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キャリア自律支援とは? 企業に求められる理由と背景、課題、推進方法などを解説

キャリア自律支援とは? 企業に求められる理由と背景、課題、推進方法などを解説

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「キャリア自律支援」とは、働く人のキャリアに対する主体的な取り組みをサポートすること。近年、従業員のキャリア自律を促す企業が増えています。

キャリア自律によって人材育成などでメリットがある一方、優秀な人材が他社へ転職してしまうのではないかと不安に思われる方もいるでしょう。

当記事ではキャリア自律支援の意味や企業が取り組むべき理由とメリット、推進のためのポイント、推進の弊害となる課題を解説します。

目次(タップして開閉)

    キャリア自律支援とは

    キャリア自律支援とは、働く人のキャリアに対する主体的な取り組みをサポートすること。昨今は働き方の変化に伴い、自律型人材の育成が企業の課題となっていることも相まって、注目が集まっています。

    キャリア自律とは

    そもそもキャリア自律とは、従業員が自らのキャリアに責任を持って主体的にキャリア形成を進めていくことです。企業が主導するものではないという点が特徴です。

    キャリア自律は、1990年代にアメリカのキャリア・アクション・センター(Career Action Center:CAC)が提唱して広まったと考えられています。

    日本では厚生労働省が進める「セルフ・キャリアドック導入支援事業」の中で、以下のように定義されています。

    自分自身のキャリアビジョンをしっかり持ち、中長期的な視点から計画的・主体的な行動の積み重ねを行い、自分のキャリアを構築すること

    引用:『「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開』

    キャリア自律とキャリア開発との違い

    キャリア自律と混同しがちなものにキャリア開発があります。

    キャリア開発は職務や能力・スキルを中長期的に計画する考え方です。企業が従業員を育成する際によく用いられます。過去の経験から自己認識への理解を深め、適性のある仕事を見つけることを目的としています。

    一方キャリア自律は、単なるスキルアップや適性を見極めるものだけではありません。新しい気づきや自己変容に注目している点が特徴です。組織に頼らず自分の力でキャリアを切り拓いていく姿勢をあらわします。

    どちらも個々のキャリアを形成していくことに違いはありません。しかし、キャリア自律は環境の変化に応じて自己認識も変わるという前提のもと、変化への対応力や柔軟性をもってキャリアを確立していきます。

    自律と自立は何が違う?

    キャリア自律は、「自立」ではなくあえて「自律」と表記します。両者には以下のような違いがあります。

    自律外部から制約などを受けずに、自分で立てた規範に従って行動すること
    自立外部からの助けを借りることなく、独り立ちすること

    特にビジネスにおける個人の状態では、以下のように区別できます。

    自律状態・周囲のニーズとの調整をはかりながら、自身の行動をコントロール
    ・その結果、自己実現を目指す
    自立状態・自分の意見を主張できる
    ・ただし自己主張や自己満足で終わっている可能性

    キャリア自律に注目が高まる理由と背景

    キャリア自律になぜ今、注目が高まっているのでしょうか。

    終身雇用の衰退

    かつての日本では、キャリア自律の必要がなかったともいえます。新卒一括採用や終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用が主流だったからです。

    そのような中で従業員のキャリア形成は、企業が異動や配置、昇進や昇格を主導していくものでした。従業員側からすると、企業が提示するキャリアパスに沿ってキャリア形成を進めることとなり、自律的な姿勢はあまり求められていませんでした。

    人材の流動化

    人材の流動化は、キャリア自律を後押ししています。近年は、労働人口の減少や企業のグローバル化、終身雇用制度の衰退などを背景に、転職市場が活発化してきました。

    同じ企業で定年まで勤め上げる人は減り、企業側から従業員に向けてキャリアパスを提示するのも難しい状況です。同様に従業員側としても、自らのキャリア形成において企業に頼ることなく自律的に取り組む必要が出てきました。

    また、将来を見据えて必要な知識を自発的に吸収していく従業員は、優秀な人材である場合が多いです。企業側としては人材の流動化の中で優秀な人材を確保したい思いがあり、キャリア自律、およびその支援が徐々に浸透しているのでしょう。

    ジョブ型雇用の推進

    キャリア自律はジョブ型雇用の広がりとともに叫ばれるようになりました。メンバーシップ雇用の衰退とともに、近年は日本でもジョブ型雇用が広まっています。職務に必要なスキルを持つ人を採用するジョブ型雇用において、働く人は主体的にスキルアップやリスキリングに取り組む必要があります。

    タレントマネジメントの広がり

    キャリア自律はタレントマネジメントとも相性がよい考え方です。個々のスキルを最大限に発揮して適材適所の人材配置や効率的な人材育成を行うタレントマネジメントは、従業員の能力やスキルを可視化し、主体的な取り組みを後押しする側面を持っています。

    働き方や価値観の多様化

    キャリア自律の考え方は、働き方の多様化によって、労働者一人ひとりに求められている姿勢ともいえます。ビジネス環境の変化と相まって、最近は働く人の価値観にも変化があらわれています。

    「どのように働きたいか」に基づいて自らキャリアを選んで決断し、その実現に向けて行動する必要があります。

    企業が社員にキャリア自律を促すメリット

    キャリア自律度の高い社員は、自己評価やエンゲージメント、学習意欲、仕事の充実感、人生満足度などが高い傾向にあり、企業にとってもメリットが大きいと考えられています。

    企業が従業員にキャリア自律を促すメリットをご紹介します。

    組織の活性化と生産性の向上

    キャリア自律の状態にある従業員は、自主的かつ積極的にスキルアップを行い、自身を変化させていきます。そのような行動は組織全体を活性化させるでしょう。

    キャリア自律を促すことによって自律的な社員が増えるほど、企業は活性化し、生産性も向上していく可能性があります。

    エンゲージメントやモチベーションの向上

    企業がキャリア自律支援を行い、一人ひとりの成長を促すことで、従業員は効率的なキャリアアップが望めます。それによって評価されたり、自らの成長を実感できれば、より自社で働くことへのやりがいを強めるでしょう。結果的に、従業員エンゲージメントが高まります。

    1人のキャリア自律支援がうまくいけば、ほかの従業員にもいい影響を与えられます。全社的にモチベーションが高い状態が維持できるでしょう。

    優秀な人材の確保と定着率の向上

    キャリア自律支援によって、企業側は成長意欲の高い人材を確保できる可能性が高まります。自身のスキルアップをが支援してくれる会社に対して、従業員は安心感や信頼感を抱くからです。

    人材採用の際にも、成長意欲が高い人材への企業アピールにつながります。そして入社後もキャリア形成をサポートしてもらえる環境に居心地のよさを感じ、定着率も高まるでしょう。

    キャリア自律を進めると人材が流出してしまうのでは?

    キャリア自律支援によって、生産性の向上、従業員エンゲージメントの向上、優秀な人材の確保などのメリットがあることがわかりました。

    しかし、キャリア自律を促すことで、優秀な人材がいずれ他社へ移ってしまうのではないかと不安に思う担当者も多いでしょう。

    キャリア自律のデメリット

    キャリア自律をしている社員は、労働市場で価値が高く、さらなるチャレンジを求めて転職を考えることは大いに考えられます。職場に不満がなくても転職に向けた行動をとることがあるので注意が必要です。

    キャリア自律が必ずしも転職につながるとは限らない

    パーソル総合研究所の調査によると、「キャリア自律度と転職意向は必ずしも相関しない」ことがわかったそうです。また、現在の会社で「昇進」や「やりたい仕事ができる」見込みがあれば、転職意向が下がることがわかりました。

    つまり、キャリア自律度が高いというだけでは必ずしも転職につながるとは限りません。

    参照:『従業員のキャリア自律に関する定量調査』パーソル総合研究所

    定着には社内体制の整備が必要

    以上を踏まえると、キャリア自律によって人材流出の可能性はゼロではありませんが、キャリア自律度が高い従業員に適切な活躍のチャンスを与えられるよう、社内体制を整えましょう。

    後述する最適なポジションへの抜擢や自己申告・社内公募制度の実施など、望み通りのキャリアが描けるよう支援することが大切です。そのため、日頃から会社の意向と従業員の希望をすり合わせる機会を設け、意見を取り入れつつ、成長の機会をつくりましょう。

    キャリア自律支援における課題

    キャリア自律は、企業にとってメリットはありますが、人材流出の可能性は捨てきれないので、解決すべき課題があります。

    適切なポジションを提供できる体制の整備

    前述のように、キャリア自律支援においては社内体制の整備は必須です。

    キャリアを自律度が高い従業員は、身につけたスキルを最大限に発揮できる場所で働きたいと考えます。しかし企業によっては活躍できる体制が整っておらず、せっかく意欲的にスキルアップしても、適切なポジションが用意されていなければ、従業員エンゲージメントは低下してしまう恐れがあります。

    従業員エンゲージメントが下がると、最悪の場合、離職にもつながることも考えられます。企業がキャリア自律支援を行う場合は、従業員が存分に能力を発揮できる場を提供できる体制を整えておく必要があるでしょう。

    マネジメント層への理解促進

    マネジメント層がキャリア自律支援を正しく理解できていない場合、従業員は思うようにキャリア形成に向けての行動ができません。上司がキャリア自律を重視せず、現状の業務遂行にばかり目を向けているようなケースでは、意欲があっても、部下は自身のキャリアに対して自律的に振る舞うことが難しくなってしまいます。

    企業がキャリア自律支援を行う場合は、まずはマネジメント層への周知と理解の促進を行うことが大切です。管理職と情報を共有し、長期的な視点で部下のキャリア形成をサポートしましょう。

    キャリア自律的でない従業員への対応

    積極的にキャリア自律を支援しても、すべての従業員が自身のキャリアに意欲的ではないことを企業側は理解しておきましょう。

    働く人の価値観は多様化しています。意欲的にキャリア形成を考える社員がいる一方で、出世意欲も向上心も低い社員もいます。

    キャリア自律を組織全体で実施するには、意欲的ではない社員に対し、どのようにキャリア自律の重要性を理解してもらうかを検討する必要があります。

    キャリア自律支援のポイント・具体策

    企業側が一方的に社員のキャリア自律を望んでも、自律的なキャリアを築く社員は生まれません。前述のように、自身のキャリアに関心が低い社員もいるからです。

    もともと企業側が提示するキャリアパスに沿っていくのが主流だった日本では、会社としてキャリア自律を支援する仕組みを整える必要があります。ここではキャリア自律を促すに当たってのポイントと具体策をご紹介します。

    経営層がビジョンや方針を伝える

    キャリア自律支援は、福利厚生の一つではなく、会社の成長につながる取り組みです。そのため、通達は経営者自らが従業員に行うべきです。会社がどのようなキャリア形成を従業員に望むのか、それを実現するために会社はどのような支援を行うのか、などを具体的に周知する必要があるでしょう。

    キャリア研修を実施する

    従業員に日頃からキャリア自律を意識してもらうために、研修を実施するのは非常に効果的です。新人から若手、中堅社員、シニア層と段階を分け、それぞれのフェーズに見合った研修の実施が好ましいです。

    たとえば若手社員には自己理解を深めるようなテーマ、中堅社員にはスキルの棚卸しなどのテーマにするとよいかもしれません。そしてシニア層は、経験やスキルの継承についてのテーマがいいでしょう。自身のキャリアについて考える機会を提供するとともに、モチベーションの維持にも役立ちます。

    副業など外部との関わりを推進する

    副業やボランティアなど外部と関わりで得られる刺激も、キャリア自律には重要です。そのような社外活動は、幅広く本人の可能性を模索するきっかけとなるのです。

    副業やボランティア活動で得られる外部との人脈や新しい経験などは、自社の業務でも活かせることがあります。外部との関わりは、従業員にとって多くの学びを得るチャンスなのです。

    キャリア相談の窓口を設ける

    キャリア自律支援では、自社内に相談窓口を設けるのも大切です。自律的にキャリア形成をしたいと考える従業員が、行き詰まったときや具体的なアドバイスが欲しいときに役立ちます。気軽にキャリアカウンセリングが受けられる場所があれば、キャリアについてのより考えを深めるきっかけになります。

    気軽に相談できる機会の提供方法としては、メンター制度やFAQボットツールなども考えられます。多方面から相談窓口を用意することで、従業員はより安心感を得られ、キャリア自律に向けて行動できるでしょう。

    自己申告や社内公募の実施

    新たな職務を経験してもらうことも、キャリア自律につながります。配置転換などはもちろんのこと、自己申告制度や社内公募制度など、自ら手を挙げて主体的に事業に取り組める機会を増やしましょう。

    キャリア自律支援を推進する企業事例

    昨今のキャリア自律に注目が集まる中、効果的な支援策を実施している企業もあります。具体例を3社ご紹介します。

    A社 年代や職種に関係なく参加できるWeb研修制度

    A社では、従業員の学びたい意欲を支援する取り組みを行っています。これまで階層別、職種別に実施していたすべての研修を、1つのWebプラットフォームに集約し、誰でも好きな研修を視聴できます。

    研修の内容は、動画を中心とした「eラーニング」のほか、実際に社内で起こった(起こりうる)事例をテーマに少人数で議論を交わす「少人数討議」などを実施しています。

    職種に関係なく誰でも好きな研修に参加できるので、若手社員からベテラン社員まで幅広い年齢層の社員の交流の場にもなり、異なる世代の考え方を知る機会にもなっているそうです。

    B社 社内スクールを整備し積極的に正社員転換を支援

    B社では、非正規雇用から正社員を積極的に登用しています。

    請負事業場のリーダーや管理職へステップアップを目指す方に向けた社内スクール制度を設け、6か月で職業能力や専門知識、人間性を身につけさせるプログラムを実施し、意欲の高い人材を育成しています。研修プログラムは無償かつ有給で受講可能で、正社員を志望する非正規雇用社員を会社全体でバックアップしています。

    C社 シニア層に向けたキャリア形成支援プログラム

    C社では、ベテラン・シニア社員の活性化に向けたプログラムを実施しています。

    たとえば、50歳以上の授業員がが新たなスキルを得るために自己投資をした場合、会社は上限10万円までを補助しています。ユニークなのは、一見業務に関係ないスキルでも認められていることです。なかには趣味の腕前を上げるための挑戦を行う従業員もいるようです。

    またC社では、シニア層の従業員向けにワークショップも実施しています。自身のキャリアを考える楽しさや、定年後を見据えた将来設計をテーマにしたワークショップなどが行われ、退職後も活躍できるための取り組みを実施しています。

    タレントマネジメントでキャリア自律支援を

    キャリア自律によって、従業員自身の可能性を広げることはもちろん、一人ひとりの能力が発揮されることで組織の活性化・生産性の向上にもつながります。今後もキャリア自律支援はますます必要性が高まるでしょう。したがって企業は、多様な価値観に配慮しながら、個々のスキルを可視化し、能力を最大限に発揮できるポジションを提供する体制を整えなければなりません

    タレントマネジメントシステム『スマカン』は、従業員一人ひとりのスキルや経験をクラウド上で一元管理し、適材適所の人材配置をサポートいたします。MBOなど従業員自ら設定した目標の進捗管理など、キャリア自律支援に役立てることもできます。

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