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ウェルビーイング指標とは|従業員の幸福度を向上させる施策も紹介
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近年、企業の経営者や人事担当者の間で、従業員の幸福度やエンゲージメント向上が重視されています。その一環として注目されているのが「ウェルビーイング指標」です。
しかし、この定義や具体的な活用方法を理解している方はまだ少ないかもしれません。
そこで当記事では、ウェルビーイング指標の概念や種類、従業員のウェルビーイング向上の施策について、詳しく解説します。
目次(タップして開閉)
ウェルビーイング指標とは
ウェルビーイング指標とは、ウェルビーイングを、数値など客観的な基準であらわしたものです。
本来、幸福や満足度は目に見えず、統一的な基準で測るのは難しい概念といえます。ウェルビーイングを指標化することで、現状の状態を可視化し、企業経営などに活かせるでしょう。
まず始めに、ウェルビーイングについておさらいしていきます。
ウェルビーイングとは
「ウェルビーイング(Well-being)」とは、直訳すると「よい状態にあること」を意味し、具体的には「幸福」や「満足」をあらわします。
しかし、この幸福や満足とは、単なる物質的な豊かさだけではありません。精神的な充足感や社会的なつながり、心の平穏など、人が安心して生きるために必要な要素をすべて含む概念です。
ウェルビーイングとウェルフェアの違い
よくウェルビーイングと比較される概念に「ウェルフェア」があります。
「ウェルフェア」は福祉を意味し、生活保障や社会保障といった、生存基盤の確保や困窮状態の救済を中心とした概念です。
一方の「ウェルビーイング」は、福祉だけにとどまらず、心身の健康や人間関係の良好さ、自己実現の機会など、より包括的な幸福感を追求するものです。
従業員のウェルビーイングが必要な理由
従業員のウェルビーイングが高まると、結果として業績向上につながることが多々あります。従業員のモチベーションが向上し、業務に対する創造性や生産性が増すためです。
また、ウェルビーイングが高い職場には、優秀な人材を惹きつけ、従業員の離職率を下げる効果も期待されています。
ウェルビーイング指標1:ギャラップ社が示す5つの構成要素
指標の1つめは、ウェルビーイングを以下の5つの構成要素に分解し、計測するものです。
・キャリアウェルビーイング ・ソーシャルウェルビーイング ・フィナンシャルウェルビーイング ・フィジカルウェルビーイング ・コミュニティウェルビーイング |
この5つの構成要素は「ストレングス・ファインダー」でも知られるアメリカの調査・コンサルティング企業ギャラップ社によって提唱されました。それぞれについて解説します。
キャリアウェルビーイング(Career Well-being)
キャリアウェルビーイングとは、毎日の仕事に意義を見つけて、やりがいを感じているかどうかを示す指標です。
「自分の仕事に情熱を持っているか」または「自分の強みを活かして働く機会があるか」によって評価します。
また、育児や趣味活動などのプライベートと仕事が両立できていることで得られる幸福感を測る指標としても用いられます。
ソーシャルウェルビーイング(Social Well-being)
ソーシャルセルビーイングとは、人間関係を持つことで豊かさを感じているかどうかを示す指標です。
友人や家族、同僚との関係を通じて自分が愛され、尊重されていると感じているかどうかによって評価します。
フィナンシャルウェルビーイング(Financial Well-being)
フィナンシャルウェルビーイングとは、自分の現在と将来の経済状況に対して安心感を持ちながら生活を維持し、経済的に順調で幸せな状態にあることを示す指標です。
現在の経済状況だけでなく、未来の目標に向けた準備も考慮に入れます。
フィジカルウェルビーイング(Physical Well-being)
フィジカルウェルビーイングとは、自分の健康状態と身体的エネルギーに満足しているかどうかを示す指標です。
健康的な生活習慣や予防的な対策のための適切な食事、運動、睡眠などを通じて、自分の身体を健康に保っているかを評価します。
コミュニティウェルビーイング(Community Well-being)
コミュニティウェルビーイングとは、地域社会に積極的に関与し、それを通じて充実感を感じているかどうかを示す指標です。
ボランティア活動や地域イベントへの参加など、社会への貢献とつながりによって評価します。
このギャラップ社の5要素は、あらゆる面で人々の幸福を理解するために重要なウェルビーイング指標といえます。
すべての要素がバランスよく満たされていると、個人の幸福度や生活の質の向上が見込めるでしょう。反対に5要素のうち、いずれかの要素が欠けていると、その人の生活の質や幸福感が低下してしまう可能性があります。
ウェルビーイング指標2:世界幸福度ランキング
ウェルビーイング指標の2つめは、世界幸福度ランキングです。
世界幸福度ランキングとは、国際連合(国連)の持続可能な開発ソリューションネットワークが、各国の「幸福度」を独自の基準で評価し、順位をつけたものです。
主に以下の6つの要素で総合的に評価し、ランクづけされています。
・1人当たりのGDP ・社会的支援 ・健康寿命 ・自由度 ・寛大さ ・腐敗の認識 |
それぞれについて解説します。
1人当たりのGDP
1人当たりのGDPとは、国の総生産(すべての製品とサービス)を国民の数で割った数値です。経済的な豊かさを客観的に数値であらわした指標といえます。
一般的に、1人当たりのGDPが高い国では、国民がより多くの財やサービスにアクセスできる状態にあると解釈できます。
社会的支援
社会的な支援とは、社会的なつながりや支援体制がどの程度整っているかを示す指標です。
人々が困難に陥ったときに頼れる友人や家族、または社会的な支援サービスがあると、ストレスや危機を乗り越えるのに役立つと考えられています。
健康寿命
健康寿命とは、平均的な期待寿命とは別に、人々が健康的に活動することができると予想される年数を指す指標です。
健康寿命が長いほど、長期間にわたって生活の質を維持できる可能性が高くなります。
自由度
自由度とは、人々が自分の生活の選択に対してどの程度自由を感じているかを示す指標です。
このウェルビーイング指標は、政治的自由や表現の自由、信仰の自由など、幅広い自由に関連しています。
寛大さ
寛大さとは、社会に対する寛大さをあらわし、慈善活動への寄付やボランティア活動への関与度などを示す指標です。
他人に対してどれだけ親切で、コミュニティに貢献しているかを示す一方で、対人関係の信頼度や社会的結束力を測る指標でもあります。
腐敗の認識
腐敗の認識とは、政府やビジネスにおける腐敗や不正行為が、人々にどれくらい存在すると認識されているかを示す指標です。腐敗の認識が高いと、社会の公正さや信頼性に対する信頼が低く、ウェルビーイングが高い状態とはいえません。
世界幸福度ランキングを決定するこれらの5つの要素は、ポジティブな側面からネガティブな側面まで多角的にウェルビーイングを捉えています。
世界幸福度ランキングは現在、政策立案者や経済学者、社会科学者などが、よりよい社会を形成するために戦略を立てるとき、参考情報として使われています。
世界的に見て幸福な国はどのような特性を持つのか、幸福でない国はどのような問題を抱えているのかを理解することで、ウェルビーイングの実現に向けて改善策を模索できるでしょう。
ウェルビーイング指標3:OECD「よりよい暮らし指標」
ウェルビーイング指標の4つめは、OECD(経済協力開発機構)が公表している「よりよい暮らし指標」です。
「よりよい暮らし指標」とは 、OECD加盟国の生活の質を測定するために設定された基準です。具体的には、以下の11要素から成り立っています。
・住宅 ・所得 ・雇用 ・社会的なつながり ・教育 ・環境 ・市民参画 ・健康 ・主観的幸福 ・安全 ・ワークライフバランス |
それぞれについて解説します。
住宅
人々がどの程度適切な住宅に住んでいるかを評価します。住宅の品質や住宅費の負担、部屋数などを計測する指標です。
所得
世帯の平均純所得と富の格差を評価します。家庭の経済的な安定性と機会の公平性を示す重要な指標といえます。
雇用
雇用率と長時間労働者の割合を評価します。人々が生計を立て、仕事を通じて自己実現を達成する能力までを測るウェルビーイング指標です。
社会的なつながり
人々が困難な状況に直面したときに、支援的な友人や親戚がいるかどうかを測定します。社会的な結束と支援体制を測る重要な指標といえるでしょう。
教育
高等教育を修了した成人の割合と学生の能力を考慮して評価します。教育は、生活の満足度や収入、雇用の機会などに大きな影響を及ぼす指標の一つです。
環境
大気質と水質を評価します。公衆衛生と生活の質などにも影響する指標です。
市民参画
民主主義の健全さを評価します。選挙に投票する人々の割合と政府への信頼によって、市民が自分たちで声をあげ、社会に影響を与える能力を指標化し、計測します。
健康
寿命と自己で判断する健康状態を評価します。健康であることは、直接的な幸福感と満足度に寄与し、個々の能力と全体の生産性向上にもつながるでしょう。
主観的幸福
人々が、自分の生活にどの程度満足しているかを直接的に自己評価します。
財産や社会的地位などの外部要因だけでなく、個人の感情や価値観、人間関係、健康状態などの内部要因も客観的に指標化し、総合的にウェルビーイングを測ります。
安全
人々が自分自身と他人を安全だと感じる程度を評価します。自己報告された安全感と客観的な犯罪率のデータなどで計測します。
ワークライフバランス
仕事と個人生活の時間のバランスを評価します。特に労働時間や余暇時間の割合を数値化し、指標として扱います。
OECDの「よりよい暮らし指標」は、生活の質向上に向けた具体的な目標を設定するための手掛かりになるでしょう。
ビジネス組織においても、この11要素を参考に、従業員のウェルビーイング向上に向けた施策を考えられるはずです。
ウェルビーイング指標4:ポジティブ心理学が示す5つの指標
ウェルビーイング指標の4つめは、ポジティブ心理学における「PERMAモデル」です。マーチン・セリグマン氏によって提唱され、人々が満足感や幸福感を感じるための基本的な5要素を頭文字をとって、まとめられた理論です。
具体的には、以下の5つの要素が挙げられます。
・ポジティブな感情(Positive emotion) ・エンゲージメント(Engagement) ・関係性(Relationship) ・意味(Meaning) ・達成(Accomplishment) |
それぞれについて解説します。
ポジティブな感情
幸せや喜び、愛、感謝、楽しみなど、人々が経験する前向きな心の動きを評価します。ポジティブな感情はストレスを軽減して創造性を高め、より健康な生活スタイルを促進するでしょう。
エンゲージメント
個人が仕事などに没頭し、自分の行動に完全に集中している状態を評価します。エンゲージメントが高いと、時間の経過が早く感じられたり、スキルを活かして成功しやすくなったりするでしょう。
関係性
友情や愛、親密性、共感、所属感などを評価します。人間は社会的な存在であり、他人との強く健康的な関係性を築くことは、ウェルビーイングを測る重要な基準といえます。
意味
人生に目的や方向性を持っているかを評価します。個人が自分の人生に何らかの目的や意味を見つけると、達成感や満足感を得られるでしょう。
達成
個人が目標を設定し、それを達成する過程を評価します。達成の経験は、自己効力感を高め、自尊心と自信の向上にもつながり、ウェルビーイングを促進するでしょう。
PERMAモデルの各指標は、人々が自身のウェルビーイングを向上させるためのアプローチにおいて必要な要素といえます。
すべての要素がすべての人に等しく適用されるわけではありませんが、一般的に各要素を強化することで、人々のウェルビーイング追求を助けると考えられています。
ウェルビーイング指標5:科学技術振興機構社会技術研究開発センターが提唱する3要素
ウェルビーイング指標の5つめは、科学技術振興機構社会技術研究開発センターが考える3つの要素です。
具体的には、以下の3つです。
・医学的ウェルビーイング ・快楽主義的ウェルビーイング ・持続的ウェルビーイング |
それぞれの項目について解説します。
医学的ウェルビーイング
個々の心身の機能が正常であるかを評価し、主に医学の範囲を測る指標です。
具体的には、一般的な健康診断やメンタルヘルスに関する質問紙などを用いて、個々の身体的および精神的な健康状態を計測し、ウェルビーイングを可視化します。
快楽主義的ウェルビーイング
現在の気分や感情の状態を中心に、快感や不快感、そのほかの一時的で主観的な感情状態を数値化して捉えます。
個々の表情や心拍数、ホルモンレベルなどの生理学的指標を通じて測定します。
持続的ウェルビーイング
個々が自身の潜在能力を最大限に発揮して、自己の生活に意味を見出し「いきいき」と生きている状態を捉える指標です。
過去にウェルビーイングといえば、快楽主義的な観点が中心でした。しかし、近年では持続的な成長を目指す観点からアプローチする方法が主流となっています。
持続的ウェルビーイングは、以前より包括的で長期的な視点から評価しようとする試みといえます。
人事が取り組めるウェルビーイング向上施策
ウェルビーイング指標を適切に計測し、明らかになった現状に基づいた施策を立案して実行することで、組織全体のウェルビーイングの向上を目指せます。
具体的な施策の例を5つご紹介します。
関連記事 ウェルビーイング経営の事例5選 |
ワークライフバランスの実現
多様な働き方を尊重し、従業員一人ひとりが自分らしく働ける環境を提供する施策です。
具体的には、子育てや介護という個人のライフイベントに配慮した働き方の選択肢を幅広く提供したり、従業員の健康に配慮して休息を取り入れたりする取り組みが挙げられるでしょう。
長期休暇や出産・育児支援などの制度を導入することも、ワークライフバランスを支える施策の一つといえます。
職場環境の改善
従業員がより効率的かつ快適に働ける環境を提供する施策です。
照明や温度、静音性などの物理的な環境を整えるだけでなく、プライバシーを保護しながらもコミュニケーションが取りやすい空間を設計することも含まれます。
リモートワークが一般化する昨今においては、オンラインでのコミュニケーションやデータ共有をスムーズに行えるIT環境の整備も重要です。
心身の健康のサポート
健康促進プログラムやストレスマネジメントを取り入れ、心の健康を支える施策です。
具体的には、定期的な健康診断の提供やストレスチェックの実施、心理カウンセラーや看護師など専門家による相談サービスの設置などが挙げられるでしょう。
成長と学習の支援
従業員のスキルや知識を向上させ、自己実現を支えるための施策です。
研修や教育、メンターシップ、コーチングなどを通じて、従業員が成長できる機会を提供します。
従業員が自身のキャリアパスをデザインできるようなカウンセリングや、書籍購入費用の補助など自律的な学習を支援する制度が重要です。
社内コミュニケーションの促進
従業員間のコミュニケーションを活性化させ、組織全体のエンゲージメントを高める施策です。
オープンなコミュニケーションを促す組織文化をつくったり、チームビルディング活動を通じてチーム間の絆を強化したりする取り組みが有効でしょう。社内の情報共有を効率化するツールの導入も一案です。
まとめ
当記事では、ウェルビーイング指標とともに、ウェルビーイング向上につながる取り組みをご紹介しました。
組織としてウェルビーイングを追求することは、すべての従業員が自分の能力を最大限に発揮し、よりよいパフォーマンスをするための基盤となり得ます。
従業員のウェルビーイングを向上できると、組織へのエンゲージメントも高まり、会社全体の成長と持続可能な成功が期待できるでしょう。
当記事の情報を参考にウェルビーイング向上施策に取り組み、組織の生産性向上を目指してみてはいかがでしょうか。
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記事監修
スマカン株式会社 代表取締役社長 唐沢雄三郎
一貫して現場に寄り添う人事システムの開発に注力している起業家。戦略人事情報・人材マネジメントシステム、マイナンバー管理システムをはじめ、近年はタレントマネジメントにまで専門領域を広げ、着実に実績を積み上げている。主力製品は公共機関など多くの団体・企業に支持され、その信頼と実績をもとに日本の人材課題の解決に貢献している。
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