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静かな退職(Quiet Quitting)とは【日本で多い?】原因や対応策を解説
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近年、仕事を中心としない働き方を指す「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉が注目を集めています。人事担当者のなかには、耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
しかしこの「静かな退職」は、比較的新しい言葉であるため、本来の意味や発生する原因がよくわからないという人も少なくないようです。
そこで当記事ではなぜ「静かな退職(Quiet Quitting)」が浸透し始めているのか、日本で急速に広まりつつある理由は何かなどを解説します。
従業員が「静かな退職」を選ばないようにするための具体的な対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次(タップして開閉)
静かな退職(Quiet Quitting)の意味とは
「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、従業員が形式的には組織に所属しているものの、本来の仕事へのやりがいを求めず、淡々と業務を遂行する働き方を指します。
つまり、会社から物理的に去る(退職する)のではなく、職務に対するエネルギーを失うという意味で、心理的あるいは感情的に去る「退職」のようであることから呼ばれているのです。
英語表記の「Quiet Quitting」は、日本語で「頑張りすぎない働き方」と訳されることもあります。
広まった背景
「静かな退職(Quiet Quitting)」が広まったのは、アメリカでキャリアコーチを務めるブライアン・クリーリー氏がSNSに投稿した動画が拡散されたことがきっかけだといわれています。
同氏は動画内で「Work is not your life(仕事が人生ではない)」というメッセージを発信しました。
これがZ世代(1990年代の半ばから2010年代序盤までに生まれた世代)を中心に共感を呼び、仕事を中心に生きない新しい働き方として「静かな退職(Quiet Quitting)」という概念が世界中に広まっていきました。
単なる怠惰な姿勢ではない
「静かな退職」は一見、怠惰や業務放棄と受け取られがちです。
しかし実際は、従業員が職務範囲を線引きし、プライベートと仕事のバランスを保つための新しい働き方の一つであると捉えるとよいでしょう。
特に近年は、過剰労働やワークライフバランスの崩壊を否定する動きが活発化しています。
そのため、自身の働き方を調整し、健康と生活の質を守る手段として「静かな退職」を選択する人が増えているのです。
対義的に使われるハッスルカルチャーとは
「静かな退職(Quiet Quitting)」と対義的に使われるのが「ハッスルカルチャー(Hustle Culture)」という概念です。
ハッスルカルチャーとは、一生懸命に働くこと、つまり「ハッスル(Hustle)」を理想化し、尊重する仕事の文化を指します。
ハッスル文化は、特に起業家やテック業界で多く見られ、長時間労働や週末も働くこと、休暇を取らないことなどを美徳とします。昼夜問わず働いた結果として、成功を追求することを推奨する考え方です。
ハッスルカルチャーは、成功への高いモチベーションや働きがいを象徴する一方で、過度な働き方によるストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクを高めます。
この文化はかつての日本企業にも多く見られました。
しかし近年では、従業員のワークライフバランスを尊重し、業務に追われることがないような働き方を推奨する企業が増えており、ハッスルカルチャーは衰退傾向にあるといえるでしょう。
静かな退職の原因
もともとはアメリカ発祥の「静かな退職(Quiet Quitting)」ですが、最近は日本でもZ世代を中心に「静かな退職」を実践する人が増えているようです。
「静かな退職」が増える原因とされている3つのケースについて解説します。
働き方の多様化
「静かな退職」の原因として、働き方の多様化が影響を与えていると考えられます。
これまでのようなフルタイムの働き方だけでなく、現代ではフレキシブルな働き方が増え、パートタイムやリモートワーク、フリーランスという選択肢が増えてきました。
多様化の流れは、個々の従業員が自分に最適な働き方を選べるようになった一方で、企業にとっては従業員一人ひとりに対するマネジメントやコミュニケーションが複雑化するという課題があります。
特に、リモートワークやフレキシブルワークの増加によって、以前より従業員は組織とのつながりを感じにくくなっています。自身の仕事に対する関与感やコミットメントが薄れ、結果として「静かな退職」へとつながっているのでしょう。
職場にロールモデルがいない
尊敬でき、手本にしたいと思えるようなロールモデルが職場にいない場合、従業員はモチベーションやキャリアの方向性を見失ってしまいます。
ロールモデルがいないと感じられるのは、働き方の多様化でモデルが1人に絞り込めなかったり、時代の急速な変化で自社のモデルが古くなったりしているからと考えられます。
そのような職場では、従業員はキャリアプランを描きにくく、次第に成長意欲や仕事へのモチベーションが下がってしまうでしょう。このような流れも「静かな退職」の原因の一つです。
ウェルビーイングの追求
働き方改革やウェルビーイング(身体・心・社会的な健康)への意識の高まりから、多くの従業員は、仕事と私生活のバランスを重視するようになっています。
過重な業務負荷や長時間労働が日常化している職場において従業員は、自身の心身の健康(ウェルビーイング)を守るために、仕事へのコミットメントを下げ「静かな退職」を選択しているのでしょう。
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静かな退職の実態
「静かな退職(Quiet Quitting)」を選択するビジネスパーソンが増加していることが、ある調査から明らかになっています。
世論調査やマーケティングを行うアメリカのギャラップ社によると、「静かな退職」を選択する人は、アメリカの労働力の少なくとも50%以上に該当します。
積極性や意欲が低下している従業員の割合も増えていることがわかりました。
日本でも、リモートワークなどの新しいワークスタイルや、正社員雇用にこだわらない柔軟な働き方が主流となりつつあります。仕事に対する価値観にも変化があらわれ、今後も静かな退職を選択する人が増えていくかもしれません。
参考:『Is Quiet Quitting Real?』Gallup
静かな退職(Quiet Quitting)が日本に多いといわれる理由
同じくギャラップ社が、2017年に行った世界各国の企業を対象にしたエンゲージメント調査によると、日本企業における「やる気のない従業員」は70%にのぼりました。
「熱意も不満も持たない従業員」が50%というアメリカの結果に比べて、日本の方が従業員エンゲージメントが低い傾向にあります。その理由は主に2つ考えられます。
業務範囲や責任の所在があいまい
日本の企業では、業務範囲がはっきりしていないことが少なくありません。
業務範囲があいまいで、責任の所在も不明確な職場では、最終的に上長が責任を負う可能性が高いです。そのような状況を目にした若手従業員は出世を拒み、キャリアアップを避けたくなる気持ちが高まるでしょう。
また、業務範囲があいまいな職場では、意図せずほかの人と業務が重複してしまったり、自分の能力を超えた仕事を任されたりして、ストレスを感じる者も多いはずです。
責任を押しつけられたり、余計な業務を依頼されたりする日本的な職場環境は「静かな退職」の理由の一つになっています。
公平性に欠ける評価制度
日本の企業における評価制度も「静かな退職」の一因といえます。
従業員の業績がどのように評価や処遇に反映されるのかが不明確であると、不公平感や不満が生じ、最大限に働く意欲を失う可能性があります。
また、成果に対する評価が正当でないと感じられる場合も、仕事に対するモチベーションを保つことが難しくなるでしょう。さらに、年功序列による評価を採用している日本企業では、たとえ成果を残さなくても相応の評価と昇給が見込めます。
頑張る気持ちが起きない、頑張らなくても評価される、という日本的労働環境は「静かな退職」が発生する理由といえます。
静かな退職は従業員にとってメリットもある
「静かな退職(Quiet Quitting)」は仕事へのやりがいを求めず、淡々と業務を遂行する働き方であるため、マイナスのイメージが強いかもしれません。しかし、従業員にとってはメリットとなることもあります。
自己主導的な働き方ができる
「静かな退職」では、自分の仕事の範囲を明確にして、それを遵守できます。つまり、仕事をやりやすい方法でマイペースに進められるのです。
業務の進め方において、精神的に追い詰められることが少なくなるため、心にゆとりを持って働けるのはメリットといえます。
ワークライフバランスを保てる
「静かな退職」を選択すると、仕事以外の生活の一部を取り戻す機会を得られます。業務量を適度に調整してプライベートの時間を確保できるため、ストレスを軽減できるでしょう。
プレッシャーを感じずに働ける
「静かな退職」を選択した従業員は、基本的にキャリアアップの意欲を持っていません。
従業員は昇進することに興味を持たないため、成果を挙げなければならないというプレッシャーを感じずに働けるでしょう。給与額は上がらなくてもいいから責任を感じたくない、と考える従業員にとって はメリットといえます。
静かな退職を企業が放置するデメリット
従業員にとっては少なからずメリットとなる面もある「静かな退職(Quiet Quitting)」ですが、だからといって企業が放置するのはおすすめできません。
「静かな退職」状態の従業員を放っておくことで、さまざまなデメリットが考えられます。また、長期的な視点で見ると、従業員にとってデメリットもあります。
企業側のメリットと従業員側のデメリット、それぞれを確認してみましょう。
企業側のデメリット
企業側にとっては次のようなデメリットが発生します。
・労働生産性が低下する ・1人に仕事が集中する ・人材が流出する |
生産性が低下する
従業員の一部が「静かな退職」を選択すると、積極的に仕事をしなくなり、チーム全体の士気に影響を与えるかもしれません。
組織的に士気が下がることで、企業全体のパフォーマンスや生産性が低下します。当然、社内コミュニケーションも希薄になり、イノベーションも生まれにくくなるでしょう。
1人に仕事が集中する
「静かな退職」を選択した社員は、自分の業務範囲を超えた仕事はしません。そのため、イレギュラーなトラブルが発生した際などに、特定の人に業務が集中してしまう可能性があります。
1人に仕事が集中してしまうと、ストレスの原因になり「静かな退職」を選んでいない人までモチベーションが下がってしまう恐れがあるでしょう。
人材が流出する
「静かな退職」の発生は、会社に対する不満や欠点がきっかけとなっていることがあります。そのため、問題が解決されないまま放置されていると、最終的に本当に退職する人が増えてしまうでしょう。
また、組織が問題を抱えたまま放置していると、もともと「静かな退職」を選択していない優秀な人材まで退職してしまうかもしれません。
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従業員側のデメリット
従業員側のデメリットには次のようなものがあります。
・居心地が悪くなる ・経済的安定が得られない ・新たなスキルが得られない |
居心地が悪くなる
熱意がない状態で、自分の業務範囲の中で最低限しか働かないと、やがてチームメンバーから疎まれる存在になってしまう可能性もあります。
そうすると職場の居心地が悪くなり、精神的なストレスがたまってしまうでしょう。
経済的安定が得られない
「静かな退職」を選ぶと、昇進・昇格が見込めなくなり、収入が増えるチャンスがなくなります。昇進・昇格しないと昇給も期待できないため、結婚や子育てなどのライフプランが立てにくくなるでしょう。
さらに仕事に対して積極性がない従業員は評価されにくく、降格する可能性もあるため、経済的に安定しなくなります。
新たなスキルが得られない
「静かな退職」を選択した従業員は、キャリアアップやスキルアップに興味を持たないため、新しい能力を身につけることは困難です。もし転職しようとしても、アピールポイントが少ないため、よい転職活動は望めないかもしれません。
静かな退職の兆候
「静かな退職(Quiet Quitting)」は、従業員が積極的に業務をこなす意欲を失っている状態であるものの、業務を放棄しているわけではありません。
そのため、見つけ出すのは難しいかもしれませんが、以下のような兆候に注意を払うとよいでしょう。
・過去には積極的に行っていた業務やプロジェクトに対して、突然消極的になる ・会議での発言が減ったり、社内イベントに参加しなくなったりする ・最低限の会話しかしないなど、コミュニケーションが明らかに少なくなる ・愛社精神や企業への信頼度が低下している ・特定のメンバーに業務が集中するようになる |
このようなサインが見られる場合は「静かな退職(Quiet Quitting)」が進んでいる可能性が高いといえます。早急な対応を検討しましょう。
静かな退職への対応策
「静かな退職(Quiet Quitting)」の兆候に気づいたときはもちろん、自社の従業員が「静かな退職」を選択しないようにするためにも、以下の対応策を進めるとよいでしょう。
・ワークライフバランスを尊重する ・職務範囲や評価基準を明確化する ・キャリアパスを明確にして成長機会を提供する ・コミュニケーションを強化する ・従業員のウェルビーイングに配慮する ・エンゲージメントサーベイを実施する |
ワークライフバランスを尊重する
ワークライフバランスを保つのが難しい職場環境では、従業員が「静かな退職」を選ぶ可能性が高まります。
企業はフレキシブルな労働時間やリモートワーク、必要に応じた休暇制度などを設け、従業員が仕事と私生活のバランスを保てる環境を提供する必要があります。
従業員のライフステージに変化があった場合でも働きやすい環境を整えておくことで、モチベーション高く仕事を続けられるでしょう。
職務範囲や評価基準を明確化する
仕事の範囲や役割が不明確だと、従業員は自分の仕事に価値を見出せず「静かな退職」を選択する可能性が高まります。
企業は具体的な職務内容や評価基準を明示し、期待値を明確にすることで、従業員が自己効力感を持てるようにサポートしましょう。
場合によって年功序列による評価なども見直し、公平性が高く透明性のある評価制度の再構築を検討するとよいでしょう。
キャリアパスを明確にして成長機会を提供する
従業員が自身のキャリアパスを明確にしたうえで、自身のスキルを向上させる機会があると、職場に対する満足度とエンゲージメントが向上しやすくなります。
「管理職・マネジメント層」に昇進するキャリアパスだけでなく、専門分野を極めるコースなど、働き方の選択肢を複数用意することも「静かな退職」を防ぐのに効果的とされています。
従業員が手本にしたくなるような人材を、社内的にロールモデルとして明示してもよいでしょう。
コミュニケーションを強化する
定期的に1on1ミーティングを実施し、従業員の声に耳を傾けることも大切です。
直面している問題や満足していない点、自身の役割に対する期待などをヒアリングして、適切なアドバイスやフィードバックを行いましょう。
このような機会を複数設けて、社内コミュニケーションを強化することで、従業員が社内で存在意義を感じやすくなります。
従業員のウェルビーイングに配慮する
従業員の精神的・身体的健康を維持するための対策を講じるのも「静かな退職」の防止につながります。カウンセリングを行ったり、健康促進プログラムを実施したり、ウェルビーイングに配慮した施策を検討しましょう。
エンゲージメントサーベイを実施する
従業員のエンゲージメントレベルを可視化し、改善のための戦略を策定するためにも、定期的なエンゲージメントサーベイを実施しましょう。
サーベイの結果から、従業員の満足度や意識の傾向、それらが組織のパフォーマンスにどのように影響を与えているかを把握できます。エンゲージメントデータを定期的に集めることで、「静かな退職」を未然に防ぐ施策を検討できるはずです。
関連記事 エンゲージメントサーベイとは? |
静かな退職を防ぐには?
「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、物理的に会社を去るのとは違い、仕事へのやりがいを求めず、限られた範囲内で淡々と業務を遂行する働き方です。
近年日本でも、働き方改革の進展やワークライフバランスの重視、古い評価制度への失望など、さまざまな理由により、Z世代(1990年代の半ばから2010年代序盤までに生まれた世代)を中心に「静かな退職」を選ぶ人が増えています。
「静かな退職」を選択することで、従業員はメリットを感じることがあるかもしれません。
しかし企業がそれを放置してしまうと、生産性の低下や離職率の増加などさまざまなデメリットが生じます。そのため、できるだけ早い段階で兆候を見つけ、防止策を考える必要があるでしょう。
従業員の声に耳を傾け、職場環境や評価制度の見直しなど現状を改善することをおすすめします。
エンゲージメントサーベイの実施に『スマカン』
「静かな退職(Quiet Quitting)」の防止策として、定期的にエンゲージメントサーベイを実施することも重要です。
タレントマネジメントシステム『スマカン』は、従業員情報をクラウド上に一元化するだけでなく、サーベイをもとに従業員の状態を把握・分析し、離職防止に役立てることもできます。
また、ストレスチェックや従業員満足度調査、理解度テストなど、豊富なテンプレートから社内アンケートを簡単に作成し、集計まで半自動化できるのもポイントです。
エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、従業員個々の感情や体調、組織の健全性などコンディションを把握できると「静かな退職」の防止につながるでしょう。
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