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ティール組織とは|失敗する? メリット・デメリットをわかりやすく図解
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リーダーがマネジメントや指示をしないフラットで新しい組織モデル・ティール組織。経営目標の実現に向けて組織のメンバーが自律的に職務を遂行し、進化する点が特徴ですが、失敗に至るケースも多いといいます。
そこで当記事は、ティール組織の概要や成功させるポイント、メリット・デメリット、失敗を防ぐ方法などを解説します。
目次(タップして開閉)
ティール組織とは|わかりやすく解説
ティール組織とは、経営者や上司が部下をマネジメントせずとも、各自が自律的に意思決定を行える組織です。「各自が自律的」な点がポイントであり、単にマネジメントをせずに放置した組織ではありません。
また、ティール組織の「ティール(TEAL)」はカモの羽色である青と緑の中間色からきています。
ティール組織の提唱者であるフレデリック・ラルー氏が独自に組織を色分けし、これまでにない組織を「ティール色」で表現したため、このような呼び方をします。
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注目のきっかけは一冊の本
ティール組織が注目されたきっかけは、一冊の本です。
前述のフレデリック・ラルー氏が、著書『Reinventing Organizations』で、「旧来のマネジメント手法は、組織に悪影響を与える可能性がある」と指摘したことから始まります。
彼はティール組織を「目的の達成に向けて、組織メンバーの一人ひとりが自己決定を行う自律的組織」と定義づけしました。生命体や生態系にたとえられることもあります。
ティール組織は、自主経営力(セルフマネジメント)、全体性(ホールネス)、組織の存在意義を重視しています。
ティール組織の特徴
ティール組織の特徴は、組織を「1つの生命体」と捉えることです。組織は「メンバー全員のもの」という考えのもと、全員で共鳴しながら行動します。
ティール組織と従来型組織との違い
ティール組織は、上司がマネジメントせずとも自発的に動く組織です。それに比べて従来型組織(=ヒエラルキー組織)では、上司・部下の上下関係に基づきマネジメントが実施されます。
両者の主な違いは、以下の通りです。
ティール組織 | 従来型組織(ヒエラルキー組織) | |
---|---|---|
意思決定 | 「意思決定が必要」と感じた人が、周囲に提案し決定する | 役職の上位者が意思決定する |
仕事への取り組み | 自発的 | 従属的 |
メンバーの考え方 | 「会社の存在目的」に貢献できたかどうか? | (会社の存続に向けて)自分たちで頑張る必要がある |
心理的安全性 | 保障される | 保障されるとは限らない |
従来型組織は「組織の利益」を念頭に置きつつ、組織のやり方に従うため、本来の自分を見失うこともあります。一方ティール組織は、各自が自発的に取り組むことから、自分を見失わずに本来の力を発揮しやすいとされています。
ティール組織とホラクラシー組織
ホラクラシー組織はティール組織の一部です。どちらも各自に裁量権があり、自由な組織形態といえます。
ティール組織とホラクラシー組織の共通点は、上司による指示などがなくメンバーの自律的な職務遂行力に任せられている点です。自主経営力(セルフマネジメント)、全体性(ホールネス)、組織の存在意義の3つを大切にしているところです。
2つの相違点は、明確なビジネスモデルが存在しているか否かです。ホラクラシー組織では、明確なビジネスモデルに沿って企業活動を行います。反対にティール組織は、明確なビジネスモデルは存在しません。企業や組織の状態に応じて、ティール組織の概念の一部を試験的に導入することもできます。導入から運用までの自由度が高い組織といえます。
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ティール組織のメリット
ティール組織には、どういったメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下の通りです。
メンバーの自発性が高まる
ティール組織では、上司が部下をマネジメントせずとも、各自が自律的に意思決定を行います。そのため全員が意思決定を行えるよう、各自のスキルや能力に応じた役割を与える点が特徴です。
適切な役割を与えることで、当事者意識が芽生え、自発性も高まります。
計画の実行者が増え、生産効率が高まる
一般的に企業では、計画の立案者(=上司)と実行者(=部下)が存在します。しかし人手不足の場合には、1人で計画の立案と実行を兼任するケースもあるでしょう。
企業の生産効率を目指すには、「計画の立案と実行の兼任者」を減らし、実行者を増やす姿勢が大切です。
ティール組織はフラットなことから、計画の立案者と実行者の区別がなくなります。そのため、計画の実行者が増加し業務も円滑に進むことで、生産効率も向上します。
柔軟な組織ができる
ティール組織では自分に合った役割が与えられるため、メンバーの自発性が高まる点も特徴です。自発性が高まると、状況に適した対応策の立案や、意見交換が活発になります。
すると「さまざまなアイデア」が生まれるため、時代の変化に対応した柔軟な組織ができます。柔軟な組織は逆境にも強いため、強固な組織にもなるでしょう。
ティール組織のデメリット
ティール組織にはデメリットも存在します。詳細は、以下の通りです。
従業員に「セルフマネジメント力」がないと、組織が成立しない
ティール組織では、各従業員が意思決定権を持ちます。そのため、各自が「セルフマネジメント力」を保持することが前提です。
一方、従業員に「セルフマネジメント力」が欠けていると、組織として成立しません。組織が成立しないと、企業における生産効率の低下にも直結します。
従業員の進捗状況を管理しにくい
ティール組織は自発的な組織であるため、進捗管理も従業員に任せます。
進捗管理を任せると、プロジェクトの全体状況把握が困難になりがちです。状況把握が難しいと、問題が発生していてもつかめず、企業として必要なサポートも行えません。
リスク管理が難しい
ティール組織は、部下から上司への「承認プロセス」が存在しない点も特徴です。承認プロセスを設けない代わりに、従業員同士で意見を出し合い、プロジェクトの進め方を決めます。
そのため従業員同士が承諾すれば、「収益が見込めないうえに、成功率が低い」といった、リスクの高い内容が採用される可能性もあります。つまり、承認プロセスがないこととリスク管理の難しさは、表裏一体だといえます。
ティール組織は、失敗する?
ここまでのところで、ティール組織の運営は難しく失敗するのでは? と考える方が多いのではないでしょうか。ティール組織はメンバーのセルフマネジメント力に委ねることが多く、業務の進捗状況やリスク管理が難しいからです。
「ティール組織が失敗しやすい」というのは本当でしょうか。
ティール組織は、階層や階級がある従来型のヒエラルキー組織と比較すると、失敗しやすいのは事実だと考えられています。
ティール組織の失敗例
ここではティール組織の失敗例として、ベンチャー企業A社の実例を紹介します。
当初A社では、ティール組織に近い状態を目指して、実行に移しました。
しかし、さまざまな権限を経営陣から従業員に移行したことで、トップが従業員の声を聞く機会が減ります。そして企業のビジョンや各従業員の方向性が不明瞭になり、結果的に軸がぶれ、ティール組織の実現に失敗してしまいました。
ティール組織は、大企業には不向き
ティール組織は、大企業には不向きだといえます。なぜなら、ティール組織は従業員に意思決定権があるため、「従業員同士の強固な信頼」が不可欠だからです。強固な信頼を得るには、日常的な濃いコミュニケーションが必要です。
しかし大企業のように従業員数が多くなると、従業員同士の濃いコミュニケーションが難しいでしょう。
ティール組織は、難しい
ティール組織はフラットであるため、信頼関係が従来型のヒエラルキー組織より必要です。
またさまざまなプロセスを踏むことはもちろん、マネジメントをしない分、従業員への評価方法も徹底的に整備しなければいけません。そのため、ティール組織は難しいといえます。
また自社にとって「ティール組織の導入が正しい」とは限りません。企業の立場、風土、目的によって、正しいかの判断は異なります。
ティール組織に向いている企業とは
それではティール組織に向いている企業には、どういった特徴があるのでしょうか。以下に、3つの特徴を紹介します。
1.経営者が「既存の組織を変えたい」と願っている
ティール組織は、従来型のヒエラルキー組織と大きく異なる性質を持つため、準備はもちろん導入後もかなりの労力が必要です。
そのため、少なくとも企業のトップである経営者はもとより従業員一人ひとりが「既存の組織を変えたい」と願っていることが、必須条件だといえます。
2.従業員同士に強固な信頼関係がある
ティール組織では、全従業員が主体的に行動します。従業員の主体的な行動を許可するには、企業が従業員を信頼する必要があります。
また誰もが意思決定権を持つことから、「相手の決定を尊重する」姿勢も必要なため、従業員間での信頼関係も必須です。
つまりティール組織は、従業員同士に強固な信頼関係がなければ実現できません。
3.ボトムアップ思考である
ティール組織での意思決定は、従業員同士の意見交換や提案から派生するケースも多く見受けられます。
そのためティール組織は、従業員の提案を上層部がくみ取り、意思決定をする「ボトムアップ思考」の組織に向いています。
日頃から、現場で働く従業員の意見を尊重しているため、ティール組織に移行し「従業員に意思決定権」を持たせても、スムーズに対応できるでしょう。
ティール組織になるまでの5ステップ【図解】
ティール組織の提唱者フレデリック・ラルー氏は、ティール組織に至るには「5つのステップ」を経ると説いています。
下図の通り、レッドからティールに向かうと進化し、上位組織になると考えられています。5ステップの詳細は、以下の通りです。
レッド(RED)組織
レッド(RED)組織は、トップが支配的にマネジメントし、衝動型組織とも呼ばれます。
特定のリーダーに大きく依存し、短期的な目標に焦点を当てるため、衝動的で短絡的な行動が目立ちがちです。
アンバー(AMBER)組織/別名:琥珀(こはく)組織
レッド組織から一歩進むと、トップ以外でも階層がつくられ、安定的な要素も含むアンバー(AMBER)組織に変化します。
レッド組織よりも特定のリーダーへの依存度は低くなるため、再現性は高まります。とはいえ「軍隊組織」とも呼ばれることから、トップの命令には忠実な対応が欠かせません。
オレンジ(ORANGE)組織
オレンジ(ORANGE)組織は、レッド組織やアンバー組織と同様に、ピラミッドともいえるヒエラルキーは存在するものの、成果を出せば昇進できます。
また「達成型組織」ともいわれ、日本では主流なスタイルです。
「成果」を目的とし、それを達成するためのマネジメントが展開されます。ただし成果を重視するあまり、自分らしさを見失うケースも見受けられます。
グリーン(GREEN)組織
グリーン(GREEN)組織では、前述のレッド組織、アンバー組織、オレンジ組織にはない「従業員の主体性」を優先する点が特徴です。
従業員の意見を尊重する「ボトムアップ」であり、自分らしく働けます。ただし、意見がまとまらなければトップが意思決定するといった問題も見受けられます。
ティール(TEAL)組織
ティール(TEAL)組織がほかと異なる点は、「従業員全員が意思決定を行う」ことです。
既存のティール組織は、他組織から段階を経たうえで誕生したケースが一般的です。各自が自分の役割を理解し自発的に動くため、1つの生命体が活動するようにも見えます。
失敗しないティール組織とは【3つのポイント】
失敗しないティール組織を目指すには、3つのポイントを押さえる必要があります。詳細は以下の通りです。
1.セルフマネジメント(自主経営)ができる
ティール組織では、全員に意思決定権があるため、各自が「自分の行動」に責任を持ちつつ、成果をあげる必要があります。
そのため、セルフマネジメントができる「自律型人材」でなければいけません。自律型人材は、昨今において注目を集めるジョブ型雇用にも適しています。
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2.組織の目的を共有する
従来型の組織であれば、上司が意思決定をし部下が行動するため、上司が「組織の目標」を把握していれば、業務が遂行できました。
一方、ティール組織は各自に意思決定権があることから、全員が組織の目標を把握していなければ業務が円滑に進みません。
そのため全員に対し、組織の目的を共有する必要があります。また目的は環境の変化によって変わることから、常に最新の情報共有が欠かせません。
3.心理的安全性の維持
ティール組織では、全員が自発的に行動します。自発的な行動には、自ら意思決定をするのはもちろん、新たなアイデアの提案や、積極的な問題解決への取り組みなども含まれます。
また自発的な行動には、組織内で「心理的安全性」が確保されていることが必須です。
そのため、企業は従業員に対し「ありのままの自分を出せる環境」を維持し続ける必要があります。
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大事なのは対話と自主性
上記3つのポイントを総括すると、ティール組織の成功で大事なことは、対話と自主性だといえます。
ティール組織で「対話」と「自主性」を確保するには、日頃から従業員と密にコミュニケーションをとることが大切です。1on1ミーティングなどを行い、定期的に意見を取り入れる機会を設けましょう。
ティール組織を導入すると人事制度はどう変わる?
ティール組織に移行すると、マネジメントや人事評価、報酬制度はどのように変わるのでしょうか。
マネジメント
従来においては、上司が部下をマネジメントするケースが一般的でした。一方、ティール組織はフラットで階級がないため、通常のマネジメントは実施しません。
会議の進行役などは存在するものの、あくまで横のつながりであるため、次に紹介する「人事評価制度」をユニークな内容にし、マネジメントに匹敵させるケースも少なくありません。
人事評価
ティール組織はフラットであるため、一般的な「上司が部下を評価する」ような人事評価は適さないといえます。
そのため、以下のような人事評価を実施する事例が多く見受けられます。
ノーレイティング | ABCといったランクづけをしない評価制度 |
---|---|
360度評価 | 1人の従業員に対し、関係者が多面的に評価する制度 |
また上記のような人事評価を実施したうえで、ワーケーションなどの「モチベーション向上」に向けた福利厚生もしばしば取り入れています。
報酬制度
ティール組織では、さまざまなルールを「従業員間での合意」のもと、策定する点が特徴的です。報酬制度も同様です。
基本給はベースにあるケースが多いものの、各自が納得する内容を模索したうえで、報酬制度を定めていくようです。
ティール組織を理解し、一人ひとりの能力が発揮できる組織づくりを
ティール組織は体制をフラットにすることで、従業員の能力を最大限に活かして組織のパフォーマンスを向上させるという側面があります。また昨今は、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行も進んでおり、従業員の「自律的な姿勢」は強く求められています。
ティール組織を導入しない場合であっても、従業員の意見を尊重する「ボトムアップ方式」の循環型経営を目指す企業も増えています。
まずは一人ひとりが自主性を発揮できるよう「1on1での対話」や「適材適所への人材配置」といった環境整備から始めてみてはいかがでしょうか。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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