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インクルージョンの意味は? ダイバーシティとの違いや事例も紹介!

インクルージョンの意味とは? ダイバーシティとの関連、目的や事例を簡単に解説

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インクルージョンとは、多様な人材を受け入れたうえで価値観やスキルを活かせている状態や環境を指します。

ダイバーシティや多様性という言葉がすでに浸透しており、インクルージョンを合わせた「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉も注目を集めています。

しかし、インクルージョンとダイバーシティの意味を混同してしまっていたり、インクルージョンの推進がうまくいっていなかったりするケースもあるでしょう。

そこで当記事は、企業の経営層や人事担当者向けに、インクルージョンの意味をわかりやすく解説します。ダイバーシティとの違いや企業事例もご紹介するので参考にしてみてください!

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目次(タップして開閉)

    インクルージョンとは

    インクルージョンとは、日本語で「包括」「受容」を意味し「多様性を受け入れ、能力を発揮している状態」を指します。

    特にビジネスにおいては、多様な属性にある従業員が互いの違いを尊重し、さまざまな従業員が活躍できる環境で、個人と組織のパフォーマンスを最大化することを目指します。

    インクルージョンの始まり

    インクルージョンが広まったのは、1970年代のフランスです。当時、経済的・社会的に恵まれず、社会の一員として受け入れられない人たちがいる状態は「ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)」と呼ばれていました。

    社会的弱者を含め、誰もが排除されず、社会への参画や格差の解消を目指して「ソーシャル・インクルージョン(社会的包括)」という考え方が生まれたのです。

    インクルーシブ教育

    インクルージョンは、その後、1980年代にアメリカで障がい児教育の分野で広まりました。

    十分な教育を受けられていない子どもや授業についていけない子どもに対して、障がいの有無に関係なく、分け隔てなく同じクラスで学ぶことを「インクルーシブ教育」と呼び、日本の教育の分野でも根づき始めています。

    インクルージョンが普及した背景

    インクルージョンが普及した背景には、どのような要因があるのでしょうか。具体的な要因を確認してみましょう。

    人材不足が進んでいる

    インクルージョンが普及した背景には、少子高齢化による生産年齢人口の減少で、労働力不足が挙げられます。

    参考:『令和4年 情報通信白書』総務省

    日本全体として労働力不足が危惧されているため、企業の人材不足が深刻化し、優秀な人材の獲得競争も起きている状況です。人材不足だからこそさまざまな人材を採用し、多様な人材が活躍できる組織を運営することが必要とされているのです。

    自社の価値を向上させる

    インクルージョンが普及した背景には、自社の価値を向上させるためという点も挙げられるでしょう。

    インクルージョンは、多様な人材を採用するだけでなく、さらにさまざまな人材が活躍できる環境を目指したり、働きやすい社内環境を整えたりする概念です。

    そのため、表面的な取り組みではなく積極的に多様な人材と向き合う姿勢をアピールができるため、企業のイメージアップや社会的な信用にもつながりやすくなるでしょう。

    ダイバーシティだけでは不十分なケースがある

    インクルージョンが普及した背景には、ダイバーシティだけでは人材が活躍できていないケースがある点も挙げられます。

    企業がダイバーシティを推進し、多様な価値観を持つ人材が企業に採用されるようになったものの、必ずしもすべての企業で人材が活躍できているとは限りません。

    ダイバーシティが浸透したことで多様な人材を積極的に採用したとしても、それぞれのスキルや価値観を業務に活かせていないケースも多くあるでしょう。この場合、表面的にダイバーシティに取り組んでいるだけになってしまいます。

    そこで「インクルージョン」が注目され、多様な人材を採用したあとに、それぞれが働きやすく活躍できる環境を整備することを目指すようになったのです。

    インクルージョンとダイバーシティの関係性

    インクルージョンという言葉を聞くと、ダイバーシティを思い浮かべる方も少なくないでしょう。実際に、ダイバーシティとインクルージョンは合わせて使われることが多く「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉もあります。

    インクルージョンとダイバーシティの違いや「ダイバーシティ&インクルージョン」について整理しましょう。

    ダイバーシティとは

    ダイバーシティとは、日本語で「多様性」を意味し、さまざまな個性を持つ人が集まっている状態を意味します。

    特にビジネスにおいては、性別や年齢、学歴や職歴、障がい者やLGBTQなど、多様な属性の人材が同じ職場に存在していることです。

    日本では、少子高齢化により減少している労働力人口を確保するために、ダイバーシティが重要視されるようになりました。

    ダイバーシティとインクルージョン(D&I)の違い

    ダイバーシティは、企業が多様な人材を雇用し、さまざまな特性を持つ従業員が在籍している状態です。

    インクルージョンは、多様性を持った従業員同士がお互いに個々の違いを認め合い、一丸となって働くことを指します。

    そのため、ダイバーシティは「多様性が存在する環境」を意味し、インクルージョンは「多様性が存在する環境を活かすこと」という違いがあるといえるでしょう。

    ダイバーシティ&インクルージョンとは

    ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、「ダイバーシティ(多様性)」と「インクルージョン(包括)」を掛け合わせた言葉です。

    そのため、ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を受け入れて尊重し、個々のスキルを発揮できる環境を整備することを指します。

    インクルージョンを推進するメリット

    インクルージョンを推進するメリットにはどのような点があるのでしょうか。具体的なメリットについてご紹介します。

    定着率の向上

    インクルージョンを推進することで、人材が活躍できる環境を整備するために、適材適所の人材配置をより深く検討し、実現されやすくなります。

    人材が活躍できるような労働環境が整備されれば、従業員の仕事への意欲や会社に対する満足度も向上するため、長く働く要因になるでしょう。

    結果的に企業として人材の定着率が改善できると、イメージアップにつながり、優秀な人材の確保もできるようになるなど、よい影響がもたらされるでしょう。

    企業のブランディング

    インクルージョンを推進することで、多様性を認めるだけでなく、人材が活躍できる環境や働きやすさを整備している企業として認知され、企業のブランディング向上にもつながります。

    企業が高く評価されるようになると、顧客が増えたり人材確保にも効果があるでしょう。

    従業員のモチベーションやエンゲージメント向上

    インクルージョンを実現すると、従業員満足度やエンゲージメントの向上が期待できます。

    インクルージョンの実現には多様な人材の個性が認められていることが大前提です。個人が尊重され、各自の強みを発揮して働けることは、従業員の意欲向上につながります。

    結果的に従業員満足度やエンゲージメントの向上に寄与するでしょう。

    イノベーションの創出

    インクルージョンを推進するなかで、多様な意見を活かして新たなアイデアが生まれ、イノベーションの創出にもつながります。

    新たな商品開発や、ビジネスモデルの考案など、これまでにない発想でサービスを生み出せるかもしれません。

    インクルージョンのデメリット

    インクルージョンにはさまざまなメリットがある一方で、少なからずデメリットもあります。企業としてインクルージョンに取り組む場合は、具体的なデメリットも把握しておきましょう。

    従業員の理解を得られない場合もある

    インクルージョンのデメリットとして、既存従業員の理解を得られない可能性があるという点が挙げられます。

    これまでの社内規定や制度に慣れていた分、突然変更になることで混乱を招いたり、業務がやりにくくなったりしてしまうケースも否定できません。

    インクルージョンで大切なことは、多様な人材が活躍できるような環境整備であり、既存の従業員の意見にも耳を傾ける姿勢を忘れずに、納得や理解をしてもらえるようにしましょう。

    時間がかかる

    インクルージョンを推進する場合、安定するまでに時間がかかるという点もデメリットの一つでしょう。

    インクルージョンでは、社内規定やルールなど、さまざまな部分を見直したり、変更する必要があり、既存の従業員も含めて新たな内容を理解しなければなりません。

    そのため、長期的な取り組みとして認識し、いきなりすべてを変えようとせずに、優先順位やできることを踏まえて、徐々に取り組みましょう。

    インクルージョンのポイント

    インクルージョンの意味は? ダイバーシティとの違いや事例も紹介!

    インクルージョンを推進する際のポイントをご紹介します。単純にインクルージョンに取り組むだけでなく、ポイントを押さえてより効果的な推進を目指しましょう。

    具体的なゴールを共有する

    まず始めに具体的なゴールを従業員に共有することは、インクルージョンの推進に大切です。

    インクルージョン導入の必要性や、実現までの期日、実現イメージ(どのような状態がインクルージョン実現といえるのか)などゴールを明確に伝えましょう。

    具体的にイメージしてもらうことで成功率も高まります。経営層と従業員がお互いに測定できるものとして認識しやすくなります。

    現状を把握する

    自社の現状を正しく理解して把握することも、インクルージョン推進の一歩です。

    ・人材の活用状況
    ・各々の個性の発揮度
    ・性別や国籍など各属性が率直に感じている不利益な場面

    などインクルージョンの推進度合いを正しくチェックしましょう。

    現状を把握するには、面談や社内アンケートの実施が有効です。それによって効果的な施策を検討できるかもしれません。

    定期的に見直す

    インクルージョンの最終的な成功には、定期的な見直しも欠かせません。

    昨今のビジネス環境は常に変化しています。企業を取り巻く環境や企業の立ち位置の変化によって、打つべき施策も絶えず変化します。

    そのため、随時ビジネスや市場の状況も踏まえながら施策を検討しましょう。サーベイなどを実施しながら従業員の声に耳を傾け、納得を得ながら進めることも大切です。

    また定期的に推進方法を見直し、状況を発信することで、従業員の当事者意識の向上も期待できます。

    社内環境を整備する

    インクルージョンを推進する際は、社内環境の整備も重要です。多様な人材を受け入れ、人材が活躍できるために制度や環境を整える必要があります。

    たとえば、女性が活躍できるために「時短勤務」や「テレワーク」を取り入れ、働きやすさを整えたり、身体的な障がいがある方でも安心して働けるような社内バリアフリーを目指したり、工夫や配慮をすることで、従業員が活躍できる環境が整うはずです。

    会社全体で取り組む

    インクルージョンを進めるためには、既存の従業員の理解を深める必要があります。

    インクルージョンに向けた取り組みでは、社内環境や業務のプロセスが見直されることになるため、従業員の理解と協力が不可欠です。

    なぜインクルージョンが重要なのかをていねいに説明したうえで、既存の従業員もさらに活躍できるような環境整備を目指しましょう。

    インクルージョンの注意点

    インクルージョンを推進する際は、企業としてどのような点に注意すべきなのでしょうか。失敗を防ぐためにも、注意点をあらかじめ理解しておきましょう。

    数字にとらわれすぎない

    インクルージョンの取り組みでは、数字にとらわれすぎないように注意しましょう。

    ダイバーシティは「女性管理職の登用」や「外国人労働者の比率」など、数字で測れる指標もありますが、インクルージョンの成果は数値化しにくいです。

    そのため、うまくいっているかどうかを調査するためには、従業員満足度調査などを活用して従業員の満足度を測るなどしてみるとよいでしょう。

    意見を否定しない

    インクルージョンを成功させるためには、さまざまな意見が生まれることが大切です。

    従業員が意見を言えないような環境では、多様な価値観を持つ人材を採用しても、インクルージョンを実現しているとはいえません。

    従業員が臆することなくアイデアを出せるように、会社として心理的安全性の確保を目指すことが重要です。

    インクルージョンの事例

    日本でもインクルージョンの実現を目指し、成功している企業があります。事例を5つご紹介します。

    株式会社日立製作所

    日立製作所ではグローバルリーダーを目指し多様性の尊重が不可欠だと考えました。

    そこで多様な人材の活躍支援に取り掛かります。仕事と生活の双方における成功を目指し、インクルージョンを推進し始めます。

    まずは専門部署である「アドバイザリー・コミッティ」および「日立グループダイバーシティ推進協議会」を立ち上げました。

    2つの部署では、以下のような取り組みを実施しています。

    ・経営方針の徹底
    ・活動に関する意見交換
    ・女性の活躍支援を実施するプロジェクトの設置
    ・労働組合との意見交換

    その結果、個人プレーに走りがちだった組織に変化が生まれ、お互いの能力を活用しつつ事業を進める協力関係が確立されました。

    参考:『ダイバーシティ&インクルージョン戦略』株式会社日立製作所

    三井住友カード株式会社

    三井住友カードでは、目まぐるしく変化する時代において、幅広い支持が得られることを目的とし「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進しています。なかでも「上司の意識改革」を重視している点は特徴的です。

    同社の「ダイバーシティ&インクルージョン」での取り組みは、以下の通りです。

    ・研修でコミュニケーションスキルやパフォーマンスの向上を目指す
    ・ワークライフバランスの実現
    ・同性パートナー制度の導入
    ・副業の解禁
    ・勤務時における服装の自由化

    その結果、一人ひとりが個性を活かしつつ最大限の力を発揮する場が提供できるようになりました。顧客の多様なニーズにも対応できる環境が整えられています。

    参考:『ダイバーシティ&インクルージョン推進』三井住友カード株式会社

    パナソニックホールディングス株式会社

    パナソニックでは「すべての経営活動は顧客と直結する」と考えています。また顧客が求める価値観も多様化しており、ニーズに対応するには、全従業員を光り輝かせる場が必要という結論に至りました。

    そこで同社では「ダイバーシティ&インクルージョン」への取り組みを実施しています。主な取り組みは以下の通りです。

    ・女性管理職者の増加
    ・「育児や介護」「キャリア継続」支援制度の充実
    ・高齢者、障害者、LGBTへの理解を促進
    ・食の多様性に関するイベントの開催
    ・オリンピックとパラリンピックに向けた活動

    その結果、女性の役職比率や育休後の復帰者が増えました。また各自がアイデアをぶつけ、革新的な価値を生み出せる環境が提供でき、チャレンジ精神を掻き立てる風土がつくられたそうです。

    参考:『Diversity, Equity & Inclusion』パナソニックホールディングス株式会社

    株式会社リクルートホールディングス

    リクルートでは「個の尊重」を経営理念として掲げています。そこで人材の定着および強化をするため、ダイバーシティ&インクルージョンの専任組織を設置しました。

    主な取り組みは、以下の通りです。

    ・28歳前後の若手女性従業員用に向けた研修実施
    ・セクシャルマイノリティへの理解推進のためのeラーニングを実施
    ・同性パートナーにも配偶者としての福利厚生を適用
    ・保育施設の設置
    ・リモートワークの導入

    その結果、自身のキャリアを前向きに捉える従業員が増えました。またセクシャルマイノリティに対する取り組みを評価する「PRIDE指標」において、4年連続で最高賞を受賞し、企業のさらなるブランド力の向上にも成功しています。

    参考:『ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の推進』株式会社リクルートホールディングス

    日本アイ・ビー・エム株式会社

    日本IBMでは、従業員の多様性を尊重する環境の実現が、「最高の人材を惹きつけ、顧客の成功にも寄与する」と考えています。そこで、5つの分野における「ダイバーシティ&インクルージョン」を実施しています。

    5つの分野とは、女性の活躍推進や障害者の活躍支援、LGBTと当事者の活躍支援、子育て支援、ワークライフです。主な取り組みは、以下の通りです。

    ・在宅、時短、裁量勤務など柔軟な勤務制度の導入
    ・成果主義の徹底
    ・障害者向けのインターンシッププログラムを導入
    ・企業内保育園の設置
    ・キャリアをサポートするメンター制度の導入

    その結果、従業員のモチベーションや定着率が向上し、やりがいを持って働ける環境を実現しているそうです。

    参考:『ダイバーシティー&インクルージョン』日本アイ・ビー・エム株式会社

    まとめ

    企業としてインクルージョンに取り組む場合は、多様な背景を持った従業員がお互いの価値観を認め合ったうえで、能力を最大限に発揮して職務に取り掛かっている状態が理想とされます。

    単に多様性を認めるだけでなく、認めたうえで活躍できる環境を目指すインクルージョンの考え方を反映させることで、労働環境の整備につながり、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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