- 最終更新日:
- タレントマネジメント
- 人材採用
ジョブディスクリプション(職務記述書)とは? 意味とメリットや活用場面を解説
関連資料を無料でご利用いただけます
近年、日本でもジョブ型人事の採用に伴って注目される「ジョブディスクリプション(職務記述書)」。ジョブディスクリプションは職務内容の詳細が記載された文書で、求人募集や人事評価で用いられます。
当記事では、ジョブディスクリプションの意味、メリット・デメリット、活用場面、日本で注目が集まる理由について、わかりやすく解説します。
目次(タップして開閉)
ジョブディスクリプション(職務記述書)の意味
まず始めに、ジョブディスクリプション(職務記述書)とはどのようなものなのかを解説します。
ジョブディスクリプションとは
ジョブディスクリプションは担当する業務内容や責任範囲、必要とされるスキルなど、職務内容の詳細がまとめられた文書です。日本語で「職務記述書」と呼ばれます。
日本ではあまり浸透していませんが、欧米では求人募集や人事評価において一般的に活用されています。
ジョブディスクリプションはジョブ型雇用において必要となる文書で、作成が導入の課題となっている企業もあるといいます。
ジョブディスクリプションに記載される主な項目例
ジョブディスクリプションに記載される代表的な項目例をご紹介します。
1. 職種・職務名・職位名 2. 具体的な職務内容・業務範囲 3. 期待される目標・評価基準 4. 資格・経験・スキル 5. 所属部署・チーム 6. 雇用形態・勤務地・勤務時間 7. 報酬・待遇 |
1. 職種・職務名・職位名
ジョブディスクリプションには職種、職務名、職位名が明記されます。職種や職務のみならず、職位まで記載することにより、どのような立場で業務を行うのかを明確にします。
2. 具体的な職務内容・業務範囲
ジョブディスクリプションでは、担当のポジションで「どのような仕事を行うのか」が具体的にわかるように、職務内容と業務や責任の範囲が具体的に記載されます。
職務内容は優先度の高い順や頻繁に発生する順に箇条書きで提示され、各業務にかかる時間や頻度などの比重も明記されます。
3.期待される目標・評価基準
ジョブディスクリプションには、たとえば単月売上や年間売上など、職務を実行するうえでの目標が記載されます。採用時に評価基準が具体的に提示されていると、求職者は入社後の人事評価に納得感を得ることができるでしょう。
関連記事 目標管理と人事評価の関連 |
4. 資格・経験・スキル
職務において必須となる資格や、職務遂行のために必要となる経験やスキルが、ジョブディスクリプションには記載されます。経験年数や業務に使うツールの使用経験、スキルのレベルなどが当てはまります。
5. 所属部署・チーム
ジョブディスクリプションには所属部署やチームの全体の人数、上司と部下の人数などが記載されます。求職者が「どのような人と仕事を進めるのか」をイメージしやすくするためです。
6. 雇用形態・勤務地・勤務時間
具体的な労働条件として、ジョブディスクリプションには雇用形態、勤務地、勤務時間について記載されます。勤務地には転勤の有無や、転勤先として可能性がある勤務地についても明記されます。
7. 報酬・待遇
ジョブディスクリプションには、給与、想定年収、福利厚生や待遇について詳細に記載されます。経験やスキルに応じた待遇や、独自のユニークな福利厚生などがあればここに提示します。
ジョブディスクリプションは募集要項とは違う
ジョブディスクリプションに記載される項目例を見ると、「求人票に書かれている募集要項に似ている」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、人材採用の際に提示するという意味では近いですが、ジョブディスクリプションは募集要項とは大きく異なります。
基本的に、募集要項には業務の詳細や責任範囲までは書かれていません。詳しい仕事内容や役割、所属する部署などは、実際に入社してから知ることが多いです。入社後のジョブローテーションなどで、募集要項に書かれていた内容とは異なる職種に就く場合もあります。
新卒や未経験者向けの募集要項では、必要なスキルも詳細には書かれていないことが多いです。ジョブスディクリプションのように応募時点で一定の基準を設けるのではなく、面接で人柄やポテンシャルを判断して採用を決めています。
関連記事 ハイポテンシャル人材とは |
その代わり、募集要項には休日休暇や福利厚生などの情報が必ず書かれています。ジョブディスクリプションと比較すると、募集要項は業務内容よりも待遇に重きを置いているともいえるでしょう。
ジョブディスクリプション(職務記述書)作成の目的
ジョブディスクリプションを作成する目的は、大きく分けて2つあります。
生産性の向上
ジョブディスクリプションを作成する目的の1つは、生産性の向上です。
ディスクリプションを作成することで、業務内容や責任範囲などあいまいになりがちな要素が明らかになるため、無駄がなく本来やるべき業務に集中できるようになります。そのため、個人だけではなく企業全体の生産性向上が期待できるといえるでしょう。
また、職務内容が明確であることで採用や育成の方針が立てやすくなり、人材マネジメントの効率化にもつながります。
関連記事 マネジメントとは |
適切な人事評価の実現
ジョブディスクリプションを作成することにより、より客観的かつ公平性のある人事評価の実現が可能になるといえます。
ジョブディスクリプションには、職務の内容から目標、必要とされるスキル、評価基準などが明記されています。従業員が評価項目を事前に理解したうえで評価が行われるため、納得度の高い人事評価が行えるでしょう。
関連記事 よい人事評価とは |
ジョブディスクリプション(職務記述書)の活用場面
ジョブディスクリプションを実際に導入した場合、どのような場面で役立つのでしょうか。ジョブディスクリプションの活用場面についてご紹介します。
専門人材の採用活動
ジョブディスクリプションは、専門性のある人材の採用活動で役立てることができます。
ジョブディスクリプションには、業務を行ううえで必要な資格やスキルが明記されます。そのため、求める技術や経験を持った専門人材を採用しやすくなるでしょう。
人事評価
前述のように、ジョブディスクリプションは人事評価をする際に活用できます。
あらかじめ目標が明確であるジョブディスクリプションに沿った評価を行うことで、不満が出にくく、公平な人事評価を行うことができるでしょう。
人材育成・人材配置
ジョブディスクリプションは、人材育成や人材配置の場面でも活用できます。
ジョブディスクリプションではその人材が持つスキルや経験が明確になっているため、職務内容に特化した人材育成や、適性を考慮した人材配置を行うことができるでしょう。
ジョブディスクリプション(職務記述書)作成のメリット
採用、人事評価、人材育成などでジョブディスクリプションを活用すると、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
ジョブディスクリプションを作成することで得られる3つのメリットについてご紹介します。
求める人材を採用しやすくなる
ジョブディスクリプションを作成することにより、求職者は「自分はスキルを満たしているか」「仕事内容は自分にマッチするか」を応募時点で判断しやすくなるため、企業側は求める人材を採用しやすくなるというメリットがあります。
入社後のギャップを軽減し早期退職を防ぐ
早期退職の理由として、「入社前に思っていた仕事内容と違った」というケースは珍しくありません。職務内容の詳細を明記したジョブディスクリプションを活用することで、このような入社後のギャップを軽減し、ミスマッチを防ぐというメリットもあります。
スペシャリストとしての人材育成ができる
日本企業の新卒採用では「総合職」として人材採用を行う場合が多いですが、総合職はさまざまな仕事をローテーションして経験することになるため、特定の分野に特化したスペシャリストの育成を行うことは難しくなります。
一方で、ジョブディスクリプションを活用し、職務内容を明確にした人材を採用することで、「特定分野のスペシャリストとして人材育成ができる」というメリットがあります。
ジョブディスクリプション(職務記述書)作成のデメリット
ジョブディスクリプションを作成するメリットがある一方で、デメリットもあります。これからご紹介するデメリットも踏まえたうえで、ジョブディスクリプションの作成が自社にとって必要かどうかを検討してみましょう。
記載された仕事以外は取り組みにくい
ジョブディスクリプションには職務内容や目標、評価基準などが詳細に記載されているため、「記載された仕事以外は取り組む必要がない」という考えが生まれやすくなります。
ジョブディスクリプションに記載されていない業務が発生した際は、仕事の押しつけ合いが生まれてしまう恐れもあるでしょう。
ゼネラリストが育ちにくい
ジョブディスクリプションは専門分野に特化したスペシャリストの育成には向いていますが、その反面「ゼネラリストが育ちにくい」というデメリットもあります。
ゼネラリストとは、幅広く業務の知識やスキルを持つ人のことです。広い視野を持って業務に対応できるゼネラリストの存在は、組織にとって必要不可欠ともいえるでしょう。
ジョブディスクリプション(職務記述書)が注目され始めている理由
ジョブディスクリプションは、欧米では人材募集や人事評価を行う際に一般的に利用されています。日本企業でジョブディスクリプションが用いられることは少ないですが、近年は日本でも注目されるようになりました。
欧米でジョブディスクリプションが重要視される理由や、日本でも注目され始めている理由を解説します。
なぜ欧米ではジョブディスクリプションが重要視されるのか?
欧米でディスクリプションが重要視されているのは「ジョブ型雇用」を採用しているからです。決まった職務のポジションに合わせて人材を採用する考え方で、求職者には基本的にその職務で活かせる経験や知識を求めます。
それと同時に、基本的に賃金制度が職務内容や責任度合いに応じて給与を支払う職務給であることも挙げられます。
そのため、欧米では求人募集や業務遂行において、ジョブディスクリプションは重要な書類として一般的に活用されています。
ジョブディスクリプションが日本で定着しなかった理由とは?
欧米では一般的に活用されるジョブディスクリプションは、なぜ日本では浸透していないのでしょうか。
それは、「メンバーシップ型雇用」を採用する日本企業が多かったためです。メンバーシップ雇用は会社に適した人材を採用してから、その人に任せる仕事を決める仕組みです。求職者側としても、どんな仕事で働くかより、どんな会社を選ぶかを重視する傾向にあります。新卒の総合職採用などが、メンバーシップ型の典型的な例です。
特に大企業では、ポテンシャルの高い学生を採用して、ジョブローテーションを繰り返し、いずれ経営を担うゼネラリストを育てる方法をとっていました。こうしたメンバーシップ型雇用では採用時に業務内容の詳細を伝える必要がないため、ジョブディスクリプションではなく募集要項が一般的となっています。
ジョブディスクリプションは日本でも広がってきている
しかし近年、ジョブディスクリプションは日本企業でも関心が高まってきています。それは日本でも大企業を中心にジョブ型雇用への移行が進んでいるからです。
メンバーシップ型雇用は、会社に帰属意識を持って長く在籍してもらう必要があるため、年功序列と終身雇用が前提の仕組みでした。しかし、労働力人口の減少や価値観の変化で、その2つの考え方が崩れ始めています。
さらにIT技術の進歩によって、高い専門性を求める仕事が増えてきました。そうした背景からジョブ型雇用への移行が進むとともに、ジョブディスクリプションの必要性も高まってきているのです。
日本企業でジョブディスクリプション(職務記述書)の活用が進む?
当記事では、ジョブディスクリプションについて解説しました。
欧米では一般的に活用されているジョブディスクリプションですが、日本では浸透していないのが現状です。しかし「ジョブ型雇用」に注目が集まる近年、日本でもジョブディスクリプションを導入する企業が増えると考えられます。
ジョブディスクリプションを作成することで、「求める人材を採用しやすくなる」「入社後のギャップを軽減し早期退職を防ぐ」「スペシャリストとしての人材育成ができる」というメリットがあります。
一方で、「記載された仕事以外は取り組まなくなる可能性が高い」「業務領域が限られるためゼネラリストが育ちにくい」というデメリットも挙げられます。
ジョブディスクリプションを導入するメリットとデメリットを踏まえて、自社での活用を検討してみてはいかがでしょうか。
SHARE
関連資料を無料でご利用いただけます
コラム記事カテゴリ
こちらの記事もおすすめ
スマカンの導入をご検討の方へ
実際の画面が見られる
デモを実施中!