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eNPSとは? 平均や調査方法、社員の本音が見える質問、計算式、分析方法を紹介

eNPSとは? 【意味を簡単に】 従業員の本音が見えるたった1つの質問、計算・調査・分析方法、平均スコア、事例を紹介

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近年、少子高齢化に伴う人材不足や価値観の多様化によって、企業や組織でエンゲージメントが重要視されていますが、思うように調査できていないことも多いようです。そこで注目を集めているのが、「eNPS」という指標。これまで一般的だった従業員満足度調査よりも、より本音に近い従業員の職場に対する考え方を知ることができるとされています。

当記事では、eNPSの意味、算出方法、メリット、従業員満足度(ES)との違い、活用方法、事例などを紹介します。従業員の本音を知り、組織を改善していきたいという方は、ぜひお役立てください。

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目次(タップして開閉)

    eNPSとは

    まずはeNPSの意味や特徴、生まれた経緯などの概要について説明します。

    eNPSは職場の推奨度を数値化したもの

    eNPSは「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略です。それぞれ和訳すると、以下の通りです。

    employee従業員
    Net正味(本当の)
    Promoter推奨者
    Score点数

    つまりeNPSは「従業員が自分の職場を親しい知人や友人にどれくらい勧めたいか?」を点数化したものです。

    職場に満足しているなら友人にも積極的に勧められますし、不満があれば勧めるのには後ろめたさを感じると思います。そのため他人への推奨度から、会社への評価やエンゲージメント、職場に対する満足度を測る指標として使われています。

    内容としては非常にシンプルながら、従業員の本音を引き出しやすいのがeNPSの大きな特徴です。近年、職場環境を改善する方針を決めるための優れた指標だと注目を集めています。

    eNPSは NPS(顧客ロイヤルティ)から派生

    eNPSは、NPS(ネット・プロモーター・スコア)から派生して生まれました。NPSは2003年にアメリカの大手コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーが開発した調査手法で、製品やサービスに対する顧客のロイヤルティ(信頼・愛着)を数値化したものです。内容はeNPSと似ており、「この製品・サービスを親しい知人や友人にどれくらい勧めたいか?」と顧客に聞きます。

    NPSは、アップルやスターバックスなど多くの有名企業が導入して、成果を出してきました。eNPSは比較的新しい概念ですが、その原型となったNPSはマーケティングの領域において長く使われていて、信頼性のある指標だとされています。

    日本のエンゲージメントは他国に比べて低い?

    アメリカのコンサルティング会社ギャラップ社が2017年に調査した内容によると、エンゲージメントが高い従業員の割合は、世界平均が15%に対して日本平均は6%でした。これは対象になった139か国中132位という結果です。

    参照:『働く人の幸福度をはかるたった12の質問』

    企業向けのアンケートプラットフォームを提供しているアメリカの企業クアルトリクス合同会社による従業員エンゲージメントの調査でも、グローバルが66ポイントに対して日本は47ポイントと大きく差をつけられています。

    参照:『2021年の従業員エンゲージメントを左右する鍵は「帰属意識」』

    また、日本の人材サービス会社アデコの調査によれば、20〜60代の働く男女の中で「 あなたは現在のお勤め先に誇りや愛着を持っていますか」という質問に対して、「そう思う」と答えた人数は半数以下でした。

    参照:『働く人のエンゲージメント(誇りや愛着)に関する意識調査』

    このように日本は世界的に見ても従業員のエンゲージメントに課題を抱えていると考えられます。だからこそ、eNPSが注目されているのかもしれません。

    eNPSの計算・分析方法

    eNPSはどのようにして調査し、算出するのかを簡単に解説します。

    eNPSを測るたった1つの質問とは

    eNPSを測る方法は非常にシンプルで、従業員に対して最低限1つの質問をするだけです。必ず質問するべき内容は以下の通りです。

    1. あなたの親しい知人や友人から、あなたの職場で働きたいと言われたとき、推奨する度合いはどれくらいですか?

    この質問に対し、全く推奨したくないならば「0」、積極的に推奨したいならば「10」として、1~10の数字で回答してもらいます。

    このように、最低限1つの質問で調査できてしまう手軽さも、eNPSが注目されている理由です。さらに詳しく知りたい場合は、自由記述で回答の理由も聞くとよいでしょう。それでも、たった2問だけで従業員が会社に対してどのように感じているのか探ることができます。

    回答に応じて3つにタイプ分け

    eNPSでは、点数によって回答者を「推奨者」「中立者」「批判者」の3つに分類します。

    9〜10点推奨者自分の会社を積極的に他人にも勧めたい
    7~8点中立者大きな不満があるわけではないが、他人に強く勧めたいほどでもない
    0〜6点批判者会社に対して何らかの不満を抱えている

    eNPS調査の目的は、3つのタイプそれぞれに適した対策を考えていくことです。

    【推奨者】
    9~10点は、自分の会社を積極的に他人にも勧めたいと考えている「推奨者」です。職場に満足していて、仕事に対するモチベーションが高く、離職率も低い傾向にあります。推奨者は周囲の従業員によい影響を与えてくれることもあるため、会社に重宝される人材です。

    【中立者】
    7~8点は、大きな不満があるわけではないが、他人に強く勧めたいほどでもないと考えている「中立者」です。少しのきっかけによって、推奨者にも批判者にも変わりかねないため、組織改善の鍵を握っているともいえます。

    【批判者】
    0~6点は、会社に対して何らかの不満を抱えている「批判者」です。負の感情によって業務の生産性が下がりやすく、退職を考えている可能性もあります。周囲のモチベーションに悪影響を与えてしまうこともあるため、最優先で対応するべきでしょう。

    eNPSの出し方

    組織全体の状態をあらわすeNPSのスコアは、以下で算出できます。

    1. (推奨者の割合)-(批判者の割合)

    eNPSの活用方法

    上記の数値を基準にして組織の現状を知り、推奨者を増やして、批判者を減らしていくのが基本的なeNPSの活用方法です。

    たとえば、推奨者が50%、中立者が50%、批判者が20%なら、eNPSは30となります。eNPSの最大値は100ですが、そこまでの高得点が出ることは滅多にありません。0を超えていれば、批判者よりも推奨者が多いということですから、それなりに組織としては健全と考えられるでしょう。

    一方で、たとえば推奨者が10%、中立者が40%、批判者が50%なら、eNPSは-40です。スコアが0を下回ると、推奨者より批判者の方が多いということになるため、組織に何らかの問題があると考えられます。

    eNPSの平均スコア

    株式会社ビービットの調査によれば、日本のeNPS平均スコアは「-61.1」です。かなり低く感じるかもしれませんが、自分の職場を他人に勧めるのはハードルが高く、真ん中の5や6を選んでも批判者に含まれるため、eNPSはほかの調査に比べても低い点数が出やすい傾向にあります。

    参照:『eNPSは何によって上がるのか ー16業界eNPS調査結果』株式会社ビービット

    eNPS可視化&向上のメリット・効果

    eNPSを可視化し、スコアの向上を目指すことで、組織が得られるメリットや効果を紹介します。

    離職率の低下

    優秀な人材の離職は、会社にとって大きな損失です。しかし、本人の意思が固まってしまったあとに引き止めるのは簡単ではありません。だからこそ、早めに予兆をつかんで手を打っておくことが重要です。

    eNPSの回答で点数が低く、批判者に分類される従業員は、離職のリスクが高いと考えられます。その層に焦点を当てて不満を解き明かし、職場環境を改善することで離職につながる可能性を下げられるでしょう。
    また、eNPSの調査を定期的に実施して、点数が以前より下がっている従業員がいないか観察することも重要です。点数が下がってしまったきっかけを探り、その原因を解消すれば、離職のリスクを未然に防げるかもしれません。

    リファラル採用の実現

    リファラル採用とは、今いる従業員に信頼できる知人を推薦してもらって採用する手法で、近年注目を集めています。採用が成功した際に紹介した従業員に報酬を出す場合が多く、転職サイトや人材紹介エージェントを使うより低コストで採用ができるのが特徴です。

    すでに既存の従業員がよく知っている相手のためミスマッチが少なく、早く馴染んで定着しやすいというメリットもあります。

    eNPSによって「自分の会社を親しい知人に勧められるか?」という質問を繰り返せば、従業員にリファラル採用を意識してもらうことができます。点数を高めようとすれば、従業員が知人に勧めやすい会社になり、自然とリファラル採用の成功率も高まるでしょう。

    生産性の向上

    eNPSは、従業員のエンゲージメントを高める手段とも考えられます。そしてエンゲージメントは業務の生産性とも密接に関わっています。

    たとえば、仕事にやりがいを感じているほうが前向きにモチベーション高く取り組めるはずです。仕方なく嫌々やっているよりも、やる気に満ちた従業員の方が成果を出しやすいのは、よくご理解いただけると思います。

    同様に会社への愛着を感じていると、自ら働きやすい職場をつくったり、業務を効率化したり、といった全体最適の部分に目が行きやすくなります。また会社に対して抱えている不満が減れば、より業務に集中できるようになるでしょう。

    このように、eNPSの点数をもとにして職場環境の改善を進めることで、結果的に生産性の向上が見込めるのです。

    eNPSと従業員満足度(ES)の違い

    eNPSと似た指標として、従業員満足度(Employee Satisfaction)があります。この2つは何が異なるのでしょうか。両者の違いを見ていくことで、eNPSについてさらに詳しく解説します。

    eNPSの方が、本音が見えやすい

    従業員満足度(ES)の調査における質問は、「どれくらい職場に満足していますか?」という内容が基本です。しかし、この質問に対しては多少の不満があったとしても、それなりに満足していると深く考えずに回答されてしまうことがあります。

    eNPSで聞くのは「友人や知人に勧めたいと思うか」です。少しでも気になる点があれば他人には勧められないと考える人が多く、「自分が満足しているか」を聞かれるよりも安易に高得点をつけにくくなります。そのため、eNPSの方が職場に対する従業員の本心からの正確な評価が得やすいとされています。

    eNPSの方が、タイプ別に施策を打てる

    従業員満足度は、満足しているか?いないか?の2択で判断します。

    しかし、組織全体の傾向として職場に満足していない人が多いとわかったとしても、そこから誰に対して何をすべきか、具体的な対策につなげるのは難しいです。低い評価をつけた一人ひとりに対して、個別に対応するのも現実的ではないでしょう。

    一方で、eNPSは回答者を、推奨者、中立者、批判者の3つに分類します。そうすると、最も多いのはどのタイプか、各タイプにはどんな属性の従業員が含まれているか、どのタイプへの対応を優先するか、推奨者が満足している理由は何か、批判者が抱えている不満は何か、など対策を考えやすくなるのです。

    eNPSの方が、調べやすい

    従業員満足度の調査において、「どれくらい職場に満足しているか?」とストレートに聞くだけでは、なかなか正確な回答を得られません。そのためさまざまな角度から質問することで、従業員の本音を引き出す必要があります。

    しかし、普通の企業が適切に従業員の満足度を分析できるような質問を用意するのは難しいでしょう。また設問が増えるほど回答率が下がるうえに、真剣に回答してもらえなくなり、正しい結果が得られないこともあります。正確なデータを得ようとするなら、調査を専門とした会社に委託しなければならない場合もあるでしょう。

    それに比べて、eNPSでは最低限1つの質問をすることから始められます。回答の理由を聞いたとしても、たったの2問です。質問数が少ないので従業員も答えやすく、簡単に本音を引き出しやすいです。質問内容が決まっていることから自社で実施しやすく、調査のコストもそれほどかかりません。

    eNPSを調査分析し、スコアアップするには

    実際にeNPSを調査・分析し、スコアを向上させていくための方法を解説します。

    eNPSを自社で調べるには

    eNPSを調べること自体は、さほど難しくありません。Google Formsなどの無料サービスを使ってアンケートを作成し、それをメールやチャットで社内に展開すれば、自社で調査することも可能です。

    質問内容も、最初は基本の質問とその理由の2項目でもよいでしょう。まずはeNPSを調査してみて、必要であれば深掘りしたい内容を追加していきます。ただし質問項目を増やしすぎると、回答率が下がったり、真面目に回答されなくなったりする可能性があるため、注意が必要です。

    eNPSは調べたら終わりではない

    eNPSを調べるのは簡単ですが、それで終わりではありません。回答結果を分析して、組織の改善に活かすのが重要です。ただし調査に比べると分析は難易度が高く、ある程度の知識やノウハウが必要になるでしょう。データを分析できる人材が自社にいなければ、専門業者に委託するのも一つの手です。

    またeNPSの調査と分析は一度きりだと、あまり効果がありません。定期的に実施して数値の変化を観測し、その理由を考えることで組織が改善されていくでしょう。

    業界別平均スコアと比べる

    eNPSのスコアに、〇点以上なら問題なし、〇点以下なら注意が必要といった絶対的な基準はありません。点数の傾向は業界によっても異なります。

    アクセンチュアグループのコンサル企業 株式会社アイ・エム・ジェイによる主要10業界へのeNPS調査では、航空業界が最高スコアの-37.4、運輸業界の-78.5が最低のスコアでした。

    参照:『10業界別 eNPS®ベンチマーク調査 Special Edition』

    いくつかの調査結果があるため、そうした業界平均を調べて比較してみると、自社の状態が健全なのか判断しやすくなるでしょう。ただし、最も重要なのは自社の点数をどう改善していけるかですから、あまり他社のスコアに影響されすぎないように注意する必要があります。

    eNPSの結果と相関の強い質問項目

    どんな要因がeNPSの結果に影響するかは組織によって異なりますが、一般的に相関関係があるといわれている内容もあるため、結果を分析する際はご参考になさってください。

    最も関係が強いとされているのは、正当な評価と報酬です。自分の働きが正しく評価され、それに見合った報酬があると、従業員は会社を信頼して他人にも勧めたくなると考えます。

    また「顧客のために仕事をしていると感じられるか」もeNPSのスコアに影響しやすいです。顧客に貢献している実感はやりがいにつながる一方で、ノルマなどに追われていると会社へのロイヤルティ(忠誠心)が失われやすくなります。

    また、労働時間の長さそのものや、会社が上場しているかなどは、そこまでeNPSと相関関係がないこともわかっています。

    一概にはいえませんが、こうした内容を参考にして自社の結果を分析すると判断しやすくなるでしょう。

    タイプや項目別に分析し、対策を

    eNPSの結果が出たら、推奨者・中立者・批判者の3つのタイプと回答理由の掛け合わせで分析し、対策を練っていきます。さらに部署ごと・年代ごとなどの切り分けによって結果を分析するのも有効です。

    たとえば推奨者に対しては、組織のどういった点が評価されて満足度につながっているのかを解き明かし、それをほかの従業員にも伝えられる施策を考えます。一方で批判者に対しては、何が従業員の不満につながっているのかを探り、その原因を取り除く方法を検討するとよいでしょう。

    eNPSは調査するだけでなく、あくまでも対策をしてこそ意味があります。そして次の調査で対策に効果があったのかを確認し、必要であれば新しい施策を考える、といった流れを繰り返すことで職場環境が改善されていきます。

    eNPSの事例〜エンゲージメント向上に成功〜

    eNPSの活用によって、従業員エンゲージメントを向上させた企業の実例を紹介します。

    ある会社では、働き方改革を推進するためにeNPSを導入しました。半年に一回の調査をもとに、改善施策を考えています。最初の調査結果からは、社内の風土が優先的な課題だと判明。まずは風土改革委員会を発足させて、人事制度の変更を進めました。同様に不満としてあがっていたのが、業務時間の多さです。そこから何に時間を使っているかを深掘りして、移動時間を削減するために在宅勤務の導入、会議時間の短縮を測ることで働き方改革を実現していきました。

    別の会社では、少し変わった方法でeNPSを調査した事例もあります。最初にリーダークラスの社員を集めて、「知人に自社を紹介できるか?」できないのであれば理由を書く、というシンプルなアンケートを実施。その後、アンケートから挙がった内容を深掘りするために、全メンバーから有志を募ってミーティングを開くというやり方です。議論の結果、経営陣とのギャップなどいくつかの課題が浮かび上がり、その解決のために発信・採用・社内改善を回す戦略を立てて、情報の透明化や社員の表彰などを始めました。

    このように、eNPSは自社に合わせた形で運用して、成果を出している企業が多くあります。

    eNPS向上で従業員の定着を

    eNPSは、従業員による職場の推奨度を数値化したものです。このスコアを基準に職場環境の改善を進めることで、離職率の低下、採用コストの削減、生産性向上などにつながります。組織をよくしていきたいなら、eNPSの調査・分析と対策を繰り返していくことが有効でしょう。

    タレントマネジメントシステム『スマカン』は、アンケート機能を活用して、全社員もしくは特定の社員のeNPSを手軽に調査できます。集計データをグラフ化して分析したり、データを一元管理して採用や評価に活かすことも簡単です。

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    記事監修

    監修者

    スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎

    2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。

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