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人事理念とは? 経営理念との違い、明確にする意義、事例、つくり方について解説

人事理念とは? 経営理念との違い、明確化の意義、企業の事例、つくり方について

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人事理念とは、企業の人材に対する考え方を示したものです。最近では人材を資本と捉える経営が広がり始めています。

当記事では、経営理念をはじめとした類似理念と人事理念の必要性やつくり方、経営理念との違い、人事制度との関連性、具体的な事例についてご紹介します。

目次(タップして開閉)

    人事理念について

    まず始めに人事理念の概念や意味についてご紹介します。

    人事理念とは

    人事理念とは、企業の人材に対する考え方です。戦略人事を進めるうえでの方向性を指すこともあります。

    具体的には「どんな社員を求めているのか」「社員に身につけてほしいスキルは何か」など、人材に関する考え方のことです。企業としてあるべき姿をあらわす価値観や哲学でもあり、その内容は会社によって大きく変わってきます。

    企業によっては、「人財理念」「人材理念」「人材ポリシー」などの呼び方を採用している場合もあります。

    人事理念と経営理念の違い

    人事理念とよく似た概念に経営理念があります。経営理念は、会社を経営するうえで重要視したい、精神や行動について示しています。一般的には、社内の人間に対して、会社の運営方針を伝える役割を持ちます。つまり経営理念とは、会社全体が最終ゴールとして捉える総括的な目標の側面を持っています。

    人事理念には経営理念と実際の人事制度を連結させる役割があります。経営理念を実現させるために必要な、人事分野での考えを明文化したものが人事理念といえます。

    人事理念と企業理念の違い

    企業理念は企業の存在意義を文章化したものです。「どうしてこの会社は存在しているのか」という質問の答えでもあります。社外の人間に企業イメージをアピールする際にも使われています。

    企業理念と経営理念は性質が似ているため、中には「基本理念」という言葉を使って、経営理念と企業理念の両方をまとめてあらわす会社もあります。

    人事理念はあくまで人事分野にフォーカスした理念を指すため、これらとは内容が異なります。

    人事理念と行動理念の違い

    行動理念は、経営理念を実現するために、社内の人間に守ってほしい行動内容を示したたものです。「行動指針」と呼んでいる会社もありますが、基本的には同じ意味です。

    具体的には「礼儀を大切にし、心のこもったあいさつを行うこと」「新しいことにチャレンジし続けること」などが多く見受けられます。

    経営理念や企業理念と異なり、主語は社内の人間です。人材に焦点を絞ったという意味では人事理念と共通点もあり、人事理念の中に行動理念が含まれていると考えていいでしょう。

    しかし、人事理念が扱うのは行動の観点だけではありません。人事分野に対して総合的に触れている点が、行動理念との相違点です。

    人事理念の必要性

    そもそも人事理念は自社に必要なのかどうか、気になる方も多いでしょう。人事理念の必要性について、概要を解説します。

    人事理念は必要?

    人事理念は、業績を伸ばしたいと考えているほとんどの会社に必要だと考えられます。なぜなら、企業力は人材の質によって変わるからです。昨今ではその傾向が特に顕著です。

    人材に関する課題(人材育成が進まない、人材の定着、採用ミスマッチ)は、人事理念を社内外で共有すれば、解決に結びつく可能性があります。

    人事理念の目的と役割

    人事理念は、人材採用や人材育成の質を高めるためにも役立ちます。

    「会社から評価されるためには、何が必要なのか」「会社は、どんな人材を求めているのか」を明確にし、共有することで、会社と社員が同じ方向を目指すことを助けます。

    その結果、社員のモチベーションアップやエンゲージメントの向上、人材の定着に結びつくでしょう。

    人事理念のメリット

    人事理念のメリットは、企業が本当に採用したい人材に向けて、適切なアピールができることです。また、的確な人事理念を掲げる会社は、世間的な印象も向上するでしょう。優秀な人材が応募してくれる見込みも高まります。

    人事理念と人事制度の関係

    適切な人事理念を掲げている企業は、公平な人事制度を実施できる可能性が高いでしょう。なぜなら、人事理念と人事制度は連動しているからです。

    人事理念が確立されている企業は、その理念内容に沿って制度を整備します。一方、人事理念があいまいな企業の人事制度は、基準が不公平であったり運用が不透明な場合が多いです。制度内容に、従業員が納得できる根拠がないからです。

    全社員に納得してもらえるような人事施策を実行したい企業は、まず始めに人事理念を確立すると効果的かもしれません。

    人事理念がない企業が抱えている課題

    今のところ人事理念を設けていない企業は多いかもしれません。しかし人事理念がない企業が抱える課題には、ある傾向があります。自社に当てはまるところがないか、チェックしてみてください。

    ミスマッチによる採用コストの高騰

    人事理念がないと採用ミスマッチが起こりやすくなるでしょう。求める人物像があいまいで、担当者ごとに意思が統一されていないと、採用後に社風や役割にズレを感じてしまうからです。早期退職にもつながり、定着率が安定しなくなるでしょう。

    そうすると採用活動を頻繁に実施する必要があり、採用コストがかさみます。そのたびに新しい人材を採用しても、ミスマッチによる退職者が多発するという、悪循環が生まれる可能性もあります。

    よって人事理念は、コスト削減のためにも必要な考え方といえます。

    結果が出ない施策を実施してしまう

    人事理念がない企業は、一つひとつの施策に統一性がない傾向にあります。そのため人事制度の改善や業績アップに結びつきません。

    たとえば「全社員の年間休日を増やす」という施策を採用しておきながら、1日の生産性を高めるための施策を一切実施しない企業があるとします。休日だけを増やした結果、業務を終わらせるために残業時間が増加し、人件費がかさんでしまうということにもなりかねません。

    人事理念のような明確なビジョンが共有されていないため、その場しのぎの施策ばかり実施してしまっているのです。

    人材育成が進まない

    人事理念がない企業は、思うように人材育成が進まないでしょう。

    「どんな人材を求めているのか」という答えを全社的に共有できていないからです。「どんな社員に成長させたいか」というゴールも決まっていないため、せっかく採用した人材を持て余してしまうこともあります。

    適切な人事評価も実施できていないことが多いため、最悪の場合、スキルアップする前に若い人材が退職してしまうかもしれません。会社の未来を担う社員が育たないと、企業や組織は衰退してしまうでしょう。

    安定した会社経営のためにも人事理念は必須といえます。

    人事理念に盛り込むべき要素

    ここまで人事理念の必要性や人事理念がない企業が抱える課題について解説しました。続いて人事理念を定める際に、盛り込むべきポイントを4点ご紹介します。

    基本的な人事方針

    人事理念には根底の考え方となる、基本的な人事方針をまず盛り込みましょう。具体的には「入社から退職までの一連の流れに沿って、企業が守る考え方」です。採用活動、昇進や処遇、人材配置などに関するポリシーを明文化したものです。

    求める社員像

    人事理念には、基本的な人事方針を守ったうえで、会社が求める社員像も文章化しましょう。「ルールを守る人」「相手の気持ちになって考えられる人」など、なるべく具体的なイメージ像を複数個挙げるとわかりやすいです。これからどんな人材を育成したいかを述べた育成方針も、ここに含まれます。

    行動理念(行動指針)

    人事理念には、社員にどんな行動をしてほしいかを示す行動理念(行動指針)も盛り込みます。行動理念は求める社員像を定めたあとに決めてください。

    アクシデントやトラブルに直面したときに、正解が導けるような行動プロセスを提示しましょう。

    哲学

    人事理念には哲学的理念も盛り込むとよいでしょう。基本的な人事方針、求める社員像、行動理念を総括的に表現します。

    「実力第一主義」や「戦略的であれ」など、抽象的な表現もときに採用しながら、会社が重要視する部分を述べます。企業が何十年続いても意味が伝わるような、普遍的な価値観をあらわすといいでしょう。

    人事理念がある企業事例

    ここでは、質の高い人事理念を掲げる企業を4社紹介します。自社の人事理念を作成する際にお役立てください。

    メタウォーター株式会社

    メタウォーター株式会社の人事理念では、「挑戦的で創造的な企業風土」であることを述べたうえで、「やる気と能力のある人材」や「自己成長意欲のある人材」を求めています。全体的に統一性のあるビジョンが伝わります。

    参照:メタウォーター株式会社HP

    豊田通商株式会社

    豊田通商株式会社は、「社員がいきいきと働くことができる職場環境づくり」を提唱し、「グローバルな経営環境への好奇心を持ち、その変化に柔軟、誠実にスピード感をもって対応できる人材」を育成すると述べています。

    参照:豊田通商株式会社HP

    株式会社安川電機

    株式会社安川電機の人事理念では、「ワーク・ライフ・バランスを推進する」職場づくりや「新しいことにチャレンジし続ける人材」を求めていると書かれています。評価や処遇について、「定期的な上司と部下の1on1」の実施が記載されている点もポイントです。

    参照:株式会社安川電機HP

    株式会社アース

    株式会社アースは、「快互の体現」という言葉を使って、社員を活かす人事理念を表現しています。独自の言葉で、企業が大切にしている考え方を伝えると、他社との差別化がはかれるでしょう。

    参照:株式会社アースHP

    人事理念を作成する手順

    ここまで独自の人事理念を掲げる企業をご紹介しました。質の高い人事理念を作成するには、いくつかの手順を踏むことが重要です。

    求める人材像を具体的にする

    人事理念を作成する際は、どんな人材を求めているのかわかりやすいように、なるべく具体的な特徴を挙げます。「真面目で正確な業務ができる人」や「よく考えて、自分から行動できる人」など、すぐにイメージが想像できる人材像を設定しましょう。

    理想の人材を育成できるような計画を立てる

    人事理念において求める人材像が明確化したら、そのような人材を育成するための計画を立てましょう。新卒採用と中途採用のどちらに力を入れるのか決め、人材配置や部署異動のおおまかな方針も立てます。

    重要視したい部分を文章化する

    人事理念に関して人材に関するおおよその方向性が決まってきたら、基本的な人事方針を文章化します。ベースとなる方針を決め、細分化して決めていくやり方が一般的です。

    まとめ

    当記事では人事理念の概要や事例、作成手順について解説しました。

    企業の発展には、今いる人材を最大限に活用して人材育成を進めることが大切です。昨今は、人事理念を掲げて育成や採用方針を見直し、人材が定着しやすい企業づくりが求められています

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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