- 2022.06.20
- タレントマネジメント
[2022年版]人事・労務法改正の要点まとめ 企業の担当者が対応すべきポイントとは
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毎年人事・労務に関連する法律は改正されていますが、特に2022年1月以降に施行される法改正は多く、人事労務担当者にとってはさまざまな対応が必要です。
当記事では、人事・労務法改正の要点を踏まえて、どのような対応が必要となるのかを解説します。
目次(タップして開閉)
2022年施行の人事・労務の法改正
2022年は人事・労務に関連するさまざまな法改正があります。当記事ではすでに施行されているものから、これから施行されるものまで8つの法改正を取り上げます。多くの企業が当てはまるものもあるため、自社での対応が必要かどうかチェックしてみてください。
法律に従わないと、助言や指導、勧告の対象となってしまい、公表されるケースもあります。そうなると企業の社会的イメージを損なうだけでなく、従業員の不満や離職が増える恐れもあります。改正によって何が変更となるのか、どのような対応が必要なのかを把握し、実行するのは人事・労務担当者の急務といえます。
2022年1月施行 人事・労務の法改正
2022年1月から施行されている法改正は次の2点です。
【2022年1月施行】雇用保険マルチジョブホルダー制度
「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは、複数の事業所で働く65歳以上の労働者について、条件を満たせば雇用保険に加入できる制度です。
これまでは雇用保険に加入するには、一つの事業所で週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあるなどの条件を満たさなければなりませんでした。しかし今回の法改正では、65歳以上の労働者は、勤務する複数の事業所で、1週間の所定労働時間が合算20時間以上などの条件を満たすことで特例的に雇用保険の被保険者になれる制度です。
以下の条件をすべて満たしている人は、雇用保険に加入できます。
1.複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者 2.2つの事業所の1週間の所定労働時間が合計20時間以上 (ただし、一つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満) 3.2つの事業所それぞれで31日以上の雇用見込みがある |
なお雇用保険マルチジョブホルダー制度は、条件を満たしていても加入は必須ではありません。一度加入すると任意脱退は認められておらず、退職するか上記条件のいずれかが当てはまらなくなった場合にのみ、雇用保険の資格を喪失します。
必要な対応
マルチジョブホルダー制度を活用する場合、雇用保険の加入手続き自体は労働者本人が行います。ただし労働者から申し出があった場合、雇用主側は「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」への必要事項の記入や手続きに必要な雇用契約書、勤怠表など資料の準備に協力しなければいけません。
また、本制度が適用となった従業員の給与からは、雇用保険料を徴収しなければいけないので注意が必要です。
【2022年1月施行】傷病手当金の支給期間の通算化
同一の病気や怪我により、業務を行えない場合に本人や家族に支給される傷病手当金の支給期間について、次のように変更されました。
改正前 | 傷病手当金の支給開始日から「起算して1年6か月」 |
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改正後 | 傷病手当金の支給開始日から「通算して1年6か月」 |
傷病手当金は、同一の病気や怪我により、業務を行えない場合に支給されるため、出勤している期間に受給することはできません。従来は、1年6か月の間で出勤している月を引いた月数分しか、傷病手当金を受給できませんでした。しかし法改正により、業務を行えない月が1年6か月になるまで受給対象となったため、療養と業務を両立しやすくなりました。
必要な対応
雇用している企業の人事・労務担当者は、該当の従業員について傷病手当金の受給対象となった日数や支給開始日などを管理して把握しなければいけません。
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2022年4月施行 人事・労務の法改正
続いて、2022年4月から施行されている法改正は次の2点です。
【2022年4月施行】パワハラ防止法(中小企業)
2019年5月に成立したパワハラ防止法(労働施策総合推進法)では、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務とされています。大企業ではすでに2020年6月より施行されています。中小企業においては今まで努力義務でしたが、2022年4月より企業の規模にかかわらず、すべての企業において次の4つの措置が義務づけられました。
職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置 |
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1.事業主の方針の明確化およその周知・啓発 2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 3.職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 4.併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止など) |
参照:『厚生労働省リーフレット』より作成
必要な対応
上記4つの「事業主が雇用管理上講ずべき措置」を実行する必要があります。パワーハラスメントについて、どのような行動・発言が該当するのか、なぜ行ってはならないのか、行った場合にどのような処遇があるのかなどを会社全体に周知しなければなりません。
また、パワーハラスメントが起こってしまった場合の相談窓口などを設置し、被害従業員を守る体制を整えることも重要です。実際に相談がある場合を想定し、対応マニュアルやフローを整備しておくことも大切です。
さらに自社の就業規則にも、パワーハラスメントに関する規定を追加する必要があるでしょう。
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【2022年4月施行】育児・介護休業法
4月の法改正では、主に以下の2点の変更があります。
1.雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化 2.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 |
まず第一に、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備することが求められます。事業主は、育児休業に関する研修の実施や相談窓口の設置、休業取得事例の収集や提供、促進に関する方針の周知、いずれかの措置を講じなければいけません。また、妊娠や出産(本人または配偶者)を申し出た労働者に対して個別に周知したり、意向の確認も必要です。以前までは努力義務のみで、周知や確認は求められていませんでした。
そして、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和です。従来の制度では、有期雇用労働者の場合「引き続き雇用された期間が1年以上」かつ「1歳6か月までの間に契約が満了しない」ことが休業の取得条件でした。しかし2022年4月からは、法改正によりその条件が撤廃されました。
必要な対応
育児休業の申し出が円滑に行えるよう、雇用する企業側は育児休業に関する研修などを行うほか、周知と休業の取得意向の確認を、個別に行う必要があります。個別周知の方法は、面談・書面交付・FAX・メールなどのいずれかで行います。育児休暇の取得を控えさせるような個別周知や意向確認とならないよう注意しましょう。
【2022年4月施行】女性活躍推進法
働きたい女性が個性やスキルを十分に発揮して活躍できる職場環境を後押しするために定められた女性活躍推進法。これまでも行動計画や自社の女性従業員の活躍に関する情報公開などが義務づけられてきました。以前は常時雇用する従業員数が301人以上の大企業が対象でしたが、2022年4月1日からは101人以上の企業まで対象範囲が拡大しました。
必要な対応
義務の対象となる企業は、自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行い、それを踏まえた行動計画の策定が求められます。計画期間や数値目標、取り組みの内容、取り組みの実施時期の4つを盛り込んだ計画を立てなければなりません。なお、厚生労働省では次の項目を必ず把握し、自社の課題分析を行うよう指示しています。
・採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・男女の平均継続勤務年数の差異 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・労働者の各月ごとの平均残業時間数などの労働時間の状況 |
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【2022年4月施行】個人情報保護法
個人情報に関する権利・利益の保護を主な目的とした個人情報保護法は、2005年の施行から定期的に改正が行われています。今回は、技術の進化やグローバル化などを視野に入れた法改正となっています。2022年4月1日からは主に次のような内容が施行されています。
・本人請求権の拡大 ・事業者の責務の追加 ・事業者の自主的な取り組みの推進 ・データ活用の促進 ・法令違反に対するペナルティ強化 ・外国の事業者への罰則追加 |
本人請求権の拡大
法違反が行われていなくても個人情報の停止・削除が可能になりました。
事業者の責務の追加
個人情報の漏えい発生時の本人通知と個人情報保護委員会への報告が義務化されました。(※個人への影響が大きい場合)
事業者の自主的な取り組みの推進
企業の特定分野を対象に、個人情報保護団体として認定可能になりました。
データ活用の促進
仮名加工情報が新設され、個人を特定できないように変換した情報について事業者の義務が緩和されました。
法令違反に対するペナルティ強化
措置命令違反、報告義務違反、個人情報の不正流用などをした個人や法人に対する罰則が強化されました。
外国の事業者への罰則追加
日本にいる個人の情報を取り扱う外国事業者について、報告徴収や命令の対象とし、罰則が適用されました。
参照:『個人情報保護法 令和2年改正及び令和3年改正案について』個人情報保護委員会
必要な対応
個人情報保護法の改正に伴い、コーポレートサイトなどのプライバシーポリシーについて見直す必要があります。また、個人情報が漏えいしてその本人への影響が大きい場合、個人情報保護委員会などへの報告も義務化されました。迅速に対応しなければならないため、万が一の際を考えて、対応フローも整えておくといいでしょう。
2022年10月施行 人事・労務の法改正
【2022年10月施行】育児・介護休業法
育児・介護休業法については、2022年10月1日にも法改正があります。新しく産後パパ育休(出生時育児休業)が制定されることとなりました。産後パパ育休とは、育児休業とは別に取得できる制度です。男性でも、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できます。
さらに上限を2回として、育児休業の分割取得が可能となります。
必要な対応
産後パパ育休について、就業規則の追加が求められるでしょう。
育児休業の分割取得については、従業員は最初にまとめて申し出なければいけません。申し出があった場合、従業員への周知を忘れないようにしてください。出産を控えた社員本人や、家族が出産を控えている男性社員などが業務から離れても支障が出ないように、業務体制も見直す必要があるかもしれません。
【2022年10月施行】社会保険適用拡大
2022年10月1日から、段階的にパート・アルバイトなどの短時間労働者の社会保険適用範囲が拡大します。現行法では、常時雇用する従業員数501人以上の企業に、条件に当てはまる従業員への社会保険加入が義務づけられていました。10月からは101人以上の企業、さらに2024年10月には51人以上の企業と、義務化の範囲が広がります。
そしてこれまでは「継続して1年以上使用される見込みのある従業員」が社会保険加入条件の一つでした。しかし2022年10月の法改正からは、「継続して2か月を超えて雇用される見込みがある従業員」へと変更されます。
これにより、多くの労働者が社会保険へ加入できるようになります。なお、社会保険に加入するには次の条件をすべて満たしていなければなりません。
・週の所定労働時間が20時間以上あること ・賃金の月額が8.8万円以上あること ・雇用期間が2か月を超える見込みがあること ・学生ではないこと |
必要な対応
法改正に伴い、雇用する企業側は社会保険料の負担が増えます。また、該当する従業員は給与から社会保険料が徴収されることになるため、事前にしっかりと説明をする必要があります。
これまでは社会保険加入の対象ではなかった従業員から、法改正を機に就業時間を増やしたいまたは減らしたいといった要望が出るケースも考えられます。できるだけ早く従業員に周知を行い、意向の確認などを徹底する必要があるでしょう。
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[2022年人事・労務法改正]企業の対応まとめ
2022年はさまざまな法改正があり、人事・労務担当者は多くの対応を行わなければなりません。施行直前に慌てることのないよう、就業規則の改訂と雇用環境の整備の準備に取り掛かるといいでしょう。
そして従業員に対して、できるだけ早い段階で周知して混乱しないようにすることが大切です。具体的には次のような準備が求められます。
・就業規則の改定 ・雇用環境の整備 |
就業規則の改定
次の3つの法改正については、就業規則の追記・変更が必要です。
(2022年4月施行)パワハラ防止法(中小企業)
・パワーハラスメントを行った従業員を厳正に対処する方針や対処の内容を追記
・管理職を含む労働者全員への周知・啓発
(2022年4月施行)育児・介護休業法
・有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件緩和の追記
(2022年10月施行)育児・介護休業法
・新設の産後パパ育休(出生時育児休業)の追記
・育児休業の分割取得の追記
これまで「努力義務」であった法律が、今回の改正により義務化の対象となる中小企業では、そのほかの項目においても就業規則を見直す必要があるでしょう。
特に就業規則は従業員に働きやすい環境を提供するうえでは欠かせないものです。企業と従業員双方の権利を守るためにも、早い段階で改定を行うようにしましょう。
雇用環境の整備
改正に伴い、雇用環境を整備することも重要です。各法改正において下記の対応が必要となります。
(2022年1月施行)傷病手当金の支給期間の通算化
・従業員が病気や怪我で傷病手当金を受給することとなった場合の、支給開始日や残日数などの管理
(2022年4月施行)パワハラ防止法(中小企業)
・パワーハラスメント行為の禁止、行った者への対処などを全従業員に周知
・相談窓口の設置と周知・共有
(2022年4月施行)育児・介護休業法
・育児や介護のための休暇を取得しやすい環境の整備
・従業員全員が協力し合える職場づくり
・休業を希望する従業員に対する周知や意向確認
・実施の取り決め
(2022年4月施行)女性活躍推進法
・自社の女性活躍に関する状況把握、課題分析、課題解決に向けた行動計画の策定と届出
・女性従業員の活躍に関する情報の公表
(2022年10月施行)個人情報保護法
・企業の社会保険料負担額の増加に関わる金額をシミュレーション
・勤務条件の見直しを希望する従業員との面談
法改正にも対応可能な人事システム
2022年の法改正では、短時間労働者や65歳以上の従業員の社会保険や雇用保険に適応が拡大します。それにより、勤務状況の徹底的な管理が必要となるでしょう。また、女性活躍推進法における義務化に該当する企業は、行動計画の策定も必須です。
多岐にわたる対応が求められるため、人事・労務担当者には大変な労力となることが予想されます。従業員数が多い企業や、人材不足で対応するのが難しい人事・労務部門は、システムを活用した人材管理がおすすめです。
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