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ピープルアナリティクスの定義とは?組織の人材データ活用法を解説
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人材データを分析してマネジメントなどに役立てるピープルアナリティクス。
GoogleやYahooなどが取り組んでいるため、「ピープルアナリティクスは大企業が導入するもの」と感じている方もいるかもしれません。じつは中小企業にもメリットは大きく、導入する効果は高いといえます。
そこで当記事では、ピープルアナリティクスの活用方法をはじめ、開始方法、注意点、企業実例までご紹介します。
ピープルアナリティクスの導入を検討する場合には、ぜひお役立てください。
目次(タップして開閉)
ピープルアナリティクスとは
ここではピープルアナリティクスの定義について解説します。
ピープルアナリティクスの定義
ピープルアナリティクスは、従業員の属性や特性といったデータを活用し、組織課題を解決に導く分析手法です。
直感や勘とは異なり、客観的なデータから解決方法を見出すことから、論理的な決断をしやすくなるとされています。そのため、戦略人事の推進にあたって、しばしば取り入れられます。
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また勘に頼らずに、ピープルアナリティクスなどデータをもとに課題を解決する人事プロセスをデータドリブン人事ともいいます。
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ピープルアナリティクスの重要性
従来の人事では担当者のKKD(経験、勘、度胸)に頼る傾向にありました。
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たとえば面接だと、しばしば面接官が直観で判断・採用してしまうこともあるため、ミスマッチが起こりがちです。また「人事評価」や「昇給」の決断をする際に、評価者によってばらつきがあり、、従業員から納得が得られないこともありました。
ピープルアナリティクスは、客観的な要素に基づいて判断します。そのため、人事にまつわる意思決定の公平性や透明性を保つのに役立ちます。
しかし、実際に「ピープルアナリティクス」を活用できている企業は多くありません。
人材会社大手のパーソル研究所によると、41%の企業が人材データを分析できているとわかりました。しかし、そのうち16.9%の企業は、意思決定にまで活用できていないようです。
参照:『パーソル総合研究所「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」』
ピープルアナリティクスのメリット
ピープルアナリティクスの実施は、企業や従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。
企業にとってのメリット
企業にとってのメリットは、以下の通りです。
離職率が低下する
ピープルアナリティクスのメリットは、離職率を低下させる可能性があることです。
ピープルアナリティクスは、データに基づき、客観的な判断をします。データに基づいた公平な結果は、従業員から納得感を得られるため、企業への信頼度や愛社精神が高まりやすくなります。それによってモチベーションやエンゲージメントの向上にもつながり、離職率の低下にも大きく影響するでしょう。
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業務効率がアップする
ピープルアナリティクスの導入によって、これまで勘や経験に頼っていた人事業務でデータを活用すると業務効率がアップします。属人的でない客観的なデータをもとに、担当者が変更になっても引き継ぎがスムーズです。
また、個人の主観で無駄な議論をすることもないです。
従業員にとってのメリット
従業員にとってのメリットは、以下の通りです。
意思決定を受け入れやすくなる
ピープルアナリティクスによって行われた採用や人事評価の結果は、従業員も受け入れやすいでしょう。
従来の担当者のKKD(経験、勘、度胸)に左右される判断は、担当者によって偏りがあり、プロセスも不透明です。、そのような人事戦略や人事施策は、従業員としては受け入れにくいものでしょう。
働きやすい職場環境が整う
ピープルアナリティクスの導入によって、従業員にとって働きやすい環境を整えることができます。
ピープルアナリティクスでは組織課題を明確にし、科学的にその課題を解決できる可能性があります。それによって職場環境の改善も期待できるでしょう。
意思疎通がスムーズになる
ピープルアナリティクスを活用すると、上司が変わってもスムーズに意思疎通できるでしょう。従来は、部署異動などで上司が変わるたびに、一から関係性を築く必要がありました。データをもとにしたマネジメントで、円滑に仕事が進められるでしょう。
ピープルアナリティクスの活用法
人事領域において、ピープルアナリティクスが活躍する場面について、代表的な6つの活用法をご紹介します。
従業員のタレントマネジメント
タレントマネジメントは、従業員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらい、経営目標の達成を目指すマネジメント手法です。その成功には、従業員(=タレント)のスキルや特性などの情報を集約して管理・分析し、採用や育成に活用していく必要があります。
ピープルアナリティクスを活用すると、科学的データに基づいて客観的な判断ができるため、タレントマネジメントを成功に導く可能性が高まります。
活躍できる人材の採用
ピープルアナリティクスを活用すると、過去の選考データから、入社後に活躍できる人材や活躍できるポジションを導き出すことができるでしょう。分析結果をもとにすることで、面接官の主観や経験に左右されにくくなります。
従来の採用では、学歴、職歴、面接での印象などから採用するケースもありました。面接官とその場で気が合った候補者を採用することもあったでしょう。
しかし、そのような採用方法は入社後のミスマッチのもとです。早期離職につながったり、在職者のモチベーションを下げてしまう恐れもあります。
配属先や育成方針の決定
従業員の配属先や育成方針の決定をする際にも、ピープルアナリティクスは活用できます。
たとえば特定の部署で不足している人材タイプや、従業員一人ひとりの適性を見極めるためにデータを活用することによって、適材適所の人材配置が行えるでしょう。
さらに社内のハイパフォーマーの行動特性(コンピテンシー)を割り出すことによって、育成方針が立てやすくなります。
公平な人事評価
人事評価でピープルアナリティクスを活用すると、より公平で納得感が得られやすい評価を出しやすくなります。
前述のように、複数名で運用しても客観的な判断ができるからです。
離職防止策の立案
ピープルアナリティクスの活用によって、離職の兆候がある社員を早期に発見し、必要な施策を打つことができます。過去の離職者データを蓄積し、共通点などから兆候を捉えましょう。
離職防止への取り組みは、企業の急務だといえます。早期に対処することで、優秀な人材の確保につながるでしょう。
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健康経営やウェルビーイング経営
健康経営やウェルビーイング経営の推進でも、ピープルアナリティクスは役立ちます。エンゲージメントサーベイなどの集計・分析や従業員の心身の健康状態の管理などで、経営施策の効果検証を行い、改善していくという流れです。
ピープルアナリティクスで収集すべきデータ
ピープルアナリティクスではどのようなデータを収集し、意思決定に活かせるのでしょうか。
人材データ
年齢、住所、部署、給与、スキルなどが該当し、最も基本となるデータです。ほかのデータと組み合わせると、活躍予測や離職防止などに役立てられます。
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デジタルデータ
デジタルデータは、社内におけるパソコンの利用状況、インターネットの閲覧履歴、電話の通話履歴などが該当します。デジタルデータは、メンバー内の業務状況の把握や効率化に役立てられます。
しかし、プライバシーの侵害にあたることもあるため、取り扱いには細心の注意が必要です。
勤務データ
勤務データは、勤務時間、休職率、有給休暇の取得状況などが該当します。
デジタルデータ、エンゲージメントサーベイ、ストレスチェックなどと組み合わせると、離職の兆候などを捉えることもできます。
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オフィスデータ
オフィスデータは、社内の設備に関する利用状況を指します。具体的には会議室や休憩室の利用状況、エレベーターの稼働率、複合機の使用状況などです。
一般的にオフィスデータは、労働環境を改善したいときに活用されます。
行動データ
行動データは、勤務中の従業員の行動に関するデータです。勤怠状況をはじめ、カレンダー内のスケジュールデータやメールの送受信数なども該当します。
人材データなどと組み合わせると、各自のパフォーマンスや離職の兆候を割り出せる可能性があります。実証実験を行う際には、体にウェアラブル端末を装着し、詳細な行動データを取得する場合もあります。
ピープルアナリティクスの企業事例
ここでは、ピープルアナリティクスを世間に広めた2社の事例をご紹介します。
Google(グーグル)
Googleでは、ピープルアナリティクスを採用業務、社員教育などに活かしています。同社はユニークな面接が特徴であったため、過去には以下のような面接事例があります。
・「ゾウを冷蔵庫に入れる方法」を質問
・エンジニア採用で、ホワイトボード上でコードで回答させる
しかしピープルアナリティクスを実施した結果、このような対応が「入社後に活躍する人材の採用」と無関係な非効率な方法だと判明しました。
そこで採用を改め、さまざまなデータに基づき「効率的な面接方法」を実施し、採用の効率化につなげています。
さらにチームの生産性を高めるには「心理的安全性」が重要な点も導き出し、社員教育の場でも心理的安全性を重視しています。その結果、離職率が改善したそうです。
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Yahoo(ヤフー)
Yahooでは、2017年4月に「ピープルアナリティクスラボ」を発足し、ピープルアナリティクスに積極的に取り組んでいます。
Yahooがピープルアナリティクスで重視する内容は、以下の通りです。
・従業員の才能と情熱を受け止めて解き放つ
・組織の成長をサポートする
またピープルアナリティクス開始前のデータ収集の段階で、課題も判明しました。その課題とは、以下の通りです。
ばらばら病 | 他部署の「データの所在」がわからない状態 |
---|---|
ぐちゃぐちゃ病 | 記載方法が一致せず、データの整理が難しい状態 |
まちまち病 | データに規則性がなく、せっかくのデータを活かしにくい状態 |
データ収集の課題を克服したのちに、適切なデータを使用したうえでピープルアナリティクスを実施し、退職率の減少や公平な評価に活かすことに成功したそうです。
ピープルアナリティクスの実践法
ピープルアナリティクスの実践法は2種類あります。自社の課題がわかっている場合とわかっていない場合です。
ケース1:自社の課題がわかっている場合
取り組むべき自社の課題がわかっている場合には、以下のステップで進めます。
1.課題を把握 2.仮説を設定 3.データの収集 4.施策の実施 5.実施した結果への振り返り |
あらかじめ課題がわかっている場合には、扱う課題を決めたうえで仮説を設定します。仮説の設定では、課題に対する要因を予想し、収集すべきデータを絞り込みましょう。
必要なデータを収集したあとは、施策を実施します。実施後には、結果をもとに振り返りを行いましょう。課題が解決しない場合には、別の仮説や施策を立て、改めて施策を実施します。
ケース2:自社の課題がわからない場合
取り組むべき課題が、現状わかっていない場合には、以下のステップで進めます。
1.データの収集 2.データ分析 3.仮説の設定 4.施策の実施 5.実施した結果への振り返り |
まずはさまざまなデータを収集し、分析しましょう。分析結果を見ることで、課題が見えてくることがあります。課題がわかったあとには、解決に導くための仮説を設定し、施策を実行しましょう。実行した結果、課題が解決しない場合には、別の仮説や施策を立てたうえで、新たな施策を実施します。
ピープルアナリティクスの課題・注意点
ピープルアナリティクスはメリットも多いものの、課題や注意点が存在します。
各種データの収集
ピープルアナリティクスでは、データの収集が欠かせません。しかし、そもそものデータが手元にないこともあるでしょう。
給与や部署異動などのデータは存在するものの、従業員のモチベーションに関するデータや、活躍状況のデータが存在しない企業は少なくありません。データがそろっていない企業では、収集データ項目を精査したうえで、収集するところから始めます。
一方、各種データはあるものの、バラバラになっており、収集が困難な事例もあります。バラバラになっているデータは一元管理し、各データ項目を同一の形式にそろえる必要があります。
人事業務の複雑化
ピープルアナリティクスを実施すると、人事担当者の負担が増えます。具体的にはデータの収集や改善施策の実施、進捗状況の結果報告などです。従来のオペレーション人事より複雑化していくので、それらに対応する時間とスキルの向上が求められます。
専用ツールの導入も検討するといいでしょう。
人事アナリストの確保
前述のように、ピープルアナリティクスによって、人事業務は複雑化・多様化します。それに伴って、各種データの分析に長けた人材が必要です。つまり、ピープルアナリティクスを主導できる「人事アナリスト」の確保が不可欠です。
人事アナリストの母数は少なく、貴重な人材です。採用は難しく、自社で人事アナリストを育てるという選択肢もあります。
個人情報の保護
ピープルアナリティクスで収集するデータは、個人のプライバシーに触れるケースもあるため、個人情報の保護に配慮しなければいけません。取り扱いには細心の注意を払う必要があります。
個人情報を正しく扱うには、以下のポイントを意識します。
・必要なデータのみを収集する
・データの公開範囲を慎重に検討する
・従業員にデータ収集の目的や内容を説明する
一般社団法人ピープルアナリティクス&HR テクノロジー協会が発表している「人事データ利活用原則」なども参考になるでしょう。
参照:『人事データ利活用原則』
ピープルアナリティクス、何から始める?
客観的なデータに基づいて、従業員一人ひとりの適性に応じて人材マネジメントができるピープルアナリティクス。導入するにはデータの収集と蓄積が不可欠です。
タレントマネジメントシステム『スマカン』は、人事情報の一元管理と蓄積、分析をサポートいたします。サーベイやアンケート機能を使ったデータの集計、社員の離職兆候を捉えて離職率の改善などにもお役立ていただけます。
記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
2008年より、一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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