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嘱託社員とは? 契約社員との処遇の違いやメリット・デメリットを解説
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嘱託社員は、非正規雇用の一種です。高年齢者雇用安定法の改正により、定年を迎えた高年齢者を再雇用する際に「嘱託社員」という雇用形態を採用する企業も増えています。
しかし「契約社員やパートタイムなど、ほかの非正規社員との違いがわからない」「嘱託社員の給与や処遇をどのように決めればいいのか」と悩まれる担当者もいるかもしれません。
当記事では、嘱託社員の意味や契約社員との違い、雇用する際の注意点、処遇、メリット・デメリットなどを解説します。高年齢者の再雇用を検討している人事担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
※当記事の内容は作成日または更新日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。
目次(タップして開閉)
嘱託(しょくたく)社員とは
そもそも嘱託には「正規の社員以外の人に仕事を任せる」という意味があります。つまり「嘱託社員」とは、企業が直接契約を結び、臨時で業務を任せる非正規社員を指しています。
ただし、嘱託社員という言葉に法律上の定義はありません。近年は、定年退職者を再雇用する際に用いられることが多いです。
嘱託社員の雇用区分・労働条件
嘱託社員には法律上の定義がないため、雇用区分や労働条件は企業によって異なります。一般的に、嘱託社員は雇用期間が1年程度と定められているため、非正規雇用の一つと捉えられています。
嘱託社員と契約社員の違い
嘱託社員と契約社員は「有期雇用契約を企業と結んでいる」という点では同じであり、嘱託社員は契約社員の一種ともいえます。また、嘱託社員のことを契約社員と呼ぶ企業もあり、明確な違いはありません。
あえて嘱託社員と契約社員の違いを挙げるとすると、以下の通りです。
嘱託社員 | 契約社員 |
---|---|
・主に定年後の再雇用社員が対象 ・出勤日数や労働時間は柔軟に設定される | ・基本的にフルタイム勤務であることが多い |
嘱託社員とアルバイト・パートタイムの違い
嘱託社員とアルバイト・パートは、どちらも企業に直接雇用されている非正規雇用であるという点は同じです。
嘱託社員とアルバイト・パートの違いは、以下のような「給与形態の違い」が挙げられます。
嘱託社員 | アルバイト・パートタイム |
---|---|
・主に月給制 | ・主に時給制 |
嘱託社員と業務委託との違い
業務委託とは、雇用関係のない企業から発注を受け、個人として仕事を請け負うことをいいます。よって、嘱託社員と業務委託との主な違いは「企業との雇用関係」にあるといえます。
嘱託社員 | 業務委託 |
---|---|
・企業と雇用関係あり ・従業員という立場 | ・主に時給制 |
公務員における嘱託職員とは
従来、公務員における「嘱託職員」とは、非常勤職員の雇用形態の一種で、3年程度の任期で働く職員のことを指していました。
ただし、2020年4月に施行された地方公務員法の改正により、嘱託職員のような非常勤職員は「会計年度任用職員」と呼ばれるようになり、待遇や勤務条件の見直しが行われています。
参照:『地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案の概要』総務省
嘱託社員が求められる背景
嘱託社員に注目が集まる背景には、少子高齢化による労働力不足、年金受給開始年齢の引き上げ、定年延長などの理由があります。
ここでは、嘱託社員が求められる背景について、具体的に解説します。
高年齢者雇用安定法(定年後再雇用制度)
嘱託社員が求められる背景の一つに、高年齢者雇用安定法(定年後再雇用制度)があります。
高年齢者雇用安定法により、2025年4月から「65歳以上の雇用確保」が義務化されることになりました。そのため、企業は「65歳までの定年延長」「65歳までの継続雇用制度(雇用延長・再雇用制度)の導入」「定年制度の廃止」のいずれかの対応をしなければなりません。
そこで、定年退職した元社員を再雇用する「嘱託社員」に注目が集まっているのです。
定年後に再雇用した嘱託社員は、定年前よりも給与が低下することが一般的です。こうした給与の低下を補い、企業と労働者双方の再雇用を促すために、高年齢者継続雇用給付金という助成金制度も整備されています。
年金受給開始年齢の引き上げ
嘱託社員が求められる背景には、年金受給開始年齢の引き上げによって「労働を継続して生活を安定させたい」と考えるシニア世代が増加していることも関係しているでしょう。
さらに、企業側も少子高齢化による労働力不足が課題となっており、新たな労働力として嘱託社員が注目を集めているのです。
嘱託社員のメリット
企業と社員の双方の立場から、嘱託社員のメリットについてご紹介します。
企業側のメリット
定年退職者を嘱託社員として再雇用する企業側のメリットには、下記の2点があります。
・培ってきたスキルを引き続き発揮してもらえる ・人件費の削減になる |
新しく人材を採用して育成するよりも、定年まで培ってきたスキルを活かして嘱託社員として引き続き活躍してもらえることは、企業側にとってメリットといえます。
また、嘱託社員の給与は定年前の7割程度の契約になることが多いとされ、人件費の削減も期待できるでしょう。
参照:『平成20年高年齢者雇用実態調査結果の概況』厚生労働省
社員側のメリット
嘱託社員として、定年退職後に同じ企業で働く社員側のメリットには、下記の3点があります。
・慣れ親しんだ職場でスキルを発揮できる ・責任から解放され、希望に合わせた働き方ができる ・定年後にも収入を得られる |
嘱託社員として再雇用された場合、職場での人間関係を新たに構築する必要はなく、これまで培ってきた経験やスキルを活かして働けます。
また、これまでの役職から離れるため、責任から解放されるとともに、短時間勤務など「自分の希望に合わせた働き方」が実現しやすくなるでしょう。嘱託社員の契約では給与が低くなることが一般的ですが、定年後も安定した収入を得られるのはメリットといえるでしょう。
嘱託社員のデメリット
次に、企業と社員の双方の立場から、嘱託社員のデメリットについてご紹介します。
企業側のデメリット
嘱託社員を雇用する企業側のデメリットには、下記の2点があります。
・契約更新時の手間がかかる ・嘱託社員のモチベーションを維持することが難しい |
嘱託社員は有期で契約を結ぶことがほとんどなので、契約を更新する手続きに手間がかかる可能性があります。
また、定年退職者を嘱託社員として再雇用すると、対象の社員は基本的に定年前の役職から離れるため、かつての部下が上司となることがあります。その場合でも、嘱託社員にモチベーションを保って仕事をしてもらえるようにフォローする必要があるでしょう。
社員側のデメリット
定年退職後に嘱託社員として働くデメリットには、下記の3点があります。
・契約の更新は確約されていない ・定年前よりも給与が下がる可能性が高い ・これまでの役職から離れることになる |
嘱託社員は基本的に有期契約であるため、望んでも契約が更新されない可能性があります。また、定年前よりも給与は下がるケースが多いことも理解しておきましょう。
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嘱託社員の給与・賞与・報酬
ここでは、嘱託社員の給与・賞与・報酬などについてご紹介します。
嘱託社員の給与について
嘱託社員の給与額は、現在法律上の規定がないため、企業が独自に決めることになります。そのため、業務内容や勤務条件などによって企業ごとに異なり、一般的には正社員と比べて給与が下がる傾向にあります。
ただし、正社員と有期雇用労働者との間で、不合理な待遇格差をつけるのは現在法律で禁止されています。2020年移行に改正・施行された「パートタイム・有期雇用労働法」により、同一労働同一賃金の原則が明確にされたためです。したがって、正社員と同様の職務内容であるにもかかわらず、嘱託社員の給与を著しく低く設定することは許されないと考えておくといいでしょう。
嘱託社員に賞与・ボーナスを支給すべき? 支給額はどれくらい?
嘱託社員への賞与・ボーナス支給の有無は、雇用契約の内容によります。一般的に嘱託社員に賞与が支給される場合、正社員と比較すると賞与額は大きく下がる傾向にあります。
嘱託社員に退職金を支給すべき?
嘱託社員にも、退職金を支払うケースはあります。
たとえ、正社員として定年退職した際に退職金を受け取っている場合でも、嘱託社員として退職する際に再び退職金を支払う企業もあります。
ただし、そもそも全社員に対する退職金の支払いは、企業側の義務ではありません。企業によって対応が異なるため、退職金のルールは就業規則などに定めが必要でしょう。
嘱託社員の社会保険
嘱託社員は、勤務先の企業が社会保険の適用事業所かつ所定の要件を満たす場合、社会保険に加入できます。
ここでは、嘱託社員の社会保険、労働保険について詳しくご紹介します。
嘱託社員の健康保険について
定年後に再雇用された嘱託社員は、原則として75歳までは健康保険に加入できます。
ただし、嘱託の新たな契約で労働時間が短縮された場合、健康保険の資格を失うことがあるため、契約内容を確認する必要があります。
嘱託社員の介護保険について
嘱託社員でも、65歳になるまでは介護保険料の支払いが必要です。
ただし、勤務日数を減らしたことで健康保険への加入対象ではなくなった場合、介護保険料の負担義務はありません。
嘱託社員の厚生年金保険について
定年後に再雇用された嘱託社員も、70歳までは厚生年金保険料を支払わなければなりません。
ただし、健康保険の加入対象から外れている場合、介護保険と同じように厚生年金保険への加入義務はなくなります。
嘱託社員の雇用保険・労災保険について
定年退職後、すぐに嘱託社員として再雇用された場合は、継続して再雇用前の雇用保険が適応されます。以前までは64歳までが加入対象でしたが、近年の法改正により条件を満たせば65歳以上の社員も適用されることになりました。
ただし、定年前よりも就業時間を減らした場合、短時間労働被保険者への種別変更手続きが必要なケースもあります。
労災保険は、年齢や労働条件にかかわらず全員が加入対象となります。また、労災保険は企業が事業所単位での加入が義務づけられており、給与から保険料は天引きされません。
嘱託社員のその他の処遇
嘱託社員の有給休暇、評価などの処遇についてご紹介します。
嘱託社員の有給休暇について
正社員と同様に、嘱託社員も契約内容に応じて有給休暇の取得ができます。
多くの企業で有給休暇は、入社から6か月以降に発生します。ただし、定年後に再雇用されて嘱託社員になった場合は継続雇用にあたるため、6か月経過しなくても有給休暇が発生します。
嘱託社員の評価について
嘱託社員に対し、昇給・昇格への反映をはじめとする評価制度を設けている企業は少ないといえます。嘱託社員向けの評価制度を設けている企業では、正社員とは異なる基準を設定しているようです。
定年後に再雇用された嘱託社員に対して成果に応じた評価制度を設けることは、モチベーションを保つために有効といえるかもしれません。
嘱託社員の解雇について
嘱託社員は、有期雇用契約であることがほとんどです。雇用期間は1年程度に設定されることが多く、契約途中で嘱託社員を解雇することはやむを得ない事由がない限りできません。
嘱託社員を雇う際の注意点
嘱託社員を雇う際の注意点として、無期転換ルールについて知っておくとよいでしょう。
無期転換ルールとは?
無期転換ルールとは、有期雇用契約が通算5年を超えて継続された場合、該当する本人の申し出があれば、無期労働契約に転換できる法律上の規定です。
通称「5年ルール」とも呼ばれ、嘱託社員や契約社員、アルバイト・パートタイム労働者など、有期雇用契約で働くすべての人が対象です。
定年後の嘱託社員は「無期転換ルール」適用外にすることも可能
嘱託社員は「5年ルール」を適用されないケースもあります。
たとえば、60歳の定年後に再雇用し、嘱託社員として契約更新を繰り返し、65歳まで雇用したとします。その場合、無期転換ルールに該当するため、対象の社員には無期転換申込権が発生します。
しかし、特例として都道府県労働局の認定を受けることで、定年後の嘱託社員は無期転換ルールの適用外とする制度があります。
定年後の嘱託社員は無期雇用転換を行わないと決めた場合には、早めに特例の認定を受けるようにしましょう。
参照:『専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法施行規則』e-GOV検索
嘱託社員に活躍してもらうには
定年後の嘱託社員に活躍してもらうためには、モチベーションを下げずに働ける環境づくりが大切です。
定年後の嘱託社員の給与や処遇は、どうしても定年前よりも水準が低くなりがちです。また、かつての部下が上司の立場となった場合、お互いにやりづらさを感じてしまう社員もいるでしょう。
そのような状況下でモチベーションを保って働いてもらうためには、長年のスキルがあるからこそできる業務を任せたり、若手社員のサポートをしてもらったり、仕事へのやりがいを感じてもらえるように管理側が工夫するとよいでしょう。
嘱託社員の活躍推進にはタレントマネジメントがおすすめ
嘱託社員の活躍を推進するためには、社員のスキルや経験などの情報を一元管理でき、人事戦略に役立つ「タレントマネジメント」がおすすめです。
定年後の嘱託社員の経歴やスキルを見える化することで、適材適所の人材配置が実現し、モチベーションを維持しながら働いてもらえる可能性が高まります。
嘱託社員の管理にタレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステム『スマカン』は、社内の人材情報をクラウド上で一元管理し、スキルや評価を可視化できます。データに基づいた適材適所の人材配置や、目標管理など、人材戦略を多方面からサポートします。
また、アンケート機能により、社員のエンゲージメントや心身のコンディションを定期的に把握できるため、嘱託社員のモチベーション管理にも役立つでしょう。
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まとめ
近年の日本では、高年齢者の雇用確保のために、60歳で定年を迎える社員を「嘱託社員」として再雇用する企業が増えてきました。嘱託社員を雇用する場合は、モチベーションを保ちながら活躍してもらうための工夫が必要です。
定年後の嘱託社員を雇用する場合は、これまで培ってきた経験やスキルを活かして活躍できる場を提供し、モチベーションを維持して働いてもらえるように環境を整備しましょう。
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