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人事評価研修とは|なぜ必要? 目的や学べること、実際の評価への活用ポイントを解説
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「人事評価研修」とは、評価者が人事評価制度を正確に理解し、効果的な評価やフィードバックを行えるようにするためのプログラムです。近年、人事評価研修を実施している企業は増加傾向にあり、7割を超えているという報告もあります。
一方で、人事評価研修で学んだことを実際の評価へ活かせていなかったり、そもそも研修の必要性が浸透していなかったり、思うような効果を得られていない企業もあるようです。
そこで当記事では、人事評価研修の意味や必要性から実施する目的、学べる内容などを網羅的に解説します。実際の評価へ活かすポイントや研修の実施方法も紹介していますので、評価の公正性や人材育成の視点を深めるためにお役立てください。
目次(タップして開閉)
人事評価研修とは?
人事評価研修とは、評価を行う側の社員が人事評価制度を正確に理解し、公平な評価を目指すトレーニングです。大きな目的は評価者が評価知識を深め、実践的なスキルを磨くことといえるでしょう。勤続年数にかかわらず、評価に関与するすべての社員が対象です。
人事評価研修は「評価者研修」「考課者研修」と呼ばれることもあります。
人事評価研修が必要とされる背景
組織や企業の成長のためには、人材の確保と育成が欠かせません。その取り組みの中心となるのが人事評価制度です。
人事評価制度の内容は、経営方針はもちろんのこと、社員の働き方や仕事に対する価値観に左右されます。評価を行う者も評価される被評価者も、変化に応じて制度の内容を理解しなければなりません。
評価者が人事評価の真の目的を理解していないと、公平な評価が実施されず、賃金やポジションなど報酬制度の運用に比重を置いた評価をしてしまうでしょう。
日本の中小企業は、実績のある社員を昇進させて評価を任せる傾向にあるといわれています。しかし「仕事の実績を上げる」能力と「部下を的確に評価・指導する」能力は異なります。
このギャップを埋めるために、人事評価研修が必要とされているのでしょう。
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人事評価研修の実施状況
産労総合研究所が実施した2016年度の調査では、人事評価研修を行っている企業の割合は71.4%と報告されました。人事評価研修は多くの企業で取り組まれており、評価者のスキルや知識の向上に対するニーズが高いことがわかります。
一方で被評価者向けの研修を実施している企業は、22.6%にとどまっています。研修の内容は「評価の仕組みへの理解」や「どの行動が評価対象となるか」などの理解が中心です。
今後、被評価者についても評価制度への意識やモチベーションを高めるための取り組みが必要とされるかもしれません。
参考:『2016年 評価制度の運用に関する調査』産労総合研究所
人事評価研修を実施する目的
人事評価研修には、評価者のスキルアップや評価制度への理解のほかにも、さまざまな目的があります。人事評価研修の主な目的を4つご紹介します。
・評価能力の向上 ・役割の正しい認識 ・評価制度への理解 ・フィードバックスキルの習得 |
評価能力の向上
まず第一に人事評価研修には、評価者の「評価能力の向上」という目的があります。
評価者は被評価者の業績や能力を適切に判断しなければなりません。評価結果は、将来の育成や配置を考える材料になるためです。
研修を通じて評価者は、被評価者の強みや成長の可能性を的確に捉え、公平・公正な評価を実施し、被評価者のポテンシャルを最大限に引き出すための方法を学びます。
役割の正しい認識
人事評価研修の目的には、評価者に役割を再認識してもらうというものがあります。
評価者はただ単に評価を下すだけでなく、部下の成長やキャリアをサポートし、組織の業績向上に貢献する役割を担っています。役割を果たすには、企業や組織の経営理念や戦略、必要とする人材像、求める成果などを正しく理解しなければなりません。
評価研修は、評価者のスキルアップだけでなく、部下や組織全体の成長をサポートするという意識を育てることもできます。役割や責任の重要性を認識するきっかけとなるでしょう。
評価制度への理解
人事評価研修には、評価制度や評価方法など運用の基本を理解する目的もあります。企業や組織は独自の評価制度を持っており、適切に運用されることで、組織の健全な成長につながります。
評価者が評価や処遇の基本を学ぶと、制度や方法の背景や目的、正しい運用方法を深く理解できるとともに、評価業務に活かせるでしょう。
フィードバックスキルの習得
フィードバックは、人事評価のプロセスにおいてとても重要な役割を果たします。評価者は、評価の結果を被評価者に的確に伝え、その結果をもとにした成長の指針を示さなければなりません。
研修を通じてフィードバックの技術やコミュニケーションスキルを習得することも、人事評価研修の目的の一つです。適切なフィードバックは被評価者のモチベーションを高め、継続的な成長を促せるでしょう。
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人事評価研修の主な対象者
人事評価研修は、勤続年数にかかわらず、評価に関与するすべての社員が対象です。具体的には次のような人が研修を受ける対象となります。
・管理職 ・人事担当者 ・経営層 ・被評価者 |
管理職
管理職は部下の業績や行動を直接評価する主要な立場にあるため、人事評価研修の対象です。ただし、管理職の経験値によって研修の内容は異なります。
管理職の経験が浅い人に対しては、人事評価制度への理解やフィードバックの方法など、総合的な内容を教えます。
一方、管理職経験が豊富な人に対しては、より具体的な実例や評価者同士の認識の共有など応用的な学習内容を実施します。経験値に関係なく研修を受けることで、公平かつ客観的な評価のスキルや方法を身につけられるでしょう。
さらに管理職は、部下のキャリアの成長やモチベーション向上をサポートする役割も担っています。評価結果のフィードバック方法やコーチングの技術を高められると、組織の生産性や従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
人事担当者
人事担当者は評価制度の運用や実施に関与する主要な役割を果たします。
研修を受けることで、評価制度の意義や適切な運用方法、制度の改善ポイントを理解でき、組織内での周知や制度改善を行う能力の向上を目指せます。
また人事担当者は、制度の改定や更新の提案、実施のリーダーシップを発揮することも期待されており、VUCAの時代に適した最新の知識やスキルの習得が求められるでしょう。
経営層
経営層は、組織の方針や戦略を決定する最上位に位置する存在です。研修を受けることで、人事評価制度の意義や組織における役割を深く理解できます。
研修による理解をもとに、人事担当者と協力しながら、組織の方針や戦略に沿った評価制度の設計や修正が行えるでしょう。
また経営者は、評価制度が組織の持続的な成長や競争力に与える影響を理解し、ほかの役職者やステークホルダーに伝える役割も担っています。
被評価者
被評価者も、人事評価研修の対象に含まれます。研修を通して評価制度や評価の仕組みを理解する必要があるためです。
具体的には、自身の業績や行動が「どのように評価されるか」そして「どのような行動や成果が期待されているのか」などを学習します。研修受講の効果があらわれた従業員は、自身の成長や組織の業績向上に向けて効率的に行動するようになるはずです。
被評価者向けの研修を実施している企業は、まだ2割しかないという調査結果もあるため、先んじて導入して人材育成を進めてもいいでしょう。
人事評価研修が必要な企業の特徴
人事評価制度を適切に運用するためにも、人事評価研修は必要とされています。特に次の特徴に当てはまる企業や組織は研修を企画してみてもいいでしょう。
・人事評価制度が機能していない ・評価者が人事評価制度を正しく理解していない ・人事評価が育成に活かされていない ・人材の流動性が高い |
人事評価制度が機能していない
人事評価制度が適切に機能していない場合、評価者のスキル不足が一因に挙げられます。
評価者が十分にトレーニングされておらず、評価基準や方法に対する理解が不十分だと、一貫性を欠いた評価結果となり、不公平と感じる従業員もあらわれるかもしれません。
評価者のスキル不足は、人材の成長の機会を奪い、モチベーション低下を招く恐れがあります。結果として組織全体のパフォーマンス低下につながるでしょう。
また、時代に合っていない人事評価制度は望ましくありません。人事評価研修を実施し、働く人の価値観や経営戦略など変化に応じた評価制度に適応していくことも大切です。
評価者が人事評価制度を正しく理解していない
評価者が、運用方法や背景にある目的を正しく理解していない企業では、評価が主観的に行われている可能性があります。評価者自身が制度に対する不信感を持っており、その結果、部下の成長や組織の目的達成につながっていないケースもあります。
このような企業は人事評価研修を実施し、あらためて自社の人事評価制度を正しく理解してもらう必要があるでしょう。
人事評価が育成に活かされていない
人事評価を単なる「評価」の手段としてしか利用していない企業は、評価を育成やスキルアップのツールとして活用する機会を逃しているかもしれません。
本来であれば、評価結果を具体的にフィードバックをすることで、従業員の成長やスキルアップを促進できます。しかし、このチャンスを最大限に活かしきれていない企業は、スキルアップの機会を失い、従業員エンゲージメントが低下してしまう可能性があります。
人事評価研修を実施し、評価者が人事評価制度にのっとって部下を適切に指導・教育できているかを見極めることが必要です。
人材の流動性が高い
人材が頻繁に入れ替わる離職率が高い企業は、従業員のモチベーションやコミットメントが低下している可能性があり、評価研修が有効に働く場合があります。適切な評価とフィードバックが、モチベーションや組織への所属意識を高めるポイントとなるためです。
人事評価研修を実施することで、評価者が従業員の能力や貢献を的確に評価し、建設的なフィードバックができると、離職リスクを減らせるかもしれません。
4つの特徴のほか、成長が著しく新しい戦略や方針が求められる企業も、評価研修が必要です。評価者には、新戦略を実現するための評価方法や視点を習得してもらいます。
人事評価研修の内容・学べること
人事評価研修の必要性は理解できたものの、具体的にはどのような内容にすればいいか担当者は悩んでしまうかもしれません。
効果的な研修にするには、次のような学習内容を盛り込むといいでしょう。
・人事評価の重要性や基本的な知識 ・目標の立て方 ・公平な評価の方法 ・評価面談の進め方 ・目的達成のための支援の仕方 |
人事評価の重要性や基本的な知識
人事評価の研修内容1つめは、重要性や基本的な知識が学べるものです。
人事評価制度は、従業員のパフォーマンス管理や組織の業績向上に不可欠です。基礎知識として、評価の目的や役割、評価基準などを習得することで、公平な評価判断につながります。評価と事業の成長の関係も理解してもらいましょう。
目標の立て方
人事評価の研修内容2つめは、目標の立て方です。人事評価研修では、部下のパフォーマンスを向上させるための具体的な目標設定のスキルを習得できます。
・業績評価のポイントや注意点 ・定量・定性目標など明確で達成可能な目標設定の方法 |
公平な評価の方法
人事評価の研修内容3つめは、公平な評価の方法です。
研修を通して、偏見や主観を排除し、具体的な実績や行動に基づいた評価を行うための技術や考え方を身につけます。
評価面談の進め方
人事評価の研修内容4つめは、評価面談の進め方です。
・評価結果を効果的に伝える方法 ・対話の流れの作り方 ・双方向のコミュニケーションを促進するための質問の仕方 ・難しいフィードバックを伝える際に配慮すること |
目的達成のための支援の仕方
人事評価の研修内容5つめは、評価面談の進め方です。評価を通して部下の成長を支援する方法を学びます。
・研修や教育の提供方法 ・メンタリングやコーチングの技法 |
部下が目標を達成するための具体的な支援策を身につけられるでしょう。
人事評価研修の実施方法
人事評価研修の実施方法は多岐にわたり、主な実施方法を4つご紹介します。自社のニーズや参加者の特性などに応じて適切に組み合わせることで、より効果的な研修を企画できるでしょう。
・講義形式 ・ワークショップ ・ロールプレイ ・eラーニング |
講義形式
人事評価研修の実施方法1つめは、トレーナーや講師が中心となって、参加者に知識や技術を伝える講義形式です。基礎的な知識の提供や理論の解説に向いています。
一般的には参加者が会議室などに集まり、スライドや動画などの教材を使用して行われます。
1か所に集まるのが難しい場合はオンラインツールなどを活用し、どこからでも研修を受けられるようにするとよいでしょう。
ワークショップ
人事評価研修の実施方法2つめは、参加者がアクティブに参加し、グループワークやディスカッションを行うワークショップです。具体的なケーススタディを通じて、実践的なスキルを身につけられます。
ロールプレイ
人事評価研修の実施方法3つめは、ロールプレイです。
実際の評価面談やフィードバックを想定して、参加者に役割を与えて模擬練習をする方法です。具体的なシーンを想定し、コミュニケーションスキルや被評価者と向き合う態度を磨く方法として適しています。
eラーニング
人事評価研修の実施方法4つめは、オンライン上で学習モジュールを活用するeラーニングです。
自分のペースで学習を進められるeラーニングは、対象者が一度に集まれない場合など参加者の都合を考慮する際に有効といえるでしょう。
人事評価研修を実施している企業・団体
自社で人事評価研修を実施するのが難しい場合、外部団体が主催する研修に参加するのも一つの方法です。さまざまな企業や団体が人事評価研修を提供しており、それぞれの特色や強みを活かしたプログラムが組まれています。
人事評価研修を企画して実施している企業や団体は、主に次の4つです。
・社労士事務所 ・コンサルティング会社 ・地方自治体 ・一般社団法人 |
社労士事務所
社労士事務所は、人事と労務管理の専門家として知識を豊富に持ち、人事制度の構築やコンサルティングを行っている場合があります。
そのため人事制度のあり方など基礎的な内容から、法的な背景や実務経験に基づくケーススタディを通じて律を遵守した評価の進め方まで幅広く学べるでしょう。
ただし労務管理をメインで扱う事務所もあるため、委託する場合は得意分野をよく見極めてから選定する必要があります。
コンサルティング会社
人事系のコンサルティング会社は、企業と取り引き経験があり、業界や規模を問わず多岐にわたるノウハウを持っています。
行動経済学などに基づいた課題設定や、最新の人事評価トレンド、成功事例、失敗事例などをもとに、実践的な研修が特徴です。
地方自治体
公務員や地域企業を対象として人事評価研修を実施している地方自治体もあります。公共部門独特の人事評価制度や、地域の産業特性を踏まえた内容が企画されていることが多いようです。
一般社団法人
人事評価研修の講師を企業へ派遣している一般社団法人もあります。外部から研修講師を派遣してもらうと、自社の都合でスケジュールを調整しやすく便利です。
部署や階層別の研修や特定の内容に特化した研修など内容はさまざまで、参加者が多い企業やロールプレイを重点的に行いたい企業に向いているでしょう。
人事評価研修を実際の評価に活用するポイント
人事評価研修は実施したら終わりではありません。学び習得した知識や経験、スキルを実際の評価に活かすことで、はじめて研修を実施した意味が生まれます。
最後に人事評価研修を評価に活かすポイントを3つご紹介します。
・評価フィードバックをする ・人事評価基準を見直す ・公正な評価ができる仕組みを構築する |
評価フィードバックをする
研修で学んだことを実際の評価に活かすためには、評価後に必ずフィードバックを行うようにします。
1on1ミーティングなどを実施し、被評価者の行動や業績を明確に示しつつ、その背後にある原因や状況を考慮してアドバイスを伝えましょう。具体的な事例をもとにしたフィードバックは、受け手にとって理解しやすく、改善の方向性を明確にする助けとなります。
また、上司と部下の信頼関係が深まり、風通しのよいチーム構成にもつながるでしょう。
人事評価基準を見直す
研修後は人事評価基準の見直しも検討しましょう。
人事評価研修を受けた人は、評価の基準や方法など新しい知見や考え方を習得できているはずです。
企業の評価制度を常に最適化し、環境や組織のニーズの変化に対応するために、学んだことを活かしながら、必要であれば既存の基準を見直し、最新の知識や方法に基づいて更新するといいでしょう。
従業員からのフィードバックや意見も取り入れると、より実効性の高い評価基準を確立できるでしょう。
公正な評価ができる仕組みを構築する
人事評価研修を受講した人は、評価の公正性が業績向上や社員のモチベーションにどれほど重要であるかを理解するようになるでしょう。
公正な評価を下すための仕組みを構築することは、企業の成長と持続的な成功のための鍵といえます。明確な評価基準を設定し、評価者がそれに従うことをルール化しましょう。
また、評価の偏りや主観的な判断を排除するために、複数の評価者からのフィードバックを組み合わせる360度評価を取り入れる方法もあります。
さらに定期的に評価者間でミーティングを実施し、評価の一貫性を確保することも大切です。これにより、評価者間の評価のばらつきを最小限に抑え、公正で透明な評価を実現できるでしょう。
まとめ
人事評価研修は、人事評価制度に対する評価者の正確な理解や公正な評価スキルを養うために重要なトレーニングです。研修を通じて、評価者は人事評価制度の核心を深く理解し、公正かつ公平な評価を効果的に行う技術を身につけられます。
特に人事評価制度への理解が浅い企業や、評価に基づいた部下の育成が不十分な組織には必須のプログラムだといえるでしょう。研修の方法は、自社実施や外部委託など複数の手段があり、自社のニーズに合わせた選択をおすすめします。
重要なのは評価の正確性や評価結果をもとにした育成方法、そして組織全体の成長を実現するための戦略を研修を通して獲得することです。
人事評価を通じて、従業員と組織の成長を実現するため、質の高い研修の実施を心掛けましょう。
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