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リフレクション(内省・振り返り)とは? 組織の人材育成における重要性と実践方法
リフレクションは個々が経験を振り返り、学びを得るプロセスです。日本においては、人材育成の要となることから取り入れる企業が増えています。
当記事では、リフレクションの意義と組織の人材育成における重要性、そして実践方法について解説します。どのようにしてリフレクションを活かし、人材育成に結びつけるか、ぜひ参考にしてみてください。
目次(タップして開閉)
リフレクション(内省・振り返り)の意味とは
リフレクションは一般的に、経験や考えに深く向き合い振り返ることを指し、内省や振り返りとも呼ばれます。英語では「反響」「反映」「熟考」を意味し、鏡や水面に映る光や映像などをあらわす言葉です。
リフレクションは領域によって細かな違いが見られ、
カメラ | 意図的な反射を捉える技術 |
---|---|
看護現場 | 患者との経験を振り返り学びを得るプロセス |
経済産業省が提唱する 社会人基礎力 | 変化する環境に適応し、自己成長を促進する重要なスキルの一つ |
という意味で使われます。
反省との違い
反省とは、過去の行動や判断に対して深く考え、誤りや失敗を認識して改善を試みることを指します。
一方でリフレクションは、経験や考えに対して客観的に振り返り、学びや洞察を得るプロセスです。単なる過ちの指摘を超えて自己理解や成長を促進する総合的な方法です。
反省は誤りや失敗への対処に焦点を当てるのに対し、リフレクションはよかった点も踏まえて幅広く建設的な学びを追求します。
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フィードバックとの違い
フィードバックとは、他者から得た情報や意見を通じて、自分の行動やパフォーマンスを評価し改善するプロセスです。一方でリフレクションは、自己内省を通して経験や考えに深く反映して学びを得るプロセスです。
フィードバックは外部からの評価を受ける方法であり、リフレクションは主観的で自己成長のために、内面からの理解や意味づけを重視する方法です。
リフレクションの目的と重要性
リフレクションの目的は「経験から学びの質を高めること」です。経験を振り返り、学びを深めるプロセスが学習の原点とされています。
アメリカの哲学者ジョン・デューイ氏が、リフレクションの時間が学習の質を向上させると述べ、リフレクションはビジネスや看護などの分野に広がりました。
同氏の主張を受けて日本でも注目が集まり、企業でもリフレクション教育が重視されています。教育を受けた従業員は自己中心的な考えを捨てるとともに、不条理なことも受け入れて内省し、組織全体を見ながら行動できるリーダーになるとされています。
組織の未来を構想できる人材を育てるためにも、リフレクション教育は不可欠といえます。
人材育成にリフレクションを取り入れる効果
リフレクションを人材育成に取り入れることで、どのような効果があるのでしょうか。メリットを5つご紹介します。
生産性の向上
リフレクションとは、経験から得た学びを自己理解や行動の改善に活かす方法です。
業務では作業プロセスの改善や目標管理に役立ちます。振り返りにより、自身を客観視して改善できる能力が培われると、業務効率が上がり、組織全体の生産性向上につながります。
自己理解の促進
リフレクションによって感情や価値観が整理され、自己理解が深まります。
失敗や成功体験における行動や判断を振り返ることで、自分の弱みや強みをより明確に理解できるためです。人材育成で本人のポテンシャルを最大限引き出すためには、深い自己理解が土台となります。
従業員の成長
従業員にリフレクションを続けてもらうと本人の成長が期待できます。経験や行動を振り返り、深まった自己理解に基づいて具体的な改善行動をとれるようになるのです。
指示がなくても自分で考えて動く習慣が身につくため、モチベーションを維持しながら、継続的なスキルの向上が見込まれるでしょう。
リーダーシップの養成
リフレクションによって過去の行動を振り返り改善する過程で、セルフリーダーシップが発揮されます。セルフリーダーシップには、目標達成に向けて主体的な行動を起こすことも含まれます。
客観的にものごとの全体を見る力が養われるため、チームメンバーを主導する力も発揮され、結束力のあるチームを構築できるようになるでしょう。
組織の成長
従業員一人ひとりにリフレクションが定着すると、組織の成長にも影響があります。
会社全体で学び続ける文化が浸透することで、変化が激しいビジネス環境に対しても柔軟に適応できる社内体制を構築できるでしょう。柔軟な学習力は企業の成長のカギといえます。
リフレクションの理論的背景と実践方法
自社でリフレクションを実践する場合、次に紹介するフレームワークが役立ちます。それぞれの理論と手法を理解することで、効果のあるリフレクションを実践できるでしょう。
経験学習モデル
アメリカの教育理論家デービッド・コルブ氏が提唱した「経験学習モデル」は、以下の4つのサイクルを繰り返す方法です。
1.具体的経験 2.省察的観察 3.抽象的概念化 4.能動的実践 |
経験を通じて学び、それを観察し考察、新たな経験へとつなげるという循環で知識やスキルを深め、持続的な成長が促進するという考え方です。
リフレクション教育で経験学習モデルを活用する場合の流れは次の通りです。
1.具体的経験 | 顧客サービス研修を受け、実際に顧客の問い合わせに応じた |
---|---|
2.省察的観察 | 経験から、顧客のニーズを正しく把握し、最適な解決策を提供することの重要性を理解した |
3.抽象的概念化 | 問題解決だけでなく、顧客との信頼構築も顧客満足度向上に必要であることを理解した |
4.能動的実践 | 今後は、顧客との対話においてより個々に合わせた対応を行い、長期的な関係構築の戦略を実践する |
ジョハリの窓
ジョハリの窓は、人間関係や自己認識に関するモデルです。以下の4つの領域に分かれており、対人関係を向上させるには「公開された自己」をより拡大すべきだという考え方です。
1.公開された自己(自分も他者も知っている自己) 2.盲点の自己(他者しか知らない自己) 3.隠された自己(自分しか知らない自己) 4.未知の自己(自分も他者も知らない自己) |
たとえば、新しいプロジェクトのチームメンバー同士が初めて協力し合う場面において、ジョハリの窓を活用する場合の流れは以下の通りです。
1.公開された自己 | チームメンバーが自己紹介し、各自のスキルや専門知識を公開する |
---|---|
2.盲点の自己 | あるメンバーがほかのメンバーに対してコミュニケーションの取り方についてのフィードバックをしたことで、これまで気づかなかった盲点が明らかになった |
3.隠された自己 | プロジェクトの成功にはプライベートな信念や価値観も影響すると気づいたメンバーが、これまで秘密にしていた個人的な価値観をほかのメンバーと共有する |
4.未知の自己 | プロジェクトの進行中、新しいアプローチやアイデアを試す。メンバーが自身の新しい側面を発見し、成長の機会を得る |
ダブルループ学習
アメリカの哲学者ドナルド・ショーン氏と理論家クリス・アージリス氏が提唱したダブルループ学習は、根本的な制約や前提を見直すリフレクションの方法です。問題に対処するだけでなく、組織やシステムの基本的な構造を再評価し、より効果的な解決策を見つけます。
たとえば、プロジェクトの進捗が予定より遅れているとします。このとき作業の進行状況を確認し、従来の計画に沿うように遅れを取り戻すのがシングルループ学習です。
一方でダブルループ学習では、プロジェクトの基本的な構造や計画に疑問を持ち、従来のアプローチや前提を見直します。そして新たな戦略やプロセスを提案し、よりスムーズに進行できる方法を模索します。
ALACTモデル
ALACTモデルは、オランダの教育研究者フレット・コルトハーヘン氏が提唱したリフレクションの学習方法です。以下のアルファベットの頭文字を取っています。
1.行為(Action) 2.行為の振り返り(Looking Back on the Action) 3.本質的な側面への気づき(Awareness of Essential Aspects) 4.行為の選択肢の拡大(Creating Alternative Methods of Action) 5.試行(Trial) |
ALACTモデルでは、失敗や思わぬ結果に直面したとき、各行為を当時の感情や思考と照らし合わせ、慎重に検証して学びを引き出すことに焦点を当てています。たとえば、プロジェクトリーダーがプロジェクトの進捗に不満を感じているとしましょう。
このとき以下の流れで、背後にある理由や意味を追求し、深く自己観察します。
1.行為 | プロジェクトの進行状況を評価し、問題点を特定。計画を見直し、対策を講じる |
---|---|
2.行為の振り返り | プロジェクトメンバーとの協力や計画の適切性を振り返り、コミュニケーションの改善が必要だと気づく |
3.本質的な側面への気づき | チームワークやコミュニケーションの本質的な要素に焦点を当て、プロジェクト成功に不可欠だと認識する |
4.行為の選択肢の拡大 | チームビルディングの方法を模索し、新たなコミュニケーション手法やプロジェクトマネジメントのアプローチを考案する |
5.試行 | 新しい手法を実践し、チームとのコミュニケーション改善を試行する。効果を確認し、学びを得る |
リフレクションの具体的な実践ステップ
基本的なリフレクションのステップは、次の3つに分けられます。ステップを通じてリフレクションを実践し、経験からの学びや成長を促進しましょう。
経験の振り返り
前回の経験や行動を振り返り、成功や課題になった瞬間を特定します。振り返りながら、当時の感情や気づきを記録します。感情の変化や新たな気づきに焦点を当てましょう。
状況の振り返り
具体的な事例や行動にフォーカスし、なぜそのような行動をとったのかを掘り下げます。自分の行動や判断に対して客観的に評価し、他者の視点やフィードバックも考慮に入れます。
行動の振り返り
経験から得られた学びや課題を抽出し、将来の行動にどのように応用できるかを考えます。
学びをもとに今後の行動に反映させる計画を立て、アクションプランを実践し、結果を観察します。そして再び振り返り、継続的な改善をはかりましょう。
リフレクションに使えるその他のフレームワーク
リフレクションをする際に活用できるフレームワークをご紹介します。
KPT
KPTは以下の頭文字を取ったフレームワークです。
1.Keep(継続:よかったこと) 2.Problem(問題:うまくいかなかったこと) 3.Try(挑戦:今後実施すること) |
Keepでは、ビジネスで継続したいポジティブな経験を挙げます。Problemでは、日々の業務から課題を見つけ出します。
そしてTryでは、KeepとProblemから得た情報をもとに、新たな取り組みや課題の解決策を検討します。最終的にそれらをまとめて具体的なアクションに移し、定期的な振り返りを通じて改善を促進します。
プロジェクトの進行の例 | チームの発展を目指す例 | ||
---|---|---|---|
1.Keep | 継続すべきポジティブな要素 | クライアントとの円滑なコミュニケーションの継続 | チームのモチベーションを高めるリーダーシップの継続 |
2.Problem | 組織の課題 | プロジェクトスケジュールの遅れ | 一部のメンバーとのコミュニケーションに課題 |
3.Try | 今後のアクション | 週次ミーティングのスケジュールを設定し、進捗の有を徹底する | チームビルディングイベントを導入し、メンバーとのコミュニケーションを向上させる |
YWT
YWTは経験を考察し、学べる点を見つけ出す方法です。
1.やったこと(Y) 2.わかったこと(W) 3.次にやること(T) |
YWT法によるリフレクションのやり方の例は以下の通りです。
1.Y | やったこと | プロジェクトメンバーと積極的なコミュニケーションを重ねた |
---|---|---|
2.W | わかったこと | メンバーから意見を募り一人ひとりの考え方を理解できたものの、すべての意見を採用できないとわかった |
3.T | 次にやること | 次回からメンバーを絞って意見を聞く |
KDA
KDAは以下の頭文字を取ったリフレクション方法です。
1.Keep(継続) 2.Discard(切り捨てる) 3.Add(加える) |
具体例は以下の通りです。
1.Keep | 継続 | 仕事で継続していくべきポジティブな要素 | ・プレゼンテーションが上手にできた ・納期を守った |
---|---|---|---|
2.Discard | 切り捨てる | 今後継続しないネガティブな要素 | ・雑な資料づくり ・タイムマネジメントができていなかった |
3.Add | 加える | 今後は新たに取り入れるアクション | ・余裕を持って資料を作成する ・新しいツールを試す |
リフレクション会議
リフレクション会議は、個人が内省したことを部署やメンバーと共有する場です。自分だけでは見過ごされがちな視点や課題が、複数の人の意見で明確にできるメリットがあります。
固定概念や環境に左右されて分析が難しい場合でも、リフレクション会議で他者の視点を取り入れると、理解が深まり最適な行動計画が策定できるでしょう。
リフレクションのポイント・注意点
従業員がリフレクションを実施する際、どのような点に注意すべきでしょうか。部下が正しくリフレクションを行えるよう、次の6つのポイントを押さえましょう。
対象者の業績を正しく知る
リフレクションの実践には、対象者の業績に関する正確な理解が不可欠です。仕事の成果を正しく知ることで、不足しているスキルや持っている強みを把握できるため、必要な改善行動につなげられます。
たとえば、対象者が営業成績が伸び悩んでいる場合、営業トークやコミュニケーションスキルを確認する指標を設けて振り返りましょう。数値などを用いると、客観的に課題を把握できるため、対象者にとって的確な教育プランが策定できます。
実力と成果のバランスを把握する
効果的なリフレクションでは、実力と成果のバランスを見極めることも重要です。あまりにも無茶な目標が設定されていると、社員のモチベーションは低下してしまいます。
数値や経験を考慮し、実現が不可能な目標設定がされていないかを確認しましょう。
事実を客観的に受け止める
感情や主観的な見解に左右されず、客観的な事実を冷静に受け入れることが重要です。仕事の結果が悪かった場合、感情的になり改善点を模索しなかったり、事実をなかったことにしたりするとリフレクションは行えません。
スキルアップや問題の改善を阻害する要因となりかねないため、事実を客観的に受け止めるように指導しましょう。
失敗ばかりに注目しない
リフレクションでは、成功と失敗の両方から学ぶことが大切です。過去の成果やポジティブな側面にも焦点を当てることで、強みと弱みを両面から把握できます。
また、失敗にもしっかりと向き合い、成功に向けた具体的なアクションプランを立てることも重要です。双方のバランスを取ることで、より包括的なリフレクションとなるでしょう。
すぐにリフレクションを行う
経験が新鮮なうちにリフレクションを行うと効果的です。
その場で感じた本心や状況の印象が鮮明なうちに学びを引き出すことができるためです。また、リフレクションは片手間でできるものではないため、まとまった時間を確保して実施しましょう。
厳密にやりすぎない
リフレクションは、一度実施したら終わりではありません。定期的に繰り返し、習慣にすることで効果を発揮します。
あまりに厳密に行おうとすると、継続するのが嫌になってしまったり、創造性や柔軟性を損なってしまったりする可能性があります。まずは柔軟なマインドセットを保ちながら始めることがポイントです。
人材育成にリフレクションを取り入れて従業員の成長へ(まとめ)
リフレクション(内省・振り返り)とは、仕事や経験を振り返り、学びを得る手法です。社員がみずから行動や経験を振り返り、学びの質を向上させることで、成長が促進されるため、組織の人材育成において重要な位置を占めています。
リフレクションを実践する際は、自社に合ったフレームワークを活用し、まずは基本のステップに沿って進めましょう。
注意点も意識して行うと、従業員一人ひとりのリーダーシップや組織全体の生産性が向上するでしょう。リフレクションを取り入れた人材育成を実施し、持続的な企業の成長を目指してみてください。
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