- 2022.07.22
2022.10.25
- タレントマネジメント
- 人事戦略
エンゲージメントサーベイとは?実施効果や活用ポイント、質問内容を解説

経営者・ビジネスリーダーが取り組むべき施策の1つとして従業員エンゲージメント対策が重要視されています。
会社に対する愛社精神・帰属意識であるエンゲージメントによって、企業全体の生産性が向上したり、離職率が下がるなど、企業や組織にさまざまな効果が出ている事例が数多く存在するためです。
昨今のエンゲージメント対策として「エンゲージメントサーベイ」を効率的に利用する企業が増加しています。そこで当記事では、エンゲージメントサーベイの効果・活用ポイントをはじめ、実施方法や質問内容も解説します。
目次(タップして開閉)
エンゲージメントサーベイとは
エンゲージメントサーベイとは、従業員の愛社精神・帰属意識である「エンゲージメント」を把握すべく、定量的な状態にして調査することを指します。
調査方法は、インターネット上でのアンケートが中心です。
従業員満足度調査(ES)や社内アンケートとの違い
エンゲージメントサーベイは、従業員満足度調査(ES)や社内アンケートと混同されることもあります。しかし、本質は異なります。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査(ES)の違い
従業員満足度調査の目的は、企業の待遇(給与や福利厚生など)に対する満足度の調査です。満足度を調べることで、改善につなげます。
しかし、従業員満足度が高まったからといって、組織が抱える課題の解決につながるとは限らない点も特徴です。たとえば、給与額に満足していても、経営方針に違和感があれば、会社への不満につながります。
一方エンゲージメントサーベイは、会社への愛社精神をはかるため、調査をもとにエンゲージメントを高めることで、組織が抱える課題の解決に直結します。
エンゲージメントサーベイと社内アンケートとの違い
エンゲージメントサーベイの調査では、従業員に向けてアンケートを実施します。またアンケート結果にもとづき、エンゲージメント向上を目指して活動する点が特徴です。
一方社内アンケートは、あくまで「従業員に向けたアンケート調査」のみを指し、改善に向けた活動などは含みません。
従業員エンゲージメントと顧客満足度の関係
「顧客満足度」は、従業員エンゲージメントにおける構成要素の1つです。
従業員エンゲージメントが向上することで、社員の士気が高まり仕事への取り組み方や業績が向上するといった例は多く、サービスの質や顧客満足度の高い企業は、従業員エンゲージメントも高いと言った事例が多く見られます。
逆をいえば、業績が向上せず、顧客満足度の低い企業では、従業員エンゲージメントも低く離職率も高い傾向があるといえます。
エンゲージメントサーベイ活用の目的
エンゲージメントサーベイを活用する目的は、以下の通りです。
企業と社員(従業員)の関係性を把握
エンゲージメントの状態は、企業と社員(従業員)の関係性によってわかります。つまり、エンゲージメントサーベイを実施することで、企業と社員(従業員)の関係性が把握できる点も特徴です。
関係性は、強いつながりを持つケースもあれば、希薄なケースもあるでしょう。
組織・個人それぞれの課題を可視化
エンゲージメントサーベイを実施すると、従業員のエンゲージメントを数値化できるため、個人や組織の問題、課題が可視化ができます。
社内状況や一人ひとりの状況を可視化することで、組織や個人の課題が明らかになり、状況改善のヒントになります。
正しく「課題を可視化」するには、従業員の本音を引き出すとともに、回答しやすい環境を準備する姿勢が欠かせません。
こういった社内状況を改善するための取り組みは、「社員を大切に」と考える企業はすでに取り組んでいる企業も多く、上層部の考え方や企業努力も垣間見えることとなり、社員からの信頼を得る要素ともなり得ます。
組織・チームマネジメントへの活用
前述の通り、エンゲージメントサーベイの実施により、組織や個人の課題が明らかになります。
課題の中には、コミュニケーションやマネジメントといった「チーム」に関する課題も含まれるでしょう。
「チーム」に関する課題に触れることで、組織・チームマネジメントの改善にも役立ち、事業推進の解決方法が導きやすくなります。
人事施策の根拠・データ収集
エンゲージメントサーベイでは、従業員にアンケートを実施します。アンケートでは、従業員と企業との「関係性に関する項目」を用意する点が特徴です。
そこで得られた回答には、組織課題の改善につながるような、以下の内容も含まれます。
コミュニケーションの状況 |
マネジメントの問題点 |
モチベーション・エンゲージメント状況 |
エンゲージメントサーベイでは上記のような、人事施策の根拠となり得るデータを収集できます。
離職防止・予防対策
従業員が離職に至る背景には「今より良い企業でキャリアアップしたい」といった自身のキャリアプランや将来の目標など、ポジティブな理由以外に、現状の職場における「待遇への不満」「人間関係のストレス」「会社や上司からのハラスメント」などが原因の可能性もあります。
退職を希望する共通する点は、現状よりもよい環境を希望することです。そのため、離職を防止・予防したい企業は、離職を決断するまでに「心の変化」に気づくことが大切だといえます。
エンゲージメントサーベイを実施すると、定期的に従業員の本音を聞く機会が創出でき、離職の兆候を把握することが可能です。調査結果から「離職につながる理由」を探ることができるため、離職防止のための施策に必要な情報が得られるでしょう。
エンゲージメントサーベイの活用効果
エンゲージメントサーベイによる活用効果は、以下の通りです。
社員のモチベーション・エンゲージメントの向上
エンゲージメントサーベイを実施すると、従業員の悩みや不満といった「マイナス面」を随時キャッチできます。
そのデータをもとに、「モチベーションやエンゲージメントの向上」に向けたフォローが可能となり、マネジメントや管理者側のすべきことが可視化されていきます。
また従業員にとって、上司や会社からフォローを実施されること自体が「会社の成長に寄与したい」「信頼できる会社」だと感じられ、業務へのモチベーションや企業へのエンゲージメント向上に直結します。
関連記事 エンゲージメント調査とは |
離職防止・離職率の低減
離職率の低い企業では、従業員のエンゲージメントも低い傾向にあります。
そのため、エンゲージメントサーベイのアンケートで「従業員のエンゲージメントが低い」とわかった場合には、エンゲージメントを上げる努力が必要です。
エンゲージメントが低い原因の把握からはじまり、改善するための施策を考え、実行にうつします。
社員にとって「この会社は従業員のことをとてもよく考えてくれている」という施策や対応は、企業への信頼度や貢献度に繋がるのです。
個人・企業全体の生産性向上
エンゲージメントサーベイで得たデータを活用すると、社員の特性や傾向が把握でき、適材適所への人材配置が実現可能です。
適切な人材配置は、従業員の意欲や主体性アップにつながり、結果として個人の生産性向上に直結します。
社員一人ひとりの生産性が高まることで、社内コミュニケーションの活性化にもつながります。コミュニケーションが活性化して会社の雰囲気もよくなると、会社へのエンゲージメント向上にもつながり、より企業全体の生産性が高まることが期待できます。
採用活動への効果
エンゲージメントサーベイの活用は、採用活動にも効果が見込めます。
エンゲージメントサーベイで得たデータをもとに、採用すべき人材がわかる点はもちろん、リファラル採用といった信頼性の高い採用を進めることも可能となります。
リファラル採用は、従業員の知人を紹介してもらい、採用する手法です。
従業員エンゲージメントが低ければ、社員は知人を紹介したいとは思わないでしょう。一方、エンゲージメントが高く「この会社を盛り上げたい」と感じた場合、周囲の優秀な人材を紹介するといった事例は数多く存在します。
またリファラル採用は、「自社をよく知っている社員が、自社に合いそうな知人を紹介してくる」ことから、マッチング率も高いといえます。
エンゲージメントサーベイの実施で注意すべきポイント
エンゲージメントサーベイの実施で、注意すべきポイントは以下の通りです。
従業員の理解を得たうえで実施
エンゲージメントが低い企業では、企業に対して否定的な見方をする従業員も多く見受けられます。
否定的な見方をする従業員が多いと、調査を行なっても「適当に回答をする人」や「回答自体をしない人」も出てくるでしょう。正確な回答がそろわないと、正確な調査はできません。
そのため、エンゲージメントサーベイを実施するには、従業員の理解を得る必要があります。また理解を得るには、以下を伝えることが大切です。
エンゲージメントサーベイを実施する目的 |
フィードバック方法 |
回答に必要な手順 |
サーベイの実施で従業員が得られるメリット |
伝える際にも、メール1通で済ますのではなく、事前説明のためのMTGなどを実施すると丁寧です。
従業員の負担を考慮する
エンゲージメントサーベイでアンケートを実施すると、従業員に「回答する時間」を用意してもらうことになります。回答する時間が多いと、通常業務に支障が出る可能性もあるでしょう。
そのため、実施する頻度を調整し、質問数も必要最低限にします。
また「アンケートを提出しても、環境の改善につながっていない」と感じる点も負担につながるため、従業員が改善を実感できる工夫も必要です。
定期的・継続的な実施
エンゲージメントサーベイは、一度実施して終わりではありません。効果を確認する意味でも、定期的に実施しましょう。
また現段階での課題が改善されても、取り巻く環境は常に変わるため、次々と新しい課題が出てくるものです。
環境の変化による「従業員の心境」を見逃さないためにも、定期的な実施をおすすめします。定期的な実施によって、組織や個人の変化について「可視化」もできるでしょう。
自社に合った運用方法を採用する
エンゲージメントサーベイでは、以下のような工程を実施します。
質問の設計 |
調査データの集計・分析 |
個人や組織へのフィードバック |
調査結果にもとづいた改善 |
上記のような工程では、実施そのものに時間がかかるうえに、管理も煩雑になります。多くの工数をさくことから、自社に合った運用方法の選択が必要となります。
また専門サービスを利用すると、工程の負担を削減することも可能です。
エンゲージメントサーベイの実施方法・ステップ
ここでは、エンゲージメントサーベイの実施方法とステップを紹介します。以下のステップに沿うことで、スムーズなエンゲージメントサーベイが実施できるでしょう。
調査対象を決める
まずは、エンゲージメントサーベイの調査対象を決めます。
一般的には全従業員を対象にするケースが多いでしょう。しかし、目的によっては、特定の社員を対象にする場合もあります。
たとえば、相次ぐ女性社員の離職を防ぎたい場合には、調査対象を「女性社員」に定めます。
調査内容(項目)を決める
調査対象を定めたら、調査内容(項目)を決めましょう。
前述の「調査対象を決める」時と同様に、調査内容も目的を踏まえて決めます。調査内容を決める際の注意点は、以下の通りです。
質問数を適量にする |
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問数が多いと、従業員の負担になるとともに、分析に時間がかかります。また質問数が少なすぎても、正確な調査ができません。 |
質問内容を定期的に見なおす |
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状況は常に変化するため、度重なる調査で「同じ質問」をしても、意味をなさない可能性があります。 |
不必要な質問をしない |
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不必要な質問は、従業員の回答への負担につながります。 ~不必要な質問の例~・趣味、志望動機、特技 |
また実際の調査内容は、エンゲージメントサーベイの「代表的な12の質問」を参考にするとよいでしょう。
【代表的な12の質問】 |
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1、仕事で何を期待されているか? 2、仕事を適切に行なえる設備やツールを持っているか? 3、日々において、自分が得意な作業をする機会があるか? 4、過去1週間において、自分の仕事で褒められたか? 5、上司や同僚などから、1人の人間として気にかけてもらっているか? 6、職場内に、自分の成長を助けてくれる人はいるか? 7、自分の意見は、職場内で尊重されているか? 8、会社の目的やミッションを通じて、自分の仕事に意味があると思うか? 9、周囲の従業員が、質の高い仕事をしているか? 10、職場内に親友はいるか? 11、直近の半年間において、職場の人間から自分の進歩を評価してもらえたか? 12、直近の1年間において、成長や学びの機会があったか? |
調査内容は、あとで追加や変更も可能なため、従業員に負担がかからない点を優先することが大切です。
アンケート項目を作成
前述で決めた調査内容について、調査票に落とし込み、アンケート項目を作成します。
また昨今のアンケートでは、紙ではなく「インターネット」で実施するケースが一般的です。なかでもクラウドサービスを活用すると、以下のようなメリットがあります。
利便性が高い | パソコンをはじめ、タブレットやスマートフォンでも回答できる。 インターネット環境があれば場所を選ばず実施可能 |
集計が簡単 | データをクラウド上で一括管理できる |
クラウドサービスを利用すると、アンケート結果の可視化もスムーズなため、メリットが多いといえます。
アンケートの目的と方法を周知
アンケートを実施する前に、アンケート項目の「目的と方法」を、対象の従業員に周知します。
【目的と方法の例】 |
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・目的……新卒社員の定着率を高めたい ・方法……専用のクラウドサービスを使い、アンケートを実施する |
周知の方法には、以下のような方法が挙げられます。
【周知の方法】 |
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・メールで報告する ・ポータルサイトに掲示する ・説明会を開催する |
周知方法を選ぶ際には、自社に合った方法を選ぶことが大切です。
アンケートの実施
実際に、アンケートを実施します。
専用のシステムを使わずに、自社内で完結する場合には、作成したデータをメールで送付といった方法をとります。
専用のサービスを利用した場合には、回答用のURLを連携するだけです。URL内でアンケートが完結することから、回収の手間がありません。
アンケート集計・分析
アンケートが終わったあとは、結果を集めて分析します。
アンケート結果を迅速にフィードバックするためにも、迅速な集計・分析が必要です。また分析の際には、以下のポイントを押さえます。
スコアの高低をチェック |
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スコアの高低をチェックすることで、従業員のエンゲージメントがわかります。スコアが高いほど、エンゲージメントも高いといえます。 |
スコアの軸をさまざまな角度から見る |
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スコアの軸を「部署ごと」や「年度ごと」などと、さまざまな角度から見ると、数値の悪い項目がわかるため、対応すべき課題も見えやすくなります。 |
クロス集計を実施する |
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エンゲージメントサーベイの結果とは異なるデータ(例:人事評価の結果)とクロス集計をすることで、詳細な分析が可能です。 |
これらの分析業務も、専用のサービスを利用している場合には自動で集計ができることから、担当者の負担が大幅に減るでしょう。
分析した結果は、次回のエンゲージメントサーベイとの比較対象データとして使用できます。
問題に応じた施策の実行
取り組むべき問題が判明したあとは、問題に応じた施策を実行します。
とはいえ、一度の施策で状況が改善するケースは少ないでしょう。そのため、エンゲージメントサーベイを実施したからといって「実施しただけ」など、形骸化してしまうことのないよう、データをもとに試行し、根気よく施策を続ける姿勢が大切です。
エンゲージメントサーベイを効率的に実施するには
エンゲージメントサーベイを適切に実施すると、従業員のエンゲージメント状態がわかるだけでなく、モチベーション・エンゲージメントの向上も期待できます。
また、エンゲージメントサーベイを効率的に実施するには、専用システムを使った運用がおすすめです。タレントマネジメントシステム「スマカン」では、自社に合ったエンゲージメントサーベイの実施に向けて、集計・分析にいたるまでサポートします。
エンゲージメントサーベイの活用方法がわからない場合にも、専任の担当者がフォローするため安心です。エンゲージメントサーベイを効率的に実施し、組織を改善したい担当者様は、「スマカン」の活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

記事監修

スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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