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降格人事の注意点は? 伝え方や降格処分の内容、違法性について解説

降格人事の注意点は? 伝え方や降格処分の内容、違法性について解説

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組織の中で地位や役職が下がり、減給などにも影響を及ぼすのが降格人事です。降格人事が行われる背景は多種多様です。ただ場合によっては降格人事が不当だとして問題となることもあり、慎重に検討する必要があります。

社員に何らかの過失があるなどやむを得ないケースを含め、どのようなときに降格が実施されるのでしょうか。降格人事の種類や処分されるケース、注意点などを詳しく解説します。

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目次(タップして開閉)

    降格人事の定義

    降格人事とは、降格とほぼ同義です。会社など組織で現在就いている役職や地位から下げられることを降格といいます。降格における異動が降格人事となります。部長や主任などの役職から下位の役職へ配属され、場合によっては給与などの待遇も変わります。部長が課長、主任クラスに引き下げられるなどがわかりやすい例といえます。

    降格人事の種類

    降格人事は大まかに罰則や懲罰の意味が大きい「懲戒処分」と人事異動の結果行われる人事「降職」「降格」に分けられます。3つの降格人事の種類について詳しく見ていきましょう。

    人事降職、解任

    会社が労働契約に基づく権利として、社員の降格人事を実施するのが「人事降職、解任」と次の項目で紹介する「人事降格、降級」です。従来の役職やポストを解任し、下位の職位へと配置されることをいいます。

    部長の肩書きを解任され、課長に代わるのが人事降職です。一般的に給与などの待遇はそのままです。職務怠慢やスキルの不足などがあると判断された場合、人事異動の結果として行われます。

    人事降格、降級

    社員の能力に応じた人事評価である職能資格や給与等級の引き下げを行う降格人事が、「人事降格、降級」となります。社員それぞれのスキルや経験などによって賃金が決められているため、降格、降級により給与そのものが下がる結果となります。

    懲戒処分

    懲戒処分とは、就業規則違反や企業秩序違反行為を行う社員に対し、制裁の意味で降格を実施する降格人事です。会社が持つ懲戒権が行使される厳しい内容です。

    そのため、処分を行う際には慎重に検討する必要があります。社会通念を考慮したうえで処分に合理性があるかが認められたときにのみ実施されます。懲戒処分の内容は戒告から懲戒解雇まで7段階に分かれています。

    降格人事の理由となるケース

    降格人事は、人事的な側面、また処分的意味合いで行われます。実際に降格人事が行われるケースにはさまざまな条件や理由があります。降格人事が実施される具体的な内容は以下のような5つの事例です。

    社内規則への大きな違反行為があった

    降格人事の理由となるのは、就業規則など社内規への違反と見なされる問題行為、コンプライアンス違反などの問題行為が認められる場合です。次にご紹介するパワハラ、セクハラ事案も該当します。横領や社内備品の盗難といった犯罪行為はもちろん、繰り返される無断欠勤や遅刻なども降格人事の理由となる可能性があります。ただ、就業規則に根拠があるなど明確な違反行為と認められなければなりません。

    ハラスメントが認められる場合

    上司から部下への過剰な叱責など、被害を受けた側が著しい精神的・身体的苦痛を訴えるパワーハラスメント(パワハラ)も降格人事の理由となり得ます。客観的な裏づけ証拠があったり、何度も繰り返されたりする場合などは処分対象となる可能性が高くなります。セクシャルハラスメント(セクハラ)も同様です。

    配置転換によるもの

    成績不振など本人の問題ではなく、配置転換で結果的に降格人事となってしまう場合もあります。部署の異動や転勤・出向など個別の事情により、従来のポストから降格するケースです。

     能力不足や成績不振によるもの

    部内の成績が振るわない、生産性が低下しているなどの理由から降格人事が行われる場合も少なくありません。部下を束ね、チームをマネジメントする能力が不足していると判断されるとして、役職を解任されるケースは多々あります。

    能力不足による降格人事で検討すべきこと

    降格人事を行う前に、なぜ「能力不足」との判断に至ったのか考える必要があります。個人として優れた能力を持つ人材でも、配置によっては活躍できない可能性もあるからです。そのスキルを最大限にかつストレスなく活用できるためには、事業戦略や現場の意向、また本人の希望などを把握することも大切です。

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    降格処分の内容

    降格人事の処分の内容は、降格の理由によって異なります。就業規則に違反するような重大な問題が認められるケースでは懲戒処分での降格が実施されます。懲戒処分は戒告、けん責、減給処分、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇が規定されています。

    最も軽い降格人事の処分としては文書や口頭で厳重に注意される戒告、けん責です。場合によっては一定期間出社できない出勤停止や制裁として最も重い解雇まで、将来を戒める処分が定められています。懲戒処分としての降格は厳格な規定があるため、根拠が必要になるなどルールにのっとった判断が不可欠です。

    ただ、降格人事の中には会社側の事情による配置異動などにより、降職や降格などでも減給を伴わない職位の変更などもあり得ます。また正当な理由があれば、人事権を行使し、人事異動の一環としての降格処分を行うことも可能です。こちらのケースでは、該当する社員に不満が生じないよう、十分な説明を尽くす必要があるでしょう。不当な降格にならないよう、降格による減給の場合は、労働基準法により減給の上限も定められています。

    降格人事を実施するときの注意点

    どのような理由であれ、降格人事にはネガティブな印象が大きいのも事実です。社員にとって不満が残ったり、不利益を感じさせたりする結果につながりかねないためです。また人事権の濫用はあってはならないことです。根拠などの判断基準を明確とし、慎重に行われるべきものです。降格人事を実施する場合の注意点は次のとおりです。

    違法な降格人事とは

    降格人事がきっかけで該当する社員が退職したり、訴訟問題に発展したりするトラブルも考えられます。降格人事が違法と判断されないためには、根拠となる就業規則にのっとった処分である必要があります。またその根拠について、丁寧に説明をし、理解を求めることも大切です。

    成績不振を理由に、管理職から降格されて減給に至った事例では、降格と減給の関連について不満を感じた社員から訴訟を起こされた事例もあります。このケースでは当初は、就業規則に降格(等級)と給料が連動する旨が記載されていなかったのです。ところが改訂され降格による減給が追加され、降格人事が行われました。これは違法な降格人事だとの判断が下っています。当初から降格と減給について就業規則に明記しなかったことによるトラブルです。

    降格人事は職権濫用とみなされないよう注意が必要

    企業は社内で働く労働者に対し、採用や異動、昇格・昇進、降格または解雇などの待遇を決定する権利を持っています。この権限が人事権です。人事権を行使し、降格人事を行うこと事態は違法ではありません。

    一方で社会通念上許容できないと判断されるような公正さに欠ける人事は「職権濫用」であり、違法性があると見なされる可能性があります。なかでも減給に関する降格人事には注意が必要です。就業規則に明確な根拠が規定されているか、合理的な理由があるかなどが問われることになるからです。

    懲戒処分も場合によっては無効になる

    社員が明確なルール違反を行ったり、果たすべき義務を怠ったりした場合に制裁として行われるのが懲戒処分であり、降格人事の一種です。処分内容は減給や降格、最も重い処分である解雇までの7つの段階に分かれています。

    具体的な処分の内容が法律で決められているわけではないものの、法律にのっとったうえで(労働契約法第7条、第15条、労働基準法第89条第9項)降格人事を行う必要があります。減給については上限のルールもあり、懲戒処分を下すのには厳しい規程が定められているのです。

    処分の内容が就業規則に基づいていない、処分が重すぎる、社員本人に弁明の機会がなかったなどの理由から、懲戒処分が無効になるケースもあります。

    参照:『労働基準法 - e-Gov法令検索』

    降格人事の実施方法

    降格人事を実施する際は、まず事実関係の確認からスタートします。明確な事実となる具体的なデータや証拠があるのかどうかを確かめるのです。それによって降格人事が必要なのかどうかを判断します。あいまいな噂や状況証拠だけでは実施できるものではありません。

    次に、スキルや成績不振など人事面での降格なのか、重大な規則違反があっての懲戒処分などを見極めます。またポストのみの降格か、減給など待遇にも影響するのかも判断します。

    さらに該当社員に弁明や改善の機会を与え、一定期間保留することも大切です。従業員が反省しているかなどを含め慎重に判断した結果、それでも降格人事が妥当な場合に可否を決定します。

    降格人事の伝え方

    降格人事は理由があって行うものです。しかしそれは、会社側の事情であり、受け止める社員にとっては不満が残る結果になってしまうことも予測されます。やる気がそがれ、スキルを発揮できなくなったり、場合によっては退職したりといったリスクにもつながります。やむを得ない降格人事であることを、誠意を持って伝えなければなりません。人事担当者としては特に次の点に留意する必要があります。

    明確な降格理由を伝える

    降格人事の理由は社員にとって耳の痛い話でもあり、人事担当者としても伝えづらいかもしれません。あえて明確な降格理由を伝え、理解を得るよう心掛けます。

    文書で通知

    降格人事は社員にとっての一大事であり、今後のキャリア形成にも関わります。あらためて文書で正式に通知し、理解を求める必要があります。降格人事後のポジションや待遇などを記載し、その理由もテキストにして明らかにします。社員が納得できるよう内容の記載には配慮を忘れないようにしましょう。

    降格を伝える場所やタイミングをはかる

    違法な降格人事とならないためには、社員の理解を求め、できる限り不満を軽減できる伝え方に配慮しなければなりません。ある程度時間がとれる曜日やタイミング、個室で伝えるなど配慮しましょう。

    社員を認め、評価することも重要

    今回は降格になったものの、本来は評価している点、これまでの功績などについてきちんと説明します。また社員を詰問するような言い方はNGです。降格人事を伝える際は、あくまで冷静に、真摯に向き合う姿勢が大切です。

    将来の復活や希望を見通せる表現にする

    降格人事はほとんどの場合、社員のモチベーションを下げる結果になるでしょう。今後どうすれば元のポストに復活できるのかなどを具体的に示すよう心掛けます。また将来の活躍についてキャリアプランなどを提示し、前向きになれるよう促しましょう。

    降格人事でトラブルにならないために

    降格人事では、段階を踏まずに、いきなり処分を実行するのは避けましょう。特に社員のスキルなどが降格の理由になる場合、事前のアドバイスや指導でスキルアップや状況が好転するケースもあるためです。結果的に降格が決まった場合にも、アドバイスや指導をしても状況改善につながらなかった根拠となるためです。

    また慎重に調査したうえで客観的に裏づけとなる明確な根拠を収集し、降格人事の正当性を示さなければなりません。特に懲戒処分の場合は、社会的通念上妥当であるかどうかに配慮しましょう。たとえば該当する社員の行動を客観的に示すデータや書面があれば入手しておくよう努めます。

    降格人事は、対象者である社員はもちろん、周囲にも動揺を与えるかもしれません。会社の対応に問題があれば、ほかの社員にも不安や不信感を抱かせる原因ともなります。処分の対象社員だけでなく、周囲のモチベーション低下につながらないような配慮が必要です。丁寧にコミュニケーションを取り、場合によっては1on1ミーティングなどを実施するなどの対応に努めます。

    まとめ

    降格人事はキャリアだけでなく、社員の将来すべてに影響を及ぼす可能性があるものです。また組織内のモチベーション低下をはじめ、対応次第では社外的な評価にも関係してきます。降格人事とは慎重を期し、検討を重ねて行うべきものであるのはいうまでもありません。


    さらに能力不足で降格の必要があるケースでは、適材適所の人材配置が行われていない証でもあります。適切な配置を行うためのタレントマネジメントの導入も一案といえるでしょう。

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