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終身雇用とは? メリットとデメリット、制度における今後の展望
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終身雇用とは、企業において従業員が定年を迎えるまで雇用し続けることです。終身雇用では企業が倒産しない限り、簡単に解雇される心配はありません。
ただし現代においては、定年まで1つの企業で勤め続ける風潮が薄まりつつあります。このような雇用制度の流れをつかむためには、日本において主流とされてきた終身雇用を正しく理解しておく必要があるでしょう。
そこで当記事では終身雇用について解説しながら、終身雇用のメリットやデメリット、雇用に関する近年の流れについてもご紹介します。人材獲得競争が激化するなか、優秀な人材を確保するためにも、雇用に関する変化や流れ、トレンドを理解しましょう。
目次(タップして開閉)
終身雇用とは
終身雇用とは、企業の正規雇用社員を定年まで雇用し続けることです。終身雇用のもとでは、基本的に入社してから定年まで雇用し続けてもらえるため、安定した収入を得られるという安心感をもって働けます。
終身雇用は法律で定められているものではありません。しかし、労働契約法では企業の解雇について、合理的な理由などがない場合は、解雇権の乱用として認められないとしています。
終身雇用と年功序列の関係
また、日本の雇用制度には、勤続年数や年齢などを考慮して待遇を決める「年功序列」も挙げられます。
年功序列制度では、従業員が同じ企業で働き続けることでメリットを得られるような仕組みになっているため、定年まで雇用される終身雇用とセットで浸透しました。
成果主義との違い
成果主義とは、近年の日本で採用され始めている人事制度です。仕事の成果や成果に至るまでの過程を踏まえて評価を行います。
年功序列制度が重視する年齢や勤続年数とは関係なく、成果そのものや過程が待遇につながります。頑張った分や結果を出した分だけ待遇に反映されやすくなり、従業員のモチベーションが向上しやすい制度です。
終身雇用や年功序列では、実力や成果に関係なく待遇が決まる特徴があり、成果主義とは仕組みや考え方の根底が大きく異なるといえます。
終身雇用に関するデータ
終身雇用に関して、労働政策研究・研修機構が2015年に行った『第7回勤労生活に関する調査』の結果によると、終身雇用を指示する人の割合は87.9%と高い水準にあり、1つの企業に長く努める働き方を望む人の割合は50.9%となっています。
この調査結果では、従業員側は長期的な雇用と安定した収入が保障されている状況で安心して働きたいと考えている人が多いことがわかります。
ただし、2022年5月に公表された経済産業省の『未来人材ビジョン』によると、現在の勤務先で働き続けたいと考える人の割合は52%で「少ない」としているものの、転職の意向がある人の割合も25%と少ない状況です。
参照:『「第7回勤労生活に関する調査」結果 』独立行政法人労働政策研究・研修機構
参照:『未来人材ビジョン』経済産業省
終身雇用の歴史
終身雇用は、昭和初期に始まり、戦後にかけて日本全体に普及・浸透したとされています。
戦前の日本では、従業員の転職や企業による解雇もめずらしくありませんでした。とくに熟練工は待遇のよい職場へと転職を繰り返していました。
そこで企業は、人材を確保するために勤続年数に応じた賃金制度や退職金制度などを整備しましたが、定着したのは事務職のみで、依然として熟練工の転職は抑えられませんでした。
しかし、戦時中に労働力が不足し、国が転職や解雇を禁止するなど労働統制を行ったことで事態は変わります。また、定期的な昇給や退職金の支給など、賃金統制も進みました。このような中で、国や企業による長期雇用が拡大したのです。
長期雇用や年功序列は、戦後の日本で人々が生活の安定を求めたこともあり、高度経済成長期において、より一般的な雇用制度となりました。
ただし現代の日本では、企業の業績が伸びていないような状況で終身雇用や年功序列を維持しながら、新たな人材を雇用し続けることが困難になっています。結果的に、実力主義や成果主義などが導入されたことで、人材の流動化が起こり、終身雇用や年功序列の慣習が失われつつあるのです。
終身雇用のメリット
終身雇用のメリットにはどのような点があるのでしょうか。具体的なメリットを確認してみましょう。
・安定した収入の確保 ・長期的な人材確保 ・採用コストの抑制 |
安定した収入の確保
終身雇用において、みずから退職しない限りは安定した収入を確保できる点は従業員にとっての大きなメリットです。仕事を解雇される心配も基本的にはないため、生活の基盤を立てられ、大きな安心感を得られるでしょう。
長期的な人材確保
終身雇用では、企業側にとって長期的な雇用を約束することで人材確保や人材定着を期待できる点がメリットといえます。
ただし、近年では成果主義や実力主義が採用されつつあり、人材の流動化も進んでいるため、今後長期雇用という点だけで人材を確保するのは難しくなるかもしれません。
採用コストの抑制
終身雇用を前提とする場合、企業では新卒一括採用をメインとして行うのが一般的であるため、採用コストを抑えられる点もメリットの一つでしょう。
終身雇用を行っていない場合や人材が定着しないような状態では、中途採用など通年で採用活動を行わなければならない場合もあり、コストも労力もかかってしまいます。
ただし、近年は人材の流動化や少子化の影響などもあり、そもそも人材不足に陥りやすく、新卒採用だけではカバーできないケースも少なくありません。
終身雇用が一般的であった戦後以降と比較すると、採用コストの面で得られるメリットは小さくなっているかもしれません。
終身雇用のデメリット
終身雇用にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。一般的にどのような点がデメリットとして考えられているのかご紹介します。
・ 人材が成長しにくい可能性がある ・人件費がかかる ・モチベーションが上がりにくい |
人材が成長しにくい可能性がある
終身雇用では、従業員が努力を怠り、互いに競争意識などが芽生えず成長しにくいというデメリットがあります。基本的に定年まで雇用し続ける終身雇用は、よほどのことがない限り安定した収入を得られる安心感があるためです。
人件費がかかる
終身雇用では、従業員の年齢や勤続年数、従業員数などによって人件費がかかります。
たとえ企業の業績が上がったとしても、年齢層の高い従業員や勤続年数が長い従業員が多くいる場合は、その分人件費がかかってしまいます。業績が伸び悩むような状態では、人件費が大きな負担にもなり得るでしょう。
モチベーションが上がりにくい
終身雇用では、従業員のモチベーションが上がりにくいのもデメリットの一つです。
終身雇用にともなう年功序列制度により、成果を出していなくても年齢や勤続年数が長いことで評価され、給与や役職が上がっていきます。そのため、実力のある従業員や成果を出した従業員は意欲が下がってしまうでしょう。
また、成果を出しても評価に反映されにくいことで、組織全体としてのモチベーションが上がりにくくなる危険性もあります。
終身雇用における今後の展望
今後も終身雇用を続けていくことが難しい場合、企業は雇用制度や仕組みについて考えなければなりません。すでに終身雇用にとらわれない企業も減少している今、企業が取るべき対策を紹介します。
・新たな雇用制度や評価の仕組みを検討する ・ハイブリッド型雇用を検討する ・多様な働き方を受け入れる |
新たな雇用制度や評価の仕組みを検討する
終身雇用や年功序列の維持が難しい場合、企業が新たな雇用制度や評価制度の仕組みを検討する必要があります。企業の業績や優秀な人材の確保を優先したい場合は、成果主義や実力主義を全面的に取り入れるのもよいでしょう。
また、終身雇用のように人材の定着率を向上させるために、キャリア開発に注力するのも一案です。
従業員にとっては、自身のキャリアの可能性を広げることになるため魅力を感じる人も少なくありません。企業側も人材が集まりやすくなるほか、定着率が上がるなどのメリットがあります。
ハイブリッド型雇用を検討する
終身雇用や年功序列制度の要素が強く、人材に仕事をあてはめる「メンバーシップ型雇用」と、仕事に人材をあてはめる「ジョブ型雇用」を融合した「ハイブリッド型雇用」の導入も選択肢の一つとして注目されています。
ハイブリッド型雇用は、専門職と総合職の二軸で展開し、別々の評価軸で評価を行うものです。企業側は人材のキャリアに寄り添いながらバランスの取れた組織を築きやすくなり、従業員側は評価に対する不公平を感じにくくなるというメリットがあります。
多様な働き方を受け入れる
人材確保やダイバーシティの実現のためにも、多様な働き方を認めることも対策の一つです。たとえばテレワークやフレックスタイム制、コアタイム制など、従業員の働きやすさにもつながります。
働きやすさは今いる従業員の定着だけでなく、求職者における他社との差別化にもなるため、人材確保にも効果があるでしょう。
まとめ
終身雇用とは、企業において従業員が定年を迎えるまで雇用し続けることです。年功序列とセットで考えられることが多く、戦後の日本における一般的な雇用制度として広く普及しました。
ただし、現代においては終身雇用や年功序列制度の維持は難しくなってきており、企業では今後の雇用制度や評価の仕組みについて再考する必要があるでしょう。
企業によっても導入すべき制度は異なりますが、注目されているハイブリッド型雇用を中心に、新たな雇用制度や評価制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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