにもかかわらず成長スピードが遅い、グロースできていない事業には必ず課題点があります。例えば事業責任者が不在や、すぐに辞めてしまう事例が起こっていたり、逆に経験値が少なく即戦力にならない人材や、報酬面でも採用しやすい若手ばかりを採用していても、社内ナレッジは構築されづらく、また新しい知見も積めずに事業が伸び悩むといった問題が起こります。
従業員が離職した場合も、すでに社内ナレッジが充実している企業は、引き継ぎが適切に機能します。従業員の中身を問わず、いつでも一定レベルの業務ができるため、安定した人材確保にもつながるでしょう。
教育コストの削減
常に離職率が高く、新規採用を繰り返す企業は余分な教育コストがかかります。新入社員を採用する必要がないので、そのたびに必要だった教育コストがかかりません。座学研修をはじめ、OJT研修にかかる多大な労力と手間もカットできます。指導係の従業員が本来の業務に集中して取り組めるため、業務の効率がよくなるでしょう。
また、採用の際に高額な報酬や制度を設けた上で即戦力人材の採用を行うことで、例えば経験不足の3人分の知見やスキルを一人の人材で補うこともできるなど、効率的かつ合理的な採用にも繋がり教育コストの是正にもつながります。
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従業員満足度・エンゲージメントの向上
働きやすい職場をつくりあげることで、従業員の会社に対する満足度も向上します。愛社精神も刺激され、エンゲージメントが高まるでしょう。個々のパフォーマンスがアップし、結果的に業績アップへとつながります。
なお、従業員から愛される企業は、社会的ステータスも上がっていきます。顧客や取引先からの企業イメージが改善され、新しいビジネスチャンスも舞い込んでくるでしょう。
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顧客満足度の向上
従業員への配慮が希薄な企業は、ステークホルダーへの配慮も乏しいといった傾向があるなど、「従業員満足度=顧客満足度」は深く繋がっていることを認識する必要があります。
顧客にとって、いつも同じ従業員が対応してくれる企業は、安心感が増します。逆にいうと、前回対応してくれた従業員がすぐに離職してしまうと、企業への不信感が増すでしょう。
不安や心配なく企業とコミュニケーションを取り続けられることは、顧客にとってかけがえのないメリットです。顧客満足度を上昇させ、信頼関係を築きあげるためにも、リテンションマネジメントの重要性は高まっています。
企業の安定性につながる
リテンションマネジメントに力を入れている企業は、安定した業績や先の成長が見込めるでしょう。なぜなら、人材の入れ替わりが少ない企業は、長期的な事業計画を立てられるからです。離職による内容変更があまりないため、従業員のスキルを生かした人材配置をスムーズに行えます。
将来を見据えた、確実な企業経営を行いたい場合は、まず人材を安定させなければなりません。リテンションマネジメントを実施して、職場環境を整えましょう。
リテンションマネジメント10のポイント
リテンションマネジメントを実施するには、どんな施策を行えばいいのでしょうか。10個のポイントに分けて、効果的な施策内容をご紹介します。
1.人事評価の適正化
人事評価を、透明性が高くてわかりやすいものに変えましょう。上司からの一方的な評価のみで終わらせるのではなく、同僚や後輩などに評価してもらう方法もおすすめします。マネジメントシステムを使って、個々のスキルを可視化する方法も人気です。
納得のいく人事評価を行えば、従業員の企業への不信感も軽減され、離職率も下がるでしょう。
2.報酬の見直し
従業員それぞれのスキルや経験値に見合った報酬額であるか再検討し、適正価格を提示します。報酬というもっともわかりやすい形で評価されると、従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。
あるいは、インセンティブ制度を新しく設けることもおすすめです。自分の成果が直接的に報酬へ反映されるため、スキルアップの動機づけにもなります。
3.福利厚生の整備
福利厚生サービスを充実させる方法も有効です。具体的には、以下のような例が挙げられます。
・住宅補助 ・ジムやスポーツ施設の割引 ・人間ドック補助 ・資格取得補助 ・アニバーサリー休暇 ・社員食堂 |
従業員の健康増進や、金銭面でのサポートができる福利厚生がおすすめです。どんなサービスを導入してほしいか、従業員にアンケートを取ってみてもいいでしょう。
4.社員の健康・メンタルヘルス管理
昨今、企業や管理者が社員のマネジメントを行う上で欠かせないのがメンタルヘルスの管理です。大企業やスタートアップ・ベンチャーなどの成長企業も当然のように取り入れている概念で、企業の成熟度の指標にもなる要素の一つとなっています。
定期的な健康診断をはじめ、従業員の健康(メンタルヘルス含む)を管理できるシステムも取り入れましょう。心身に問題を抱えたとき、気軽に相談できる窓口があれば、従業員も安心です。
とくにメンタルヘルスは、なかなか人に相談しにくい分野です。カウンセラーを設置する、休みがちな社員に上司から声をかけ1on1を行うなど、管理者側の意識が非常に重要な問題となり、後々に重大な問題に発展する場合を想定する必要があります。日常的にケアができるよう環境を整えましょう。
数十人〜数百人以上の規模の企業でメンタルヘンルスの施策がなく、管理者に知識がない場合、社内で問題が起こった場合に課題解決能力がないと判断されることを自覚しておくべきでしょう。
5.育成・人材開発
人材育成内容を適宜見直すと、従業員が企業に対して将来性を感じてくれるでしょう。内容としては、従業員ごとに定期的なミーティングを行い、目標管理を実施することなどです。
人材育成のために時間と手間を割いていることを感じられるため、従業員満足度の上昇が期待できます。スキルマップを作成して、計画的に人事配置を実施することもおすすめです。
6.社内環境の整備
オフィスの環境を整えることも重要です。インスピレーションを起こしやすくなるフリーアドレス制の採用や、リモートワークの推進を行いましょう。多様な働き方を受け入れ、時短勤務やフレックスタイム制度を導入することも1つのアイデアです。
すべての従業員が自分らしく働ける環境や制度をつくることが、企業の義務でもあります。
7.従業員エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメントを高めるために、普段から円滑なコミュニケーションが取れるよう工夫が必要です。人間関係に問題をきたしている部署があったら、迅速に対処を行い、働きにくさを感じている従業員をサポートしなければなりません。
小さな積み重ねが企業への信頼度を高め、離職率低下に結びついていきます。
8.ワークライフバランス
企業として従業員のワークライフバランスを尊重するスタンスは、これからの企業経営に必要不可欠でしょう。プライベートの時間を楽しめない企業は、優秀な人材から敬遠され、従業員の離職を招く可能性を高めます。
例えば計画性のない業務量を与え、残業をよしとする風潮などは時代錯誤といった印象を与える可能性があり、プライベートな時間へも影響することから従業員満足度への悪影響は計り知れません。
趣味や家族のために時間を使えるよう、仕事とプライベートを混同しない意識づけが求められます。労働時間の削減や副業の許可出しなど、従業員の生活や心理的安全性を守る施策を実施しましょう。
9.マネジメント・管理者のレベルアップ
どんなに優秀な人材を採用しても、上司となるマネジメント担当者や管理者のスキルが足りていないと、従業員に見切りをつけられる可能性が高いでしょう。定期的に研修や講座の受講をすすめ、マネジメントスキルを向上させる努力が必要です。トラブルが発生したときも、従業員が安心して頼れるようなマネジメント担当者・管理者を育成しましょう。
昨今では、管理者や使用者側が最低限身につけておくべき「教養」でもあるメンタルヘルスやコンプライアンスの問題など、企業運営のうえで最低限理解すべきことを学ばない上司の元で働く従業員満足度は低い傾向にあり、離職率が高まるのは当然の結果と言えるでしょう。事業の生産性もあがらないため、将来的に大きな成果を残すことは期待できません。
社会問題とも言われますが、リスクを想定できず、上司の個人的な感情等でマネジメントやハラスメントをおこなっている企業が多いのも現状です。しかしそれが、企業全体の評判を落とすことを忘れてはいけません。
10.採用オンボーディング
オンボーディングとは、新入社員などを早く組織に定着させ、戦力化させるための施策です。迅速に組織の一員として即戦力化することで、早期離職を防ぎます。1on1ミーティングを頻繁に行うなどして、新しい人材に寄り添うスタンスを忘れないようにしましょう。
企業のリテンションマネジメント事例
多くの企業が、リテンションマネジメントで成功を収めています。ここでは、2つの事例を取り上げます。
シエスタ制度
あるITコンサルタント会社は、午前と午後の業務間に3時間の昼休み(シエスタ)を設けています。適度な休息を挟むことで、仕事を効率化する効果があるそうです。終業時刻を伸ばしたくない人は、シエスタを挟まずに仕事をすることもできます。個人の希望にあわせて、選択肢を残すことが重要だということです。
キャリアチャレンジ制度
ある教育系企業は、キャリアチャレンジ制度を導入しました。これは、一定年数以上同じ部署に在籍している従業員が、異動申請を出せる制度です。自分のキャリアのため、積極的に行動することを推奨した結果、若い世代の離職率が低下したといいます。
リテンションマネジメントを成功させるには
リテンションマネジメントは、企業力を上げるために大切な考え方です。ただし、しっかりと結果を出すためには、経営層、管理者の意識改革が何より重要であり、自社にあった施策内容を厳選することが求められます。
いま自社に足りていない要素は何なのか、明確に把握したうえで、実際の施策に取り組まなければなりません。人事評価や人材育成内容の見直しなどを通して、従業員の働きやすさを向上させましょう。
タレントマネジメントシステム『スマカン』なら、人事評価の再検討や適切な人材配置をクラウド上でサポートします。人材情報を見える化し、全社的に一元管理することが可能です。戦略的な人材活用ができるようになり、全従業員が納得できるような環境を整備できるでしょう。埋もれた人材を見つけられたら、大幅な業績アップも夢ではありません。まずは無料トライアルから、気軽にはじめてみませんか。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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