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ノーレイティングとは? 人事評価はいらない? 欧米で採用の新評価を紹介

人事評価はもういらないのか? 欧米で採用される「ノーレイティング」とは

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ノーレイティングとは、A評価・B評価・C評価といった従業員のランクづけを行わない、従来の人事評価制度とは異なる新しい手法です。海外の先進的な企業で導入が進んでおり、日本でも注目され始めています。

当記事では、ノーレイティングの概要と注目を集める背景、メリットとデメリット、事例と導入の是非などをご紹介します。ノーレイティングがわからない、自社で導入するべきかを知りたい、という方はぜひ参考にしてください。

目次(タップして開閉)

    ノーレイティングが欧米で採用される理由

    ノーレイティングの導入が進んでいる背景には、従来の人事評価制度への問題意識があります。なぜ、欧米では人事評価制度を廃止する企業が増えているのでしょうか。従来の人事評価制度には、どのような問題があるのでしょうか。ノーレイティングについて理解するために、まずはこの新しい評価手法が生み出された理由を紐解いていきましょう。

    従来の人事評価制度を廃止する欧米企業が増加

    2000年代までは、アメリカやヨーロッパでも従業員の成果に点数やランクをつけて管理する人事評価制度が主流でした。しかし、そのような人事評価制度の効果を疑問視する流れが、2010年頃から始まっています。

    そして2015年頃からは、従来の人事評価制度を廃止してノーレイティングに移行する流れが本格化していきました。

    このようにノーレイティングが注目されていった時期は、社会が大きく変動したタイミングと重なっています。

    2000年頃からIT技術の進化と普及によって、ビジネス環境や従業員の価値観が急速に変わり始めました。それらに従来の人事評価制度では対応しきれないと考える企業が増えてきたのです。

    従来の人事評価制度の問題点

    IT技術の進化によって社会の変化は激しさを増し、未来を予測しにくい時代になりました。この状況は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまい性)の頭文字を取って「VUCA」とも呼ばれています。

    VUCAの時代において、年単位で目標と評価を決定する人事評価制度では、社会変化のスピードに追いつけないと考えられるようになりました。また一昔前であれば、時間当たりの生産数など単純な数字で評価しやすい仕事が多くありましたが、現代に求められるイノベーションを起こすような仕事は、決まった基準の人事評価制度では測れません。

    さらにテクノロジーの進歩と価値観の変化によって人材流動性も高まり、評価に納得しない従業員は転職しやすくなりました。これも画一的な評価による従業員のランクづけが疑問視されるようになった要因の一つです。

    ノーレイティング導入に至るまで(アメリカ人事評価の歴史)

    アメリカでは100年以上前から人事評価に関する研究が進められており、その成果は日本企業にも大きな影響を及ぼしています。ノーレイティングについて知るうえでも、アメリカでの人事評価に対する考え方の変遷を知ると、より理解を深められるでしょう。

    アメリカは成果主義志向

    日本に比べると欧米の企業は成果主義の傾向が強い、という話はよく聞くのでははないでしょうか。現代にも続くアメリカにおける成果主義の流れは、1950年代頃から始まりました。

    成果主義とは、より客観的な基準で給与を決定するため、仕事の成果を評価することによって、どの従業員が利益を出しているか明確にしようという考え方です。この成果主義の考えのもとで、具体的に決めた目標の達成度合いで成果を測る「MBO(目標管理制度)」という管理手法が提唱されました。MBOはアメリカの多くの企業で定着し、その後日本企業でも導入されていきます。

    1990年以降に人物評価へ移行

    1990年代頃から、成果主義に対する考え方が少し変化し始めました。従業員の業務内容が複雑化してきたため、わかりやすい数値で仕事の成果を測ることが難しくなってきたのです。

    そのような背景から、成果を評価するという前提は変わらないものの、成果に至るまでの行動も評価の対象に加えられるようになりました。これまでの成果主義とは異なり、職務ごとの行動特性をもとにして、より人物を中心に考える仕組みとして生まれたのが「コンピテンシー評価」です。この人物重視の流れが、ノーレイティングにもつながっています。

    ノーレイティングとは社員を評価しない!?

    ここまでノーレイティングという考え方が生まれ、注目を集めるようになってきた背景については解説してきました。次に、一体ノーレイティングとは何なのか、いくつかの押さえておきたいポイントとともにご紹介します。

    「ノーレイティング=評価しない」ではない

    よく誤解されがちなことですが、ノーレイティングとは「従業員を全く評価しない」という意味ではありません。従業員の働きぶりを評価するための仕組みは、どんな企業においても必要です。それがなければ会社側は給与や待遇を決定できませんし、従業員側もモチベーションを保つのが難しいでしょう。

    そのため、「ノーレイティングを導入すれば評価業務から開放されて楽になる」という考えは間違いです。むしろ、これまでより手間をかけてでも、より納得度の高い評価をするための仕組みだと考えたほうがよいかもしれません。

    ノーレイティングとは年次評価の廃止

    ノーレイティングによって廃止されるのは、評価制度そのものではなく、従来の年次評価制度です。

    多くの日本企業では、年初に決めた目標の達成度に対して、年度末に点数やランクという形で評価します。しかし、ビジネス環境の変化が激しくなっている現代では、年初に決めた目標が1年後には適切ではなくなっている可能性があるのです。

    反対に、イノベーションを生み出すような仕事は、1年という単位では十分に成果を測り切れない場合もあるでしょう。複雑な業務ほど点数やランクであらわすのも難しくなります。無理に決まった評価軸に当てはめようとすると、従業員の納得度が下がりかねません。

    このような課題を解決するために、従来の年次評価を廃止するノーレイティングという考え方が生まれてきました。

    ポイントはリアルタイムのフィードバック

    年次評価を廃止して、ノーレイティングではどのように従業員の働きを評価するのでしょうか。ポイントは、リアルタイムで従業員の行動や成果にフィードバックすることです。

    ノーレイティングを導入する際は、年1回の査定面談の代わりに、より高い頻度で1on1と呼ばれる上司と部下の1対1のミーティングを設定します。それによって、変化していく状況に合わせて、課題や目標を設定し直すことができます。

    決まった期間内での成果を見るのではなく、成果に至るまでの過程も一緒に追っていくことで、わかりやすい結果が出るまで時間がかかるような仕事も評価しやすくなるでしょう。

    上司と部下で頻繁にコミュニケーションを取ることにより、一定の評価基準やランクに当てはめるのではなく、自然とお互いに納得がいく内容で評価を決められるのがノーレイティングの理想です。

    ノーレイティングのメリット・デメリット

    従来の人事評価制度の欠点を補うために生まれたノーレイティングですが、これもまた完璧な評価制度とはいえません。ノーレイティングの導入が効果的に働くケースもあれば、そもそも運用が難しい場合もあります。

    自社に合っているのか見極めるためにも、ノーレイティングのメリットとデメリットを整理しておきましょう。

    ノーレイティングのメリット

    ノーレイティングは評価を受ける側の従業員にとって、プラスの側面が多い仕組みです。ここでは特にに大きなメリットを2つ紹介します。

    ・従業員の納得度が高まる
    ・従業員のモチベーションの向上

    従業員の納得度が高まる

    ノーレイティングの最大のメリットは、従業員が評価に対して納得しやすくなることです。

    従来の年次評価制度では、画一的な基準のもとでランクをつけるという都合上、評価には相対的な判断が含まれる傾向にあります。つまり、その年の会社の業績や、ほかの社員の活躍に自分の評価が影響されてしまうということです。

    また評価面談が年に1回だと、従業員側からアピールできる機会が少なく、評価は上司から一方的に言い渡される形になりがちです。このような理由により、従業員が「自分の活躍が正当に評価されていないのではないか?」と疑念を抱くケースも多いです。

    ノーレイティングは上司と部下の対話をベースに評価を決めていくため、目標や評価基準は個人に合わせた内容です。被評価者である部下側からも主張ができます。そのため評価への納得度が高くなりやすいのです。

    評価の納得度は、優秀な人材の定着率にも関わります。離職率の改善などが見込まれるので、非常に大きなメリットといえるでしょう。

    従業員のモチベーションの向上

    もう一つのメリットは、リアルタイムの目標設定と評価によるモチベーションの向上です。

    年間目標が評価基準になっていると、そこから日々の行動をどうしていくべきか従業員が把握しにくいことがあります。その年の半ばや終わりには、現在の状況と年間目標にズレが生じ、判断に迷う可能性もあるでしょう。1年という決まった期間でわかりやすい成果が求められるため、結果が見えにくい長期的な取り組みへの意欲も下がってしまいます。

    ノーレイティングでは、頻繁な1on1を通じて目標設定と評価を行うため、現在の業務内容に課題はないか、これから何をすべきか、などが常にわかっている状態です。自分の行動が会社や自身の成長につながる実感がわきやすく、従業員のモチベーションが向上します。

    高いモチベーションを維持できると、成果も出やすくなりますから、業績への影響も期待できます。

    ノーレイティングのデメリット

    評価を判断する側にとっては、ノーレイティングの導入がマイナスに働く場合もあります。ここでは特に大きなデメリットを2つご紹介します。

    ・管理職やマネジメント層への負担
    ・社内で混乱を招く可能性

    管理職やマネジメント層への負担

    ノーレイティングでは評価に関する判断の多くが、現場の管理職に任されるため、負担が大きくなりやすいです。

    一定の評価基準に沿って点数やランクを決めればいい従来の評価制度は、管理職からすれば楽だったともいえます。

    一方でノーレイティングは、一人ひとりに合わせてリアルタイムで目標や評価基準を考える手間がかかります。1on1を頻繁に実施することによって、評価に費やす時間も増えるでしょう。

    またうまく運用できるかは管理職の能力に依存するため、人によって評価のばらつきも出やすくなります。導入時には、マネジメント層への丁寧な説明と、場合によっては研修も必要になるかもしれません。

    社内で混乱を招く可能性

    今までと評価基準や決め方が大きく変わることから、従業員にも混乱を招く可能性があります。

    ノーレイティングの導入によって、今までと比べて評価が上がる人もいれば、下がる人もいます。そのため、一時的に不満の声が上がるかもしれません。目標設定や1on1面談では、従業員の自主性も求められるようになるため、それに対する戸惑いが生まれることもあります。

    新しい仕組みを取り入れるには避けられないことですが、導入時には従業員にも丁寧な説明が必要でしょう。ある程度の混乱は受け入れつつも、一気に刷新するのではなく、少しずつ浸透させることが重要です。

    ノーレイティングを採用する日本企業はある?

    ノーレイティングを採用しているのは欧米の先進企業が中心で、まだ日本での導入事例は多くありません。ここではノーレイティングに近い仕組みを採用している数少ない国内企業の中から、大手スナックメーカー・カルビー株式会社の事例をご紹介します。

    レイティング評価を辞めたカルビー株式会社

    もともとカルビーも一般的な日本企業に近い人事評価制度を採用していました。しかし、2009年に経営層が入れ替わり、成果主義に大きく方向転換し始めます。

    最も特徴的なのは、「Commitment & Accountability(約束と結果責任)」という考え方です。カルビーでは、年間の目標を上司と部下で念入りに話し合ったうえで、両者が契約書を交わしていました。10年以上前から、綿密なコミュニケーションをもとに、目標の達成度で評価を測る仕組みの土台ができていたのです。

    さらに2020年からは、年間目標と数値での評価が廃止されます。会社が指針とする5つのバリューを実践するための行動ができているかという基準のもと、完全に上司との話し合いで評価が決まるようになりました。

    このように、数は少ないですがノーレイティングに近い考え方を導入して、着実に成果を挙げている日本企業も中には存在します。

    ノーレイティングは今後日本に広まる?

    ここまでノーレイティングの特徴と事例について解説してきました。海外では普及の兆候が見えているノーレイティングですが、今後果たして日本でも広まっていくのでしょうか。

    最後に、ノーレイティング導入の難しさと、本格的な導入を決める前にやるべきことをご紹介します。

    すぐに年次評価を廃止するのは難しい

    ノーレイティングのデメリットとして挙げたように、いきなり年次評価制度を廃止してノーレイティングを導入すると、社内で混乱が起きる可能性があります。評価をする側の管理職も、評価を受ける側の従業員も、今までとは異なる評価の決め方や基準に慣れるまでは時間がかかります。たとえ制度を一新したとしても、実際に働く人の気持ちがついてこなければ意味がありません。

    また人事評価制度は、ほかの人事制度とも深く関連しています。新しい評価の仕組みに合わせて「目標管理をどう行うか」「どのような基準で昇給・賞与を決めるか」という点について改めて見直す必要があるでしょう。

    年次評価制度は、文化と制度の両面で日本の企業に深く根づいているぶん、すぐに移行するのは難しいと考えられます。ノーレイティングを導入しようとするなら、それなりの覚悟と根気強さが必要になります。

    まずは社内コミュニケーションの活性化から

    運用の成否が管理職の能力に依存しやすいことも、ノーレイティングを導入するうえでの壁です。管理職が対話による定性的な評価に慣れていないと、人によって基準がバラバラになり、評価に対する納得度が落ちてしまうかもしれません。

    そのため、まずは上司と部下の1on1ミーティングを定期的に実施することから始めるとよいでしょう。社内でのコミュニケーションを活性化しておくと、社員にランクや点数をつけなくても人事評価がしやすい土台ができていきます。

    また、最終的にノーレイティングを導入しないという判断になったとしても、1on1ミーティングの実施は、上司と部下の関係性を深め業務を円滑に進める助けとなるでしょう。

    まとめ

    ノーレイティングは海外で注目されているものの、日本では従来の年次評価制度が根強く残り、簡単には切り替えられないのが現実です。とはいえ、現状の人事評価制度を一新しなくても、ノーレイティングの考え方の一部を参考にして、従業員の評価への納得度やモチベーションを高めることはできるのではないでしょうか。

    タレントマネジメントシステム『スマカン』なら、従業員の目標管理や上司と部下の面談内容の記録などで、人材育成と社内の活性化を効率的にサポートいたします。まずは1on1ミーティングを定期的に実施するところから、従業員一人ひとりに合わせた評価制度の構築を進めてみてはいかがでしょうか。

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