- 2022.08.17
2023.01.31
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レジリエンスとは【ビジネスでの意味】高め方、高い人の特徴、注目背景を解説

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レジリエンスとは「精神的な回復力」のこと。ビジネスにおいてもしばしば耳にすることが増え、重要性が叫ばれるようになりました。個人で身につけるのは望ましいことですが、近年は組織におけるレジリエンスにも注目が集まっています。
そこで当記事では、ビジネスシーンでのレジリエンスの意味をはじめ、組織レジリエンスの高め方や注目される背景などを解説します。
「レジリエンスの意味を簡単に理解したい」「レジリエンスが高い人の特徴を知りたい」「レジリエンスが高い組織にするには?」とお考えの方は、ぜひお役立てください。
目次(タップして開閉)
レジリエンスの意味や類義語との違いを解説
まずはレジリエンスの意味や類義語との違いを解説します。
レジリエンスとは
レジリエンスとはもともと心理学用語で、精神的な「回復力」「弾性」「しなやかさ」を意味します。
個人がストレスを受けた際に、適応し、ストレスフルな状態から回復する力を指します。レジリエンスが高い人は、ストレスを受けた際も立ち直りが早いとされています。
ビジネス環境の変化に伴って、近年は人事・HR領域でも注目が集まっています。
ビジネスレジリエンスとは
レジリエンスから派生したのが、ビジネスレジリエンスです。リスクマネジメントと言い換えられることもあります。
ビジネスで強いストレス状況に陥ったときやトラブル発生時に、速やかに立ち直り乗り越える力ともいえるでしょう。
ビジネスシーンにはトラブルはつきものです。企業が成長を続けるためには、組織に属する個人個人のレジリエンスを高める必要があるでしょう。
組織レジリエンスとは
組織レジリエンスとは、個人のレジリエンスを組織に適応した概念です。ビジネスレジリエンスと同様に組織としてのリスクマネジメント、あるいは事業継続性と捉えられることもできます。
単にレジリエンスというときは個人の能力を指すことが多いのに対し、組織レジリエンスは組織全体の回復力を指します。市場や顧客ニーズなどビジネス環境の急速な変化や想定外のトラブルが起こったときに、どれだけ早く立ち直り適応できるかが組織レジリエンスです。そしてトラブル以前より、もっと強固な組織に成長しているかもポイントです。
特に変化の激しい昨今において組織レジリエンスの高い組織は、生き残る可能性も高いといえます。
レジリエンス 類義語との違い
レジリエンスと混同されがちな言葉としてストレス耐性、メンタルヘルス、ハーディネス(頑強性)が挙げられます。レジリエンスと各用語の違いは、以下の通りです。
レジリエンスとストレス耐性の違い
ストレス耐性とは、ストレスに対してどれだけ耐えられるかを表現した抵抗力のことです。
一方レジリエンスは、ストレスを受けたあとに元の状態に戻る回復力を指します。
レジリエンスとメンタルヘルスの違い
メンタルヘルスは心の健康状態を意味します。精神保健と訳されることもあります。うつなどの精神疾患にかかっていない状態の維持、増進、予防までを指すこともあります。
一方レジリエンスは、ストレスを与えた事象に対し、どれだけうまく適応や回復ができるかを指します。
レジリエンスとハーディネス(頑強性)の違い
ハーディネスとは、ストレスに直面した際に、自分で跳ね返せる「防御力」のことです。
一方レジリエンスは、ストレスによって傷ついたとしても、回復できる力を指します。
つまり、ハーディネスは「そもそもストレスを感じにくい」ことを意味し、レジリエンスはストレスを感じるものの、回復できる力という違いがあります。
レジリエンスが広まった背景
なぜ近年人事・HR領域で、レジリエンスが広まったのでしょうか。日本でレジリエンスが広まった背景を時系列に整理します。
戦争孤児のレジリエンス研究(1970年代第二次世界大戦)
第二次世界大戦のユダヤ人大量虐殺によって、孤児になった子どもに関する研究で、トラウマを抱えたままの子と乗り越えられた子がいることがわかりました。その要因を調べた結果、レジリエンスの有無が関係すると判明したのです。
日本人はレジリエンスが高い?(2011年東日本大震災)
歴史的な大災害・東日本大震災では、大きな暴動などが起きず、多くの被災者の前を向く姿勢が海外からも評価されました。その際に、日本国民のレジリエンスに注目がされるようになったのです。
レジリエンスに関する提言(2013年世界経済フォーラム)
2013年に開催された世界経済フォーラム・ダボス会議において、世界共通の課題へのアプローチとして「レジリエンス」が重要だと提唱されました。
以上のような歴史的な流れの中で、徐々に個人のレジリエンスへの注目が高まっていきました。
ビジネスレジリエンスが注目されたのはなぜ?
歴史的出来事の中で徐々に注目が高まったレジリエンス。それでは日本の人事・HR領域にまで広がったのはなぜなのでしょうか。ビジネスレジリエンスが注目された理由は、以下の2点が関係しています。
・VUCA(ブーカ)の時代が到来 ・メンタルヘルスの重要性が叫ばれる |
VUCA(ブーカ)の時代が到来
昨今は気候変動や感染症の流行の影響によって、将来を予測しにくい「VUCAの時代」に突入しています。またテクノロジーの進化なども相まって、ビジネス環境の変化は目まぐるしいです。
このような状況下では、以前より仕事で強いストレスを感じやすく、心身の健康を保つためにビジネスレジリエンスが注目されています。
メンタルヘルスの重要性が叫ばれる
近年は中小企業においてもストレスチェックの実施が義務づけられています。また、労働安全衛生法など政府によるメンタルヘルス対策の推進も加速しています。
前述のVUCAの時代の到来も重なり、メンタルヘルスの重要性が一層叫ばれるようになりました。
メンタルヘルス対策の一貫としてもビジネスレジリエンスが注目されています。
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レジリエンスが高い人・低い人
続いて「レジリエンスが高い人と低い人」の特徴をご紹介します。
レジリエンスが高い人
ビジネスレジリエンスが高い人には、以下の傾向があります。
柔軟性と挑戦心を持つ
ビジネスレジリエンスが高い人は、一つの考えに固執しないことから、臨機応変で柔軟な対応をする傾向にあります。
ネガティブな感情に陥った場合にも、打開策を見つけ、回復が早いとされています。初めての出来事に挑戦する場合でも、「方法はいくつでもある」と前向きに考え、果敢に挑戦するのも特徴です。
感情のコントロールができる
ビジネスレジリエンスが高い人は、感情のコントロールが上手です。
感情に左右されると作業効率や周囲との関係も悪化すると理解しており、自身の感情を律することができる傾向にあります。
自己効力感が高い
ビジネスレジリエンスが高い人は、自信につながる「自己効力感」が高い点も特徴です。
「自分ならできる」と考えて、ストレスを受けたとしても、めげずにチャレンジします。
レジリエンスが低い人
ビジネスレジリエンスが低い人には、以下の傾向があります。
一つの内容に固執しがち
ビジネスレジリエンスが低い人は、柔軟な対応が苦手なため、一つの内容に固執しがちです。
一つの方法に執着するあまり、別のよい方法を見逃すこともあります。また他者の意見に耳を傾けるのも苦手で、周囲とトラブルになる事例もあるようです。
感情のコントロールが苦手
ビジネスレジリエンスが低い人は、感情のコントロールが苦手なところがあります。
感情に振り回されるため、目的を達成できず、途中で終わってしまうこともあるかもしれません。また、他者と接する際も感情のままに行動し、周囲と調和をとるのが得意ではないようです。結果的に、周囲から孤立しがちです。
自己効力感が低い
ビジネスレジリエンスが低い人は、自己効力感が低い傾向にあります。
そのため、ストレスで負の感情がわいてきた場合に「どうせ自分はダメだから」といった考えに陥りがちで回復が遅いようです。
レジリエンスが高い組織・低い組織
続いて「レジリエンスが高い組織と低い組織」の特徴を紹介します。
レジリエンスが高い組織
ビジネスレジリエンスが高い組織には、以下の傾向があります。
ビジョンが浸透している
ビジネスレジリエンスが高い組織では、従業員にビジョンが浸透している傾向にあります。
ビジョンの浸透によって、従業員の向かうべき方向が明確であり、足並みがそろっています。常日頃業務を通じて一致団結できているので、トラブルにも協力して取り組み問題を乗り越えられる傾向にあります。
挑戦を応援し、失敗に寛容である
ビジネスレジリエンスが高い組織は、従業員の挑戦を応援し、失敗にも寛容な傾向にあります。そのため、ミスが大きくなる前に対処でき、安心してアイデアを出せるため、イノベーションも起こりやすくなります。
従業員のレジリエンスの底上げに努める
ビジネスレジリエンスが高い組織では、日頃より従業員のレジリエンスの底上げに努めています。
レジリエンスの重要性を理解しているため、従業員に対しレジリエンスを高めるべく、環境整備や育成などを実施している企業が多いです。
レジリエンスが低い組織
ビジネスレジリエンスが低い組織には、以下の特徴があります。
ビジョンが浸透していない
ビジネスレジリエンスが低い組織では、ビジョンが浸透していない傾向にあります。
ビジョンが浸透していないと、目指す方向が見えず組織に一体感が生まれません。一体感のない組織はトラブルへの対応が不得意で、回復も遅くなりがちです。
失敗に対して厳しい
ビジネスレジリエンスが低い組織では、個人やチームに対しての失敗に厳しい傾向があります。失敗を責めたりペナルティを設けていたりするため、新しいことに挑戦する従業員が少なく、柔軟性に乏しい組織になりやすくなります。
レジリエンスの重要性を理解していない
ビジネスレジリエンスが低い組織は、そもそもレジリエンスの重要性を理解していません。
そのため、個人や組織が抱えるストレスへの対応も後回しにしがちです。
結果として心身の不調をきたす従業員が増え、作業効率やモチベーションが下がってしまう傾向にあるようです。
レジリエンスを高めるメリット
ビジネスにおいてレジリエンスを高めるとどのようなメリットがあるでしょうか。従業員と組織それぞれについて解説します。
従業員のレジリエンスを高めるメリット・効果
個人のレジリエンスが高まると、ストレス耐性や変化への適応力がつき、メンタルヘルスを維持しやすくなります。そうするとモチベーションも維持しやすくなり、組織全体のパフォーマンスの向上や離職率の低下も期待できるでしょう。
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従業員一人ひとりのビジネスレジリエンスを高めることは、組織としてのレジリエンスを高めることにつながるのです。
また、社内の人間関係も良好になる傾向にあります。変化に強い人が集まっているので、多少のストレスにも動じず、受け流せるからです。
組織のレジリエンスを高めるメリット・効果
組織のレジリエンスを高めると、柔軟で困難やトラブル、リスクからの立ち直りが早い組織になります。災害や感染症の流行など不測の事態であっても、安定的に利益を生み出すことができるので、非常時でも継続的に成長を続けられるでしょう。
レジリエンスを構成する6つのコンピテンシー
レジリエンスを高めるコンピテンシー(行動特性)は、以下の6つで構成されています。これらを意識すると、人も組織もレジリエンスの強化に役立ち、回復力が身につくかもしれません。
・自己認識 ・セルフコントロール ・自己効力感 ・楽観性 ・精神的な柔軟性 ・人との関係性(人間関係の構築力) |
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自己認識
自己認識とは、自分自身に注意を払えていることです。具体的には自分の強みと弱み、思考パターン、感情の変化、価値観、人生の目的などを正しく認識できていることです。
強いストレスがかかると自分を見失いがちですが、自己認識の能力が高いと、自分自身を正しく理解しているので、困難にも適切に立ち向かえる傾向にあります。
セルフコントロール
セルフコントロールとは、状況や環境が変化した際に、自分の力で感情や思考を調整できることです。
自身で感情や思考をコントロールできると、ストレスを受けてもよりよい未来に向けて適切に行動できるでしょう。
キャラクターストレングス
キャラクターストレングスとは、徳性としての強みともいいます。徳性とは、人が生まれながらに持っている道徳心のこと。転じて生まれつきの才能や能力を指すこともあります。
つまり、自分の強みをもとに最大限の力を発揮して難しい状況も打破し、自身の価値観に沿うような人生を創り上げていく力を意味します。
楽観性
楽観性とは、よい結果を期待できる力のことです。楽観性があると、ストレスを受けて厳しい状況であっても、「乗り越えれば明るい未来が待つ」というように考えられるでしょう。
精神的な柔軟性
精神的な柔軟性とは、課題や問題が発生した際に、慌てず冷静に対応できるしなやかさのことです。
また、精神的な柔軟性があると、感情的な行動や浅はかな行動に陥りにくいです。先のことを見据えたうえで、臨機応変な対応ができるでしょう。
人との関係性(人間関係の構築力)
人間関係の構築力とは、さまざまな人と良好な関係を築く能力を指します。仲間とうまくやっていける力ともいえます。
人間関係の構築力があると、他者に信頼や安心感を与えられるため、問題が発生したときも周囲に助けてもらいやすくなるかもしれません。
ビジネスレジリエンスを高めるには
レジリエンスは後天的に伸ばせるとされています。ビジネスにおけるレジリエンスを高めるには、具体的にどのようなことに取り組めばいいのでしょうか。従業員と組織全体、それぞれについてレジリエンスを高める方法をご紹介します。
従業員のビジネスレジリエンスを高める方法
従業員のビジネスレジリエンスを高めるために、企業側が取り組めることを2点ご紹介します。どちらも組織風土の変革が求められるため、長期的な働きかけが必要ですが、ポイントとして押さえておきましょう。
職場の心理的安全性を確保する
従業員のビジネスレジリエンスを高めるには、心理的安全性の高い職場づくりが重要です。
職場の心理的安全性が高いと、誰に何を言ったとしても人間関係が壊れる心配や罰を受ける恐れもないため、一人ひとりが安心した状態で職務に取り組めるといわれています。
さらに失敗に対する許容度が高いので、失敗を回避するために自己成長が止まってしまうようなことは起こりにくいです。上司が部下の失敗を奨励し、ともに解決策を練ることで、トラブルに対する本人のレジリエンスも育っていくでしょう。
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自己効力感が高まる育成
従業員のビジネスレジリエンスを高めるには、本人の自己効力感を向上させるための働きかけも重要です。
そのためには可能な限り従業員に成功体験を積ませるとよいでしょう。たとえば、マネジメントにおいて適切な目標設定を促すことが一例です。そしてフィードバックでは、失敗やミスより「できたこと」に焦点を当てましょう。目標達成を通して、自己効力感が高まり、レジリエンスの向上にもつながるはずです。
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必要に応じて本人の適性に沿った適材適所の人材配置も検討するといいです。
またレジリエンスを構成するコンピテンシー「人間関係の構築力」を強化するには、社内コミュニケーションの活性化も欠かせません。上司から部下へだけでなく、メンバー同士も含めたフォロー体制を整えましょう。たとえば、メンター制度や勉強会などが考えられます。
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組織のビジネスレジリエンスを高める方法
組織・企業全体のビジネスレジリエンスを底上げするにはどのような取り組みが必要でしょうか。組織のビジネスレジリエンスを高める方法を3つご紹介します。
シナリオプランニングの実施
シナリオプランニングとは、物事を長期的な視野で捉え、将来的に発生し得る出来事への対応方法を事前に決めておく経営戦略です。
今後起こるかもしれないトラブルやリスクのシナリオを複数作成しておき、準備しておくのです。あらかじめシナリオができていれば、不測の事態にも柔軟に対応できます。一時的に落ち込んだとしても回復のためのプランが練られているので、すぐに立ち直れるでしょう。
独自のブランディング
企業や組織のレジリエンスには、他社と差別化されたブランド力を確立しておくことが必要です。外部環境に不測の事態が起こっても、ブランド力があれば、市場から求められ続ける理由になります。結果として、困難に動じないレジリエンスの高い組織となります。
ただし、消費者の価値観やニーズが多様化する現代は、常に新しいものを生み出す姿勢も求められています。時代のニーズを察知し、すでに確立されたブランド力と新しいものを融合する柔軟性によって、ブランド力を高めることができるでしょう。
レジリエンスを高めて、組織の活性化
レジリエンスの意味とは、ストレスに対する精神的な回復力やしなやかさのこと。心理学から派生して近年はビジネス、特に人事・HR領域においてレジリエンスが高い企業やビジネスパーソンに注目が高まっています。災害や感染症などの不測の事態や逆境にも動じることなく、柔軟に対応できる組織力は今後も求められていくでしょう。
レジリエンスの高い組織づくりには、従業員一人ひとりと企業全体、両者に働きかけていくことが重要です。たとえば、心理的安全性の確保や失敗を寛容する人材育成、シナリオプランニングの作成やブランド力の強化です。
強い組織づくりには、システムの活用も
タレントマネジメントシステム『スマカン』は、従業員のスキルや経験のほか、志向や適性など多岐にわたる人材情報を可視化するシステムです。そのデータを活用し、組織の活性化につなげることができます。
近年注目度が高まる人的資本経営においても、従業員一人ひとりに最大限の強みを発揮してもらうことが求められています。組織全体とそこで働く人、両方のレジリエンスを強化することは、企業の持続的な成長を後押しします。
システムを活用して、ストレスに強く柔軟性の高い組織を目指してみてはいかがでしょうか。

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