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キャリアコンピテンシーとは? 求められる背景や構成要素を解説
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目まぐるしく変化するビジネス環境に企業が柔軟に対応していくためには、自分のすべきことを主体的に考えて行動できる人材が必要です。そのような背景から、近年では「キャリアコンピテンシー」に注目する企業が増えています。
しかし、キャリアコンピテンシーについて「聞いたことはあるけど、詳細までは理解できていない」という方もいるかもしれません。
当記事ではキャリアコンピテンシーの概要をはじめ、求められる背景や構成要素、意識することで得られるメリット、キャリアコンピテンシーの活用シーンなどを解説していきます。
目次(タップして開閉)
キャリアコンピテンシーとは
キャリアコンピテンシーとは、自分が思い描くキャリアを実現するためにすべきことを、主体的に考え行動を起こす思考や行動特性を指します。
企業におけるコンピテンシーは、高い成果につながる行動特性を指しますが、キャリアコンピテンシーで重視するのは行動そのものではなく、その行動をもたらす個人の特性や価値観です。自分らしいキャリアを形成するために、働く意味や人生の目標を明らかにしながら、実現に向けてみずから行動手段を考えられる能力が、キャリアコンピテンシーなのです。
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キャリアコンピテンシーが注目されている背景
近年、キャリアコンピテンシーに注目する企業は増えていますが、それはなぜでしょうか。その理由には主に2つの背景が関係しています。
年功序列型・終身雇用の衰退
年功序列制度や終身雇用制度が衰退し、勤続年数の長さよりもスキルの高さ、業務の成果などを人事評価の対象とする時代に移行しています。そのような背景から、能力が高ければ若手社員でも自分らしいキャリアを描けるようになりました。
そこで、みずからのキャリア形成を意識する人材が求められています。企業は、業務の成果や成果を出す能力などを、人事評価の基準として重視するようになり、キャリアコンピテンシーに注目するようになったのです。
既存社員の生産性向上
少子高齢化による労働力人口の減少や働き方改革によって、雇用市場の変化が著しい日本では、今後ますます人材確保が難しくなることが予想されています。人材獲得競争が激しくなるなか、既存の社員の生産性を高めることが企業の存続のカギといえます。
社員のワークライフバランスにも注視しながら、生産性を向上させるには、ハイパフォーマンスを見せている社員の行動や思考を自社に浸透させる必要があるでしょう。このような背景も、キャリアコンピテンシーが注目される理由に挙げられます。
昨今は、社員がみずからのキャリアに責任を持って主体的にキャリア形成を進めていく「キャリア自律」を求める企業も多く、それを支援する動きも見られています。
キャリアコンピテンシーの構成要素
自分らしいキャリアを形成する能力であるキャリアコンピテンシーは、基本的に次の6つの構成要素から成り立っています。
動機 | 自身の仕事に対する情熱が何であるかを明確に把握できている |
---|---|
資質 | 仕事における自身の才能・スキルを自覚できている |
人脈 | 自身のキャリア形成を支援してくれる人にアプローチできている |
自己分析 | 自身の強みを客観的に把握し、他人に明確に示せている |
探求 | 労働市場における自身の可能性を探ることができている |
キャリアコントロール | 自身のキャリアプランを明確に計画できている |
これら一つひとつを実現できると、自分らしいキャリアが形成されていくとされています。キャリアコンピテンシーを自社で重視する場合は、この構成要素を理解しておくといいでしょう。
キャリアコンピテンシーの活用シーン
キャリアコンピテンシーは、特に人事領域で活用されることが多く、主に次の3つのシーンで用いられます。
人材育成
まず1つめに挙げられる活用シーンは「人材の育成」です。
指導や評価の項目としてキャリアコンピテンシーを用いることができます。職種や階層によって成果につながる行動や能力は異なります。そのため、キャリアコンピテンシーを活用し、目標や方向性を明確にすることで、社員の育成を効果的に実施できるようになります。研修を実施し、キャリアコンピテンシーについて社員に周知、理解を促進するのも一案です。
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人事評価
2つめの活用シーンは「人事評価」です。
キャリアコンピテンシーを用いることで、社員それぞれの成果や業績という結果だけでなく、その結果に至るまでのプロセスを評価できるでしょう。たとえば、結果が思わしくなかった社員でも、そこに至るまでの取り組み・行動なども評価してもらえるため、納得感のある人事評価につながります。さらにプロセスも評価されることで、結果が出なかった原因や次につなげる行動指標も見つけやすくなるでしょう。
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人材採用
3つめの活用シーンは「人材の採用」です。
面接の場面では、選考項目としてキャリアコンピテンシーを活用できます。新卒採用なら「将来性が見込めるか」、中途採用なら「即戦力になれるか」を基準に面接を行うため、キャリアコンピテンシーを指標にして適切な人材を選べる可能性が高まります。面接の際に、候補者の特性、価値観などをヒアリングすることで、キャリアコンピテンシーにマッチしているかが判断でき、自社の成長につなげられる人材を採用できるでしょう。
キャリアコンピテンシーを取り入れるメリット
自社でキャリアコンピテンシーを取り入れることによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは主な3つのメリットを紹介します。
企業方針の浸透
キャリアコンピテンシーを定める場合、企業方針や企業の風土などを反映させます。キャリアコンピテンシーを社員に明確に示すことは、自社の方向性や考え方、どのような人物が適しているのかを社内に浸透させることでもあります。向かうべき方向が明らかになることで、従業員は会社が求めているものを理解でき、足並みをそろえてゴールに向かう意識が備わるでしょう。
優秀な人材の育成・増加
前項でも触れたように、キャリアコンピテンシーは人材育成にも活用できます。業務に合わせた専門スキルや行動が明確になるため、社員に不足している部分や伸ばすべき部分がわかりやすくなります。さらに、人事評価にもキャリアコンピテンシーを活用することで、社員自身も自身に足りない行動特性を把握できます。納得感のある評価でモチベーションが高まっていれば、積極的に育成プログラムへ参加しようと考える社員も増えるでしょう。自発的にスキルアップする意思が高まれば、効果的な育成と優秀な人材の増加が見込めます。
生産性や定着率の向上
キャリアコンピテンシーにより自身の課題が明確になり、さらにそれを改善する方法がわかれば、社員の成果に結びつきます。さらに納得感のある人事評価が実施されていれば、社員のモチベーションは向上し、仕事への情熱を燃やしながら意欲的に仕事に取り組めるようになるでしょう。このような状況では、企業全体の生産性も向上しやすくなります。社員は自身のキャリアを形成しながら、自社に貢献できていることで、従業員エンゲージメントが高まり、定着率のアップにもつながるでしょう。
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キャリアコンピテンシーを取り入れるデメリット
さまざまなメリットがあるキャリアコンピテンシーですが、一方でデメリットとなる要素もあります。キャリアコンピテンシーを効果的に取り入れるためにも、デメリットについても理解しておきましょう。
時間がかかる
キャリアコンピテンシーを人事施策に活用するまでには時間がかかります。目標とするコンピテンシーモデルの選定や行動分析、項目の設定など手順が数多くあるからです。また、職種や階層によって評価基準を細かく分ける必要もあるため、相当な労力が想定されます。本格的に自社でキャリアコンピテンシーを取り入れる場合は、効率的に運用できるようシステムの導入も検討したほうがいいかもしれません。
PDCAを回す必要がある
キャリアコンピテンシーは、取り入れたら終わりではありません。ビジネス環境は常に変化しています。時代に合わせてコンピテンシーモデルも変わることを念頭に置いておかなければなりません。企業方針や環境の変化に伴い、評価基準も変更が必要です。キャリアコンピテンシーを取り入れたあとも、手間や時間をかけてでもPDCAを繰り返しアップデートしなければ効果的な運用は見込めません。
キャリアコンピテンシーのポイント・注意点
本格的にキャリアコンピテンシーを自社に取り入れる場合、活用のポイントや注意点に留意することで、適切な設定・運用が行えるはずです。
現実的な設定を意識する
キャリアコンピテンシーは、実現可能なものを設定しましょう。高い目標を設定することは決して悪いことではありません。しかし、誰も実現できないような非現実的な目標になってしまうと、社員のモチベーションを低下させてしまいます。低すぎず・高すぎずを意識し、頑張ることで成果につながるような基準を設定するといいでしょう。
客観的な評価を心がける
人事評価は公平性や透明性、納得感という要素が求められます。社員の自発的な行動を促進するためにキャリアコンピテンシーを取り入れるのであれば、客観的な評価は特に重要です。主観による評価では、社員は行動することをためらうようになり、思うようなキャリア形成が実現できなくなってしまいます。キャリアコンピテンシーを取り入れる理由をしっかり認識し、適切な評価を行いましょう。
長期的な運用を目指す
社員や企業の成長を目的にキャリアコンピテンシーを取り入れたとしても、すぐに成果が出ることを期待してはいけません。長期的な視点で運用を行うことが大切です。半期・1年を1サイクルとし、節目ごとにデータを蓄積・分析していきましょう。その結果をもとに、人材採用や人材配置、評価などの施策に落とし込むことが大切です。キャリアコンピテンシーの効果を最大限に発揮するには時間が必要でしょう。
目的を見失わない
人事施策に活用するためにキャリアコンピテンシーを取り入れたものの、思うように成果が出ないケースがあります。そのような場合、目的が「キャリアコンピテンシーを取り入れること」にすり替わってしまっている可能性が考えられます。先にも取り上げたように、取り入れたあとも、効果測定を行ったり、場合によっては目標や評価項目を変更したり、適宜アップデートを行わなければなりません。キャリアコンピテンシーを取り入れる目的は、社員の自発的な行動や意識の変革による自己成長、自社の生産性向上です。運用を進めながらも、目的を見失わないように注意しましょう。
キャリアコンピテンシーを社員に身につけてもらうことはできる?
キャリアコンピテンシーは、もともと誰にでも備わっているものと考えられています。個人差はありますが、重要なのはキャリアコンピテンシーを発揮できるか否かでしょう。ポイントは、従業員が自分のキャリアについてどれほど意識しているかです。
たとえば、キャリアについては特に何も考えず、目的もなく数多くの資格を保有しているビジネスパーソンもいるかもしれません。そのような従業員は、キャリアコンピテンシーを発揮しているとはいえないでしょう。
一方で、特に資格を持っていなくても自身のスキルや才能を自覚していたり、働くことの意味を理解し、将来の展望を明確に思い描いていたりする従業員は、身につけたキャリアコンピテンシーを発揮できているといえます。
自社の従業員にキャリアコンピテンシーを身につけてもらいたいと考えるのであれば、上司や人事担当者の振る舞い方が重要です。働くことの意味や成果を出すことの大切さなど、キャリアや仕事の向き合い方を伝えるといいでしょう。
先にご紹介したキャリアコンピテンシーを構成する6要素(動機・資質・人脈・自己分析・探求・キャリアコントロール)を念頭に、学びのある職場環境を築くなど「自分のキャリアは自分で形成するものである」と伝えることを検討してみてはいかがでしょうか。
キャリアコンピテンシーを促進する心理的要因
キャリアコンピテンシーを促す心理的要因として「キャリア・アダプタビリティ」という概念があります。以下の4つの「C」に関する行動特性や能力を育める人は「キャリア・アプタビリティが高い人」であり、キャリアコンピテンシーを促進しやすい人といえます。
Concern(関心) | 「自分はどうなりたいのか」というキャリアへの関心を持つ |
---|---|
Control(統制) | 自分の行動に責任を持ち、みずからコントロールする |
Curiosity(好奇心) | 新しい機会を模索するとともに、さまざまな選択肢を検討する |
Confidence(自信) | 仕事を効率的に遂行し、スキルを身につけて発揮する。困難なことでも果敢に挑戦できる |
キャリア・アダプタビリティを高め、キャリアコンピテンシーを促進することで、自社が求める優秀な人材へと成長していくはずです。
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まとめ
自社の社員の自発的な成長や企業の生産性向上が期待できるとして、多くの企業がキャリアコンピテンシーに注目しています。しかし、自社で取り入れる場合は、運用までの準備に時間や手間がかかるため、長期的な視点を持つ必要があります。さらに、取り入れたあともPDCAを繰り返し、時代に合わせたアップデートを行わなければならず、人事担当者の労力は増えてしまいます。
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